モナー小説掲示板ログ保管庫@wiki(´∀`*)

Sword of legend ~伝説の剣~ [2] (ヨシヅミ)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

<前スレ>
http://town.s96.xrea.com/cgi-bin/long/anthologys.cgi?action=html2&key=20051231154411

<保管庫>
http://omaemona.flop.jp/mona/long2/111.html

↓放っとくと消える様なのでここから前のは見れるようにしました
http://www.geocities.jp/yosidumi_hima/


Sword of legend ~伝説の剣~の2スレ目です。

----------------------------------------------------------------------------
17話 Thief?/盗賊?

彼らは空を眺めていた。

その美しさに、時の流れすら忘れさせるこの夜空を。



「今日も大した物が獲れなかったな…。」

そう言ったのは、茶色い色をした毛が、体中に生えているAA。

「まあフサ…。高望みは良く無いさ。4人分のリンゴが手に入っただけでありがたいだろ。」

と、今度は黄色で、耳の付け根に筋の入ったAAが返した。

「今日襲撃した所は、貧しい村でもないニダ。リンゴ4つくらい…。」

フサと呼ばれたAAは、「まあな」とだけ答えると、その場に寝転んだ。

その横に座っていた、片耳の無い桃色のAAが、その顔を少しの間覗き込み、また空に目をやる。

「いつまで…。人を傷つけて、物を奪って…。こんな暮らしを続ければいいのかしら…。」

彼女の顔は悲しそうだった。

いや、彼女だけではない。

そこに居た4人のAA全員だ。

「そう深く考えるとやってけねえよ……。全て…。あれもこれも…。奴のせい…。」

「まあ…。今日は寝よう…。」

黄色いAAはそう言うと、フサの隣に寝転ぶ。

それから会話はプッツリと途切れた。

「俺達はその場をどうにか生きるだけで、精一杯なんだよな…。」





「結構歩いたなぁ……。しぃ、ザーパスとかいう町まで後どれくらいだ?」

「ちょっと待ってね…。」

しぃが、自分の身の丈以上の大きさの地図を、折り畳んだ状態で開く。

片腕でそれを持ち、もう片腕で地図をなぞるようにしてその町を探していた。

「え~とね…。ザーパスまでは…。あと1200キロくらいかな…。って!?」

「1200キロ!? …………ミカエルさんは何でそんな町に。」

「こんな事なら、船長達に送って行ってもらえば良かったモナ。」

「向こうにも色々事情があるんだな。そこまでお世話になる訳にはかない。」

「別れるとき、『私たちには私たちの仕事がある。』とか言ってたよな…。」

「ああ……もう面倒だモナ……。」

「どんだけ歩けばいいんだよ…。」

すっかり気力の抜けてしまった3人を横目に、しぃはしぃは不安気な表情をする。

それをどうにかしようと、地図を開き、必死でその”どうにかする”為の”種”を探す。

その”種”が見つかったのか、地図を3人の方に突き出した。

「でもまあ、その途中途中に町がある事だし…。そこでたびたび止まって行けば何とか…ね?」

そう言って、場の雰囲気を少し良くすると、地図を開いてある点を指差す。

「ここからザーバスまでの間で一番近いのは、ここ、ダルクトゥルス。あと少しで着くよ。」

「なら、今日はそこ目指すか! さ、急ぐぞゴルァ!」

ギコの余りの立ち直りの早さに、3人は少し飽きれた様な笑みをこぼした。

その後ギコが走り出す。

「早く行きたいからな!! 急ぐぞー!」

3人は笑顔のまま、ギコを追いかけ走り出した。





「…そう言う事がありまして、誠に勝手ながら私の判断で、要塞下部の切り離しをさせていただきました。しかし…。」

「ふむ。紋章の力がか。面白いではないか。続けろ。」

「は。しかし、切り離し、海で爆発したにも関わらず、奴ら…いや、少なくとも紋章の力を宿した方の少年はまだ生きています。」

椅子に座っている、黒い方のAAが何かを考えるようにして、腕を組んだ。

「生きていると特定出来たのなら、場所の特定も困難ではないのだろう?
ならば…。すぐさまそこに、『破壊神』を送り込むのだ。」

「『破壊神』…ですか…。」

彼は斜め下に視線をやり、しばらく黙っていたが、顔を上げると、「了解しました」といい、その部屋を出て行った。

残った黒いAAは、いかにも楽しそうな、それでいて恐ろしい笑みを浮かべる。

「さて、なかなか面白い事になって来たな…。『破壊神』と紋章、どちらが…。」




「さぁ、何か食える物を寄越しな。それともお前ごと、この店を奇麗に消してほしいのか?」

