74-16「キョンの退団宣言」(エロ物 注意)

「………っ!!」

高二の初夏、一学期の期末テストも満足のいく結果で終えることができた後のこと…。俺は自室でコイツと声にならない声を上げ、その余韻に浸っていた。

「……満足したか?」

ベッドで二人で横になり、コイツの頭を撫でながら聞くと、ムッっとした表情で答えた。

「キョン、キミにはデリカシーってものはないのかい?折角満足して余韻に浸っていたのに、これじゃ台無しじゃないか。けどね、キョン。持て余した身体の処理に付き合ってくれたキミにお礼がしたい。まさか、一人よりも二人の方が数倍いいとは思わなかった。相手がキミだからかな?そこまで身体を持て余してなくとも、キミとこうしていたいと思うのはなぜだろうね?くっくっ…恋愛感情なんて精神病の一種だと自負しているけれど…キョンとなら僕はそれでもいいと思っている自分がいる。キミはどう思っているのか聞かせてもらえないかい?」

「どう思うも何も…佐々木とこういう関係でいられることが嬉しくないわけないだろう?」

そういうとコイツはまた溜息をついた。機嫌を損ねるようなこと言ったとは思えないのだが…

「やれやれ…。これまで何度もこうやってきたにも関わらず、キミは未だに僕のをことを『佐々木』と呼ぶ。いつになったら名前で呼んでくれるんだい?もっとも、そんなことを言いながらキミのことをあだ名で呼んでいる僕もどうかと思うがね。しかし、僕にとってキョンはキョンだ。それは変わりそうにない」

「俺も同じだよ。佐々木は佐々木だ。そうだな、生涯をおまえと共に生きようと思えるようになったら変わるかもしれん」

「そいつは嬉しいね。キミから名前で呼ばれる日が待ち遠しくてたまらない。それに…明日彼女たちに話すんだろう?本当に大丈夫なのかい?」

佐々木が横を向いて俺に目を合わせてきた。覚悟はできている。どんな結果になろうと俺は佐々木を第一に選ぶ。対応策はもう考えてある。素気ない返事だったが「ああ…」と自信を持って答えを返した。

 

翌日、二人で朝食を終え、制服に着替えたコイツを自転車の後ろに乗せて、高校へと向かう。一年の頃よりも早く起きなければならなくなってしまったが、慣れてからはあまり負担も感じなくなった。佐々木をコイツの高校で降ろして北高へと向かう。それが俺の朝のサイクルになった。遅刻ギリギリに教室に入るのは変わらず、なぜか朝は無駄に早い谷口と、相変わらず退屈そうにしているハルヒを見て普段通りの日々を送っていた。期末テストも終わり、午前授業で午後は解散。エアコンも扇風機もない部室によくもまぁ律儀に五人集まるもんだと思いながら部活に励んだ。励むと言っても、夏でも何の躊躇いもなく出してくる朝比奈さんの熱いお茶を飲みながら、古泉とボードゲームに取り組む…それだけだ。

「しかし…涼宮さんには及ばなかったにせよ、まさか僕があなたに抜かれるとは思ってもみませんでした。取り留めて何か特別なことをしているとは思えないのですが…一体どうしたんです?」

前髪を横に流しながらいつものニヤケスマイルが思っていることをストレートに投げつけてきた。確かに昨年度と変わったところがないわけではない。というより、その変わった内容をこれからこいつらに説明しなくてはならんのだが…。鬼が出るか蛇が出るか、俺にもわからん。相変わらずハルヒはネットサーフィン、長門は読書、朝比奈さんは部室の掃除。古泉との勝負もケリがついたし、そろそろ潮時か。自分の鞄を担ぎ、パイプ椅子から立ち上がった。

「皆、すまん。いきなりで悪いが、俺は今日でこの部を退部することにした」

『退部!?』

「ちょっとキョン!どういうことか説明しなさいよ!なんであんたがいきなり退部しなくちゃいけないわけ?ちょっとやそっとの理由だけじゃ、認められないわよ!」

「そうです、キョン君!どうしてこんな突然…」

まぁ、ここにいるメンバーには誰にも話してなかったからな。これが初めてで間違いない。長門まで視線を本からそらして俺を見つめている。

「なぁに、簡単な話だ。少し前から佐々木と付き合い始めたんだ。毎日のようにアイツと電話で話していたら、電話料金が跳ね上がったのを見た両親が怒ってな。両親や佐々木と相談して、佐々木が俺の家に住むようになった。期末テストの得点が上がったのもアイツが傍に付いてくれていたからだ」

「なるほど…佐々木さんがあなたの家庭教師になっていたとは思いませんでしたよ。あなたの成績にもようやく納得できました。ですが、それが何故退部することにつながるんです?」

「俺の家からアイツが通っている高校に行くには電車とバスと徒歩でかなりの時間が必要になる。それで朝は佐々木を高校まで送ってから北高に来ていた。本当は帰りも迎えに行ってやりたかったんだが、アイツは部活に入っているわけじゃないし、本人も『行くときはキョンに送ってもらっているからね。帰りは自分で帰るよ。気にしないでくれ』なんて言って、長い時間をかけて俺の家まで帰ってきてくれていたんだが…流石に申し訳なくてな。俺が自ら願い出たんだ。当然SOS団のことも聞かれて、『本当にそれでいいのかい?』なんて何度もアイツから言われたが、これが俺の出した結論だ。いきなりでみんなには申し訳ないと思ってる。だが、俺はもうここには来れない。すまない」

