9-378「現実」

ギシギシギシギシと軋む音が響き渡る。
見えるは、闇。その中で映える白い肢体。
何処を、何を間違えたのだろう? 今となっては、遠い過去の話。
「キョンキョンキョンキョンキョンキョンキョンキョンキョンキョンキョン」
壊れた蓄音機。かつての親友。
佐々木は狂ったように、俺の名前を呟き続ける。
どうかしている。どうかしてしまう。まるで呪詛だ。
この呪いを聞くたびに、俺はあの輝かしい日々を思い起こす。
ハルヒがいて、佐々木がいて、みんながいた、あの頃を。
「―――――――っ」
絞められていた首が開放される。酸欠でクラクラする。
胡乱な頭は、過去の己の醜態を模索する。
ドコダドコダ、と騒ぎたて、罪の意識を掻き立てる。
「キョン、大好きぃ。キョォン―――――――」
彼女は俺の本名を久しく呼んでいない。いや、彼女の中には『俺』など存在しないのだろう。
いるのは、ただ彼女の理解者であったキョンという人間だけ。
「さ…さ――」
声が出ない。声帯などとうの昔に潰されていた。
呼びかけることさえできない。
『お前は間違っている』
『こんなことの為に神の力を持ったわけじゃないだろう』
『なんでハルヒを●した』
投げかけ続けた声も、意味をなさないノイズに過ぎなかったのだろう。
ただ、そのノイズが彼女をここまで狂わせた事は、確かだった。
そして、壊れた蓄音機だった俺は針を潰され、今は彼女が代わりに呪詛を紡いでいる。

行為が終わる。いつもの様に彼女がしな垂れかかってくる。
そしてやってくる急激な眠気。この暗い世界で、唯一の安息の時。
それが、意味の無い、無価値なものだと分かっている。

だから、せめて夢を見よう。もう失くしてしまったあの輝かしい日々を。
今度こそ、夢で終わらせない為に。


>Next to Melancholy ……………………And,endless loop.

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最終更新:2008年01月27日 08:10
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