14-107「ラブレター騒動」

何が始まりかと言えば、それは昨日の回線上のやりとりなのだろう。
 「くっくっくっ、なるほど。それでキミたちは文集を書くことになったというわけだ。
 それにしても涼宮さんの行動力と牽引力は目を見張るものがあるね、これがカリスマと
 いうものかな?」
 「そんな大層なもんじゃねえよ。単に自己中でわがままで自分勝手なだけだ。引っ張りまわされるこっちの身にもなってみろってんだ」

  時間は夜の1時ごろ、相手は中学時代からの友人佐々木だ。春先に会って以来、また 付き合いが始まって最近では夜な夜な取りとめもない話を電話でするようになった。
  はじめは身の回りで起こったことなんかを話していたんだが、健全な高校生活を送っていてはそうそうネタになるようなこともなく、佐々木は早々にネタ切れ宣言をしてきた。
 というわけでそういったネタには尽きることのない俺がハルヒ絡みの話をして、佐々木が それを聞くという中学時代とは真逆の構造ができあがってしまった。
 俺は今までどおり聞き役のほうがよかったのだが、なぜか佐々木がハルヒのことを熱心に聞きたがっていたという理由もある。まあ、遠くから眺めている分には楽しいんだろうな、あいつは。

 「しかし、キョンの書いた作品というのは興味があるね。今度機会があったら読ませて欲しい。まさか中学のときに読ませてもらった日記とも詩とも判別のできない読書感想文のようなものではないんだろ?」
 「その話はよせ、今思い出しても悶えたくなる。それに俺の書いたラブストーリーなんか一読の価値もないさ。文集の中で言うなら、そうだな、鶴屋さんって先輩の書いたのはベストセラーになるくらい面白かったぞ。あれは死ぬまでに一度は読んどくべきだろう」
 「……キョン、今何と言った?」
 「?だから鶴屋さんの作品はすごく面白くて―」
 「そこじゃない、その前だ。キミはどんな作品を書いたって?」
 「ああ、だからラブストーリーだよ、一読の価値もない」
 「是非読みたい」

  実際に佐々木がそこにいたら10センチは顔が近づいたんじゃないかってくらいの食いつきぶりだ。なんなんだ一体。俺の書いたラブストーリーのどこに琴線に触れる要素があったんだ?
 「ん、いや、その……なんだ。ギネス級の鈍感さを持ち合わせた、朴念仁の最上級ともいえるキミがどんなラブストーリーを書いたのか気になってね。うん、それだけだ。他意はないよ」
 「ちぇ、冷やかしかよ。そういや谷口なんかもえらくからかってきやがったな」
  ラブストーリー!お前が!?ぶははははは!大笑いする谷口の顔が目に浮かんできた。
 くそ、腹が立つ。明日会ったらぶん殴っておこう。

 「それで、その文集というのは今君の手元にあるのかい?だったら明日にでも借りに行こうと思うのだが」
 「いや、今手元にはないんだ。この前妹の友人に読ませたら、なんか気に入ったのがあったみたいで『コピーさせてください』って頼まれてな、貸し出し中なんだ」
 「そ、そうなのか……」
  佐々木はさっきまでの勢いはどこへやら、急に落ち込んだような声を出した。その落差があまりに激しかったためか、俺は思わずこう言ってしまっていた。
 「まあ、部室に一冊置いてあるからさ。今度それを借りてきて読ませてやるよ」

「ダメよ」
  一言で却下された。電話の翌日、つまり今日、俺はハルヒに文集の貸し出し申請をしたのだ。はじめは「別にいいけど、何で?あんた自分の持ってるでしょ」と軽く許可したの
 だが、問われるがままに俺が自分の文集の行方や昨日の電話のやり取りを話していくと、だんだん眉間にしわがよりはじめに、最終的に先ほどのセリフへと行き着いてしまった。
 「なんでだよ。さっき別にいいって言ったじゃないか」
 「さっきはさっき今は今よ!自分で読むならまだしも人に貸そうなんて何考えてんのよ!
 この文集は私たちSOS団の歴史を綴った最初の公式文書なのよ!今にプレミアが付いて天文学的な値段になるの!ほいほい部外者に貸し出すもんじゃないの!」
 「佐々木なら汚したりなくしたりするようなことはないって。ああ、もういい。長門、文芸部部長のお前からも言ってやれ」
 「ダメ」
 「ほら長門もこう言って……、な、長門?」
 「部の備品。持ち出し厳禁」

  それだけ言うと長門は顔を伏せ読書に戻ってしまった。まさか長門にまで許可されない
 とは……。古泉はハルヒのイエスマンだし、朝比奈さんは……戦力外だし。むう、これは無理だな。すまん佐々木。あきらめてくれ。
 「それはいくらなんでもあっさり引き下がりすぎだと思うよ」
  振り返ると、国木田が立っていた。風通しをよくするために開け放したドアのところから、相変わらずのにこにこ顔を向けている。
 「国木田か。珍しいな、お前がこっちに来るなんて」
  いつもは帰宅部仲間の谷口と連るんで帰ったり、いつの間にか消えていたりで放課後に顔を合わすことはめったにない。部室で会うと新鮮、というか違和感があるな。