奇麗な毛並みをした茶色のAAが、右腕に持っている巨大な銃とも剣とも取れる武器を、尻餅をついて怯えている人に向けていた。

「さ、早くしてくれよ、フサ。」

後ろには3人、それを平然と眺めているAAがいる。

「答えろ。食える物は…?」

「く…食い物はそこの…た…棚にある…。だ…だから…殺さないでくれっ…。」

震えた声での命乞い。

フサはそれを受け止めると、棚の方に向かい、入っていた食料の袋を3分の1ほど奪い、荷物につめると震えているAAに背を向けた。

「俺たちがこの町を出るまで、騒動を広めるなよ…。
もしもそうなったら、ただじゃ済まさねえからな……!」

そう脅し文句を投げつけると、4人は”街角喫茶”と書かれた店を出て行った。


「今日は結構収穫が多いニダ。」

「しばらく持つように、もう少し奪っておくか。」

彼らは次の店を探す。

少し辺りを見回して、目に入ったのは”レストラン・ダルクトゥルス”。

彼らは顔を見合わせ、頷くとそこに入って行った。

「…………食える物を寄越しな!」

ドゴン!!

その店の中から、重々しい銃声が響いた。




「やっと着いたぜ。」

「は~。結構走ったね。」

ギコ達、4人は中継地点である、アルクトゥルスの前に居る。

全員が呼吸を整え終わると、ギコが始めに中に足を進めた。

「何かまずは腹ごしらえだな! お金は船長から結構貰ってるし。」

「無駄使いは良く無いんだな。まあ…飯くらいならいいか。」

3人は皆、この際ギコに任せようという魂胆なのか、特に切り返す事も無く、ギコについて行く。

入ろうとした店は、”街角喫茶”。

「…………。なんだこれは……。」

ギコ達が見た物は、ボロボロになった部屋と、その奥にぽつんと居る店長らしき人物。

「すまないが…。しばらくは営業出来ないね…。」

店長は浮かない表情で、壊れた店内を掃除している。

「いったい何が…。」

「……。盗賊…。盗賊が出たんだよ…。」

「盗賊?」

「名前のとうり物を奪う、その盗賊。店がこんなんじゃ、立て直すのにしばらく掛かりそうだな…。」

「その盗賊について、何か教えてくれ…! 力になる!」

ギコがそう言うと、その気迫に押されたのか、剣を背負っている見た目からか、その事情をちゃんと説明してくれた。

「…てことはこの町にまだ居るかもしれないモナ。」

「なあ、おじさん、ここから1番近くで、食べ物の店は!?」

「”レストラン・ダルクトゥルス”かな…。」

「よっしゃ! ありがとう! そいつらぶっ飛ばして来るぜ!」

ギコ達4人は、勢いよくその店を飛び出した。




店から何度も銃声が響き渡った。

その店の中には既に、店主らしき人物と、4人組だけになっている。

「さ、ここまでされたら素直に出すよな?」

先ほどと同じように、その武器を構えて、脅しの台詞を店主に投げかけている。

一方の店主は、震えながらもモップを構えて、フサに立ち向かおうとしていた。

「誰が…大切な食材を…わ…渡すものか!」

「死にたいらしいな…。」

フサが武器を顔の方に向けた。

「もう1度だけ聞くが…。食料を渡すか…?」

ヒュン!

風を切る音と共に、入り口の方から何かが飛んだ。

それは、フサの頭に命中する。

「誰だ!」

「その悪事…。その辺までにしときな…!」

彼らに似た様な4人組が、入り口の方から入って来る。

「話はお前らが最初に襲った”街角喫茶”の店長から聞いたぜ。」

「なんだお前らは。俺たちと戦うとでもいうのか?」

「もちろんそのとうり。さ、広い所ヘ行こうぜ。」

4人ずつの2組は、その店から外へ出て行った。

店から出て、右と左、二つに分かれると、少しの間にらみ合う。

「さて、お前ら…。死んでも知らないぜ…!」

「そういうあり得ない事は、口に出さない方がいいぜ。嘘つきになるからな。」

そこに居た8人は、全員が武器をすぐに使える状態で持っていた。

「さあ! 行くぞ、ゴルァ!」

----------------------------------------------------------------------------
18話 Lightning/稲妻


ギコが地面に向かって、叩き付けるように振った剣は、空中で止まっていた。

「なかなか速いな。俺たちに喧嘩を売っただけの事はある。」

フサが自らの武器を横にし、その剣を防いでいる。

その反応の速さには少しギコも驚いているようだったが、それは想定内なのだろうか、焦りは見せなかった。

フサが武器を思い切り横に振ると、ギコが初めに立っていた場所に戻された。

「この武器はな、打撃だけじゃ無いんだよ。」

フサが武器の先っぽを向けたかと思うと、そこには大きな穴があいていた。

その穴に、光の粒が集まる……。

カチッという音が聞こえたかと思うと、光の粒子は大きな光球に姿を変えていた。

それが勢い良く、ギコ達に向けて飛ぶ!

