詩歌藩国 @ wiki

F級フレーム開発コンペ パイロット設定文

最終更新:

suzuhuji

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 その日、土場藩国には腕におぼえのある者が老若男女を問わず集まっていた。
彼らはみな、とある就職活動の真っ最中だった。
この国で新しく開発されるRB、F級フレーム。
そのパイロットになろうと集まってきたのだった。

大変なのは受付係をしていた缶だった。
いや、缶というか藩王のような気もするが、テラ領域の慣例にもれずこの国でも藩王の地位は低い。
とりあえずヒマなやつに受付やらせとけ、という理由で適当に配置されたあさぎだったが、なにせ全能力評価-5の最弱ボディである。

「あーハンコまちがえたーまあいいかー」

大勢の参加者は減るどころか増える一方。設定国民やとったほうがよかったんじゃないかというほどの混雑具合だった。

そんな調子でせっせと処理していた履歴書の中に、ひとつだけ風変わりなものがあった。





氏名:P・E・テレフタレート
犬種:ボーダーコーリー
性別:オス
身長:53㎝
体重:20㎏

■学歴

0歳
ネバダ州の片田舎に生を受ける。

2歳
牧羊犬を目指して弟子入りする。
菜食主義に目覚める。

3歳
地元最大の暴走犬集団「ウォードッグ」に入る。
改造手術を受けて変身できるようになる。
アニメ(バンバンジー)を見て衝撃を受ける。

11歳
自宅警備員への就職を斡旋する会社を設立する。
ベトナム戦争で南ベトナム解放民族戦線に参加。勲章をもらう。
大統領暗殺に失敗する。


世界移動後
汎銀河大戦に太陽系総軍側で参加。転職を考えはじめる。
犬用ウォードレスを研究、開発する。
「オーマとのつき合い方」という本を出版する。
アイドレスをはじめる。←今ここ



そこにいたのはどう見ても犬だった。しかも二本足で立っている。
トレンチコートをかちっと着こなして、サングラスに葉巻というなんとも貫禄のある姿だった。
そんな根源力50万くらいありそうな銘入り犬士っぽいやつは葉巻の紫煙をくゆらせながら

「書類になにか不備でも?」

とたずねてきた。
落ち着いた、渋みのある声だった。

これを見てあさぎは

「うまー棒くれーはらへったー」

なんか適当なことを言っていた。
知識評価-5ではツッコミなどという高等テクニックを使うことは到底無理だった。



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 テレフタレートは犬である。それも老犬だった。
昔は漢だったこともあるが、今では隠居して孫との散歩するのが数少ない楽しみというごく普通のじいさんである。
昔は若さにまかせて色々と無茶したもんだとは本人の弁だが、履歴書を見ればわかるように、ちょっと無茶しすぎな人である。
普段は多くを語らないが、酒を酌み交わした者はみな
「ベトナム戦争は地獄だった」
という彼のとつとつとした語りを小一時間ほど聞かせられるのがつねだった。

そんな自由気ままな年金ライフを送る彼には、昔から続けている趣味あった。
ナショナルネットとゲームである。
ちなみに、なんで犬がネット使えるんだなどと言ってはいけない。無名世界観ではよくあることである。
仕事をやめて、これで思い切り徹夜ゲーできるぞと張り切ってた彼が見つけたゲーム。それがアイドレスだった。
そうして彼は知ってしまった。正確にいえば思い出してしまった。

ラウンドバックラーを操るその快感を。

酒もタバコも女もやめた。年を重ね、老いてゆくうちに忘れてしまった。
だが汎銀河大戦で経験したギリギリの緊張感は、あの興奮だけは老いさばらえた今でも鮮明に思い出すことができた。

トポロジーレーダーに映る数え切れない敵機。
握り締めたスロットルに感触。
ウォータージェットによる爆発的な推進と急減速。
バレルロールを決めた時のひねるような横G。

すべてが懐かしかった。
もう一度だけでいい。
この手でRBを駆り、宇宙を飛びまわってみたかった。

そうして彼は土場藩国へとやってきた。
そこにいたのはただの老いぼれ犬ではなく、ぎらぎらとした目を持つ漢だった。

その後、土場に「絶氷の飼い犬」と呼ばれるRB乗りが台頭したとか、しないとか。
真偽のほどはさだかではない。

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