 「うん。ちょっと用事があってね。人を案内してきたんだ」
 案内?ここに?
  まさか国木田のやつ依頼人なんか連れてきたんじゃないだろうな。喜緑さんにせよ阪中にせよ、今までの経験上うちにくる依頼はろくなものじゃない。頼むぞ、国木田、余計なことはするなよ。

  などと心の中の祈りが通じたのか、国木田が連れてきたのは依頼人ではなかった。依頼人ではなかったが、そんなものよりもっと厄介な、
 「佐々木!?」
 「やあキョン。電話は毎日のようにしているが、顔を合わすのは久しぶりだね」
  そう、国木田に連れられて登場したのは我が中学時代からの友人佐々木その人だった。
 「なんでお前がここに、っていうかその格好は……」
  その上SOS団を訪れた佐々木は私服ではなかった。制服を着ている。ただし有名進学校の制服ではない、北校のセーラー服だ。
 「友人に借りたんだよ。言ったろ?北校に行った友人はキョンだけではないと。もっとも、親友と呼ぶには遠い関係だったけどね。実際突然の申し出にかなり戸惑っていたみたいだよ。僕がSOS団に用があるといったら、ひとしきり納得したあとに、『がんばってね』とエールまで送られたけどね。きっと取り返せる云々とか言っていたけど、彼女の中でどのような判断がなされたんだろうね」

  さあな、大方パソ研部部長みたく何か強奪の被害に遭ったとでも思ったんじゃないか。
 「まあ、あながち間違いじゃないだろうね。実際はもともと僕のものじゃないし、涼宮さんもまだ手に入れてないのだけれどね」
  そう言うと佐々木は団長机で憮然としてこっちを見ているハルヒに視線を向けた。
 「挨拶が遅れたね。こんにちは涼宮さん、お邪魔しますね」
 「いらっしゃい、佐々木さん。ようこそ我がSOS団本部へ」

  笑顔と笑顔の対話。なのになぜだろう、ものすごく居心地が悪い。真夏なのに背筋が寒くなってきた。空気の異変を感じたのか朝比奈さんもおろおろしている。ああ、いいなあ。
 本人には悪いけど、やっぱり朝比奈さんはおろおろしてなんぼだなぁ。癒される。

「癒されているところ申し訳ありませんが、いい加減事態の収拾に乗り出してもらえませんか」
  なんだ古泉。俺の至福のときを邪魔する気か。
 「それはまた明日にでも堪能してください。それよりもこの状況です。一体どうまとめてくれるんですか」

  詰め寄ってくる古泉の言葉には非難めいたものがあった。俺のせいだって言うのか。
 いささか不本意ながらも促されるままに現状を確認してみた。

  ハルヒと佐々木は「うふふ」などと微笑みながら見つめ合っている。それをみて朝比奈さんが「ひぃえぇぇ」と震えている。長門は本を閉じ佐々木に敵意のこもった視線を向けている。(天蓋領域の仲間として認識しているんだろうか、今度しっかり言い聞かせないとな。)少し離れたところで国木田がニコニコしている。お前まだいたのか。で、俺と古泉が隅っこのほうでこそこそしている、と。
  なるほど、妙なことになったもんだ。

  俺が悪いみたいな言い方は心外だが、仕方ない。このままで朝比奈さんに入れてもらったお茶も充分に味わえそうにないしな。現状打破に乗り出すとするか。
 「それで、何でまたセーラー服借りてまで乗り込んできたんだよ、お前は」
  と混沌の原因たる友人に話しかける。すると佐々木はさも当然のように言い放った。
 「何でって、昨日キミが言ったんじゃないか、部室に文集があるって。だから拝読させてもらおうとこうしてやってきたんだよ」
 「わざわざ読みにくることはないだろ?俺が借りれば済む話なんだから」
 「さっきのやりとりを聞く限りじゃ、それも無理だと思うけどね」
  む、持ち出し厳禁、貸し出し禁止のくだりか。確かにあいつらを説得するよりかはよっぽど早いかもしれんが。それにしたって失敗する前から尋ねるとは気が短すぎやしないか。
 「どうせ、こうなることは予想が付いたからね。キミのことだ、何も考えずいらないことまで喋るだろう、とね。だったら後手に回るよりも一気に畳み掛けるほうが得策じゃないか。あのままいけば文集は団長が厳重に保管、なんてことにもなりかねなかったしね」
  くっくっくっと佐々木が例の笑いを浮かべながら言った。いや、いくらハルヒでもそこまではしないだろう。
 「そ、そうよ。するわけないじゃない、そんなこと!」
 「そう。それじゃあ読ませてくれるかしら、文集」
 「それはダメ!」
 「どうして?理由を聞かせてくれる?」
 「えっ……いや、それは……」


