67-116 Rainy Day …… What?

「佐々木さん、それってどのくらいの確率なのですか?」
「どのくらいの確率って」
 それはある日、喫茶店で二人で昔話をした時の事。
 一通り語り終えた僕へ、橘さんがよくわからない事を言い出した。

 あの春先の事件から結構して、僕はそれなりに橘さんと打ち解けあい、それなりに昔話などをするようになっていた。
 彼女は「組織」や「機関」の興味深い逸話の代価に、僕の今昔の話などを所望したからね。
 四年前からずっと監視していたというから珍しい話でもないだろうと思ったが
 僕の視点というものに興味があったのかもしれない。
 その日に語ったのは

『岡本さんのならまだしもさ』
 我ながら、ホントにみっともない事を言ったあの事件。
 しとどふる雨を眺め、あの雨の日に、今にして思えば分水嶺だった日に、そう、僕が進路を確定した日に思いを馳せた。
 すると橘さんは「佐々木さんらしくないですね」と首を傾げ、やがて
「それってどのくらいの確率なのですか?」
 そう思案顔をして見せたのだ。

 確率?
 こちらも首を傾げて見せると、橘さんは補足を始めた。
 そう、確かに「進路の確定に迷った」のはそう長い期間じゃない。
 丁度その時に限って、折りよくあんな事件に出くわす確率なんてなかなかない。……そんな考え方もあるかもしれないけれど。

「それだけじゃないですよ。佐々木さんが傘も用意してなかったなんて」
 らしくないなんて言われても困るな。途中、キョンの家に寄った際でさえ空は晴れ渡っていたのだしね。
「けど女心と秋の空というでしょ? 秋空なんかそんなものよ」
「それはそうかもしれないですけれど」
 九月の事件だもの。

 しかし橘さんは食い下がる。
 曰く、僕とキョンが学校から二人で塾に向かうのは一週間にたったの二日。
 学校から塾までは直線距離にしておおよそ十五分、つまりキョンの家から塾まではもっと短い。
 しかもその日、僕は初めて「妹さん」と顔を付き合わせたものだから、少しばかり話し込んでしまった。
 天候の急変にもおよそ数分、僕らが「濡れ鼠になり、二人きりになる」なんて、偶然の積み重ねが起きないと発生しないのでは、と。

 たったの十五分足らず。
 ほんの少しタイミングがズレるだけで、キョンの家か、或いは塾に間に合うかいずれかにずれ込んでいた。
 それも「進路を確定する為に迷った」ほんの数日に、週に二日しかない日に起きた事件。
 ほんの少しの違いだけで、僕らのありようは全く違っていたのではないか、と。

「神秘主義者みたいな事言うのね」
「いえ、確かに神秘主義者といえばそうですけれど」
 そういえば彼女は元々信奉者のようなものだと自分で言っていた。
 なら偶然に意味を持たせたがるのも仕方ないか。そもそも花の青春時代、普通なら占いだのにハマっていてもおかしくない年頃だし。

「そうですね。あたし達は思春期ですよね?」
 何かしら橘さん。というか橘さんにそういう話のつなげ方は似合わないわよ?
 そう茶々を入れる私をスルーし、再び橘さんは没頭する。

 学校が終わるまで晴れていた事には、二つ意味があったのではないかという。
 一つはもちろん雨具を用意していない事、もう一つは。
「だって晴れじゃなきゃ、佐々木さんがメゲる要素が小さくなっちゃうじゃないですか」
 なにかしら橘さん。メゲるって人聞きの悪い。

『岡本さんのならまだしもさ』
 古い記憶のフラッシュバックを聞き流す。

「同世代の割に発育の良い娘なんて、クラスに一人二人はいるものでしょ?」
「ええ、成長期なのですし」
 けれどもと続ける。

 その日は最後のプール授業だった。
 授業形態は教師によるだろうけれども、僕とキョンが二人、いや三人で語り合えるような自由時間がもてたのはたまたまの事だったし
 だから、キョンが「女性を見る目線」で岡本さんを見ていたことを、僕がじっくりと観察できてしまったのも
 それはたまたまのことだったという他ない。

