70-542『ふらくら時間2』

SOS団の花見。場所取りに先日の夜から行かされたのだが……暇潰しに佐々木にメールを送っていると、佐々木が差し入れを持って来てくれるという。
持つべきは親友だな、と思いつつ佐々木を待っているわけだが……
夜桜というのもなかなか綺麗なものだな。
長門が差し入れてくれた毛布にくるまり、佐々木を待つ。考えてみたら、夜にあいつと会うのは久々だな。
暫く待っていると、佐々木がやって来た。
「待たせたかな?」
「いや、助かったぜ親友。」
佐々木の差し入れは、ホットパンチにサンドイッチ。冷えきった体には、暖かいお酒というのもありだな。
因みにこのホットパンチ。これは佐々木の母の案らしい。
ワインは匂い付け程度にし、アルコール度数はかなり低いらしい。
「ヨーロッパ風に纏めてみたよ。サンドイッチに工夫してみたんだ。」
「イギリスに敬意を払ったのか?」
俺の軽口に佐々木が笑う。
「くっくっ。その通り。薄切りのハムにレタス、全粒粉入りのパン。イギリス式のサンドイッチだよ。」
ほう。お前が料理とは意外な。
「案外食い道楽でね。安価に食生活に彩りを加えるのは、手作りと知識さ。腕は作っていれば黙っていてもついてくる。」
佐々木は、サンドイッチの端を開ける。そこには何もないパンのみの空間。
「たまにこんな悲しい憂き目にも遭うがね。」
二人で笑う。たまにはこんなのも悪くないな。

「夜桜も乙なものだが、春とはいえ、夜はさすがに寒いね。」
佐々木が身震いする。
「毛布に入るか?」
冗談で言った言葉なのだが……
「ではお言葉に甘えて。」
と来るとは思わなかった。
「…………」
「…………」
一気に無言になっちまう……い、いや、暖かくて甘い匂いがだな。吐息を感じる位に近い距離と、一枚の毛布にくるまっている状況は……
場が持たん。とりあえずはホットパンチを飲もう。
「ぼ、僕も貰おう。」
佐々木がホットパンチを注ぐ。シナモンの香りが桜の香りと混じり……佐々木のコロンの香りと混じり……よ、余計に場が持たん!
夜桜が散る。……佐々木の暖かさと毛布の暖かさが混じり、とてもではないが……こ、これでは理性がだな……!
……佐々木が俺にもたれかかる。こ、これは、も、もうたまりません。
「…………」
佐々木の肩を抱き、俺を振り向かせる。そこには…………
「すう……すう……」
安らかな寝息を立てる佐々木が……。こ、こいつ、アルコールの耐性ゼロなのかよ……!
佐々木の携帯から橘に連絡し、佐々木を迎えに来てもらう。迎えに来た橘は、非好意的な視線を投げ掛けながら言った。
「……根性なし。パッと舞って、ガッとやって、チュッと吸って、はああああああああああん!な状態じゃないですか。」
「さっさと帰れ!」
俺は紳士なんだ!同意ない状態でなど、やるものか!……だが、千載一遇の機会を逃した気もするのは何故だ?!

翌日の花見。ハルヒが佐々木の匂いがする毛布に勘づき、散々な目に遭わされたのは、また別の話だ。

『ふらくら時間~♪』

END

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最終更新:2013年06月02日 03:06
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