なにやら口の中でもごもごと呟くハルヒ。ずいっと距離をつめる佐々木。

  おお、俺はまさかハルヒが追い込まれるという非常に稀有な現場に居合わせたのか!などとちょっとした感動を味わっていると、あたふたうろたえ中のハルヒと目が合った。
  その口は横一文字にきゅっと結ばれ、目は完全にすねたときのそれだ。そのまま上目遣いに睨まれると「う~~~」という心の中のうなり声まで聞こえてきそうだった。
  そんなハルヒを見ていると流石にいたたまれなくなってきた。別に俺が悪いわけではないが、何故か罪悪感めいたものを感じたので、
 「まあ、落ち着けよ佐々木。ハルヒも気心の知れた奴ならまだしも、よく知らない奴に目の前で読まれるのは恥ずかしいんだろ」
  とフォローを入れておいた。
  とたんにハルヒの顔は花が咲くのを時間短縮で流すみたいにぱあっと明るいものになり、逆に佐々木は間違えて渋柿に噛り付いたような顔になった。

 「はぁ……。そうやって誰彼かまわず優しくするから……」
 「ん?なんか言ったか古泉」
 「いいえ、何も。それにしてもこれでは話が進みませんね。佐々木さんもせっかくご足労頂いているのですから、文集は読んでおきたいでしょうし、涼宮さんも涼宮さんなりの理由で文集を読ませたくない。ならばこういうのはどうでしょう。優れた物事にはいつも対価が付きまといます。物語には物語を、文集を読む対価として、佐々木さんには何か小話の一つでも披露していただいては。特に、中学校時代の話などを」
  そういいながら一同を見回す古泉。待て、何だその条件は。それだとネタにされるのは九割九分九厘、十中八九俺じゃないか。

 「それよっそれ!ナイスアイディアよ、古泉くん!」
 「ふぅむ。まあ、代価無しに得ることはできないか。そうだね、涼宮さんたちの武勇伝を一方的に聞いているのはフェアじゃないしね」
 「待てよ!これはハルヒと佐々木の話だろ。なんで俺が被害に遭わにゃならん!」
  しかし俺の至極当然のはずの反論はその場に居合わせた全員のため息によって返された。
 長門、お前ため息つけたのか……。

 「前々から、あなたには何らかのペナルティを与えたほうがよいと思っていました」
  どういうことだ。俺が何をした。
 「あのう……。私もそう思います」
  そんな、朝比奈さんまで。
 「……同意」
  長門、お前もか!
 「そういうことよ。観念してみんなの肴になることね」
 「キョンにとってこの程度のペナルティでは何の意味もないだろうけど。僕らの心の平静を保つためには有効だろうね」

  五人からの視線に追い詰められ、後ずさる。なんだこの状況は、こんなのならさっきまでのほうがよっぽど過ごしやすかったぞ。いっそこのまま部室から逃げ出してしまおうか、
 いやいや俺がいなくなったらどんな話をされるかわかったものじゃない。佐々木にも良心があるだろうから、修学旅行のあの話や、プールの授業のあの話はしないと思うが……。
  考えつつも念のため逃走経路を確認しようと振り返ると、間近に国木田のニコニコ顔があった。お前まだいたのか。ていうか近い、顔近い。
 「キョンが文集に書いたのはラブストーリーだったよね」
  あれがラブストーリーと呼べるかどうかは甚だ疑問だがな。それがどうした。

 「だったら恋愛絡みでちょうどいい話があるよ。佐々木さんほら、『ラブレター騒動』について話したらいいじゃない」

 「なあっ!?」
 「うぐ!」

  凍りつく部室、思わず声を上げる俺と佐々木―――佐々木?
 「なんでお前まで焦ってるんだよ」
 「い、いや、別に。なんでもないよ。ははは」
  普段とは違う笑い方が怪しさを際立たせている。しかしそのことを追求する前に、怒涛の攻めが俺を襲い来た。
 「ラ、ラブレターって!誰が誰に!?まさかキョンあんたが書いたの?」
 「ラブレターって好きな人に想いを書面で伝えるものですよね!この時代にはまだそんな文化が残っていたんですか!」
 「……詳細を」

  ラブレターって単語に乙女センサーが反応しちまったようだ。どうすんだよ、これ。
 「いや、そんな期待するような話じゃないんだって、マジで!」
 「そ、そうそう!別に面白い話じゃないし、他にもっといい話があるよ」
  意外なことに俺の抗弁に佐々木が援護を入れてきた。恩に着るぜ佐々木、やっぱりお前は親友だ。