俺が話し終えても誰も何も言えず、セミの鳴き声だけがうるさく聞こえてきた。じゃあ、今からでも迎えに行けそうだから…と伝えて部室の扉を閉めた。

「……認めない。ただ迎えに行くだけの理由で退部だなんて…ふざけんじゃないわよ!!あのバカ、今までSOS団として過ごしてきた時間より佐々木さんの方が大事ってわけ!?」

「でも、彼に嘘はなかった。さっきの話は彼なりに悩んだ結果。わたしも驚いた。退部はしても全く関わりを持てなくなったわけじゃない。あなたがもっとも彼に近い…ずるい」

「そうです!わたしなんて学年も違うのに…もっとキョン君と一緒にいたいです!」

「困りましたね…理由はどうあれ、僕もボードゲームの相手がいなくなってしまいます。なんとか食い下がってもらいたいのですが…長門さんの言う通り、僕にも彼が悩んだ末に行きついた結論にのように見えましたよ」

「決めた。アイツの家に先回りするわよ!古泉君、車の手配して!バカキョンが何を考えたのか知らないけど、そんな簡単に退部なんてさせないんだから!」

「車の手配をするのは構いませんが…ここは一つ、我々に任せてもらえませんか?小さな事件の一つや二つに団長自ら出向くこともありません。それに、涼宮さんならいつだって彼と話すことができますし、わざわざ行く必要もないかと…」

「それもそうね。でも古泉君、あたしは別にあんな奴に戻ってきて欲しいわけじゃないんだからね!ただの雑用係が団の規律を乱すなんてあってはならないのよ!」

「解りました。団長からの申し伝えとして、彼に話してくることにします」

「今日は放課後に軽く勉強してから高校を出てきたつもりだったけれど、こんなに早くキョンから連絡があるとは思わなかったよ。これまでの話はキミから聞いていたからね。あんなに密度の濃い一年間を過ごしてきたメンバーから何も言われないとは思えない。ホントに大丈夫なのかい?」

「おまえの言う通りだよ。この後が本番だ。おそらく、古泉か長門が俺の家の前で待ち構えているだろう。ハルヒのいないところで宇宙人や超能力者と密談しなくちゃならん。だが結論は変わらない。明日からは俺がおまえを迎えに行く」

腹部にあった佐々木の両腕の締め付けが強くなり、背中に顔を押し付けてきた。帰り道でもこうやって会話するための退部だったんだが…結局そのあと佐々木が話すことはなかった。『そんな話なら、是非とも僕も混ぜてくれないか?』なんて言うかと思っていたが…予想が外れたか?まぁいい。そうやって佐々木が俺に抱きついて来てくれるのなら、俺も嬉しいよ二人の世界をしばしの間堪能していたが、俺の家の前に止まっているリムジンを見て現実に引き戻された。

「おかえりなさい。随分待ちましたよ。佐々木さんの高校まで時間がかかるというのは本当のようですね」

こっちも予想が外れたらしい。ハルヒを除く三人全員で来るとは思わなかった。朝比奈さんまで…

「キョン君、お願いします。さっきの言葉、取り消してください!」

「わたしも同じ。またあなたと図書館に行きたい。さっきの話は聞かなかったことにする。戻ってきて」

ありがたい…本当にありがたいと思う。この二人がこんな風に言ってくれること…嬉しくないわけないだろ…だが…

「二人がそう言ってくれるのは本当に嬉しい。俺も残念なんだ。朝比奈さんのお茶が飲めなくなる。古泉とボードゲームを楽しめなくなる。長門と図書館に行けなくなる。それでも俺は佐々木を選んだ。一分、一秒でもコイツと話せる時間が欲しい。コイツと話していると、あっという間に時間が過ぎてしまうんだ。俺なりに悩んだ末の結果だ。頼む、願いを聞き入れてくれ!」

「困りましたね…そこまで言われてしまっては彼女をリムジンで送迎する手も使えそうにありません。おっと、忘れないうちにあなたにお伝えしておきましょう。団長から、『ただの雑用係が団の規律を乱すなんてあってはならない』だそうです。団の規律がなんなのか僕にもよくわかりませんが、明日彼女にお会いしたら聞いてみてください」

ニヤケスマイルは崩れず、本当に困っているのかよく分からんな。副団長もわからない団の規律なんてあるわけないのはコイツも分かっている。ハルヒが自分の我儘をストレートに言葉に出すわけにはいかないからそう伝えたまで…。

「お前ならその提案をしてくると思っていた。さっきも言った通りだ。少しでも佐々木と話す時間が欲しい。それにリムジンで送迎なんてコイツは断固拒否するだろう」

「そのようですね。では、そろそろ本題に移りましょうか。僕も長門さんもあなたが悩みに悩んだ末の退部宣言だということは既に承知の上。ならば、我々の立場を考えた上での結論であることも事実です。明日以降どうされるおつもりですか?」

「簡単だ。ハルヒが俺を強引に連れだすのを阻止するまで。これまでなるべく北高生に見られない様にしながら佐々木を高校まで送っていた。仮に谷口あたりに見つかれば、即クラス中に広まってその日のうちに大量の閉鎖空間が出ていただろう。今日まで穏便に過ごせるように配慮していたんだ。ここから先はしっかり働いてもらう。それに…あまりに数が多くて対応できなくなれば、長門が情報統合思念体に頼めばいい。急進派が喜んで手伝ってくれるはずだ」

俺が急進派という言葉を口にして長門が目を見開いた。古泉は早く続きを説明しろと俺に催促してくる。

「確かに、あなたの言う通り穏やかな日々が続いていました。エージェントが暇を持て余すほどね。ですが、情報統合思念体が手伝ってくれるというのは分かりますが、なぜ急進派が?」