4人は右、左に身を移し、それを避けたが、4人が居た場所は光が上を通り過ぎただけだというのに、大きく抉れていた。

「ブラストソード……。この武器の名前だ。さて、そろそろ本格的に始めるか?
こっちはもう待ちくたびれたぜ。」

「じゃあ遠慮無く行かせてもらうぞ! 行くぞみんな!」

8人が中心に向かって走り出す。

真っ先にぶつかったのは、ギコとフサ。

その武器と武器を何度も交わらせながら、相手の隙を狙っている。

ギコが横に剣を振ると、フサは上に飛ぶ。

その体は太陽と被り、真っ黒なシルエットになった。

さっきと同じ、カチッという音。

ブラストソードのエネルギー弾が乱射ギコに降り注ぐ。

ギコも、自分の剣より光弾を放ち、それを撃迎する。

「なかなか…。やるじゃねえか。」

ギコがそう言って、一旦動きを止めた瞬間だった。

フサの後方からボールの様な物が飛んで来る。

それは稲妻を帯びており、直進しながら断末魔の様な轟音を発していた。

稲妻はフサを通り越したかと思うと、ギコの方に向かって進む。

そして……。

バキィ!!

それはギコの腹に入り込むようにして、命中した。

ギコはそのまま後ろに吹き飛ぶ。

「な…なんだ…?」

腹部を抑えながら片膝を付くギコ。

横には球体が転がっている。

これがさっき、稲妻を帯びて飛んで来たのだろうか。

ギコが辛そうに、横に目をやると、その球はぴょんと跳ね上がり、元飛んで来た方向に戻って行く。

「なんだありゃ…。」

「ご苦労さん! ジエン。」

黄色いAAが、その球を迎えるようにして抱き上げた。

「マタ飛バシテモイイヨ。」

その球が喋った…。

ギコは半ば唖然としていたが、立ち上がるとまた剣を構える。

「驚いた? これはジサクジエンっていう生き物でね、俺のペット。」

「まあそう言うこと。これがこいつ…ウララーの武器でもあるってわけだ。
さ、2体1でさっさと殺させてもらうぜ。」

「ちょっと待った!!」

割って入った声と同時に、ギコの後ろから緑色のAAが、ギコをかばうようにして、前に躍り出た。

「はい、これで2対2。俺も参加させてもらうんだな!」

「モララー!」

右腕にはハンマー。

それを大きく上に振りかぶり、地面に叩き付ける。

するとその亀裂は、地を這う大蛇のように素早く、折れ曲がりながら前方に進む。

「砕けろ…!」

その冷たい呟きは、その大蛇を砕いてしまった。

右腕で突き出したブラストソードは煙を上げ、その口をこちらに向けている。

「なかなか面白い武器を使うじゃん。でも、僕のジエンが一番面白いでしょ?」

またしても稲妻と断末魔。
 
「”直線”じゃまず当たらないんだな!」

身軽な動きで、それを避ける。

実戦はあまりしていないというのに、戦い慣れしてるようにも見えた。

洗脳されていたときの戦闘を、体が覚えているのだろうか。

「確かに”直線”じゃ、横に避けられたら終わりだよ。でもね、それは生き物だから。ね、ジエン?」

ウララーがそう言うと、その稲妻は直角を描き、モララーの方向に直進する。

「曲がった…!?」

雷が落ちた様な音。

それと共に、ハンマーが吹き飛ぶ。

「モララー!?」

「大丈夫だ…。ハンマーで直撃は逃れたからな…。」

「よそ見するなよ…!?」

その声の主の方向から光弾が。

更にまたしてもジエンが稲妻を帯び、2人に襲いかかる。

光弾と稲妻。

2つがギコとモララーの居る場所で丁度交わり、弾けた。




「お前は結構、力持ちみたいニダ。」

モナーが倒れて来た瓦礫を受け止め、自分が押しつぶされないようにしている。

それを笑うようにして、茶色をした目が尖ったAAが言った。

モナーはそれに言葉を返す暇もなく、その大きな瓦礫をどうにかしようと必死だった。

「じゃあそろそろ、その瓦礫ごと君を砕かせてもらうニダ。」

そう言った彼は、瓦礫の方向に跳躍し、モナーに1撃を加えようと腕を振りかざした。

「うりゃああああああ!!」

瓦礫が飛ぶ。

その巨大な塊は、腕を構えるAAに近付いて行く。

バキィ!!

