規則総論

  • Suica/PASMO大回り、というかSuica乗車券・PASMO乗車券を利用する場合の規則は、適用範囲が複雑です
    • 前提として、Suicaには、JR東日本が定めた東日本旅客鉄道株式会社ICカード乗車券取扱規則があり、またそれ以外の鉄道会社がそれぞれ定めた、PASMO ICカード乗車券取扱規則をテンプレートとした各社ごとの取扱規則があります(以下、JR東日本含めた各社の取扱規則を「取扱規則」と称します)
    • 自動改札にタッチして入場した瞬間は、その駅の属する鉄道会社の取扱規則が適用され、発駅がICカードに記録されます
    • 各路線に乗車中は、その乗車している路線の鉄道会社の取扱規則が適用されます
    • 自動改札にタッチして出場した瞬間は、その駅の属する鉄道会社の取扱規則が適用され、その結果算出された運賃がICカードから引き落とされます
    • JR鶴見駅以外の乗り換え駅(自社内・別会社問わず)の乗り換え自動改札にタッチした場合、乗り換える前に乗車していた鉄道会社の取扱規則により、その駅で出場・下車した場合の運賃がICカードから引き落とされます
      • JR鶴見駅の場合、JR駅から乗車し、中間改札を経ていない場合のみ、運賃の引き落としは行われない

JR線内のみを大回りする、東京近郊区間大回りと表面上同じ大回りを行う場合

  • JR東の取扱規則の次の2条文により、東京近郊区間大回りとほぼ同じ大回りが可能となります(下線は記述者による)
(Suica乗車券を使用する場合の運賃の減算)
第27条 Suica 乗車券を第21条第1項の規定により使用する場合、出場駅において、入場駅から同一の取扱区間内を経由して最も低廉となる運賃計算経路で算出した普通旅客運賃をSF残額から減算します。この場合、小児用Suica乗車券にあっては小児の普通旅客運賃を、その他のSuica乗車券にあっては大人の普通旅客運賃を減算します。

(ICカード乗車券の効力)
第29条 第21条第1項の規定により使用する場合の、Suica乗車券の効力は次の各号に定めるとおりとします。
(1)当該乗車区間において、片道乗車1回に限り有効なものとします。この場合、小児用Suica乗車券にあっては1枚をもって小児1人、その他のSuica乗車券にあっては1枚をもって大人1人に限るものとします。ただし、小児用以外のSuica乗車券から大人の片道普通旅客運賃相当額を減算することを承諾して使用する場合には、小児1人が使用することができます。
(2)別表第1号、第2号及び第3号に規定する同一の取扱区間内にある駅相互間を前号の規定により乗車する場合で乗車経路が環状線1周とならないときは、当該取扱区間内に限りいずれの経路も乗車することができます
(3)途中下車の取扱いはしません。
(4)入場後は、当日に限り有効とします。
  • 「片道乗車1回」の定義は、この取扱規則には示されていないが、第3条2項に「この規則に定めのない用語の定義については、旅客規則の定めるところによるものとします。」とあり、同社旅客営業規則第26条1号に「普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車船」とされている
    • そして「普通旅客運賃計算経路の連続した区間」は、同規則68条にて「折り返さない、環状線一周を越えない」と定義されている
  • 別表第1~3号とは、それぞれ、東京、仙台、新潟のSuica適用区間を定めたもの
    • 特に、東京と新潟のSuica適用区間のうちの自社鉄道線区間は、それぞれの近郊区間と完全に一致している
  • また、27条より「最安運賃を引き落とす」ことが定められており、これは紙のきっぷの場合の「大回りの乗車券も発売は可能」というルールとは明確に異なっている

東京近郊区間大回りではできてSuica大回りにはできないこと

  • 東京近郊区間大回りでは認められている「環状線一周」の大回りは、以下の条文により禁止されています
    • 環状線一周の乗車をすることはできるが、その場合、最短経路ではなく、実経路での運賃を現金払いしなければならない=大回りにはなり得ない
第42条 Suica 乗車券又はSuica定期乗車券を使用して入場した後、任意の駅まで乗車し、出場することなく再び入場駅まで乗車して出場する場合は、第27条の規定にかかわらず、実際乗車区間(券面表示区間内での乗車を除きます。)に対する普通旅客運賃を支払い、当該Suica乗車券又はSuica定期乗車券の出場処理を受けなければなりません。
  • また、東京近郊区間大回りでは認められている「複数葉の乗車券の併用」なども認められません
第23条 1回の乗車につき、2枚以上のICカード乗車券を同時に使用することはできません。
(中略)
6. 他の乗車券と併用して使用することはできません。ただしSuica定期乗車券の券面表示区間内の駅を発駅又は着駅とする乗車券を併用する場合及び新幹線に有効な乗車券類と併用して新幹線用の乗換改札機を使用する場合を除きます。
  • さらに、東京近郊区間大回りでは認められている「振替輸送」も認められません
(列車の運行不能の場合の取扱方)
第44条
(中略)
2. Suica乗車券を所持し乗車する旅客及びSuica定期乗車券を所持し券面表示区間外を乗車する旅客が自動改札機による改札を受けた後、列車が運行不能となった場合は、次の各号の1に定めるいずれかの取扱いを選択のうえ、請求することができます。
(1)発駅まで無賃送還をするとき
乗車区間の運賃は収受しないものとし、無賃送還後に発駅において、当該Suica乗車券又はSuica定期乗車券に対する出場処理を行います。
(2)旅行を中止したとき又は発駅に至る途中駅まで送還したとき
旅行中止駅において発駅から当該駅までの区間について第27条及び第28条の規定により算出した普通旅客運賃を収受します。
(3)不通区間を別途旅行するとき
運行不能となった区間を旅客が当社線によらないで別途に旅行を希望する場合は、発駅から旅行中止駅までの区間について前号の規定により取り扱います。
  • 第1号により、無賃送還は認められる
  • しかし第2・3号により、「無賃送還でない場合、乗った分は乗った分として容赦なく徴収」とされ、さらにこれら以外の規定が存在しないため、振替輸送は受けられない