『おわっ!』
 同日に岡本さんに至近距離まで接近された時の、キョンの間の抜けた声を今でも思い出せる。
 彼女のような「女性」を感じさせる少女がすぐ傍にいたのも、その反応を傍らで見ていたのも、たまたまのことなのさ。
 だからこの話はもう終わりにしよう。

「でも彼女が居なければ、『彼だって健全な少年なんだ』って意識する事もありませんでしたよね。
 佐々木さんへの目線が『そうじゃない』って、きっちり判断できたのは、他でもないその日にプール授業があったからですよね?」
 橘さんはしつこく私に切り込んでくる。
 忘れるべき記憶に切り込んでくる。

「そうそう、佐々木さんの中学の制服も結構珍しいですよね」
 そうかと思ったら矛先が変わった。
「サスペンダー付きのスカートでしたか?」
 いや、変わっていない。
「サスペンダーって上半身を締め付けますから、余計に身体のラインが現れちゃいますよね?」
 岡本さん、彼女は女子高に行ったと聞いているけれど、僕もそうしたほうがよかったのかもしれないね。
 そうすれば少なくともここまで心を乱されることだけはなかったろうから。


『僕の貧相な胸部なんてマジマジと見たところで益にはならないだろう? 岡本さんのならまだしもさ
 まったく、本当にやれやれだよ。この雨に対しても、僕自身にもね』

 僕は常に理性的にありたい。
 そう「理性的にあろう」としている人間だ。
 であるなら、情動的な反応を返してしまったあの雨の日の事件は、僕にとってあらゆる意味で恥じるべき事件なんだ。
 そうじゃないか。他でもないその日にキョンにそう語り聞かせたばっかりだったじゃないか。

『佐々木、お前その理屈っぽい喋りを改めたらさぞかしモテるだろうにな』
『キョン、恋愛なんて精神病さ。そんなものに浮かされるのではなく、僕は理性的にありたいと思っている』
 他でもないその日にキョンに言って聞かせたばかりだったんだ。恋愛なんて精神病だと。
 僕には恋愛なんていらないなんて語っていたんだ。
 得意げに、長広舌を振るってね。

 けれど本当はもっとシンプルな言葉だったんだ。
 最近、国木田くんと再会した時に改めて実感させられたことだが、どうも僕は言葉が無駄に冗長になりがちなようでね。
 あいにく当時の国木田くんは隣のクラスだったから言うだけ栓ないことではあるが、もし彼があの場に居たらあっさり翻訳してくれただろう。

『今は楽しくないかい? 僕はモテる為に変わる必要なんてないんだ。だって今、僕はとても幸せなのだからね』

 本当はそれだけ言えば済むのに、ついムキになって語ってしまったんだって事をね。それくらいに「今」も「今の僕」も大事だったんだ。
 なのに「キョンに女と見られていない」って解ったとき、なんで衝撃を受けなきゃいけなかったんだ?
 ん? ああ解ってるよ、その意味くらい解ってる、解ってるんだよ。
 僕は僕でありたい、今のままでいいんだって言い続けた。
 だから進路だって隔てたんだろ。

 ああそうとも。僕はキョンが怖いんだ。
 素直になってしまいそうな私が、変わってしまいそうな「僕」が怖いんだ。

 考えちゃいけないんだよ。
 そもそも週にたった二日しか起き得ない事件だったなんて。
 あの日、偶然の積み重ねが起きなければ、もし少しでもタイミングがズレていたらなんて。
 あの頃、僕がもっと身体的に成長していたなら、キョンに嫌でも女と意識させるような、そんな肉体だったらなんて。
 あの日、やれやれなんて言って思考を止めなければどうなっていたろうか、なんて。
 もっと素直になっていたら、なんて。

 一つでも違っていたら、僕は、僕らはどうしていた?