瓦礫が砕け、空中から地面へ腕を振った後の体勢で落下した。

「えーと、ニダーだったっけ? モナはこんな事じゃ、やられないモナよ。」

その少しは慣れた横には、平然と立っているモナーの姿があった。

「じゃあ今度はこっちの番!!」

モナーが大きなモーションとともに腕を振る。

すると空を切る音と共に、ニダーの後ろの瓦礫がへこんだ。

「まだコントロールが難しいモナ……。」

「お前もそう言う技か…。なんかニダと被るニダ。」

ニダーが右腕の手の甲をモナーに向け、左腕でその手首を抑える。

「これはグラブ…。手袋みたいな物ニダ」

ニダーが走り出す。

そのグラブで覆われた右腕を、モナーに振る。

モナーもそれに応戦するように、殴り返した。

どちらの拳も相手の顔に命中する。

2人は反動で後ろに下がり、距離が開いたが、今度は絶え間なく殴り合いを開始した。

「どっちも互角に近いモナ……。」

「互角? こっちの方が上手ニダよ。」

パチン……

何かのスイッチの入る様な音。

その後に来たニダーのパンチ。

モナーは一方的に後ろに飛ばされた。

「今のは……?」

「このグラブは…”スタンガン・グラブ”。電撃のグラブニダ。同じ殴り合いなら他のダメージがあった方が有利に決まってるニダ!」

ニダーの腕は、ぱちぱちと静電気の様な音を立てている。

殴り合いならあいつの言うとうり、負けるだろうとモナーは確信した。

(こいつは手強いモナ……。)




桃色のAA2人が向かい合っている。

それは、他のAAのように激しい動きはしていなかった。

「私の名前はでぃ。あなたは?」

「私は……。しぃ。」

少し黒っぽい、桃色のAAでぃは、こくんと頷くと虚ろな目つきで下を見た。

それから少しして口を開く。

「私たちはね、”盗賊”とかとは違うのよ…。”盗賊”は必要じゃなくても、人から物を奪い、人を困らせる。
でも私たちは、自分に必要な物しか奪わない。」

「何が違うのよ…?」

「世の中、公平不公平があって当たり前。だってそれは仕様がない事だもの。
でもね、それで自分の命を絶つ事はいくら何でも可哀想だとは思わない?
貧しいから、生きる為に必要な物がないから、物を持て余してる人から奪うの。」

少しの間、静寂が続く。

しぃも今のでぃの言った事に、考えさせられてるのだろうか、しばらく黙っていた。

その静寂を割り、でぃが言う。

「私たちだって人を傷つけるのは辛いのよ。でもね、自分たちが生きる為なら私は人だって傷つける。
だからあなた達が、私たちの邪魔をするなら、私は生きる為に戦うわ。」

でぃが左腕を握ったまま、前に手を出す。

するとそこには、1枚の紙切れが握られていた。

その腕を開くと、今度は右腕を上げる。

そこには筆が。

「私の武器はこの”筆”と”札”。見てれば分かるわ。」

目を瞑りながら、右で美しい曲線を描き、札に筆を入れる。

そして文字を書き終わったかと思うと、今度はその札を右腕の甲に貼付けた。

そこから、何かを前に投げるように、腕を突き出す。

するとその腕から、火の玉が放たれた。

それは回転しながら、しぃの方向に飛び、しぃの足下で炎上した。

「このとうり、筆と札の力によって、文字で表した物を実体化出来るの。」

「私だって…。」

しぃが杖を振る。

すると、その先から、でぃと同じ火の玉が放たれた。

でぃはそれを上に飛んでかわし、またしても筆で札に字を書き、腕に貼る。

「あなたの魔力と私の魔力。どちらが強いかで決まるわね…。」

放たれたエネルギーの塊は、しぃと重なると、光を放ちながら爆発した。




「……鍵を開けますよ。」

所々が錆びている金属の部屋。

白い体の男が発した声は、感情がこもっていなく、その部屋に無機質に響いた。

「今回は彼を使って、紋章を持つ男の生け捕りが任務です。場合によっては殺してしまっても構いません。
その場合、シィエラ=ペルシャーレ。あなた達の手間が少し増えますが。」