  しかし俺と佐々木の言葉など本領を発揮したハルヒ率いるSOS団三人娘の前には台風の前のビニール傘程度の防御力しかなく、結局俺は忘れてしまいたいエピソードトップ10
 に入るその話を白状しなければならなくなった。
 佐々木が話すんじゃないのかって?他人が話すのを聞くのより、いっそ自分で話したほ
 うがまだ恥ずかしくないさ。細かいところはごまかせるしな。
 さて、どこから話したもんか。
 そうそう、あれは確かいよいよ受験が足音を立ててきた秋ごろのことだった。

「最近カップルが増えてきたねぇ」
  中学三年のある日、登校中の俺に横から国木田が声をかけてきた。
 「いよいよ終わりが近づいてきて、このままじゃいけないって考えるやつが多いんだろ」
 「キョンは誰かと付き合ったりしないの?例えば佐々木さんとか」
 「国木田、あのなあ……」

  まったくどいつもこいつも。自分たちがくっつくならまだしも、人をくっつけるのも好
 きときてやがる。どうして俺が佐々木と付き合うんだよ。
 「わかってるよ。佐々木さんとはただの友達なんでしょ?でもさ、今はそうじゃなくても
 今後そんな関係になるかもしれないじゃない。だったら試しに付き合ってみたら?」
 「そんなもん、佐々木のほうがお断りだろうが。大体俺は思い出作りに走れるほど、学力
 に余裕はないんだよ」
 「向こうの気持ちも、学力向上も問題ないと思うんだけどなぁ……」

  とまあ、そんな会話をつらつらとしていると学校に着いていた。いい加減いちいち否定
 すんのも疲れてきたな。いっそのこと佐々木と口裏合わせて付き合ってることにしちまう
 か。嫌がるだろうなぁ、恋愛は精神病だなんて言ってる奴だし。止めとこ止めとこ。
 「ん?」
 「どうしたの?」
 「いや、下駄箱の中になんか……手紙が」

  はい、そこのお前、何を連想した?恥ずかしがらずに大きな声で言ってみな。大丈夫、
 きっと俺と同じこと考えてるから。ついさっきまでしていた話題が話題だし、何より下駄
 箱に手紙っつったらアレっきゃないだろ。
  しかしここで騒ぐか落ち着いていられるかが俺と谷口の違いだ。いや、このときは谷口
 なんか知らなかったけど。とにかく、俺は浮かれ騒ぐことなく、冷静に対処したわけだ。
  手は震えて、喉はからっからだったけどな。

  実際のところ何とか理性を保っていられたようだが、そこは思春期真っ盛りの男子中学
 生だ。ラブレター(らしきもの)をもらって浮かれるなと言われても、無理というものだ
 ろ。ふとした弾みで頬が緩み、その度に佐々木に気味悪がられた。
 肝心の中身については、確認しようと何度もトイレに向かったが、こんなときに限って
 先客がいやがる。別のトイレに行くのは目立つし時間もかかる、個室に入るのは別の意
 味でリスクが高い。そんなこんなで結局中身が確認できたのは四時間目の直前だった。

  で結論から言うと、ハズレだったんだな、これが。
  手紙は確かにラブレターだった。が、俺宛ではなく俺の隣の下駄箱を利用している成績
 優秀、スポーツ万能、品行方正なモテ男くん宛だった。間違えるなよ、紛らわしい。
  ちなみに送り主はうちのクラスの女子の、あんまり話したことのない、どちらかといえ
 ば優等生グループの娘だった。結構可愛いかっただけに、脱力感も一入だ。

 「くっくっ、なるほどそれで今日はやけに落ち着きがなかったというわけか。君は今日6
 回も僕の話を聞き逃し、4回も先生に注意されていたんだよ。先生の話を聞かないのはいつ
 ものことだが、僕の話を聞き流すなんて珍しいと思ってね、カウントしていたんだよ。も
 しかしたら熱でもあるのかと懸念していたが、取り越し苦労だったようだね」
  昼休み、佐々木と駄弁りながら、早速俺はことの顛末を話していた。こんなのはいっそ
 笑い話にしたほうが気が楽だ。それに佐々木はどんなにマヌケな話をしても、嘲笑しない
 奴だからな。そういったところでも俺はこの奇妙な友人を信頼している。

