「佐々木さんとケンカ」
きっかけは俺の何気ない質問だった。
「佐々木って男の好みとかあるのか?」
たしかこんな様な質問をしたはずだ。
すると佐々木はくっくっといつもの笑いを見せた後これまたいつもの長台詞をはいた。
「いいかい?キョン、君も健全な男子中学生なのだからそういったことに興味があるのはわからないではない。
けれどね、前にも言ったとおり僕にとっては恋愛なんて精神病に過ぎないんだ。内面を考慮に入れてさえそれなのだから
外見なんてそれ以前の問題さ、むしろほとんど問題にならないといっていいだろう。
まぁ僕だって人間だから余り不潔だったりするのはいやだし、今のところそんなものに出会ったことは無いけれどもしかしたら
生理的に受け付けない顔だってあるかもしれない。でもそんなものは僕にとってはどうでもいいことなのさ。
時折外見だけを人間の評価基準にする人を見かけるけど僕には信じられないね。
でもまぁそうだね、親交を深めるという点においてはキョン、君見たいタイプが理想かな」
なんともまぁ佐々木らしいお言葉だ。
しかも最後に結構恥ずかしい言葉を付けやがった。
「はぁ・・・・・・なんともお前らしいな」
やっぱりこの手の話題は佐々木にはだめか。
そう思ってこの話題を打ち切ろうとしたとき佐々木から追い討ちが入った。
「それで、君はどうなんだい?」
「あ?」
「好みの異性のタイプだよ、僕は答えたじゃないか、君みたいなタイプがいいって。君が答えないのはフェアじゃないよ」
「ぬ・・・・・・」
なんだかだまされてる気がする。
あの長台詞で、散々恋愛を否定した上にこいつが言ったのは友人の好みだ。
しかしここで俺が友人の好みを言おうとしてもこいつのことだから口車で俺に恋愛的異性の好みを言わせて来るだろう。
くそ、やっぱりこいつに口では勝てないのか?
ここまで考えた後で俺はちょっとしたいたずらを思いついた。
そういえばこいつはさっき恥ずかしいことを言ってくれたな・・・・・・。
「そうだな・・・・・・まず髪はショートのほうがいいな」
「ほう」
俺の言葉を聞くと佐々木は自分の髪を触った。
「それでだな、知識量は多いほうがいいな。話してて楽しいのがいい」
「ふ、ふむ・・・・・・」
「体系は細身で、多少ボーイッシュな感じのほうがいいかもな。」
「・・・・・・・」
佐々木の顔がだんだん赤みを帯びてくるのがわかる。
「そうだな、後は・・・・・・気兼ねなく話せる奴がいいな、恋人だからって変に意識しなくてすむようなのがいい」
「キョ、キョン・・・・・・それって、それって・・・・・・」
佐々木の顔は既に真っ赤だ。
なんだ、こういう顔も出来るんじゃないか。
「それって・・・・・・僕の」
「ああ、佐々木の特徴を言っただけだからな」
「僕のこ・・・・・・へ?」
普段の佐々木では絶対に見せないような顔になった。
大成功。ひごろやられっぱなしなぶん言いようの無いカタルシスを感じる。
「はっはっは!どうだ佐々木!面白かったか?」
「・・・・・・・」
「佐々木?」
「キョン・・・・・・君って奴は・・・・・・君って奴は」
佐々木が下を向いてぶつぶつ言っている。
良くは聞き取れないが俺に一本取られたのがそんなに悔しいか。
ん?でもさっき挙げた特徴って・・・・・・。
「本当の好みでも8割くらいこのまんまだな」
具体的に言うと髪形とか。
「君って奴は!・・・・・・へ?」
俺のこの発言を聞いた佐々木はさっきと同じに見えても少しベクトルの違う驚き顔をした。
おお、こんな顔も出来るのか。
今まででも真っ赤だった顔がさらに真っ赤になっている。
「っ・・・・・もう知らない!」
そういって佐々木は教室から出て行ってしまった。
しまった、結構怒らせてしまったようだ。
帰りになっても佐々木は怒っていたようだが、結局二人乗りで塾に行った。
顔はまだ赤かった。
最終更新:2007年07月20日 07:26