44-99「―佐々木さんの消滅―ep.00 プロローグ」

作者から注意
1.長いです。
2.『涼宮ハルヒの分裂』が収束した後の世界を舞台にしています。
  『涼宮ハルヒの驚愕』が出てしまった後は読まない方が良いかもです。
3.長門さんの喋りを自然にするためだけに佐々木さんに下の名前を勝手につけています。
4.オリキャラは出ませんが、佐々×キョンが駄目な方、オリジナル設定が気になる方はNG推奨です



ep.00 プロローグ

(side kyon)
佐々木が俺に告白した。
ハルヒのわがままにつき合う非日常の日々は苦労しつつも楽しかったのだが、一年余りも振り回され続け、
長門や朝比奈さんや古泉達と一緒に尻拭いばかりやらされ、財布の中身共々いささか疲弊の色が濃かった
俺は、無意識に心を癒せる存在を求めていたのかもしれない。世界の分裂騒ぎの後で、自分の中の佐々木の
存在に改めて気付かされた俺は、何の躊躇いもなく佐々木の告白を受け入れていた。
いつも冷静沈着で小難しい言葉を操るペルソナが剥がれ落ち、頬を赤らめ、夢見る少女のような表情を
浮かべた佐々木が抱きついてきた時には、俺も正直ハルヒのことなんぞ頭の中から完全に欠落し、
公園という人目につく場所も弁えずに佐々木を思い切り抱きしめてしまった。

ゆえに、それはすぐにハルヒの知るところとなり、初めてのデートから帰った夜に、佐々木と俺は理不尽にも
ハルヒの閉鎖空間に閉じ込められることと相成ったわけだ。
「もしお二人が争う事態になったら双方とも無事である保証はありません」
古泉に予め警告を受けていたが、まさかハルヒがこんなことまでやらかすと思っていなかったのは、俺の
見通しが甘かったのに尽きるのだろう。

何とか潜り込んできた古泉は、世界をとって佐々木を見捨てるか、佐々木をとって今の世界を崩壊させるかの
選択肢しかないことを告げた。外の様子が分からない俺達にはそれが客観的な事実を告げたのか、ハルヒの
ために事実を捻じ曲げて伝えたのかは判断のしようが無かった。『機関』の連中がどんなに申し立てようが、
閉鎖空間のせいで世界が崩壊した事実は今まで無かったのだからな。

常々俺は思っていたのだが、佐々木は俺とは比較にならないほど頭が良いうえに、何かあると自分が一歩引く
ことで解決してしまおうという傾向がある。それが己の生死を分ける場面でも発揮されるとは、あいつらしいと
言えばらしいのだろうが、無論俺はそんなことを少しも望まず、閉鎖空間崩壊まで時間の許す限りハルヒと
佐々木の共存の途を探り続けていた。
しかし、佐々木はやはり佐々木であり、あの場面で俺の腕の中からすり抜けて自分が消える途を選んだのだ。
そして、俺は一人で閉鎖空間から帰ってきた。佐々木はその瞬間に残された最後の力を振り絞ってくれたに
違いない。
出会ってから別れるまでの記憶と、喩えようのない後悔の念を俺にだけ残して、佐々木は俺の目の前で消えた。





.

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年10月21日 23:28
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。