72-78『白昼夢』

最近、近所の子どもたちの間では、魔法少女ごっこが流行っている。
「(子どもは無邪気でいいね。)」
無邪気に主人公となり、日々の平和を守るのだろう。ふと、そんな時…聞き覚えのある声が、路地裏から響く。
「街の平和を乱す人にはおしおきなんだよ~」
あの声は彼の妹なんだろうか?路地裏に走り、路地裏を見るとそこには彼の妹と、その友人らしい女の子が、不良と相対していた。
いけない、警察に…と思っていたら、声が響く。
「リリカル・トカレフ・キルゼムオール♪」
…な、何?前者はともかく、後者の凄く怖い単語は?!そしてそこには、商品化を前提としたかのようなギトギトデザインの魔法少女がいた。
「プリンセス…飛び付き式クロスヒールホールド~♪」
…腱の千切れる音が響く。目を疑っていると、更なる衝撃的な映像が目に飛び込んで来た。
「まず、お前から血祭りに上げてやる…」
物騒な言葉を呟きそこに立っていたのは……筋骨隆々の女の子だった。不良達も逃げたらいいのに…。あ、一人逃げ……
「何処へ…行くんだぁ?」
いつの間にか回り込まれていたようだ。ありとあらゆる絶望が入り混じったこの空間。最早死亡フラグどころの騒ぎではない。ボッコボコにされた不良達が、地面に転がる。
「またそんな事してたら、お仕置きだからねー♪」
「不良どもか……。自分達の車に連れ込みたいと、車を見ていたなぁ……。」
車?あのワンボックスカーかい?
「いつか…連れ込めるといいなぁ…」
ポーピー、という音がし、何か蛍光色の光が筋骨隆々の女の子から出る。
「あ…車…」
デデーン、という音と共に車が消える……
狂ったかのような二人の哄笑が路地裏に響き、不良達の怨嗟の視線が二人を貫く……
「あ……悪魔たん……」
不良達の呟きが全てを示している。エンタメ症候群にしても行き過ぎだ!それに我が街の治安はこんなに悪かったのか?あんな肩パッドにモヒカンのヒャッハー達なんて、実物は生まれて初めて見たよ!
…暫く唖然としていたら、キョンに声をかけられた。
「何してんだ?佐々木。」
「あ、キョン!大変だよ!そこの路地裏で…」
私はキョンの手を引いて路地裏に入る。そこには…
「何もないんだが?」
あ、あれ?さっきまで血塗れのヒャッハー達が倒れ、車が爆破されていたはず……
「白昼夢でも見たんじゃないか?ったく。」
白昼夢、だよね。あんな光景が現実にあるわけないじゃないか。全く、僕とした事が疲れていたみたいだね、キョン。
「ったく。…頭の回復に喫茶店でも行くか?お前の好きなケーキでも食べたら、少しは落ち着くだろう。」
「キミの奢りかい?」
「割り勘だ、アホ。」
「くっくっ。」

ーーーー
同時刻、長門家。
「ーー魔法少女ーー体験セットーー」
「……感想を……」
二体のインターフェースが、妹とミヨキチに話し掛けていた。
「仮想空間での超常現象……これは楽しかった?」
「楽しかったというよりは、怖かったよね。ミヨちゃん。」
「私、あんなキャラじゃないのに…」
二人が笑う。朝倉は、四人にお茶を出しながら言った。
「仮想空間での願望実現化なんだから、橘さんや、谷口くんが実験台でも良かったんじゃないの?」
朝倉の言葉に、二体のインターフェースが首を振る。
「ーー朝倉ーー涼子ーー」
「ここは、全年齢対象。」

END

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最終更新:2013年10月20日 17:28
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