 「ま、どうせこんなオチだろうとは思っていたけどな。にしたって、なんとも情けない話
 だ。俺にお似合いといえばお似合いだが」
 「まあ、これに懲りたら恋愛なんかにかまけずに、学業に専念することだね。前の模試の
 結果も芳しくなかったのだろう?放課後の勉強会の回数を増やすかい?」
 「いきなりそっちに話を持ってくなよ。これでもけっこう凹んでんだ。もっとこう、明る
 くなるような話題にしてくれ」
 「へえ、思ったよりショックだったようだね。そんなに嬉しかったのかい、恋文をもらえ
 たことが」
  佐々木の視線が鈍く光る。やめてくれよ、そうやって意味もなく意味深に振舞うの。
 「別に意味を込めてないわけじゃないんだけどね。まあいいよ、それより肝心の恋文はど
 うしたんだい?まさか捨ててしまったわけじゃないんだろ?」
 「ああ、ここにあるよ。正しい相手に渡すつもりだけど、中身を確認したのが四時間目の
 前で、今まで軽く凹んでたからな。暇がなかった。ちょうどいいや、今からちょっと下駄
 箱に行ってくる」
  そう言って立ち上がると、佐々木は拗ねたように、
 「これで先の6回と合わせて計7回、僕はキミとの会話を邪魔されたことになるね。まっ
 たく、手紙の送り主は厄介な間違いをしてくれたものだよ」
  などとうそぶいていた。
 「そんな対したこと話してないだろ」
  佐々木の軽口を流しながら席を立つと、
 「ああぁーーーーーー!!!」
  耳をつんざく絶叫が響き渡った。何事かとあっけに取られていると、バシッと手の中の
 手紙を奪い取られた。そして目の前にいるのは、件の手紙の送り主。……おいおい、まさ
 かこれは。
 「な、なんであんたがこれ持ってんのよ!変態!!」

  嫌な予想というのは当たるものだ。まさか自分が相手を間違えたとも知らず、彼女は大
 声で「中身を見られた!回し読みされた!」と吹聴して回っていた。いや確かに隠しもせ
 ず堂々とラブレターを見せていた俺も悪いし、他人が自分のラブレターを持って談笑して
 いるのを見たら心穏やかではないのは解る。解るがもう少し落ち着いて行動して欲しかっ
 た。弁解の余地すらないじゃないか。
  かくして俺は人のラブレターを勝手に覗き見る変態男という世にも不名誉な肩書きを手
 に入れたのだった。ことが恋愛絡みなだけに多感な年頃の女子たちからは親の敵でも見る
 ような目で睨まれ、クラスの女子全員を敵に回した俺に味方する度胸もない男子からは巻
 き込むなとばかりに距離を置かれてしまった。ラブレターの宛先違いってだけでも充分間
 抜けなのに、さらに間抜けなオチがついちまったってわけだ。

「…………」
 「…………」
 「…………」
 「…………」
 「…………」
 「……で?」
 「で、とは?」
 「それで、どうなったのよ!まさか何の反論もせずにそのまま残りの一年を過ごしたわけ
 じゃないんでしょ?」
 「いや、そのまさかなんだが……」
 「はあぁ!?何考えてんのよ!明らかに間違えたそいつが悪いじゃない!何泣き寝入りし
 てんのよ!」
  自分のことでもないのにやかましい奴だ。
 「放っときゃ収まると思ってたんだよ。実際三日ぐらいで向こうから謝ってきて、クラス
 の誤解も解けたしな。その後は今まで通り普通のクラス生活だ」
  あんまりすんなり終わるんで俺自身も拍子抜けしたくらいだ。

 「う~~ん。なんか気に入らない結末ね……」
  そんなこと言われてもな。実話なんだし、ラストをいじることもできんだろ。だから言
 ったんだよ、大した話じゃないって。ただ俺が情けないだけだ。
  そうやって話を終わらそうとしていると、
 「まあ、キョンが知ってるのはそこまでだよね」
  と今まで黙って聞いていた国木田が口を挟んできた。
 「く、国木田!キミ、まさか」
 「? どういうことだ?俺が知ってるのって、当事者の俺が知らないことでもあるのか?」
 「うん。後日談っていうか、裏話みたいなのがね。そうでしょ、佐々木さん」

  皆の視線が佐々木に集まる。佐々木は真っ赤になりながらあうあうと呻いている。お、
 こんな佐々木を見るのも初めてだな。今日は珍しいものがよく見れる日だ。野山に行った
 らツチノコの一匹でも見つかるかもしれん。
 「そんなどうでもいいとこ拾ってんじゃないわよ!何よ裏話って!ほら、あんた、もった
 いぶってないで話す!」
 「や、止めろ国木田!そればっかりはダメだ!」
 「うーんとね。あれはキョンが遠巻きにされてから二日後くらい、事態が収まる前の日だ
 ったかな」
  佐々木の懇願を無視して話し始める国木田。なんなんだ、俺の知らない裏話って。それ
 に佐々木のこの取り乱しようは……。まあ聞けば解るか。

 「キョン!何腰を落ち着けているんだい!僕がこんなに嫌がっているのに、キミという奴
 は黙って見過ごそうというのかい!この裏切り者ー!」
  わめく佐々木を尻目に国木田の話が始まった。