「……分かってますよ、Dr.ニルアー。それにしても何故ダークネス様は、わざわざ私とウルスラグナに任務を任せたのでしょうか…。」

「恐らく”破壊神”と紋章の力の戦いを見たいのでしょう。
あ、それと、殺すのは飽くまでも”場合によって”ですから。むやみに殺さないでくださいよ。」

「では、ウルスラグナに会わせてくださいな。」

「分かりました。」

白いAAが、その部屋の中にぽつんと1つだけあるドアに鍵を差し込む。

そしてそのドアをゆっくり開けた。

「グッ…グガァァアァァアァア!!」

「ウルスちゃん、静かに…。これからお仕事よ。さぁ…こっちにおいで。」

中から出て来たのは、獣の様な姿の大きなAA。

ニルアーの隣に居た水色の毛並みのAAは、それを宥めるようにして、自分の方に呼んだ。

「グルルルルルルル……。」

唸り声を上げながら、その鋭い目つきで彼女の方に近付いていく。

「さ、じゃあ行きましょうか。 Dr.ニルアー、援軍を頼みますよ。」

「ではでは…。あの魔物でも送り込みますかね。」

「ふふ。どうぞご自由に。」

そう言った彼女は、その凶暴なAAにまたがる。

するとそのAAからは翼が。

「さぁ、行きましょう。」

その翼を広げ、飛び立つ。

その姿は魔獣そのものだった。

「彼らが今居る町…。何人死ぬのかが楽しみですねぇ。」
----------------------------------------------------------------------------
19話 Obsession/恐怖

光と稲妻。

その2つが交わり、音を立てながら飛び散った。

大地からは濛々と煙が立ちこめ、周囲の視界を遮る。

今、技を放った2人は、既に勝利を確信していた。

そうでもなければ、相手に背を向ける事などないだろう。

しかし、その爆煙の中から姿を現したのは、1つの丸い影。

そこには巨大な盾の後ろで、悠然と屹立する2人の姿があった。

「…………舐めてもらっちゃ困るぜ。俺の武器は変化自在!」

その盾は、さっきと同じハンマーに姿を変える。

それを見たフサとウララーは、自分の技が防がれた事と、その奇妙な武器に、驚愕と怒りを隠せないでいた。

「ジエン…! もう1度だ! 早く戻ってこい!」

ウララーはそう叫んだが、ジエンの姿はどこにも見えない。

4人は同時に辺りを見回す。

「…………………………………………あれ? ジエン?」

返事は無い。

「おーい! ジエーーーン! どこだぁぁぁ!?」

何度叫んでもジエンは姿を見せなかった。

「何だかよく分かんないけど……………。そろそろ、決着と行かせてもらうぞ、ゴルァ!!」

ギコは剣を後ろに構えると、それに自らの全力を注ぐようにして目を閉じた。

周りの木切れや小石は踊るようにして跳ね、ギコの耳は木の葉のように靡く。

剣は、生物的でもなく、人工的でもない、そんな神秘的な音を発しながら濃い青の光を放っている……。

次の瞬間、ギコの目が開かれた。

それと同時に、剣を包んでいた光が、ギコの全身を包み、それは光の筋となって突き進む。

光の筋は直線を描き、2人のAAを通り過ぎた。

「…………………………!?」

声を出す間もなく、フサとウララーはその場に崩れ落ちる。

2人の脇腹からは、赤い血が噴き出しており、ギコの攻撃の直撃を物語っていた。

ギコはしばらく、剣を構えた体勢をとっていたが、攻撃が来ない事を確認すると、ゆっくりその剣を降ろした。

そして後ろを振り返る。


「ふざけんな……。」

フサの腕が動く。

脇腹が深々と切られ、大量に出血しているのに、立とうとする。

「ふざけんな…。俺はまだ…やるべき事がある…。ここでやられてちゃ…仲間に面目が立たねえんだよ…!」

そんな体でも尚、戦おうというのか。

それからは、混じり気の無い強い執念のようなものが感じられた。

「早く剣を構えな…!」
 
フサが、ギコ達を挑発するように、ブラストソードを向ける。

「まだやるのか…? もう勝負は付いただろ!?」

「生きる為に…俺は戦うんだよ…。負けたなら…それは俺にとっての…”死”だ…!」

ギコには死ぬかもしれないのに、それでも戦おうとする理由が分からなかった。

生きる為、こんなにも必死に彼は戦っている。

ギコは、その迫力に押された。

剣を構える事なんか出来なかった。

(どうすれば……。)

戸惑うギコの上に、不意に黒い影が落ちる。

その影は最初は小さかったが、影の主が近付くにつれてどんどん大きくなって行った。

そして影の主がその場に降り立つ。

それは、魔獣のような姿のAAと、その上に股がる、水色のAAの2人だった。

「紋章の力を持つって言うのはどの子ですか?」

彼女が発する言葉は剣のように鋭い。

それには、ダークネスにも似た威圧感があった。

彼女はそこに居たAAをぐるっと見回すと、フサの方に目を向ける。

「おや? そこに居るのは……。あの時の……。久しぶりですね。」

さっきまでの気迫が飛び、フサの表情が恐怖で凍った。




地面からは、海のように暗い青をした巨大な氷の柱がそびえ、しぃの周りを取り囲んでいる。

しぃは下手には動けない状況だった。
           
相手の姿が捉えられない。

周りは仲間が戦っている音以外聞こえず、でぃが周りに居るのかすら分からない。

そんな中、ただ時間だけが過ぎて行く。

何とかこの状況を打開しなければ。

抜け出そうと技を放てば、そこからでぃの反撃が来る。

しぃは悩んだ。
           
(動いたら……。彼女の”あれ”が来る…。直撃を受けたら終わりね……。)

