15-225「キョンと佐々木とハルヒの生活 2日目」

○月○日
今年大学を卒業して就職した妹が遊びに来た。
こいつは重度のかまいたがりで、昔猫を飼っていたときは猫が嫌がるほどの猫かわいがりをしていたものである。
そして、今ではその対象はうちの娘に代わっている。
「ハルにゃん~、おーっきくなったねえ。かわいい。」
そう言って家に来るやいなやハルヒに抱きつく。
「お前なぁ、ハルヒに抱きつく前に久しぶりに会った兄に挨拶とかはないのか。」
うれしそうに妹に飛びついて、頭をなでてもらっているハルヒを横目に見ながら文句を言う。
「あ、キョンくん。ひさしぶりー。」
はぁ、どいつもこいつも人のことを気安くキョンキョン言いやがって。
「あ、いらっしゃい。」
妹の気配を察して台所で晩飯を作っていたヨメが、エプロンで手を拭きながら出てきた。
「あ、お邪魔しています。おねえさん。」
「おい、ちょっとまて。なんであいつをおねえさんと呼んで、俺はキョンくんなんだ?普通はお兄さんだろ。」
「だって、キョンくんはずっとキョンくんって呼んでるから、いまさらお兄さんなんて呼べないもん。」
「あのなぁ。」
「それに、まだ佐々木さんなんて呼んでたら変じゃない?だって、結婚して苗字が変わったんだからさぁ。」
「それもそうだね。」
と、笑いながらヨメが相槌を打つ。
まったく、お前は―
自分をほっとかれたやりとりに我慢できなくなったのか、ハルヒは妹のスカートのすそを引っ張っている。
「早くテーブルにおいでよー。おばちゃん!」
「お、おばちゃん!?」
妹の目が丸くなって、素っ頓狂な声を上げる。
ふふふ、俺もやられてばかりではない。
「だって、お前はハルヒから見ればおばさんだろ。」
「だ、だからって、今年大学卒業したてのおねえさんを捕まえて…」
「まぁ、間違ってはいないけど、それはちょっとひどいんじゃないかな。」
ヨメが苦笑いしながらコメントを入れた。
「そうだ、そうだ。それにわたしがおばちゃんなら、キョンくんの年なんか殆ど三十路のもうおっさんおばちゃんじゃん!」
と、言った瞬間妹がしまったという顔でヨメのほうを見た。
そういえば、こいつと俺は同い年だったよな…
「…そろそろ夕ご飯にしようか。」
すみません、その笑顔がすごく怖いんですけど…
こうして俺と妹は借りてきた猫のようにおとなしく、ヨメ特製の晩飯をいただきましたとさ。

その日は自分で仕掛けた地雷を思いっきり自分で踏んでしまった夜だった…

『キョンと佐々木とハルヒの生活 2日目』

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最終更新:2007年08月17日 23:04
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