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バレンタインのお話 (美怜)

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匿名ユーザー

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 2月14日、バレンタインデー。

 現実世界で、あらゆる恋が実を結び、あらゆる恋が枯れて行く日。



 そして、この世界も。



 寒空の下、街路樹が立ち並ぶ、レンガ敷きの街を歩く3匹の猫型AAたちがいた。
「あっはっは~、モテる男は辛いね~♪」
 3人のまんなかに立つ黄色い身体に黒目の猫型AAが、けらけらと笑う。
 両手には、ピンクなどといったパステルカラーの包装紙にくるまれた、ハート型の箱が目いっぱい詰まった紙袋がぶら下がっている。
 彼の両隣で、青と白の猫型AAが、前者は呆れた、後者は尊敬の眼差しを向けていた。
「すごいモナねぇ、さすがモララーモナ!」
 そう言いながら、白い身体に細目の猫型AAが朗らかに笑う。
「モナはレモナとガナーからしか貰ってないモナよ~。やっぱモララーはかっこいいから自然と女の子たちが集まるモナねぇ」
 間延びした口調で、白い猫型が語る。モララーと呼ばれた黄色い猫型AAが笑った。
「ははは、いや~ぁそれ程でもぉ~♪」
「何天狗になってんだ・・・馬鹿馬鹿しい」
 先ほどまで呆れた目つきで2人のやり取りを眺めていた青い身体に長い尻尾の猫型AAがようやく口を開いた。モララーがにやりと笑う。
「何言ってるのかなぁ~ギコ君~、君だって後でしぃちゃんにもらう気満々の癖して~」
「なっ・・・バカ、そんな訳ねぇだろ!!」
 モララーが冷やかすように言う。ギコと呼ばれた猫型AAが顔を真っ赤にして怒鳴った。
「大丈夫モナよ~、妹のガナーはともかく、レモナだって一応・・・認めたくないけど・・・モナの彼女みたいなモノなんだから、照れる事なんてないモナ」
「モっ、モナー!!モララーの加担なんかすんじゃねぇゴルァ!!」
 再び怒鳴るギコ。モナーと呼ばれた白い猫型が笑った。
「だって現に、顔真っ赤モナよ?」
「お前単純だからすぐ顔に出るんだよ。諦めて腹くくれ、なぁ?」
 モナーに続き、モララーが再び意地悪く言った。
「~・・・」
 ギコがふてくされた、その時。

「みんな、ここにいたんだ?」

 建物の影から、桃色の身体に長い尻尾、右目の下に赤い花形の刺青をいれた猫型AAが現れた。
「ようしぃちゃん、コイツに用事?」
「あ、こんにちはモララー君。今年もいっぱい貰ったんだね、凄いなァ・・・あ、そうそう」
 しぃと呼ばれた猫型AAが、モララーの両手にぶら下がるチョコの山をまじまじと見ながら感嘆の声を上げた。それから、思い出したように、自分が持っていた紙袋の中から、小さめの箱を2つ取り出した。桃色の包み紙に、それぞれ白と黄色のリボンが飾られた箱。
「モナー君モララー君、どうぞ♪」
 しぃは朗らかな笑顔でそう言うと、、白いほうをモナーに、黄色い方をモララーに差し出した。
「うわぁ、ありがとモナ、しぃちゃん!」
「はっは~嬉しいなぁ~、ありがとうねしぃちゃん!しっかし、また増えちまったな~♪」
 モナーは本当に嬉しそうに、満面の笑顔で。モララーは少し軽薄ながら、やはり顔全てで笑って。
 2人のお礼に笑顔で答えると、しぃはギコのほうを向くと、再び袋をあさり、やがて最後の1つらしい箱を取り出した。
「それから、ギコ君には、こっちね」
 モナーたちが受け取った者とは違い、こちらの箱はハート型。青いリボンで丁寧に飾り付けられていた。
「はい、どうぞ」
「・・・お、おう」
 差し出された包み紙を、ギコはぎこちない手つきで受け取り、
「・・・ど、どうしてもって言うなら、受け取ってやらないこともねぇぞ・・・ゴルァ」
 顔を沸騰させながら、ぶっきらぼうにこう言った。



 この世界がある限り、あり続ける行事。

 恋人たちの節目。

 貴方はどちらの側ですか?



~完~

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