しかし、答えは浮かばない。

下手に攻撃出来ないのに、攻撃しないと壊せない壁など、突破出来るはずがない。

「もういいかしら。」

その密閉された空間では、その声の主が何処に居るのかは分からなかったが、でぃの声だという事は分かった。

(どのみち殺されるわね……。でも、上も、横も動けない……。)

しぃは、何度か氷を触って調べるが、やはり抜け出せる様な所はない。

避ける術がないなら、防ぐしかない。

いや、まだ方法はあるらしい。

しぃは何かをひらめいたようだ。

(”上”も、”横”も? なら…!)

外から眺めるでぃには、しぃが何をしているかは、音以外では分からなかったが、目の前の氷の塔の中に居る事は分かっている。

この氷ごと消してしまえばいい。

ただそれだけだった。

「行くわよ……。」

でぃの持つ札が、舞い上がる。

それは意志を持っているかのように、空中で舞を踊るようにして、でぃの右腕…握られた筆に集まって行く。

やがてそれは、巨大な刀身を形作り、一瞬輝きを帯びたかと思うと、それは本物の巨大な剣に姿を変えた。

巨大と言っても尋常ではなく、それはでぃ自身の身長の10倍は超えている。

そしてでぃは、それを横に振った。

その剣は直撃を受けた物を形が残らない程に砕き、通った箇所に鎌鼬を巻き起す。

でぃを中心に、周りにあったものは全て砕け散った。

もちろんあの氷の塔も。

刀身はまた光ったかと思うと、札に戻り、地面に落ちた。

でぃは、すぐさま氷に近付き、中を覗き込む。

「……………いない!?」

崩れた氷の何処を探しても、そこにはしぃの姿はなかった。

あったのは、硝子の様なただの氷だけ。

でぃは首だけを回し、周りを見回すが、やはりどこにもしぃの姿は無かった。

あの密閉された空間から一瞬で、でぃに動きを捉えられないように抜け出せるはずが無い。

なら、どうやって姿を消したというのだ。

「……………………下?」

でぃは何かに気付く。

気付いたのと同時に、しぃが消えた事の真相は明らかになった。

氷の破片が盛り上がり、そこから腕が。

それに続いて地面の下から、しぃが這い出る。

「剣を横に振ってくれたから助かったわ……。さっきみたいに、縦に振られてたら、地面ごと抉られていたからね。」

地中か、地面へ上がった後、体をはたき泥を落とす。

「上と横が駄目なら下に行けばいいのよ。」

「………………………………………。私の負けね。この技を防がれた時点で、私の負けは決まった様なものよ。
それに、何か嫌な予感がするの。私は仲間の所ヘ行くわ。」

でぃはそう言うと、自らの武器である筆と札を片付けてしまった。

「もしも、これが私が逃げる為の言い訳だと思うなら止めを刺したっていいのよ。」

いまのでぃは武器も何も持っていない。

完全に無防備だ。

それでもしぃは杖を降ろした。

「もちろん…そんな気は無いわ。でも、悪い予感って…?」

「分からないわ。」

2人は、最初に居た場所へと向かった。

2人の間にはもう戦意は無く、それはついさっきまで戦っていたとは思えない程だった。

広場へ向かう中、でぃの顔は不安に満ちていた。

(何なの…? この邪悪な感覚は…。)
----------------------------------------------------------------------------
20話 Fear and anger/恐怖と怒りの狭間


