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新年も虐殺するよ。 (th)

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匿名ユーザー

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「やいっ、モララー! 今日こそ君を虐殺するよ!」
 物凄く危険な香りが漂うこの言葉にも、もう慣れた。それで何度目だっつーの。
 振り向けば、そこにはやっぱりいつもの姿。ほとんど動かない無表情は相変わらずで、全身を茶色の衣装に包み…ん、なんだか普段と違うな。
「……なあ、お前が着てるそれは、犬か?」
「その通りさ。干支の力で虐殺するよ」
 そう言って、頭を覆う犬顔のフードに手をかける。威嚇のつもりなんだろうか、垂れた耳を引っ張って鳴きマネをしだした。すごく今更だけどこいつバカだ。
「そんなんで俺がやられるかっての」
 遠慮なく近寄って、有無を言わせずフードを剥ぎ取る。不満の塊みたいな目線攻撃を受けたけど無視。こんなので誰かが殺せると本気で信じてる部分があるからな、こいつ。しかも…
「着ぐるみで犬の力が身につくと思ってるのか、お前?」
「だ、だってこの間デパートの屋上で見かけたヒーローは着替えるだけで…」
 うう、頭が痛くなってきた。
「と、とにかく虐殺だよ!」
 あーあ、結局いつものパターンか。仕方ない、適当に付き合っとこう…
「えいっ」
 カプッ、という音がしたと思ったら、腕を噛まれた。正直痛くない。そういやこいつ、甘党だったもんな。もっと好き嫌いしないで色々食えっての。そんなんだからアゴの筋肉がこんなにフニャフニャで…って、何でこいつの食生活の心配なんかしてるんだろう。
「ねえ、そろそろ失血死する?」
「するわけないだろ。大体ちっとも痛くないし」
 いつも思うけどこいつとこんなことしてこんな会話してる自分って相当物好きに見えるんだろうなぁ。誰かに見られませんように。いや、祈ってもマスターに言いふらされたら意味無いか。あの店寂れてるからそんな心配も無いけど。
「じゃあ、どこだったら痛いのさ?」
「ん~、そりゃあ顔とかだったら痛いかもな…」
 言って、すぐに後悔した。こいつは人の言葉を真に受けすぎる。鼻や目に噛み付かれたらさすがに痛いぞ。やめろやめろやめろ。
「ふっふっふ、ついに弱点を喋ったね。モララー、覚悟!」

 そいつが俺の顔目がけて跳びかかってきて。
 俺が一歩下がって逃げようとしたらつまづいて。
 それで、押し倒されるような形になって。
 地面に頭をぶつけ、痛みに意識が遠のいた瞬間。
 口に、何か温かいものが触れる感触がした。



「……ラー、モララー、死んでるかい?」
 最後に見たのと現在の日の高さがだいぶ違う。しばらく気絶してたらしい。
 心配の表情なんてこれっぽっちも見せず、かなり失礼な意識確認をしてくるやつがすぐ側にいた。犬の着ぐるみはもう脱いでいる。
「なんだ、生きてた」
「なんだとはなんだ」
 いつも通りのやりとりだったけれど、ちょっとだけ違和感を感じた。
 何か、重要なことを忘れているような…
「モララー、その、えっと…」
「な、何だよ…」
 いきなり潤んだ目で見つめられて、心臓の鼓動が早くなるのが自分でも分かった。
 こういう展開って……
「…君が地面なんかに殺されなくて良かったよ。つ、次こそは僕が虐殺するんだからねっ」
 ちょっとでも甘い期待をした自分が馬鹿だった。文句の一つでも言ってやろうと思ったが、うなだれた隙に逃げられてしまった。去り際に少しだけ見えた横顔が、心なしか赤く染まっていたように見えたけれど…

「…………あーっ!思い出した――!」


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