71-874「俺の後ろに○○○はいない。いるのは・・・・・・」

 「キョン、そろそろ起きないか」
 すこしまどろみがちだった俺の背中を、誰かがつつく。
 「あと少しで今学期の授業は終わる。最後の時間ぐらい起きているフリをするんだ」
 「へいへい」

 「最近ねむそうだね。深夜放送でも聞いているのかい?」
 「いや、ほら、最近熱帯夜が続くだろ?眠りが浅くてな。それとほら、文芸部の部誌とライトノベル
新人賞に応募する作品を同時に書いているからな」
 「そういえば、長門さんに言われていたんだっけ」
 「お前の担当するミステリ-作品が、どんなものになるか、楽しみだな」
 「君の書く恋愛小説も興味あるよ」
 俺は少し苦笑いを浮かべた。

 「ところでキョン、明日から夏休みだが、水曜日と土曜日は塾に行くとして、月曜日は君の家で勉強
だからね」
 「ああ。俺も助かるよ。お前と勉強するとわかりやすいし、とてもはかどるよ。期末テストが良かったのも
お前のおかげだしな。お礼に今度飯をおごるよ」
 「それだけじゃなく、買い物にも付き合ってほしいな。君に僕の着るものを選んで欲しい」
 「もちろん、それぐらい喜んでさせてもらうよ」

 今、俺の隣にいるのは佐々木と言って、中学時代からの俺の親友。
 頭が良くて、美人で性格も良く、一緒にいて楽しい女の子である。
 高校は同じ北高に進学して(佐々木はもっと頭の良さそうな進学校にもいけたのだが、なぜか北高にきた)、
、同じクラスで、佐々木が窓側の一番後ろの席、俺がその前の席だ。
 俺と佐々木はクラブも一緒で、文芸部という弱小クラブに入っている。俺が委員をやっている図書委員会の
委員、長門有希に頼まれて、文芸部に入ったのだが、結構面白い。そこで自作の小説を書いたりしているのだが、
、今度話が膨らんで、ライトノベル新人賞に応募してみることにしたのだ。
 「で、どんな話なんだい?」
 平凡な高校生が、少し変わった思考を持つ、我が道を行く女の子に振り回されながら、学校で起こる不可思議な
事件に関わっていく話である。
 「興味深いね。そのヒロインは君の理想の女の子かい?髪型はポニーテールなんだろう?」
 いや、どちらかといえば、少し願い下げをしたいな。最初は面白いかもしれんが、後で堪忍袋の尾が切れそうに
なるだろうな(髪型がポニーテールなのはあたっているけど)。
 「lきみの理想とやらも少し気になるけど、まあ、どんな作品ができるか楽しみだよ。うまくいけば、新人賞を取
れるかも」
 そうだな。その時は賞金でどこか旅行に行こうぜ。
 「君と二人で?それとも文芸部のみんなでかい?」
 その問に答えに窮していると、佐々木がおかしそうにくっくっくっと笑った。
 「僕は君と二人がいいんだけどね」

 やれやれ、俺も案外こいつに振り回されているのかな。でも、佐々木にふりまわされるならいいか。

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最終更新:2013年10月20日 17:13
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