「本当に。何年ぶりでしょうか。」

水色のAAがいきなり上から降りて来たかと思うと、今度はフサに向かって懐かしむようにして話し出す。

フサはそれを魂が抜けたかの様な表情で、目を合わせないようにして聞いていた。

「ですが安心してください。今回はあの時みたいに、あなた達に手を下したりはしませんよ。」

彼女は口元をつり上げて、少しの間笑みを浮かべた。

俯いているフサギコの腕は震えている。

このフサとこのAAはどういう関係なのだろうか。

ギコがそう考えていると、近くに居た巨大なAAが唸り出す。

それはAAというより魔獣と言った方が近いのかもしれない。

水色のAAは、そのAAの頭を撫でると、そっと耳元で何かを呟き、大人しくさせた。

「私たちが用があるのは、そこに居るあなたですよ。」

そう言って彼女は、ギコの方を指差した。

「なっ……。まさかお前…。」

「そのまさかです。私の名前は、シィエラ=ペルシャーレ。”ダークネス”の幹部ですわ。」

そう言って、ペルシャーレは先ほどの笑みをギコとモララーに向けた。

2人の背筋に悪寒が走る。

「さて、前置きはこの辺にして、ギコ君には私たちの要塞に来てもらわなければなりません。
なので、そろそろ始めさせていただきます。」

ペルシャーレの左腕に、巨大な太刀が現れる。

腕が光った後に、その光が剣に姿を変えたのだ。

それは、剣が腕の中から出て来たような感じであった。

「まあ、ただ捕えるだけでは詰まらないですわね。ゲームをしましょう。」

「ゲーム?」
                     
「そう。ルールは簡単。私が今からあなたに渡す、”死の輪(デットリング)”を破壊した方が勝ち。
輪を付けるのは1人。輪は肩に付けて下さい。お互い戦闘員は、何人でも良いです。
もし私が負けたら、伝説の剣についての情報を教えましょう。そして大人しく引きます。
あなたが負けたら、あなたは私に付いてダークネス様の所ヘ行ってください。仲間はこちらの好きにさせてもらいます……。」


そう言うと、さっきと同じ要領で腕の光を輪に変え、ギコに投げて渡す。

自分もそれと同じものを右肩に付けた。

ギコはその輪を受け取り、疑った様な目でその輪を見ていた。

「何をためらうのです。別に仕掛けなんかはありませんよ。それともゲームは嫌いで?」

「おい、ギコ。その輪、何か危なそうだぜ…。ここは断った方が…。」

「分かってる……。」



……………………………カチャッ

モララーの忠告を聞かず、ギコは左肩に輪を付けた。

左肩の輪を右手で動かし、邪魔にならないように調節する。

「おいギコ…。」

身を乗り出そうとしたモララーをギコは手で制し、それ以上言葉を発さないようにと素振りを見せた。

(さっきの怪しげな技…。ここは絶対あいつに従っといた方がいい。)