 「まだ女子の怒りは解けないみたいだねー」
 「気楽に言ってくれるなよ。こっちはほとほと参ってんだから」
  机の向こう側でキョンがうんざりしたようにぼやいた。
  ラブレターをもらって変態扱いされてから二日、キョンは未だ女子たちからの総無視攻
 撃を受けていた。男子たちも巻き添えを恐れて、また人のラブレターを盗み見たキョン(結
 局そういう風に伝播してしまった)を非難して、今やキョンに話しかけるのは男子の中で
 は僕一人ぐらいになっていた。
 「これでも心配してあげてるつもりだけど。ほら、こうしていつもどおりに接してあげて
 るじゃない」
 「ああ、そのことについては感謝してるよ。こんな形で友情のありがたさをかみ締めると
 は思ってなかったけどな」
  軽口にもいつもの切れがない。こりゃほんとに参ってるみたいだな。
 「だったらさ、本当のことを言えばいいじゃない。ラブレターは間違ってキョンのところ
 に入っていて、中身を見ちゃったのは不可抗力だって」
 「俺がんなこと言って、聞いてくれると思うか?」
 「……まず会話自体ができないだろうね」
  思わず苦笑い。対してキョンはため息も出ない様子だった。

 「なら僕が橋渡しをしてあげようか?」
  振り向くと後ろに佐々木さんが立っていた。僕同様にラブレターの真相を知っていて、
 今や女子の中では唯一キョンと接している人だ。
 「あの娘本人とはそれほど交流はないけれど、あの娘のいるグループには何人か友人もい
 る。弁解の機会ぐらいなら作れると思うよ」

  いい提案だと思った。佐々木さんは変な女として広く認知されているけど、「奇人変人・
 腫れ物扱い」って感じじゃなくて、むしろ「ちょっと変わってて癖のある面白い人」程度
 の扱いだ。実際交友関係も広くて、件の娘のいる優等生グループとも何度か連れ立ってい
 るのを見たことがある。最近はもっぱらキョンとばかりいるけどね。

  けどそんな申し立てをキョンはあっさり拒否した。
  曰く「たとえ弁解の機会を得ても、どうせ嘘だ本当だの水掛け論になるだけだ。それに
 事実が知れたら向こうの立場がなくなってしまう」と。
 「でも、それは自業自得じゃないか。向こうが勝手に間違えて、逆上したんだ。面目を失
 ったとしても、仕方のないことだろう」
  珍しく佐々木さんが食い下がるけど、結局キョンは
 「なに、人の噂も七十五日って言うだろ。そのうち収まるさ。半日夢見させてもらった代
 価ってことで、我慢するよ」

  そう言ってへらへらと力なく笑うと、トイレに行くといって教室を出て行った。
  その足取りは傍目にはしっかりしていたけれど、僕の目から見れば無理をしているのは
 明らかだった。
 「何を強がっているんだ、まったく」
  苛立ちを隠そうともせず、佐々木さんが吐き捨てた。
  うわ、これはかなりご立腹みたいだね。普段はクールなのにキョンのことになるとすぐ
 熱くなるんだから。ここは下手に刺激したらこっちに火の粉が飛んでくるかも。気をつ
 けないと。

 「うん、さっきの水掛け論だの相手の面子だのって話も建前だろうね」
  無難な話題で話を合わす、っと。
 「ああ、実際はもう彼女に関わりたくないだけなんだろう。長くはないがそこそこ深い付
 き合いだ、それくらい僕でもわかる。まったく、そこまで疲れているんなら、もうちょっ
 とこっちを頼ればいいのに。不器用な奴だ」
  素直に手を差し出せない佐々木さんも充分不器用だと思うけどね。
 「どう思う?キョンの言うとおりその内収まるのかな、これって」
 「さあね。あいにくと今までこういった事態には出会わずに生きてきたから、予測も立た
 ないよ。ただこれを世間一般で言ういじめと同列に捕らえて考えるなら、時間が解決する
 ことはないだろうね」

 言いながら、佐々木さんは眼光を鋭く尖らせていく。もしも時間が解決しなかったら、
 自然に現状が収まらなかったら、彼女はどうするつもりなんだろう。想像もつかないけど、
 敵にだけは回らないほうが良さそうだ。
  けど、少なくとも彼女たちはそんなこと考えてもいないみたいだな。

  ドアが開き、女子の一団が教室に入ってきた。件の送り主とそのグループだ。
  けらけらと笑いながら、会話に花を咲かせている。時折、「デリカシーがない」だの「女
 の敵」だのと言った単語が耳に入る。誰のことを言っているのかは、言わずもがなだ。
  休み時間はもう残りわずかで、クラスメイトの多くが帰ってきて騒がしいくらいなのに
 彼女たちの声はよく響いた。わざと響かせているのかもしれない。

  そんな彼女たちを見ていると不意に言いようのない怒りが胸の内から湧き上がってきた。
  理不尽じゃないか。なんで元凶の彼女が笑っていて、キョンが責められるんだ?
  僕は普段からよく飄々としていると言われるし、そうありたいとも思ってる。けどこれ
 はあんまりだ。キョンが例え建前だったとしてもあんたの立場を考えてたんだぞ。
  僕は常にない感情に揺さぶられた。このまま大声で真相を話してやろうか。腹の中でそ
 んな算段をしていた。
  だから僕は、そのとき隣の彼女がどんな顔をしていたのか見ることができなかったんだ。

