2-200「終わらない痛み」


あれから一ヶ月。────胸の奥にある痛みに、気づかない振りをしていた。
あれから二ヶ月。────消えない痛みに、ただ堪え続けることしかできなかった。
あれから三ヶ月。────失くしただいじなものの価値に、気づかなかった自分を呪った。
あれから四ヶ月。────これは、何も解っていなかったあの頃の自分への罰なのだと悟った。
あれから五ヶ月。────全てを忘れて前を向いて生きる、そう心に思い込ませることにした。
あれから六ヶ月。────半年たっても、彼と、彼との思い出を振り返らない日は、ない。
あれから何ヶ月か後。──────苦しい。胸の奥が苦しい。助けて────────

あれから一年後。
久しぶりに再会した彼は、前とすこし違っていた。
揺り動かされて痛む心を必死に抑え、落ち着かせようとするあまり奥底にある想いとは全く別のことを喋った気がする。
でも、何よりも私の心をざわつかせたのは、あの時、あの場所で、私に、私にだけに見せると思っていたあの優しい目を、
一緒にいたあの人に向けていたこと。
もう、過去にも、未来にも彼の中に私の居場所はないのだ。

彼と一年振りに再会した、すこし後────────

もう痛みが消えることも、彼の傍にいることも許されなくていい。
あの時間、確かに私と彼はお互いがお互いの一番近くにいた。
そう信じられる何かが欲しい。
その為なら、他の何かを失っても私は構わない。


わたしは、終わらない痛みで壊れてしまった心にそう誓った。

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最終更新:2008年01月28日 08:52
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