「朝倉は俺を殺してハルヒの出方を見るために呼び出し、自称未来人は朝比奈さんをハルヒの目の前で誘拐しようとして失敗に終わった。どちらも、ハルヒの心に揺さぶりをかければ情報爆発が観測できると踏んでいる。最初の情報爆発のときもハルヒが情緒不安定になったことで起こっている。俺がSOS団を抜けて情緒不安定になっている今なら観測する絶好のチャンスだと思っているだろう。主流派は当然このまま観測を続けるだけ。急進派を抑え込もうとすれば、『情報爆発を観測する前にハルヒの力がなくなったらどうする!?』とけしかければいい」

「なぜあなたがそこまでわたしたちの行動を掌握することが出来るの!?」

「ハルヒが俺と佐々木との関係を知ったらどういうことになるか一つずつ考えていったまでだ。まずは大量の閉鎖空間で古泉が疲労困憊、俺を説得しても戻ることはないから情報統合思念体が動かざるを得ない。でなければ世界が崩壊して観測どころじゃなくなるからな。ついでに言っておくと、ハルヒが改変能力を使って佐々木の存在を抹消したり、俺たち二人が周りから忌み嫌われるようになれば、橘たちを焚きつけてハルヒの力を奪い取るまで。その結果、長門や朝比奈さんが帰らなければならなくなったとしてもだ。もっとも、そうなった場合は真っ先にハルヒを殺害しようと計画するだろうがな」

自転車を降り、古泉たちと同じ目線で話していた俺の手を佐々木がギュっと握りしめる。心配いらない。お前との関係を邪魔しようとする奴はどんな手を使ってでも滅ぼしてやる。

「面白そうね」

俺の背後から情報結合して朝倉が現れた。

「あなたの掌の上っていうのはちょっと気にくわないけど、そういうことなら彼の組織と利害が一致するわね。急進派のトップに伝えることにするわ」

言いたい事は全て言ったとばかりに素早く情報連結を解除して朝倉が戻っていった。

「目の前に長門がいて、バックアップのはずの朝倉が姿を現すとは俺も予想外だったが…そういうわけだ、古泉。今日のところはこれで終わりにさせてくれ」

「彼女の言葉ではありませんが、文字通り利害の一致。これから先、我々が疲労困憊に陥るのを一瞬にして解決してくれるとは圧巻というべきでしょう。ですが、我々はそれぞれの立場を抜きにしてでもあなたには戻ってきていただきたいのは事実です。明日以降あなたをお呼び出しすることもあるかも知れません。今日はこれで失礼させていただきます」

「キョン君、わたしもキョン君の教室に行きます!少しでもお話させてください!」

「休日は図書館に付き合って」

三者三様にそれぞれの思いを俺にぶつけて去っていった。三人とも、ありがとう…そして、すまない。日が傾いていたとはいえ、猛暑の中あれだけ話していたらYシャツが汗でベットリとしていた。すかさず風呂に入って…といきたいところだが、俺は真夏日であっても湯船に毎日浸かることをモットーにしている。ベタついて気持ち悪いのは確かだがお湯がたまるまでの我慢だ。汗臭い人間に佐々木が抱きついてくるとは思えんしな。明日からのことを考えれば、今日はずっと佐々木と抱き合っていたい。あいつもそう思っているはずだ。結局お湯がたまるまで我慢ができず、髪と身体を先に洗って、ようやくお湯が溜まった湯船に浸った。

「キョン、ちょっといいかい?」

「なんだ?何かあったのか?」

入口のドアに向き直ると、佐々木が裸で風呂に入ってきた。

「おまえ、『ちょっといいかい?』で終わらせることができるような行動か!?もっとちゃんと了承を得てからだな……」

「そんなこと言わないでくれ。僕だって我慢ができなかったんだ。風呂に入って、早くベッドでキミに抱きつきたい。交代で風呂に入っていたら会話もできないだろう?前に橘さんに聞いた話だが、超能力の中にテレパシー能力があるらしいね。キミも彼から聞いているかも知れないが、携帯しない携帯電話と例えるのが一番かな。橘さんも僕の閉鎖空間に入れば超能力は使えるようになるが、テレパシーやテレポート能力があればと言っていた。声に出さずとも頭の中で考えるだけで会話が出来るなんて画期的と思わないかい?」

そりゃあ画期的だが…堂々と俺にお尻を向けて湯船に一緒に浸ってくる奴のセリフじゃないぞ。

「くっくっ、どうやらキミの分身には刺激が強すぎたようだ。僕の膣内に隠れてもらうことにしよう」

そう言うと、お尻をあげて俺の分身とやらを身体の中へと挿入した。お返しとばかりに腹部を抱き、片手で胸を触った。

「本当にこれが自分の身体なのか疑いたくなるよ。身体を持て余していたのは昨日解消したはずなのに、もうキミとこうしていたいという欲望が抑えきれなくなる。自分の身体を制御できなくなってしまった僕の脳はどう処分すべきだろうね?」

そんな問いなら考えるまでもない。それが人間の本能だ。

「制御しないで身を任せればいいだろう。既におまえは行動に移っている。あとは俺が満足させてやればいいだけだ」

湯船から出て、俺の分身は佐々木の体内に隠れたままボディソープで佐々木の体を隅々まで洗う。四つん這いにさせ足を洗っていると、分身の近くのもう一つの穴に気がついた。ニヤリと表情が変わり、コイツを凌辱しろと俺の脳が指令を出す。