 考えちゃ、いけない。
 ほんの少しのif、都合のよい「もしも」を思い返してしまうなんて、そんなのは決して僕の思考にあるべきじゃないんだ。
 そんな虫のいいことなんて考えちゃいけないんだ。
 それは「佐々木」らしくない。


「雨と言えば、九曜さんがいつかビニール傘を差してきた事があったね。
 あれはどうやって買ったのかしら。彼女がコンビニで物を買うなんて想像もつかないけれど」
「ええ、あれは不思議でしたね」
「どうやってコミュニケーションをとったのかしら」
 橘さんは済まし顔でコーヒーを啜る。

「そうですよね。あの日も雨が降ったんですよね」
 あの日、キョンと三度目の再会、橘さん・藤原くん・九曜さんで構成されたSOS団もどきの初会合の日。
 あの日も雨が降ったから、九曜さんがなんとビニール傘を……
「そうです。降水確率はたった10%だったのに」
 じっと橘さんは手元のコーヒーを見つめている。
「αルートじゃ晴れていたのに」

 あの日の前日、世界は二つに分裂したという。
 あの二週間、僕らの世界は知らず「α、β」の二つに分裂していて、僕らはβメインで過ごしていたのだと。
 二つの世界の記憶は混ざる事無く共存し、意識することで思い出すことが出来るのだ、と。
 ま、「意識する」事を考えられる者自体はごく限られているだろうけれどね。
 あの事件を知っていなければ、意識することすらないのだから。
 認識しなければ存在しないも同然なのだ。

 そしてβルートでは雨が降った。
 降水確率は10%しかなく、実際αルートではさんさんと日が差したというのに。
 僕らが会合を開くと決めていた日、まるで警告でもするかのように、たった10%の降水確率を突いて雨が降った。
「くっくっく、想像力豊かなのだね橘さんは」
「そうですかね?」
 橘さんはじっと見つめてくる。

「いやいや、けなしている訳じゃないよ。想像力は人間が持っている大事な能力だからね」
 僕は、いや僕らは自分自身の一つの視点しか持てない。だから物事の真実を全て観測なんてできない。
 同様に他人の本音も言動から想像する他ないんだ。

 僕らは誰もが「僕」という一人称で描かれた物語の中を生きている。
 だから他の人の内面、他人の描く物語を察するには、その他人になりきって考えるのが一番だ。想像力が大切なのさ。
 テストで「作者は何と言いたかったのでしょうか?」なんて設問がよくあるだろう?
 本質的にはアレと同じなんだよ。

 よく教訓として「多角的な視点を持て」と言われる訳だね。だって人は一つの視点しか持てないのだから。
 擬似的に他人になり「自分が彼ならどう考える?」「自分がされたくない事は、他人にしてはならない」などと推察する。
 想像力を駆使し、視点を変える。それは人間に与えられた大いなる観測能力なんだ。
 だから橘さん、想像力を駆使するのは恥ずべきことではない。けれど
「そうやって他人を貶めようとするのはよした方がいい」

 僕も想像力を駆使したから解るよ。キミはこう言いたいのだろう?
『涼宮さんが力を使ったのではないですか?』と。

 けどもう少し想像力を働かせてみたまえ。
 笑っちゃうよ。涼宮さんは当時キョンの事を知らなかったはずだろう?
 それにそんな細やかな介入どころか、当時は願望実現としてすら「力」をまともに使えなかったはずじゃないのかい?
 中学時代の涼宮さんは苦労を重ねてきたはずだろう?