  気付いたときには佐々木さんは女子の一団に向かって、ずんずんと突き進んでいた。
 その迫力は背後からでも充分に察せられ、とてもじゃないが声をかけることなどできなか
 った。
  そしてその勢いのまま、問題の送り主の前に来ると、その顔を真っ向から睨み付けた。
  向こうは何が何だか解らない様子で、首をかしげ、
 「え……、佐々木さん? どうしたの――」
  そう口に出そうとして、

 スパアァーーン

  すべてを言い終える前に平手打ちをくらっていた。

  クラスにいた全員がいっせいに振り向き、教室内は沈黙に包まれた。
  叩かれた本人はぽかんと口を開けていたが、やがて自分が何をされたのか理解したらし
 く、わなわなと震えだした。
  クラスの連中も状況を把握しだすと、互いに目配せをし、自分の判断が正しいのか確認
 しあった。そうして沈黙が騒然に移る瞬間、
 「いい加減にして」
  凛とした声が教室内に響いた。

 「彼はあなたの手紙を読もうとして読んだんじゃない。あなたが、間違えて彼の下駄箱に
 入れたから中身を確認しただけなの。自分の過ちに気付きもせず、被害者と呼べる人間を
 あざ笑う今のあなたはとても不愉快だわ」
  声はとても静かなものだった。同時にとても冷たく、とても鋭く、まるで氷のような言
 葉だった。あまりの切れ味に相手は反論することもできず、たじろぎ後ずさった。
  水掛け論にすらならない、圧倒的な発言力。
  氷が融け水になるように、言葉の余韻が消え全員がその意味を飲み込むまで少し時間が
 かかったようだ。しかし状況を理解しだすと、反応は一様に早かった。まず罰の悪い顔を
 し、その後非難の目を彼女に向けた。
  反論もできず、白い目に囲まれ、件の送り主は焦ったのだろう。
 「あ、あなたには関係ないじゃない」
  考えもせずそんな抗議をしていた。それが自分の間違いを肯定していることには気付い
 ていないようだった。そしてそんな精一杯の抵抗すらも佐々木さんは許しはしなかった。

「私は、自分の想い人が理不尽に傷つけられて、安穏としていられるほど寛大ではないわ。
 もし今後もあなたが反省せず、同じことを続けるのなら、目には目を、たとえでっち上げ
 てでもあなたに同様の苦しみをしてもらうから」
  覚悟して、と言いよどむことすらない、一方的な通告をしてのけた。この状況で、あの
 迫力で言われて、戦意を保っていられ人間は果たして何人いるのだろう。

  これが本気の佐々木さんか。思わず僕は舌を巻いた。敵に回らなくて本当によかった。
 多少肩身の狭い思いをしても、キョンと接し続けて本当によかった。キョン、僕も今君と
 の友情をかみ締めているよ。
  けれど、佐々木さんがすごかったのはここからだったのだ。
  完膚なきまでに言い負かされ、うつむく彼女に
 「あなたも誰かを好きになったのなら、この気持ち解るでしょ?」
  一転して優しい言葉をかけた。
  それはそれは見事な手際だった。叩かれ、罵られ、制裁通告され、ぼこぼこにされた彼
 女にとって、それは救いの言葉となったんだ。不意に掛けられた言葉に、彼女は泣き崩れ
 た。同時に頑なになった心もほどけたのだろう、
 「ご……、ごめんなさい」
  と素直に口にしていた。
 「その言葉はキョンに言ってあげて。私のほうこそ、叩いたりしてごめんね」
  謝罪をあっさり受け止める佐々木さん。

  感動の和解だ。クラスの皆もさっきとは違い温かい眼差しを二人に向けている。
  もしもあのまま打ち負かせただけだったら、彼女はクラスから浮いた存在になっていた
 かもしれない。佐々木さんはその口から謝罪の言葉を引き出し、自分があっさり受け入
 れることで、無理やりハッピーエンドを作り上げたのだ。なんて手腕だ。

  まあ、なんにせよ、これでこの騒動も一件落着かな。さっきまでの緊張も解け、思わず
 顔が弛緩する。クラスのみんなも同じようで、暖かな空気が教室を包んでいた。
  けれど、そんな空気などこれっぽっちも読まない男がいた。そう、キョンだ。
 「お~い、国木田。次の古文の予習見せてくれよ。日付から見て今日俺当たるかもしれな
 いんだ」
  間抜けな声が耳に入ってきた。
  暖かい空気が一瞬で凍りついた。みんなが恐る恐る佐々木さんのほうを見やる。僕の角
 度からは顔が見えないけど、向こう側にいた中河には見えたようだ。固まっている。
 「い、いや、今はちょっと……」
 「何だよ、他の奴に貸してんのか。しょうがねえな」
  必死になって現状を伝えようとするけれど、そこはキングオブ鈍感、まるで気付きもし
 ない。そして
 「じゃあいいや。おい、佐々木、古文のノート見せてくれ」
  よりにもよって一番選んじゃいけない選択をしてしまった。