「ひあっ…キョン……そこはダメだ…汚いよぉ…」

「気にするな、後で洗い流せばそれで済む。それにしてもいい反応をするもんだ。新境地を開拓するのも悪くないな。そろそろ俺が主導権を握ってもいい頃だ」

指が一本穴の奥へと入り込み、性感帯を探しながら弄ぶ。

「…ぁっ……そんな……僕は…ぁん!…そんなところを弄られて……あっ…感じるような変態じゃな…いっ!」

「なら確認しようか。これでイってしまうようなら、自分の言葉でちゃんと説明しろよ?『僕はこんなところを弄られて頭の中が真っ白になる変態です』ってな」

指を二本に変え、分身と交互にピストン運動を繰り返す。

「キョン…ずるいっ!よ……そっちまで責められちゃ…あんっ…僕は……我慢が…ぁあ…出来なくなってしまうじゃないか…ダメ……うあぁぁぁ……っ!!」

佐々木の身体が痙攣し、最初は目を見開いていたが、しばしの間をおいてうっとりとした表情に変わった。体勢はそのままに佐々木の身体についた泡をシャワーで流した。もう少し余韻に浸らせてやることにしよう。

そのあと夕食を二人で食べ、すぐに電気を消して横になった。佐々木が言うには、最近は抱き合ってからじゃないと会話がはずまないらしい。

「それで?結局ここはどうだったんだ?」

臀部を撫であげてさっきまで指が入っていた場所をさする。

「…っ!!まったくキミって奴は…本当に僕を変態にするつもりかい?ただ…確かに今までにない感覚だったよ。もうこれっきりにしてもらいたいけどね。それより、キミはまだ満足してないんじゃないか?キミの分身もこの通りだし」

さっきのお返しとばかりに脈打つ分身を触ってくる。

「まぁ…そりゃあさっきはおまえが満足したところで止めたからな。だが、こいつがこうなる理由はただ単にやりたいからだけじゃない。目の前にいるおまえが可愛く見えたり、甘えてきたり、そういう言葉を囁かれたりとかな。とにかく、今日のところは風呂場の一件で十分満足してるんだ。明日からの生活考えたら、今日はずっと抱きしめていたい。そう思っただけだ」

「嬉しいよ、明日の放課後が待ち遠しくてならない。ところでキョン、僕の存在意義についてキミに話したのは覚えているかい?」

「ああ、自分の遺伝子または自分が出した理論や概念を後の世に伝えること…だったか?」

「ご名答。だがね、キョン。たとえそう考えていたとしても自分がどんな理論や概念を残せるのか皆目見当もつかないんだ。これから大学や大学院で学ぶことをきっかけに閃くかもしれないし、そんな縁にあやかることなく人生を終えてしまうかもしれない。だからキミに伝えておきたいんだ。僕は自分の遺伝子をキョンの遺伝子と配合させたいとね」

わかっていたこととはいえ、暗い部屋の中でも自分の顔が紅潮していくのがわかる。どストレートなんだか、回りくどいんだか…まぁ、コイツらしいと言っておこう。

「あのな、そんなもん、おまえが自分の存在意義を話してきたときから十分承知の上だ。けどな、遺伝子を配合させるのは別に急ぐ必要もないだろう?おまえはもう可能だが、俺は来年まで待たないと書類すら出せん。ついでに、そっちに夢中になったり、忙しくなったりすれば、折角の縁とやらに巡り合えんだろう?おまえ、何か焦ってないか?そこまで急ぐ必要はないだろう」

「くっくっ、そう言われてみれば、僕は焦っているのかもしれない。キミが退団すると言っただけでああやってキミの仲間が駆けつけてくれる。『さっきの言葉、取り消してください!』に『さっきのことは聞かなかったことにする』だったかい?涼宮さんも含めて、キミの周りにはキミに好意を持ってくれている人たちでいっぱいだ。今こうして抱きしめられていても、なんだか僕は不安になるんだよ。キョン、僕はどうしたらいいか教えてくれないか?」

「やれやれ…そんなことか」

呆れかえった俺に、ムッとした表情をして佐々木が応えた。

「そんなことかとは…ちょっといいすぎじゃないのかい?」

「じゃあ聞くが、その好意を無碍にしてまで退団宣言をしておまえと共に過ごすことを選んだのに、おまえはそんなに俺の事が信じられんのか?」

佐々木の顔を俺の胸に押しつけて髪を撫でた。

「おまえに信じてもらえなくなったら、それこそ俺はどうしたらいいんだ?」

「ごめん……僕はそんなつもりじゃ…すまない、許して欲しい」

「だったら、黙って俺を信じていればいい。俺はおまえを第一に考えて行動するだけだ」

「ありがとう…今日はこのまま寝かせてくれたまえ。僕の心は十分満たされたよ」

翌日、朝のルーティンワークは変わらず、佐々木の高校に行ってから遅刻ギリギリの登校。谷口と国木田に軽く挨拶したあと、「よっ」という声かけと共に何も入ってない鞄を自席に降ろす。

「あんた、夏休みに入ったらまた孤島に行くわよ。去年みたいなただのお芝居じゃなくって本当の謎探しするんだから。妹ちゃんもちゃんと連れてきてよね」

「ハルヒ、昨日退部するって言っただろ。四人で楽しんでくればいい。新川さんの料理が食べられないのは残念だが、俺はもう部員でも団員でもない」

「そんなの認めるわけないじゃない!!」

バンッ!!と机を叩いて叫んだハルヒにクラス中の視線が集まる。

「あんたね…ただ佐々木さんを迎えに行くだけのために退部するなんて許せるわけないわ!古泉君から聞いているはずよ!ただの雑用係が団の規律を乱してんじゃないわよ!退部するなら相応の手順を踏んでからにしなさい!あんたはまだそれが出来ていないんだから退部とは認められないのよ!」

