「おやキョン。今日も早いじゃないか」
「おう、おはよう」
「うん、おはよう」
まあお前の方が早いのは変わらん訳だが。
悪いな。どうも。
「構わないよ。代わりに夕食の支度はキミが分担してるだろう?」
朝と弁当の方が色々と大変だろ。
「くっくっく。ならばもう一足早く起きることだね。僕もキミに揺り起こされる日を楽しみにしているよ」
「へいへい前向きに善処させて頂きますよ」
「おやおや諦観はいけないな」
「お前が言うか」
昔、僕は全てを諦めている、とか言った奴の台詞かよ。
「おや覚えていてくれたかい?」
なんとなくな。なんとなく。
「ふふ、つまりあの時と今の僕の違いはそういう事なのさ」
「そうかい」
ホント楽しそうだなお前は。
「それより最近どうしたんだい? 朝が早いようだが」
あー、どうも晩と朝で寒暖の差がなあ。
「夜はまださみーのにさ、朝は妙に布団っつーか毛布が暑くてなあ」
「ふむ、なるほど。毛布が暑くて目覚める訳か」
何か受信したのか偽悪的に笑う。
「では毛布ではなく僕が添い寝して「あーあー聞こえん」」
「心外だな。画期的な解決手段だと思ったんだがね?」
「思ってる顔かそれが」
「思ってる顔さ。なんならもっと近くから」
いいから飯だ飯!
「くく、そんなにがっついてくれるとは嬉しいねえ」
「何がだ」
「聞きたいかい?」
OK、降参だ。お前に口で勝てる気はしねえよ。
「ふふ、たまにはキミの理性、脳の上部構造で僕を圧倒してくれたまえよ親友」
うるせえ。あんまりからかうと脳の下部構造に任せるぞ親友。
「ほう、キミにも本能があったのかい?」
「あるに決まってるだろ」
「なら楽しみにしてるよ」
何をだ何を。
「それよりキョン、せっかく早起きしたというのにもうこんな時間だ」
げ。せっかく早く起きたってのに何つう無駄な時間を。
「ふくく、無駄という事はないよ」
「おいおい、どこに有益さがあったよ」
「決まってるじゃないか」
悪戯でもするように、俺の顔を覗きこみ、
「キミとこうして交わす会話、その全てがそうなのさ」
にっこりと、春の日差しのように笑った。
「……あとねキョン。添い寝は寒くなってから再度検討しよう」
「色々台無しだぞ親友」
最終更新:2012年04月19日 00:56