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心無き者 ~LOST MIND~ (大地)

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~心無き者~ LOST MIND

 ~プロローグ~

西の空が紅く染まっている。

もう夕暮れだ。俺の体も紅く染まっていた。

戦場となった大地も紅く染まっている。

そんな大地で俺は一人の男と話をしていた。

「あんたは何故戦うんだ?」

男は俺に問うた。

「俺は死にたいのさ」

何故戦うか。そう、俺は死にたかった。

「何故、あんたが死ぬ必要がある?」

「俺は死ななければならないのさ。俺のせいで、死ななくても良い奴が死んだ」

それだけではない。俺は気づいたのだ。

戦場に出て、戦って死のうとした。だが俺は死ねなかった。

俺は戦場で気づいてしまったからだ。この世の摂理というものに。

戦争で流れた血は何のために流されたのか。

戦場で戦った者は最後、何を得たのか。

戦う者は全て、ただの幻想のために戦っているに過ぎなかった。

何のために戦ってきたのだろう。今はそう思う。

「あんたの話を聞かせてくれよ。それと何故俺を殺さなかったのかも」

「俺の話、か」

俺はその男を見た。やはり、似ている。

俺はそう思い、話を始めた。




 ~第一章~ 紅い涙

ここは頽廃の都市、CURSE CITY。

俺は都市の隅にひっそりと佇むバーに入っていった。

小さなバーだがそれなりに客が来るバーだった。

このバーに客が集まる理由、それは、ここがただのバーじゃないからだ。

このバーはある仕事を請け負う奴らの窓口の役目をしていた。

その仲介料をこのバーのマスター、モナーは受け取っていた。

ここに来る連中は三種類しかいない。

一つは普通の一般客。

二つ目は、仕事を依頼する連中。

三つ目は・・・仕事を行う連中。殺し屋、戦争屋、様々な連中。

この都市にはそういう連中が溢れていた。

汚い連中だ・・・そういう連中が俺は嫌いだった。

俺は、このバーで働いていた。

俺が働く理由はただ二つ。金のため。それと、ここのマスターのためだった。

仕事の勤め先が潰れた頃、何も言わずに俺を雇ってくれた。

俺の役目は至って簡単。注文された酒を作り、運ぶだけ。

「モララー! 酒の追加を倉庫から持ってきてくれモナ」

モナーの声が響き渡った。俺はモララーと呼ばれている。

俺は裏の倉庫に酒の箱を取りにいった。

倉庫に行くと別のAAと鉢合わせになった。

「あぁ、モララーか。酒の追加だろ?」

「あぁ」

黄色のAA、ギコ。このバーで一緒に働いてる。

俺の親友と言える存在で、この仕事についたとき、ここの仕事に誘ったAAだ。

こんな所で一人で働くのは心細かったのかもしれない。

ギコに手伝ってもらい、酒の箱をカウンターまで運ぶ。

グラスに注ぎ、客の待つ席まで運ぶ。

俺はこの酒を運ぶ仕事が好きじゃなかった。

ここに来る一般客は血気盛んな奴らが多い。

喧嘩を売ってくる客もいる。

ちなみに俺は負けたことが無い。

「よぉ! モララー! 調子良さそうだな!」

酔っているのか、客は訳の分からないことを言っている。

俺は無視してカウンターに戻ろうとする。

「あぁ? 俺を無視だぁ!? どうやら痛い目に遭いたいらしいな」

客が立ち上がった。俺は振り返った。さっさと終わりにしたい・・・

こういう奴らの相手はめんどうだ。

マスターの方を見た。マスターは見物を楽しんでいる様子だ。

どうやら俺に選択権はないらしい・・・

「どこ見てんだぁ!? ゴラァ!」

客が後ろから掴みかかってきた。俺は肩越しに客の腕を掴み、背負い投げをした。

客が床に叩きつけられる。他の客は笑い、ギコは口笛を吹いた。

無言でカウンターに戻る。

「やるじゃねぇか、モララー」

「面倒だよ、こういう奴らの相手は」

「ははは、今度は俺がやってやるよ」

ギコは笑いながら言った。



営業時間が終わり、俺とギコは帰る時間になった。

俺とギコは帰り道、様々な事を噂しながら帰っていく。

「最近さぁ・・・あのバーすごい危なくなってきたよなぁ・・・」

「そうだな・・・最近は殺しの依頼が増えてるってマスターが言ってたしな。
そういう依頼の仲介料は高いってマスターは喜んでいたが・・・」

「とんでもない危険人物だな。俺らもそういうのに関わっちまったからなぁ・・・」

「あぁ・・・」

あそこの秘密を知ってしまったからには、もうあのバーをやめることはできないだろう。

俺は、ギコを巻き込んでしまったのかもしれない・・・

いつもそう考えるが、ギコはそんなことは言わず、俺と共に仕事をしている。

給料はそこそこ高かった。だから文句は無かった。

家の近くでギコと別れた。



バーで問題が起きた。

発砲があった。バーの中で男が散弾銃をぶっ放した。

男は30秒もしない内に殺された。

殺し屋も大勢来ていたからあたりまえだった。

「まったく、店で暴れられると困るモナ。ギコたちは今日は帰ってくれていいモナ」

モナーは奥の部屋に数人の客を招いた。

俺とギコは帰らされた。



翌日、俺たちは長期休暇にされた。

ギコはよほど暇なのか、俺の住んでる部屋に来ていた。

「あぁ・・・長期休暇かぁ・・・休暇っていってもやること無いんだよなぁ」

ギコはそう嘆いていた。

「俺は他の仕事があるから、そっちでしばらく働く」

「へぇ、そうか。俺もバイトでも探すか」

ギコはそう言って、部屋を出て行った。

実を言うとその仕事というのもモナーに紹介されたものだった。

トラックでの荷物の運搬だ。簡単な仕事だった。



ある日、俺は荷物運送の仕事を終えて、帰路につきながら考えていた。

よく考えれば何の荷物を運んでいるか知らなかった。

だが、給料がそこそこ良かった。だから俺はそれ以上追求しなかった。

家に着いた。部屋に入り、照明を点けた。

そして、俺は腰を抜かしそうになった。

ギコが居た。居ただけならまだいい。

血まみれだった。

「ギ・・・ギコ!」

呼びかけた。ギコが片目だけ開いた。

「モ・・・モララーか・・・無事だったんだな・・・よかった・・・」

「誰にやられたんだ! ギコ!」

「あれは・・・なんて言えばいいかな・・・間違いなく・・・殺し屋だろうな・・・」

殺し屋?! 何で殺し屋なんかが!?

「・・・そいつ・・・俺に何か聞いてきやがった・・・取引の・・・窓口がどうとか・・・」

窓口・・・?バーのことか・・・?

「あとよ・・・武器の運搬がどうとか聞いてきたけどな・・・俺・・・何も言わなかったぜ・・・やるだろ・・・?」

武器の運搬・・・何の話かまるで分からなかった。

「・・・・・・俺はもう駄目だ・・・あいつに・・・しぃに・・・伝えてくれ・・・」

「伝えてくれ? 自分で言えばいいだろ?!」

「俺はもう死ぬ・・・分かるんだ・・・最期に連れて行って欲しい所がある・・・」

「最期なんて言うな・・・ギコ・・・」

「頼む・・・モララー・・・」

どうするべきか迷った。明らかにギコはもう助からない。出血量が多い。傷も深い。

俺はギコを、仕事先で使っているトラックに乗せた。

「よし・・・じゃぁ・・・都市の郊外の展望台に連れて行ってくれ・・・」

何故展望台なのか、疑問はあったが、迷わず展望台に向かった。



展望台に着いた。ここの展望台は最早、長年使われていない。

扉を壊し、中に入った。

階段を上がり、ギコを何とか一番上まで連れて行く。

「あぁ・・・ここでいいよ・・・ここだよ・・・ここで俺とあいつ・・・付き合い始めたんだよ・・・」

「・・・! ギコ! しっかりしろ!」

「・・・あいつともう一度来たかった・・・モララー、あいつに・・・しぃに伝えて・・・くれ・・・俺は勇敢だった・・・ってな・・・」

「自分で誉めてどうすんだ・・・」

「・・・頼んだぞゴラァ・・・モララー・・・バーにはもう行くな・・・お前を、死なせたくない・・・」

「・・・!? おい、どういう意味だ! ギコ!」

「・・・じゃぁな・・・しぃ・・・」

ギコは最期、涙を流していた。

雨が降ってきた。

涙が流れない・・・空が代わりに泣いてくれている気がした・・・

雨が血を流していく。俺に付いた血も流されていく。

俺は紅い涙を流している様に見えただろう・・・




俺はトラックに乗りこんだ。

ギコに言われた通り、しぃに会いに行く。

それが、俺がギコにしてやれる最後の手向け。

いや・・・俺は他に、ギコに何をしてやれたんだ。

ギコは・・・俺のせいで死んだのではないのか・・・そうだ・・・俺がバーの仕事に誘わなければ・・・

・・・ギコは・・・ギコは俺のせいで死んだ・・・

どう考えても、ギコは俺のせいで死んだという考えにしか行き着かなかった。



俺はトラックで街の中を走っていた。

しぃの住んでいる部屋の前まで来る。

インターホンを押す。中で声が聞こえた。

「こんな時間に誰? ギコ君?」

しぃが出てきた。

「あれ? モララー君? どうしたの?ギコ君は居ないけど」

「しぃ・・・・・・ギコは死んだよ・・・」

「・・・え?・・・・・・」

「勇敢だった・・・」

そこまで言って、その場に座り込んだ。

何故か、立っていられなくなった。

「そう・・・ギコ君は・・・どこにいるの?」

「・・・トラックに・・・・・・」

「・・・うん・・・・・・」

俺としぃはトラックに乗り込んだ。

トラックで走り続け、都市から20キロほど離れている山中に入った。

人がまったく立ち入らない様な所に、ギコを手厚く葬った。

そこまで来てしぃは泣いていた。

・・・朝まで、しぃはその場で泣き続けていた。



「これからどうするの?」

「・・・ギコは俺に、バーにはもう行くな、と言った。どうやら、その約束は守れそうにない・・・」

「・・・そう・・・・・・」

「しぃ・・・ごめん・・・多分もう・・・会えなくなると思う」

俺の心はすでに決まっていた。



俺はバーの前に停めた車の中にいた。知らない男のAAの車だ。

俺は車の持ち主が来るのを待っていた。

バーから一人のAAが出てきた。

暗闇でよくは見えないがおそらく男のAAと見受けられる。

男は俺に気がつかずそのまま、停めてある車に乗ろうと扉を開けた。


ーーーカチャリーーーーーー


俺は男の額に拳銃を突きつけた。

「動くなよ・・・乗れ・・・」

男は言われるがままにする。

人気の無い場所へと車を走らせた。

どこかの倉庫に入る。

男を車から降ろした。

倉庫の中は照明が点っており明るかった。

逃げられないように、男を壁際まで移動させる。

「あんたに聞きたいことがある。答えれば生かしてやる」

俺は言った。

「俺がそう簡単に喋るとでも? それは間違いだ、これでも俺は・・・」


ーーードォン!!ーーーーーーキイイィィン・・・・・・ーーーーーー


男の足元が弾けた。弾がどこかにぶつかる音がする。

男の表情は血の気が失せていた。



「俺はある武装組織の人間だ」

「武装組織?」

「そうだ。表向きは取引などをしている組織だ。今回は指令を受けてやってきた」

「誰からだ?」

「俺たちの組織の人間だ」

「どんな指令を受けた?」

「武器の運搬を行っているAAを捕らえろという指令だ」

武器の運搬?たしかフサもそんな事を・・・

「どういうことだ?」

「俺たちの組織の敵対組織が武器の運搬を密かに行っている、という情報が入った」

俺は銃を少し動かして続きを話すよう促した。

「運搬の作業はあのバーの店主、モナーが行わせていたらしい」

マスターが? ・・・どういう事だ・・・・・・

俺が近づくと男は怯え、勝手に喋った。

「モナーは自分の店で働いているAAを使っていたらしい」

モナーのバーで働いているAAは俺とフサだけだった。

「だから一人のAAを探し当て、捕らえた」

捕らえた? あれは捕らえた、とは言わないだろう・・・

「半殺しにして喋らそうとした。だが吐かなかった。だから殺そうとした」

「武器の運搬ってのは?」

「俺たちは武器をどうやって運んでいるかまでは調べ上げた。どうやら目立たない運送用のトラックを使っていたらしい」

運送用トラック・・・まさか、マスターに紹介された仕事のことではないのか。

「だが、誰がやっているかが分からなかった。だから、あのフサ毛のAAを締め上げることにした」

「何故モナーを直接締め上げなかった?」

「今モナーに手を出せば、モナーの所属する組織が感づいて戦争になる。だからモナーは泳がせた」

そんな事のためにフサは死んだのか。

俺は毒づいた。

どこもかしこも腐りきっていた。俺は何もかも騙されていた。

組織とやらは武器の運搬を行っているAAを探していた。

それがまさに俺だった。自分でも気がつかなかった。

全員が俺を狙っていたのに、フサは俺と間違われて殺された・・・

「これだけ喋ったんだ・・・もう開放してくれ・・・」

「そうだな・・・」


ーーーズドォォン!!ーーーーー


銃声がこだまする。

男がゆっくりと倒れた。紅い液体が男の体を中心に地面に広がった。

俺は男の服をあさり、一本のナイフを取った。

極めて実践用に作られた代物だ。

俺は銃を投げ捨て、倉庫を出て行った。



バーの前に、トラックを停めた。

トラックを降り、そのままバーの前まで行き扉をけり破った。

中は薄暗かった。照明が一つだけ点っている。

モナーがカウンターに座っていた。

「・・・やはり・・・生きていたモナね」

モナーが俺を見て、口を開いた。

「まさか、三つの組織に狙われて生きているとは、さすがモララーモナね」

黙ってモナーに近づいていく。

「モララー、組織に入る気は無いモナ?」

俺は歩みを止めた。


『・・・じゃぁな・・・しぃ・・・』


・・・ギコ・・・俺は・・・おまえを・・・

「・・・さらさら無い・・・ギコは・・・」

・・・俺が殺した、とも言える。

「・・・ギコ? ギコの身に何かあったモナか?・・・まぁとにかく残念モナ」

モナーは立ち上がった。手には太刀が握られている。

斬りかかってきた。横っ飛びに避ける。

モナーはすばやく太刀を横に薙いだ。

胸の辺りから血飛沫が上がる。傷は・・・浅い。

「中々やるモナ。にしてもモララーがやられなくて良かったモナ」

俺は確かにやられなかった。ギコが俺と勘違いされたからだ。

「その様子だと、もう積荷の事にも気づいたモナね」

ギコは俺の事を守るために犠牲になった。俺よりずっと強い奴だった。

「しかしモララーが積荷の事を喋ったんじゃないかと心配だったモナ」

俺は何も喋ることなんて無かった。何も知らないギコが俺の代わりに襲われたからだ。

モナーの太刀を、かろうじて避ける。どう動いたかはよく分からなかった。

突っ込む。突き出された太刀を避け、懐に入った。

モナーの腹に蹴りを入れる。まともに入り、モナーがのけぞる。

「ぐぅ!・・・やるモナ。でも・・・これで終わりモナ!」

モナーがすぐさま太刀を振るった。首を狙っている。避ける暇は無かった。


ーーーキイィィン!ーーーーーー


金属音がこだまする。俺はナイフで太刀を受け止めていた。

そのままモナーの懐に入り、ナイフを横に薙いだ。

ーーズブッーーー

ナイフがモナーの咽喉元を切り裂いた。紅い液体が、宙を舞う。

俺にもそれは降りかかった。

モナーが仰向けに倒れていった。首からはとめどなく血が流れている。

「・・・モラ・・・ラー・・・僕は・・・何故死ぬモナ・・・?」

何も答える必要は無かった。そのままバーを出て行く。

外はまだ雨が降っていた。俺に降りかかった血を再び洗い流していく。

雨に濡れながら俺は考えた。

ギコが何をしたんだろうか。

あいつは何も悪くなかったはずだ。

全ての元凶は俺だった。

何もかも俺が原因で歯車は回っていたんだ。

モナーの組織は俺を利用し、武器の運搬を行っていた。

その敵対組織は武器の運搬を行っているAA、つまり俺を狙っていた。

何も知らない、関係の無いギコが、俺と間違われ殺された・・・

今更真実に気が付いても、もうどうしようも無かった。

他人を信じた。俺が大きな間違いを犯しただけの話だ・・・

そのせいで一番大切な物を失った・・・

俺は考え続けた。答えは見つかった。

そして、俺は夜の闇の中に溶け込んでいった。







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