「じゃあ聞くが、相応の手順ってなんだ?」

「団長を含む団員全員の合意に決まっているでしょうが!あんたが帰ったあともあんたが退部することに誰も賛成してなかったんだから!今日もちゃんと部室に来なさい!いいわね!」

ハルヒが言い終わったところで岡部がやってきてHRとなった。しかし…退部するためには団長を含む団員全員の合意か…ハルヒもまともなこと言うようになったものだ。休み時間は当然谷口と国木田が駆けつける。『佐々木さんを迎えに行くだけのために退部する』の言葉だけで、国木田には事の全貌が暴かれていた。

「朝から涼宮さんがいつもよりイライラしていたのがようやく分かったよ。昨日の部活でそんなこと言ってたんだ。朝も佐々木さんを送ってから北高に来てるの?」

「ああ、四月に色々とあってから佐々木の話し相手がいなくなってしまってな。電話でアイツと話していたら料金が跳ね上がって俺の親が大激怒。それなら…と家庭教師も兼ねて佐々木が俺の家に住むことになった。ただ、国木田も分かると思うが、俺の家から登下校しているとかなり時間がかかるんだ。色々と考えたんだが…部活をやめることにした。それだけだ」

「キョン…おまえ…涼宮は規格外としても、長門有希や朝比奈さんと縁を切ってでも迎えに行く相手ってどんな人だ?俺にも紹介しろ!」

「佐々木さんなら前に会ったじゃない。谷口はそれどころじゃなかったみたいだけどね」

確かに…九曜が後ろにいたときの話だからな…佐々木と会ったら九曜の事を思い出しかねん。もともと会わせるつもりなんてなかったが、ちゃんとした理由ができたようだ。

昼休み、いつも通り谷口達と弁当を食べようとしたところで「キョン君!」と俺を呼ぶ声がした。声だけで誰だか判明したが、一体何しにここまで来たんだ?朝比奈さんは…

「キョン君、わたしと一緒にお昼食べて下さい!」

セリフを吐いたのが北高始まって以来の麗しのプリンセスとあって、クラス中の男子から睨まれてしまった。『キョン君は部室じゃ嫌がるだろうから…』と朝比奈さんにつれられてやってきたのは中庭。既に長門と古泉も来ていた。ハルヒは学食だからいなくて当たり前…か。

「やぁ、どうも。お昼の後に一局…と思いましてね。簡単に持ち運べるものを持って来たんですが、どうです?」

「ああ、それならいくらでも付き合うよ。で、どうしたんだ?突然。閉鎖空間で疲労困憊にしては早すぎるだろ?」

「わたしが皆さんに無理言って来てもらったんです。涼宮さんはお弁当じゃないので…でも、キョン君、明日からお弁当をわたしに作らせてください!涼宮さんたちの分も全部作りますから。お昼は一緒に居させて下さい!」

たった一日で決心が揺らぎそうだ…朝比奈さんがお弁当を作る?北高男子全員が飛びつくぞ。だが、それをOKするわけにはいかない。ただでさえ佐々木が不安がっているんだ。

「朝比奈さん、お弁当を作ってくれるのは凄く嬉しいですし、母親の弁当よりも何百倍もおいしいに決まってますが…佐々木を不安にさせたくありません。一人だけ弁当が違ってもいいなら毎日でもここに来ます。俺の分の代わりに長門の弁当の量を増やしてやってください」

「そうですか…わかりました。でも明日もここに来て下さいね!迎えに行きますから!」

まずい…ハルヒの改変能力抜きで周り全員から非難を浴びせられてしまいそうだ。ありがたいといくら言っても足りないくらいなのに、本当に申し訳ない。

「朝比奈さん、場所もわかりましたし、明日からは自分できます。古泉もボードゲームをする時間をより多く確保したいでしょうから」

若干しょんぼりした朝比奈さんに、意気揚揚としている古泉。

「それは嬉しいですね。途中で時間がきてしまっても次の日そのまま続けられるようにメモを残しておくことにします。ところで、涼宮さんとはどんな話になったんですか?」

このあたりの話の切り替え方の巧みなところは古泉の手腕と言ったところだろうな。

「俺も自分の耳を疑ったよ。『退部するには団長を含む団員全員の合意が必要』だとさ。アイツがあんな真っ当な事言い出したのは、俺の記憶の中ではこれが初めてだよ。ついでに夏休みに入ったらまた孤島だそうだ」

「それは僕も驚きです。ですが、その規則に従うのであれば、あなたは絶対に退団できません。涼宮さんを含め、全員があなたにいて欲しいと思っているのですからね」

「だが、一度決めた事だ。頭の悪い俺でも考えに考えて出した結論を一昼夜にして覆すわけにもいかん。ハルヒが強引に部室まで連れ出そうとするだろうが、俺は帰るよ」

「キョン君…」

予鈴が鳴り、古泉との将棋も封じ手ということにして教室に戻ると谷口が号泣しながら俺の胸を叩いてきた。

「うぅぅ…なんでおまえばっかり………」

すまん、谷口。かける言葉が見つからん。試験後とはいえ、昼食後にすぐ帰りのHRなら昼休みの時間は無くてもいいような気がするんだが…部活に行けない以上、当分の間は朝比奈さんの提案に乗って、あいつらとの時間を少しでも長くするのがよさそうだ。最後の挨拶が終わると同時にハルヒが俺のネクタイを引っ張って教室を出ようとしたところで止まった。もし、ハルヒがどういう時にどういう行動に出るかなんて試験問題があったら俺は満点をとっているだろう。ネクタイを少し引っ張っただけで外れてしまう仕掛けをしておいた。俺の重さが全く感じられないことに気付いたハルヒがそのまま後ろを向く。ハルヒからネクタイを取り戻したところで「じゃ、また明日」とハルヒの頭を軽く叩き、教室を出た。