 「……キミってやつは……」
 「ん?何だ?お前も誰かに貸してるのか?」
 「キミのために僕がどれだけ……」
 「どうしたんだ、佐々木?体調でも悪いのか?」
 「くぅっ!!」

 スパアァーーン

  本日二度目の音が教室内に響き渡り、クラス全員のため息が合唱された。

「…………」
 「あ、いや……」
 「…………」
 「そ、その……」
 「知らなかった……」
 「!!」
  国木田の語りが終わり、明かされる事実に驚きその余韻に浸りながらも、俺は何とか
 声を絞り出した。
 「ち、違うんだキョン!お、想い人というのはその、言葉のあやで!あの場はほら、嘘で
 もはっきり言い切らなくちゃ、格好がつかないだろ?言いよどんだら負けって言うか。だ
 から、その、ほんと全然そういうんじゃなくて、つまり僕が言いたかったのは――」
 「ああ、解ってるさ。確かにそういうときは嘘でも勢いをつけとかないとな」
 「そうそう!そうなんだ―――え?」
 「いやあ、それにしても全然知らなかったぜ。まさか裏で佐々木が解決してくれていたと
 は。貸し一つだな、こんどなんか奢るよ。カレーでいいか?」
 「え、あ……うん……」
  まったく、そんなに勢い込んで弁解しなくても、お前が本気であんなこと言うなんてお
 もわないさ。俺とお前の仲だ、そんぐらい心得てるって。
 なんだ佐々木急におとなしくなったな。カレーじゃだめなのか?どうした古泉、頭痛か?
 アスピリンは持ってないぞ。

 「あなたは本当に……。もしかしてわざとやってるんですか?だとしたら正直に仰ってく
 ださい、お願いします。怒りませんから」
  ペナルティを与えると言ったり、怒らないと言ったりわけの分からない奴だ。それに何
 度も言ってるが俺には何の心当たりもないぞ。
  盛大に溜め息をつく古泉。溜め息の数だけ幸せは逃げていくんだぞ。

 「くっくっ、まあ、いいよ。こんなところだろうとは思っていたさ」
  気が付くといつの間にかさっきまでうなだれていた佐々木がいつもの笑みを浮かべてい
 た。そのまま不適な視線を滑らし、ハルヒの方に向くと、
 「それにあながち悪いことばかりでもない。一年間出遅れたかと思っていたけど、この様
 子だとまだ誰も先んじているわけではなさそうだからね」
  その後しばしハルヒと無言で顔を合わせていたが、急にきびすを返すと
 「今日は楽しかったよ、キョン。予想していたものとは違ったけれど、なかなか実りのあ
 る一日だった。制服を用意してまで乗り込んできたかいがあったよ。くっくっ」
  じゃあ、また電話するよ、と言い残してさっさと帰ってしまった。

  後に残されたのは、仏頂面のハルヒと不機嫌そうな長門(俺判断)、もはや半泣きの朝比
 奈さんにケータイに出ている古泉だった。
 「ふう、何やらどっと疲れたな」
 「あなたが言わないでください。しまいにゃ殴りますよ」
  何だよ、さっき怒らないっていったばかりじゃないか。情緒不安定な奴だ。
 「しかし、なんだろな。なんか佐々木が帰ってから、こう、胸の中がもやもやするんだが」
 「「「「!!」」」」
 「何か……、気づくべきことがあるような……」
 「キョ、キョン、あんたまさか……」
 「そうか……、そうだった、今ようやく気づいたぞ……」


 「あいつ文集読んでねえ!」
 「このドアホンダラぁあぁあああああ!!!」

 ズパアアァアーーーーン!!!
  ハルヒの平手打ちは、佐々木のそれよりずっと痛かった。

~おまけ~

「すまなかったね、わざわざ案内までしてもらって」
 「気にしないでよ。キョンほどではないけど、僕も君の友達を自負してるんだ」
 「それに、仕事でもあるから、だろう」
 「ふふ、まあそれもあるけどさ」
 「……何であの話をしたんだい?」
 「そんなに睨まないでよ、僕だって好きでしたんじゃないんだから。上からの命令だよ。こう着状態が続いて久しいから、少し揺さぶりをかけろってね」
 「揺さぶるのはキョン?それとも僕?」
 「ふふ、さあ。そこら辺は上司の方に直接聞いてよ。僕は所詮末端の人間なんだから」
 「……君は、相変わらず底が読めないな。食えない奴だ」
 「そんなつもりはないんだけど、ね。ああ、ここまで来ればもういいかな。橘さんによろしく。僕のボーナスはあの人の査定しだいなんだよね」

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最終更新:2007年07月19日 18:58
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