 それに彼女は外観はどうあれ、内心は常識的で高潔な女性だよ。
 今回殆ど接点はなかったが、小学校の頃の彼女ときっと変わっていないはずさ。僕はそう思っている。

「あたしは」
 橘さんは重たげに口を開く。
「あたしは今回の事件で涼宮さんの力を、そして彼の好意の行く先を知りました。
 けど他にも知ったことがあるんです。知った今だから、余計に疑問になった事があるのです」
 僕は視線だけで続きを促す。
「藤原さんの事です」

 今回の事件の中心の一つ、未来人の藤原くん。
 彼は「力」を使うことで『自分の姉が生き残る世界』を確定させようとした。
 それは僕らから見れば未来の事だ。未来、そう未来を変えるという事は、つらなる過去もまた変わるという事だ。
『この時間平面から未来への時空連続体を一気に書き換えるんだ。途中の歴史などどうなっても構わない。
 時間平面が僕らの未来で確定したならば、あとで顧みる余裕もできるさ』
 そう、彼は語ったという。そして

『そして涼宮ハルヒはとっくにそれをやっていたんだ。僕たちがここに来る、はるか前に……』
 では「それ」とは何なのか。それを推測する鍵。
 それはやはり藤原くんの言動にある。

『お前たちが根城にしている、しょぼくれた小部屋にだ』
『あそこが全ての元凶なんだ、未来への鍵、いや楔というべきかもしれない』
『そこにはありとあらゆる可能性が存在し、同時にまた、ありとあらゆる可能性への進展を妨げている』
 そうとも。あの場所こそ、キョンが関わり『SOS団がSOS団として存在する為の』あらゆるイベントを引き起こしてきた場所なのだ。
 ……待て、おかしいぞ、なんでそんな事が僕に解る?

「解ってしまうから仕方がないのです」
 僕の違和感を察したのか、困ったように橘さんは言う。
「きっとそんなものなんじゃないのですか? それに佐々木さんはあの事件で既にその感覚を味わっているはずですよ」
「一体何を言っているんだい?」
「だってそうでしょう?」
 苦笑する。
「佐々木さん。あなたが知っているのは、小学校時代と、あの春先、たった二回出会っただけの涼宮ハルヒでしかありません。
 なのに何故『今の』涼宮ハルヒをそこまで信頼し、彼女の好意を察することが出来たのですか?」
 キョンを介して察した、というだけでは納得できない。
 そう橘さんの目は言っていた。

「僕は」
「けどそれは今回の件とはまた違う話でしょう」
 こほん、と吐息を吐く。その音が知らずヒートアップしていた心を引き戻した。
「……私は」
「あくまで想像に過ぎませんけれど」
 遮るように前置きし、橘さんは自分の想像を口にする。

 四年前、涼宮さんは自らの力を使い『SOS団が存在する』という未来だけを確定させたのではないのか、と。
 藤原くんが『お姉さんが生きている』未来だけを確定させようとしたように。

 するとどうなる?
 僕たちの歴史は「SOS団の誕生」を経由してしか進まない。あの「部室」を経由しなければ、あらゆる可能性は展開しない事になる。
 いわば「SOS団」は未来への鍵であり、ありとあらゆる可能性が存在する場所なのだ。
 そして同時に、過去と未来をつなぐ永久不滅の「くさび」であり
 あらゆる可能性を縛り、停滞させる存在と言えるのだ。

 僕らの世界は「SOS団が誕生する」という歴史を経由しなければ存在し得ない。
 例えばTPDDというタイムマシンは、SOS団誕生を経由しなければ、涼宮さんが基礎理論を「文芸誌」で生まなければ存在し得ない。
 キョンと朝比奈さんが出会い、涼宮さんが家庭教師をしている少年、という接点がなければ存在し得ない。
 藤原くん、朝比奈みくる、どちらの未来もSOS団を経由しなければ存在しない。

 逆にSOS団もまた、朝比奈みくるが「七夕事件」で涼宮ハルヒを北高へ導かなければ発生し得ない。
 けれど未来がSOS団に縛られているからこそ朝比奈みくるの未来は存在するのだ。
 未来人はどうあろうと動かざるを得ない。
 なんてパラドックスだろう。

『途中の歴史などどうなっても構わない。時間平面が僕らの未来で確定したならば、あとで顧みる余裕もできるさ』
 ああそうだ。それこそ朝比奈みくるが奔走している理由なのではないのか?
 涼宮さんが歴史を確定させたからこそ、未来人達は奔走している?
 TPDDの空ける『穴』だけではなかったのかもしれない?