「あ!!このバカキョン!待ちなさいよ!」

そう言われて待つ奴がいるか、阿呆。とはいえ、超高校生級の身体能力の持ち主には敵わず、あっという間に追い付かれて腕を掴まれた。鶴屋式護身術でハルヒの手を振り払い、北高の校門へと向かう。

「退部なんて認めないって言ったでしょ!!戻りなさいよ!」

「残念ながら、たとえ認められなくても俺の行き先は部室じゃない。佐々木の高校だ」

そこまで言うと、今日のところは諦めてくれたらしい。急いでハイキングコースを降ることなく自転車に乗った。

「それはもったいないことをしたんじゃないかい?お弁当を作ってきてくれるなんて嬉しいじゃないか」

校門で待っていた佐々木を荷台に乗せて、今日あった出来事を全て佐々木に話した。コイツを不安にさせないためにも、俺自身が自分の信念を貫くためにも。しかし、朝比奈さんが弁当を作ってくると提案してきたのを「もったいない」とコメントをする。昨日あれだけ不安だと言っていたから断ったのに…佐々木がOKしたからと明後日から作ってきてもらうことにしようか本気で考えてしまう。

「くっくっ、キミが昨日言ったじゃないか『黙って俺を信じろ』とね。僕のことを第一に考えてくれるというキミを僕は信じている。そうだな・・・あまり得意とは言えないが、キミのご母堂を手伝って僕がキョンの弁当を作ってみたくなったよ。食べたときの反応を見れないのは残念だが、食べてくれるかい?」

「そんなこといちいち聞くな。完食して空になった弁当箱を持たせてやるよ」

それっきり、家に着くまで何も言わずに自分の顔を俺の背中にあずけていた。佐々木が来てからは、たとえテストが終わっても学習に励む日々が続いていた。

「夏休みの宿題は七月中に終わらせてもらう」と佐々木から期限を設けられ、夏休みの宿題は夏休みの最終日にまとめてやるというこれまでの俺のポリシーは見事に破られてしまった。まぁ、そんなことを貫き通すほどのポリシーでもスタンスでも何でもない。これまではぼんやりとしか考えてなかったが、佐々木が受験する大学に一緒に行きたいと思うようになった。受験勉強を考えるのであれば、佐々木の言う「夏休みの宿題は七月中に」という期限も納得がいく。妹が風呂が沸いたと伝えに来るまで真剣に学習に取り組んでいた。

髪を洗いながら考えることは今日一日の出来事。退部を宣言してまだ一日しか経ってないのに色々と起こりすぎだ。皆には悪いがゆっくりと浸からせてもらおうと思っていた矢先、後ろから「キョン」と佐々木の声。目は瞑っていたが、振り返って見ずともすぐわかる。シャンプーを洗い流して後ろを見ると、昨日と同様、裸で風呂に入ってきた佐々木がいた。

「おまえ…これからは毎日一緒に入るなんて言うんじゃなかろうな?」

「それは違うよ。僕だって物凄く恥ずかしいんだ。表情には出てないかもしれないけどね。昨日キミが満足出来なかった分、僕が奉仕したくなったんだ。ダメかい?」

佐々木の裸を凝視していた自分にハッと気が付き、前へと向き直った。

「きっ、昨日は佐々木を抱き締めたかったから気にしなくてもいいって言っただろ?」

俺が佐々木の裸体を見ないようにしているのをいいことに、佐々木が後ろから俺に抱きつき、背中には柔らかいものが二つくっついていた。そして後ろから耳元で囁く。

「私にもご奉仕させて貰えませんか?ご主人様」

もはや耳まで真っ赤になっていることなど言うまでもない。最上級の言葉を耳にして理性がどこかへ飛んでしまいそうだ。

「くっくっ、どうやらキミの言う通りのようだ。たった一言でキミの分身がそこまで変貌するとは思わなかったよ。だがねキョン。キミがそうやっていつまでも拒否し続けると、僕もあまりの恥ずかしさに自我を保つことが出来なくなりそうだ。これ以上は女の子に言わせないでくれたまえ」

仕方ない…なんて言えないな。俺は今、これまでの人生で最高の体験をしている。昨日、俺が満足してない分と言って佐々木の方から来てくれた。だが、俺だけ満足するのも納得がいかん。コイツにも十分満足してもらうとしよう。

「佐々木、今日はこれで話をしている時間はなさそうだ」

「どういうことだい?」

「眠くなるまで付き合ってもらうぞ。おまえにも満足感を味わってもらう」

「嬉しいよ、キョン。僕も今日はキミと一つでいたい」

俺の身体を抱きしめていた腕を優しく外して佐々木の方へと振り返る。頭をゆっくりと引き寄せると、それだけで何をするか分かったらしい。瞳を閉じて唇が重なるのを待っていた。お互いの唾液を味わい、舌を絡ませながら空いた手で佐々木の敏感なところをひとつ一つ愛撫していく。

