66-332 ルームシェア佐々木さんと毛布

「おやキョン。今日も早いじゃないか」
「おう、おはよう」
「うん、おはよう」
 まあお前の方が早いのは変わらん訳だが。
 悪いな。どうも。

「構わないよ。代わりに夕食の支度はキミが分担してるだろう?」
 朝と弁当の方が色々と大変だろ。
「くっくっく。ならばもう一足早く起きることだね。僕もキミに揺り起こされる日を楽しみにしているよ」
「へいへい前向きに善処させて頂きますよ」

「おやおや諦観はいけないな」
「お前が言うか」
 昔、僕は全てを諦めている、とか言った奴の台詞かよ。
「おや覚えていてくれたかい?」
 なんとなくな。なんとなく。
「ふふ、つまりあの時と今の僕の違いはそういう事なのさ」
「そうかい」
 ホント楽しそうだなお前は。

「それより最近どうしたんだい? 朝が早いようだが」
 あー、どうも晩と朝で寒暖の差がなあ。
「夜はまださみーのにさ、朝は妙に布団っつーか毛布が暑くてなあ」
「ふむ、なるほど。毛布が暑くて目覚める訳か」
 何か受信したのか偽悪的に笑う。

「では毛布ではなく僕が添い寝して「あーあー聞こえん」」

「心外だな。画期的な解決手段だと思ったんだがね?」
「思ってる顔かそれが」
「思ってる顔さ。なんならもっと近くから」
 いいから飯だ飯!
「くく、そんなにがっついてくれるとは嬉しいねえ」
「何がだ」
「聞きたいかい?」
 OK、降参だ。お前に口で勝てる気はしねえよ。

「ふふ、たまにはキミの理性、脳の上部構造で僕を圧倒してくれたまえよ親友」
 うるせえ。あんまりからかうと脳の下部構造に任せるぞ親友。
「ほう、キミにも本能があったのかい?」
「あるに決まってるだろ」
「なら楽しみにしてるよ」
 何をだ何を。

「それよりキョン、せっかく早起きしたというのにもうこんな時間だ」
 げ。せっかく早く起きたってのに何つう無駄な時間を。
「ふくく、無駄という事はないよ」
「おいおい、どこに有益さがあったよ」
「決まってるじゃないか」
 悪戯でもするように、俺の顔を覗きこみ、

「キミとこうして交わす会話、その全てがそうなのさ」
 にっこりと、春の日差しのように笑った。


「……あとねキョン。添い寝は寒くなってから再度検討しよう」
「色々台無しだぞ親友」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年04月19日 00:56
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。