「SOS団が存在する事だけが確定しているというのなら、その『途中の歴史』はどうなります?」
 涼宮さんの人格など関係無い、彼女がただ無意識に願っただけなら関係ないのだ。
 どんな偶然が積み重なったって決して涼宮さんには関係ないのだ。
 全てはただつじつまが合わせられただけなのだから。

「けれどそんなの妄想よ」

「全ては私が選んできたことなのよ」
 あの雨の日が、インパクトのある事件だった事は認めるよ。けれど
「それでも、全ては自分で選んできた事よ」
「そうです。そうかもしれません」
「かもしれない、じゃない」
 断言する。
「私は選んできた」
 支払いを済ませて喫茶店を出ると、とっくに宵闇を越え、まばらな星が瞬いていた。

 僕が一時的に得た記憶は、あくまで僕と同じ「器」である涼宮さんと「鍵」であるキョンのものでしかない。
 彼らの視点で得た記憶はあくまで彼らが知りえる記憶でしかない。
 そこに全てが記されているわけではない。
 だから、その先は想像でしかない。
 妄想電波でしかない。

「私は私の過去を信じる。間違いなんてなかったってね」
「けれど佐々木さん、あなたの判断には一つだけミスがあったと断言できます」
 自分の支払いを済ませて小走りに僕を追いかけながら、橘さんが聞き捨てならない事を言う。
 なんだい? まだ何か言うつもりなのかい?
「だってそうじゃないですか」

「佐々木さんは、彼に女と見られてなかったって感じたのでしょ?」
『岡本さんのならまだしもさ』
 古い記憶のフラッシュバックを聞き流す。
「けれど彼は言ったのでしょう?」
 くすくす笑って口真似する。

「『佐々木、お前その理屈っぽい喋りを改めたらさぞかしモテるだろうに』ってね」
「それが一体どうしたのよ。私は見知らぬ誰かにモテる為になんか変わりたくなんかない」
「いえ、だってコレ、佐々木さんを美人だって言ってるのと同意ですよ?」
 思考が一旦硬直する。

「佐々木さんって自分を低評価する事が多いですよね。もしかして『褒められた』事があんまりないんじゃないですか?」
「それとこれとは別問題、私はただ自分を客観的に評価してるだけ」
「それにもう一つ」
 とっとっと、と軽く追い越してくるりと廻る。

「国木田さんってご存知ですよね? 彼、好きな女性がいるらしいですよ?」
「あら。あの飄々とした人がね」
 意外と言えば意外だ。
「それを彼に相談したら、彼、すっごく応援してたそうです」
 橘さんはまたまたうふふと笑って見せた。

「佐々木さん、あなたが「告白された」って伝えた時とは、随分反応が違うと思いません?」
「ストーカーは感心しないわよ橘さん」
 冷たく言ってやってもまだ笑っている。
「佐々木さんだって、彼の全部を知ってる訳じゃないんですよ」
「当たり前じゃない」
「それにね」

「佐々木さんは涼宮さんは普通で常識的な感性を持っていて、彼を能力で縛ったりするような卑怯者じゃないって信じているんでしょう?」
「そうよ。当たり前じゃないの」
 当たり前の言葉を返すと、困った人はニヤニヤ笑いを返してきた。
「そう、あなたも彼も彼女も、誰もが本当は普通で常識的な、ただただ普通に恋愛をしているだけの一般人なのだと言うのなら
 彼の心だって不変じゃないってことじゃないでしょうか」

「あなたも彼らも、誰もが普通であるなら、いくらでもチャンスがあるって事でしょう?」
 どうだとばかりに笑う彼女に、私は溜息をついて言い返した。
 頬が少しだけ緩んでいる事を何となく自覚しながら。

「当たり前じゃない」
 意識的に片頬を歪めシニカルに笑み返す。
 そうさ、それが僕らしい、「佐々木」らしい笑みのはずだからね。
)終わり

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最終更新:2012年06月02日 01:26
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