「ぷはぁ…ダメだよキョン、僕はもうキミと一つになりたいんだ。これ以上焦らさないで欲しい」

佐々木の言葉を受けて、秘部に手をやると触れただけでクチュクチュと音が鳴る。視線をそちらに向けると、シャワーを浴びたわけでもないのに液体がこぼれ落ちていた。

「どうやら人の事言える状態じゃないらしいな。準備万端のようだし、すぐ挿れてやるよ」

佐々木の返事を待たずに俺の分身を秘部にあてがい、膣内を一気に貫いた。

「………っ!!!」

挿入した直後に佐々木が痙攣する。たったこれだけで達してしまうとは思わなかったよ。余韻に浸っている間にシャワーで身体を暖め、ボディーウォッシュで全身を洗っていく。俺の手がコイツの弱い部分に来るたびにビクン!ビクン!を全身が反応する。シャワーで泡を全て洗い流し体勢を変えた。立った状態で片足を持ちあげ、分身がさらに奥へと突き進む。すると、俺の首の後ろで手を組みバランスをとった。もう片方の足もあげて佐々木を宙に浮かせると、身体が落ちてきたところで分身がコイツの身体を串刺しにする。そのあとも宙に浮かせては串刺しを繰り返し、その度に声にならない声を上げた。その状態のまま湯船に浸かるころには淫靡な表情を浮かべていた。

「悔しいよ。僕ばかり絶頂に達してばかりで、僕はまだキョンを満足させることが出来ていないなんてね」

「そんなことで悔しがることでもないだろ?風呂場よりもベッドで横になってする方がおまえも楽じゃないか?床のタイルに横たわるより断然いいだろう」

「それもそうだね。なら早くキミの部屋に戻ろう。髪を洗ってくるから待っててくれたまえ。出来れば…あまり見ないで欲しい。恥ずかしくてね」

「それなら俺は先に風呂からあがれば問題ないだろ?」

「キョン…女の子にあまり言わせないでくれ。少しでも長くキミと一緒に居たいんだよ」

そういうことか、それなら湯船に浸かる向きを反対にすればいいだろう。

そのあと、部屋着を用意してこなかったらしい佐々木はそのまま制服に着替えた。夕食を二人で食べたところで、電気を消して第二ラウンド開始。制服を丁寧に脱がしていくと、すぐに異変に気付いた。下着を着けてない?下の方も確認すべくスカートをめくると、豊潤な秘部があらわになっていた。俺が聞く前に佐々木が俺の疑問に答える。

「キミに脱がされるまで我慢できそうになかったんだ。また下着を変えなければいけなくなるなら、つけなくてもいいだろうと思ってね。キョン、お願いだ。早く続けてくれ」

先ほどから何度も達して存分に満足したと思っていたがまだ足りないとはね。ご期待に添えることにしよう。服を全て脱ぎ棄てベッドの下へ。佐々木を寝かせたまま再び分身が佐々木の身体を貫く。

「あっ…ダメ……だよっ!…キョン。気持ちっ…あぁ…良すぎて…またイッちゃう……くぁっ!!!」

佐々木が絶頂をむかえても俺は変わらず腰を動かす。

「佐々木、そろそろ俺も限界でな。すまんが余韻に浸っている時間はやれそうにない」

「いい…よっ!キミの遺伝子を…ぁん!…僕に……注いでくれっ!」

佐々木の懇願に我を忘れて俺の遺伝子が佐々木に注入される。うっとりとした表情をして佐々木が俺と同時に果てた。事後処理をして、お互い裸のまま抱き合う。

「ったく…おまえの言葉につられてしまったよ。ホントに遺伝子が配合してしまったらどうする気だ?」

「順番が変わるだけで、僕の新しい理論や概念はそのあと探せばいい。キミだって赤子の面倒を見るのは得意なんじゃないのかい?それに君の遺伝子を注がれることがこんなに気持ちいいものだと思わなかったよ。今後は毎回そうして貰うのも悪くないね、くっくっ」

「確かに、妹の精神年齢が未だに三歳児だからな。面倒見が良い方だとは思うが…頼むから婚姻届を出す前に子供を産むのだけは勘弁してくれ」

俺の言葉にくすくすと笑ってはいるものの結局承諾することはなかった。既成事実を早く持ちたいのかもしれないな。俺の小遣い程度で婚約指輪なんて買えるわけがないし…夏休みの宿題が終わったら八月はバイトするのも悪くない。佐々木をあまり不安にさせないようにしながら…休みは長門と図書館に行くのもいいだろう。自分の誕生日がこんなに待ち遠しいなんてこれが初めてだろうな。

翌日、教室に入ると最初に目についたのがハルヒのポニーテール。

「よっ、その髪型も久しぶりだな」

朝の挨拶をしたもののハルヒからは何も返答が返ってこなかった。相変わらずやってることが矛盾している。朝比奈さんとの約束通り、佐々木が作ってくれた弁当を抱えて中庭に出る。大木を輪切りにしたテーブルには弁当が四つ分。うち二つは長門のところに置かれていた。大方、昨日の部活でハルヒに提案をして、

「なんで、あたしがあんなやつと一緒に弁当食べなくちゃいけないのよ!勝手に皆でいけばいいじゃない!フンッ!」ってところだろう。

「おや、妙ですね。あなたは昨日佐々木さんを迎えに行ったのではないのですか?一語一句違わずに涼宮さんの言っていたことを当ててしまうとは…やはり彼女の一番の理解者はあなたのようですね」

古泉の発言に反論したくとも反論できないでいた。朝のポニーテールも「もっとあたしを見て!」というアピール。だが、何を話してよいやら分からず、五人での昼食にも加わりたいのだろうが…自分のプライドが許さないってところだろうな。夏休み後どうなるかわからんが、気まぐれでいつ参加してもいいように朝比奈さんには四人分の弁当を作ってきてもらった方がよさそうだ。古泉との決着もついたところで今日はこれでおしまい。帰ったら佐々木に抱きついてやることにしよう。四人で食べるということもあるだろうが、こんなに弁当が美味しかったのはいつ以来かな?