ギコはペルシャーレに剣を向ける。

「さあ、準備はできたぜ!」

「なかなか聞き分けの良い子ではないですか。こちらは私とこの子、ウルスラグナの2人です。」

「こっちは俺……。」

「と、俺な。」

モララーが親指で自分を指しそう言った後、ギコの方を見る。

「お前になんか考えがあるんだろ。なら俺はそれに従わせてもらうぜ。」

「2対2ですか。ステージはこの町の中。では開幕と行きましょうか。」

4人が戦闘態勢に入ろうとする。

だが、それをフサの声が止めた。

「待てよ…………。」

フサは俯いたまま、くぐもった声で話している。

「ギコとか言う奴。止めておけ…。」

その声は、彼の体以上に震えていた。

それを聞いて、ペルシャーレはまた笑みを浮かべる。

「何故ですか?」

「とぼけんじゃねえよ…。」

フサの声が、力強さを増す。

「お前等は俺等から大切なものを奪っておきながら、まだ他の奴らからも奪うつもりなのか!?
俺は忘れねえぞ! 俺たちにお前等がした事を!」

フサの体は相変わらず震えていたが、その震えは恐怖というよりは怒りから来ているものだった。

その憎悪に満ちた表情は、ぺルシャーレに向けられている。

「おい、ギコ。てめえの戦いに協力させてもらうぜ…。」

「……分かった。」

ギコには彼らの間に何があったのかはよく分からなかったが、フサの倒すべき相手がでペルシャーレある事は感じ取っていた。

だからこそ、さっきまで戦っていた”敵”と言葉を交わし、手伝わせようとまでしたのだ。

2人の間にはもう、敵意などは無い。

「手伝うとは言っても…この傷じゃあ援護くらいしか出来ねえけどな…。」

「お前は、そこに居るお前の仲間を守りな。援護は二の次だぜ。」

フサは頷くと、ブラストソードを引き摺りながらウララーの前に立つ。

ギコはそれを見て、戦える状況になった事を確認した。

「てめえ等に付いて行くつもりは、俺はさらさらないぜ、ゴルァ!!」

ギコはそう叫び、剣を後ろに構えた。

剣が青い光を帯びる。

ギコがそれを弧を描くようにして振ると、剣から光球が放たれた。

それは、渦を作りながらペルシャーレの方へと突き進んだ。

ペルシャーレは殆ど体を動かさず、腕だけを使って剣を振り、それを弾く。

彼女は、その攻撃をものともしていないといった様子でいた。

「ウルスちゃん。まずはあなたに任せるわ。」

ペルシャーレはそうとだけ言うと、剣を地面に突き刺す。

それは無防備な状態ではあったが、どうやらそこまでたどり着かせてくれそうに無い。

それはこの魔獣、ウルスラグナが立ちはだかっているからだ。

まずこいつを倒さなければ。

とは言っても、その魔獣の身長は四つん這いでありながらも、ギコの1.5倍はある。

腕には巨大な爪、更には背中に翼まで生えている始末だ。

「結構ヤバそうなんだな…。ギコ、どうする?」

ギコは剣を肩に掛ける。

そして少し間を置くと、モララーとウルスラグナ、両方を視界に入れ、堂々と言った。

「もちろん、正攻法だ!」

ギコは剣を構え、魔獣、ウルスラグナに突進して行った。





「ちょっと待って、でぃちゃん。」

しぃが広場の中央を見ながら、でぃを腕で引き止めて言った。

「何か様子がおかしいわ。あなたの仲間と、ギコ君、モララー君の他に誰か居る……。戦っているみたいよ。」

でぃはしぃが指差した方向を見て、一瞬驚きの表情を浮かべる。

そして、再度走り出そうとしたしぃを引き止めて言った。

「あそこに居るのは…もしかして……。しぃ、今はまだ出て行かない方が良いわ。」

「え…? もしかして、あのギコ君達と戦っている人達を知っているの?」

「……ええ。」

でぃの顔つきは、不安な気持ちを露にしている。

「どういう事? あの人達は何者なの?」

「………”ダークネス”。」

しぃは驚きの表情で、でぃを見つめている。

一方のでぃも、不安気な表情のまま。

「………………皆を助けなくちゃ。」

「待って! あの水色のAA、彼女は…………。とにかく、下手に出て行っても無駄よ。
出て行くなら、タイミングを見計らった方が良いわ。」

でぃは横に走り、建物の陰に隠れた。

しぃもそれに付いて行き、同じように隠れる。

でぃの言動以外に、行動や表情からも、そこに居るダークネスの幹部の凄さは見て取れた。

それだけではなく、でぃは見ている方が不安を覚える程に焦っているようでもあった。

確かに強そうではあるが、それは今まで見て来たダークネスの幹部達も同じだ。

(あのAAとでぃちゃん達の間に何があったのかしら……。)

建物の横から覗くと、ギコ達の戦いが始まったのが見えた。
====================登場人物紹介2==========================
*今までのキャラは前スレにて
<敵?>

名前 フサギコ
説明 ギコのライバルとなるであろう存在。貧しい為、食料を奪う事で生きている
武器 ブラストソード
能力 不明
口癖 特に無し
初登場 17話
必殺技 ウルティメイト・ブラスト
↑説明 ブラストソードに溜めた、エネルギーを一挙に放つ大技。

名前 でぃ
説明 結構暗い。悲しい感じの少女である
武器 札と筆
能力 魔法系 札に書いた文字によって技を繰り出す。
口癖 特に無し
初登場 17話
必殺技 砕神破乱(さいじんはらん)
↑説明 札で巨大な剣を作り、それで相手を攻撃する。

名前 ウララー
説明 モララーに似ている。
武器 ジサクジエン
能力 精神系 ジエンを飛ばして操る事が可能。
口癖 特に無し
初登場 17話
必殺技 ライトニング・ストライク
↑説明 ジエンを投げ、稲妻を帯びさせ攻撃。ジエンと心を通わせ、飛んでいる状      
    態のジエンに指示を出し、動いてもらう。


名前 ニダー
説明 戦いを楽しんでいる所がある。結構腹黒かったり。
武器 スタンガン・グラブ
能力 能力上昇系 主に力
口癖 ニダ
初登場 17話
必殺技 スタンガン・ナックル
↑説明 電気のグラブ(手袋みたいな物)で相手を殴る。


名前 ジサクジエン
説明 半角だと読みにくかったりするので、全角カタカナです。
   ウララーが投げる事で、稲妻を帯びて飛ぶ。
武器 自分自身(え
能力 稲妻を帯びて飛ぶ
口癖 特に無し
初登場 18話 
必殺技 ライトニング・ストライク
↑説明 稲妻を帯びて相手に攻撃する。追尾可能。

<ダークネス>

名前 シィエラ=ペルシャーレ
説明 ダークネス一味の女性。丁寧な口調で話す。
外見 水色。あとは既出のAAなんで 
武器 不明
能力 不明
口癖 特にない
初登場 8話
必殺技 不明
↑説明 

名前 ウルスラグナ
説明 凶暴なAA。どっちかって言うと獣だが。
外見 巨大な体に、鋭い目。体色は黒緑っぽい。翼が生える。
武器 不明
能力 飛ぶ事、他
口癖 特に無し
初登場 8話
必殺技 不明
↑説明 

=======================================================

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー