「25レスごとのお題で小説を書け!」の50のお題
作:暇人
2005/02/13(日) 03:55:42
雨が降っても冷たくなく、雪が降っても寒くなく、風が吹いてもつらくなく、
優しい日差しが降り注ぐ、そんな世界の小さな物語。
あるところに、ギコという猫がいました。
ギコは猫なのに真っ黒な翼がある、不思議な猫でした。
ギコは、いつも言葉が乱暴で、ぶっきらぼうで、一人ぼっちが好きだったので、
周りの動物たちは、言葉が乱暴で、ぶっきらぼうで、翼があるギコを仲間はずれにしていました。
ギコはひとりぼっちが好きな猫だったので、いつも、一人で遊んでいました。
なぜなら、ギコはここに来る前も、ずっとひとりぼっちだったからです。
寒い冬の日、暑い夏の夜。
どんなに雪が降っても、段ボールの中で寒さをしのぐしかありませんでした。
どんなに暑くて喉が渇いても、汚れたドブの水を飲むしかありませんでした。
お腹がすいても、具合が悪くなっても、誰も助けてくれなかったのです。
ギコはひとりぼっちが大好きになりました。
とても寂しいけれど、ひとりぼっちを大好きにならないと、苦しくて、寂しくてどうしようもなかったのです。
ある寒い冬の日、目が覚めると、ギコの背中には翼が生えていました。
そして、今まで寒くて凍えてしまいそうだったはずの体は、とても軽くなっていました。
でも、ひとりぼっちが大好きで、誰も信じる事ができなくなっていたギコは、
ここに来ても、ひとりぼっちでいようと思いました。
ある日、ギコがいつも遊んでいる草原から少し離れた河原を歩いていると、一人の人間の女の子が歩いてくるのが見えました。
その女の子には、見覚えがありました。
「あのガキは……」
ギコがここに来る少し前、たった一人だけ、ギコを抱き上げてくれた人がいた事を、ギコは思い出しました。
寒い夜、段ボールの中で震えていたギコの背中を、静かに撫でてくれた温かい小さな手。
顔をあげると、そこには、一人の女の子が立っていました。
かじかんだ体を抱き上げると、カバンから魚のフライを出して、ギコに食べされてくれた、女の子。
たった一度だけ出会って、ただ一人、ギコに優しくしてくれた女の子。
ぼんやりとした顔で、ゆっくりと、こちらに歩いてくる姿を見たギコは、あらん限りの声で叫びました。
「まだ、こっちに来ちゃいけねぇ!戻れ、このバカ!」
女の子が顔を上げると、その瞳には、光りが戻っていました。
女の子はきびすを返すと、ゆっくりと河原の遙か向こうに歩いて行きます。
ギコは女の子の後ろ姿を見送りました。
女の子が消えても、ずっと、ずっと見送っていました。
ギコの瞳から、大きな涙がポロリと流れ落ちました。
ギコが草原に戻ると、そこには、一人の大きな男の人が立っていました。
『悲しみや苦しみが、君を堕天使にしたけれど、もう、翼はいりませんね』
男の人がヒョイと手を挙げると、ギコの背中から翼が消えました。
次の日、ギコは誰よりも早く草原にやって来て、みんながやって来るのを待っていました。
やがて、遠い山並みに朝陽がのぼる頃、青空に大きな虹がかかり、沢山の動物たちがやって来ました。
ギコを見ると、みんな、訝しげな顔をしましたが、ギコは恥ずかしそうに、みんなの元に歩み寄って
「お、俺も仲間に入れてくんない?」
ギコは、ひとりぼっちが大嫌いになっていました。
その代わり、みんなの事が大好きになっていました。
だって、ギコは決して、ここに来る前もひとりぼっちではなかったからです。
雨が降っても冷たくなく、雪が降っても寒くなく、風が吹いてもつらくなく、
優しい日差しが降り注ぐ、いつも虹が空にかかる、そんな世界の、小さな物語。
作:暇人
2005/02/13(日) 03:55:42
雨が降っても冷たくなく、雪が降っても寒くなく、風が吹いてもつらくなく、
優しい日差しが降り注ぐ、そんな世界の小さな物語。
あるところに、ギコという猫がいました。
ギコは猫なのに真っ黒な翼がある、不思議な猫でした。
ギコは、いつも言葉が乱暴で、ぶっきらぼうで、一人ぼっちが好きだったので、
周りの動物たちは、言葉が乱暴で、ぶっきらぼうで、翼があるギコを仲間はずれにしていました。
ギコはひとりぼっちが好きな猫だったので、いつも、一人で遊んでいました。
なぜなら、ギコはここに来る前も、ずっとひとりぼっちだったからです。
寒い冬の日、暑い夏の夜。
どんなに雪が降っても、段ボールの中で寒さをしのぐしかありませんでした。
どんなに暑くて喉が渇いても、汚れたドブの水を飲むしかありませんでした。
お腹がすいても、具合が悪くなっても、誰も助けてくれなかったのです。
ギコはひとりぼっちが大好きになりました。
とても寂しいけれど、ひとりぼっちを大好きにならないと、苦しくて、寂しくてどうしようもなかったのです。
ある寒い冬の日、目が覚めると、ギコの背中には翼が生えていました。
そして、今まで寒くて凍えてしまいそうだったはずの体は、とても軽くなっていました。
でも、ひとりぼっちが大好きで、誰も信じる事ができなくなっていたギコは、
ここに来ても、ひとりぼっちでいようと思いました。
ある日、ギコがいつも遊んでいる草原から少し離れた河原を歩いていると、一人の人間の女の子が歩いてくるのが見えました。
その女の子には、見覚えがありました。
「あのガキは……」
ギコがここに来る少し前、たった一人だけ、ギコを抱き上げてくれた人がいた事を、ギコは思い出しました。
寒い夜、段ボールの中で震えていたギコの背中を、静かに撫でてくれた温かい小さな手。
顔をあげると、そこには、一人の女の子が立っていました。
かじかんだ体を抱き上げると、カバンから魚のフライを出して、ギコに食べされてくれた、女の子。
たった一度だけ出会って、ただ一人、ギコに優しくしてくれた女の子。
ぼんやりとした顔で、ゆっくりと、こちらに歩いてくる姿を見たギコは、あらん限りの声で叫びました。
「まだ、こっちに来ちゃいけねぇ!戻れ、このバカ!」
女の子が顔を上げると、その瞳には、光りが戻っていました。
女の子はきびすを返すと、ゆっくりと河原の遙か向こうに歩いて行きます。
ギコは女の子の後ろ姿を見送りました。
女の子が消えても、ずっと、ずっと見送っていました。
ギコの瞳から、大きな涙がポロリと流れ落ちました。
ギコが草原に戻ると、そこには、一人の大きな男の人が立っていました。
『悲しみや苦しみが、君を堕天使にしたけれど、もう、翼はいりませんね』
男の人がヒョイと手を挙げると、ギコの背中から翼が消えました。
次の日、ギコは誰よりも早く草原にやって来て、みんながやって来るのを待っていました。
やがて、遠い山並みに朝陽がのぼる頃、青空に大きな虹がかかり、沢山の動物たちがやって来ました。
ギコを見ると、みんな、訝しげな顔をしましたが、ギコは恥ずかしそうに、みんなの元に歩み寄って
「お、俺も仲間に入れてくんない?」
ギコは、ひとりぼっちが大嫌いになっていました。
その代わり、みんなの事が大好きになっていました。
だって、ギコは決して、ここに来る前もひとりぼっちではなかったからです。
雨が降っても冷たくなく、雪が降っても寒くなく、風が吹いてもつらくなく、
優しい日差しが降り注ぐ、いつも虹が空にかかる、そんな世界の、小さな物語。