「それで、夏休みは結局どうすることにしたんだ?」

「あなたから孤島の発言が出る前に既に彼女と企画を練っていましてね。 その後七月中に宿題を全て終わらせて八月後半は皆で遊びまくるらしいですよ?去年のようなことがないことをただただ祈るばかりです。次は何が原因になるか見当もつきませんからね」

「問題ない。去年は涼宮ハルヒを観測することだけだった。だからあなたに聞かれるまで永遠とループしていることを答えなかった。でも、どれだけ二週間を繰り返してもほとんど変わらないなら観測しても意味がないという結論になった。ループした時点でここにいる全員に伝える」

長門、それはおまえの考えで言っているのか、それとも情報統合思念体の総意なのかは知らんが、なぜそれを去年はやってくれなかったんだといいたい。

「それは是非ともお願いしたいですね。夏休み最後の日をカウントダウンしていても、記憶が抹消されて元に戻ってしまうのでは数える意味がありませんからね。ところで…あなたは夏休みをどう過ごす予定なんです?涼宮さんの気分次第であなたを強引に連れだすか、あなたの家に四人で押し掛けるか、はたまた何事もなかったかのように我々四人だけで活動をすることになるのか…彼女の心持ち一つで180°変わってしまいますからね。あなたがどのように過ごすのか聞いておけば、その時々に応じて対応ができそうです。大体でも構いませんので、聞かせてもらえませんか?」

「それならほぼ確定している。七月中に夏休みの宿題を終わらせるところは一緒。八月は平日はバイトをしようと思ってる」

『バイト?』

三人の表情が一気に曇った。みんなで視線を上にあげて、去年のバイトを思い出している。この猛暑であんなきぐるみを着てビラ配りなんて俺だって二度とごめんだよ。

「去年のようなバイトではないから安心してくれ。佐々木に婚約指輪を買ってやりたいと思ってな。一昨日までは宿題が終わり次第受験勉強をして佐々木と同じ大学へ…と思っていたんだが、どうも佐々木が既成事実を作りたがっているみたいでな。言葉にはしていないが不安を感じているのは確かだ。派遣会社に登録して佐々木と相談しながらその日をどう過ごすか決めようと思ってる」

「キョン君、もうそんな先のことまで考えているなんて…」

「我々が介入する余地はなさそうですね」

「問題ない。これで涼宮ハルヒはそのときの気分であなたを巻き込むことが出来なくなった。それに・・・たまの休みの日は図書館に行きたい。付き合って」

「あ!長門さんだけずるいです!わたしもキョン君とショッピングに出かけたりしたいです!」

一日くらいで良ければいくらでも付き合うぞ。俺もやろうと思っていたところだしな。タイミング良くチャイムが鳴り、それだけ伝えてそれぞれの教室に戻った。帰りのHRが終わっても今日は強引に連れだすなどということはなく颯爽とハイキングコースを下っていた。強引に引きずりだそうとしても無理だと一日で理解してくれたらしい。もうしばらくハルヒとの格闘が続くかと思っていたが、まぁいい。一難去ってまた一難なんて言葉が頭に思い浮かんだが、その時々で対処すればいいだろう。

その後、古泉の表情が日に日にやつれていき、孤島でも閉鎖空間が大量発生。急進派が駆けつけてなんとか処理したらしい。今回ばかりは急進派に感謝しないといけないな。古泉一人で大量の閉鎖空間を破壊するのは不可能。間違いなく世界が崩壊していただろう。夏休みの宿題に集中しているときはそうでもなかったらしいが、問題はここからだ。

そして、来たる八月十六日深夜23時47分、佐々木と同時に絶頂を迎え、抱きあいながらその余韻に浸っていた。

「佐々木、去年のようなループがまた起こってしまったら、俺は夏休み最後の二週間をおまえとずっと抱き合って過ごしたい。ループが起きるとすぐに長門からメールがくることになっている。抱き合っていた記憶は消し飛ぶがまた同じことをするまでだ。その間の約束事として俺はおまえを名前で呼ぶ。それでもいいか?」

「嬉しいよ。記憶が消し飛んでもずっとキョンと一緒にいられるなんてね。これだけ抱き合って絶頂の余韻に浸っても、身体はまだ満足したりないと言って制御できないんだ。僕はどうしたらいいのか教えてくれたまえ」

「簡単だ。満足するまで抱き合えばいいだけの話だ」

にっこりと笑った佐々木に熱い口づけを交わす。しばらくして俺の携帯が鳴った。長門からのメールで間違いない。内容は…

『これで125回目のシークエンス。やはりあなたがいないとこのループは終わりそうにない。これ以上続けば、いつ急進派がアクションを起こすか分からない。二週間だけでかまわない。わたしたちと行動を共にして欲しい』

「記憶が消されているようだから実感が全く湧かないけど、彼女からのメールの内容を信じるなら僕はキョンと五年近くも抱き合っていたことになるのかい?その事実だけで僕は十分満足だ。彼女の言う通り二週間だけ皆と行動をしてみたらどうだい?」

「たとえ俺が皆と共に生活したとしても、それだけでこのループが終わるとは思えない。おまえが十分満足したのなら、切り札を出すまでだ」

切り札と聞いて何のことなのかわからないという顔をしている間に俺は長門に一通のメールを送信した。内容は・・・

『ハルヒの力を二週間だけ俺に譲渡しろ』

 

おしまい

 

 

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最終更新:2014年12月17日 10:00
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