15-866「編集者佐々木外伝」

下書きというかプロットみたいなものを佐々木に送ったら、何の返事もなく本人がうちにやってきた。
文字通り、跳んでくる勢いで。
「・・・キョン」
俺をさして広くもないリビングに正座させ、佐々木の奴は苦虫を噛み潰したような表情でうろうろ
している。
「なあ、佐々木、座ったらどうだ?」
「・・・キョン、君ってやつは・・・」
何度か俺がが声をかけても、独り言のようにつぶやいて、リビングの徘徊を続けている。
だからといって、俺が正座を解いたり立ち上がろうとすると、あまり見たこと無いような険しい表情で
にらみつけられ、しぶしぶと沈黙の正座へと戻るのをもう何度繰り返しただろうか・
やっぱり、更なる人気のためにどうだろう?と官能路線の下書きを送ったのはまずかったろうか?
ふと思いついた冗談だったために、出てくる女性は佐々木の名前と外見だったのは、さすがにまずかっ
たんだろうな。
俺が普通の勤め人なら、セクハラで人生を棒にふったことだろうが、俺は作家で佐々木はその担当
編集者だ。
冗談の許容範囲も一般人よりも広いはずだが、佐々木の狼狽ぶりから推測するに、俺のその行為は
少々行きすぎたもんだったんだろう。どうやら、佐々木のやつは、俺が他でも似たようなセクハラをやっ
ているんじゃないかと、無用な心配をしているようだ。
大丈夫だよ、佐々木、俺がこんな冗談を言える異性は、お前ぐらいのもんさ。
されるのは、多分ハルヒぐらいのもんだがな。
とはいえ、俺は自分の迂闊な行動に反省することしきりで、とりあえず佐々木がいつもの冷静さを取り戻
すのをじっと待つことにした。
こういう時は、安易な言い訳や行動はさらなる誤解を生むことになるからな。
ほんと、すまんな、佐々木。

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最終更新:2007年09月17日 12:04
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