Suica/PASMOにより、複数の会社をまたいで大回りする場合

  • この場合、JR東の取扱規則が適用される場合は、以下の取扱規則があります(下線は記述者による)
(接続駅で改札を受けずに乗継ぐ場合の運賃の減算)
第51条 Suica 乗車券(第49条第2項第1号から第3号に規定する発行会社のICカード乗車券でSuica乗車券に相当するものを含む。以下本章において同じ。)で入場し、接続駅において改札を受けることなく当社線を含む複数の鉄道会社線(合わせて4社以内に限ります。)を乗継いで乗車する場合は、出場駅において、次の各号に定める金額をSF残額から減算します
(1)第2号及び第3号に該当しない場合は、第27条の規定による当社の普通旅客運賃と鉄道会社毎に定める普通旅客運賃との合算額
(2)乗車区間の入場駅及び出場駅が当社線となる場合は、両駅間の経路に他の鉄道会社線を含むときであっても、全乗車区間について当社線を利用した場合の第27条の規定による当社の普通旅客運賃
(3)別に定める乗継割引適用区間又は他の鉄道会社が定める割引適用区間が乗車区間に含まれる場合は、第1号の規定により算出した金額から当該割引額を差し引いた金額
  • また、JR東以外の鉄道会社(交通局も含む)の取扱規則のテンプレートである、PASMO評議会が公開している規則には、以下の条文があります(下線は記述者による)
第13条 旅客がICSFカードを使用して乗車する場合、出場時に当該乗車区間の大人片道普通旅客運賃を減額する。ただし、小児用ICカードにあっては、小児片道普通旅客運賃を減額する。
2 当社の駅発着となる場合で、当該発着区間内に他のIC鉄道事業者を含む場合であっても、特に認めた場合を除き、全線当社を使用したものとみなして、片道普通旅客運賃を収受する
3 乗換駅を経由して着駅で出場する場合は、発着区間の片道普通旅客運賃相当額と当該乗換駅における収受額とを比較し、不足額は収受し過剰額は払いもどしをしないものとする。

第14条 旅客がICSFカードを使用して入場した後、各IC鉄道事業者の定める取扱区間内を連続して乗車する場合、出場時に減額する旅客運賃は、実際に乗車した経路に基づき、各IC鉄道事業者で定める大人片道普通旅客運賃の計算方による運賃の合算額とする。また、小児用ICカードのSFから減額する旅客運賃にあっては、各IC鉄道事業者で定める小児片道普通旅客運賃の合算額とする。
2 前項にかかわらず、改札機等での旅客運賃の減額は、入場した駅から4社局以内の各IC鉄道事業者の定める取扱区間内を連続して乗車した場合に限る。ただし、5社局以上を連続して乗車した場合であっても、4社局以内を連続して乗車できる経路がある場合には、4社局以内を乗車したものとみなして運賃を減額する。
3 前項で減額するときに、乗車経路が特定できない場合は、実際に乗車した経路と異なる経路を乗車したものとみなして運賃を減額することがある。
4 IC鉄道事業者が規定する旅客運賃に割引を適用する区間を乗車する場合は、出場時に当該区間の片道普通旅客運賃相当額から割引額を減じた額を減額する。ただし、同一IC鉄道事業者の割引適用区間が重複する場合にあっては、次の各号に定めるとおりとする。
(1)割引額が異なる場合には、旅客運賃が低廉となる割引を適用する。
(2)割引額が同一の場合には、乗車経路において最初に発生する割引を適用する。
  • 両者にはきわめて微妙、かつ実際の大回りに関係する差異がありますが、それを置けば、JR東の第51条2号・PASMOの第13条2項により、複数社を通過したとしても、発着駅が同一社の場合は自社内の最安運賃を引き落とす、とはっきり明示されていることになります

Suica/PASMO大回りに関する制限・禁止事項

  • まず、Suica大回りの禁止事項「環状線一周禁止」「振替輸送不可」は、それぞれPASMO取扱規則の第26条・第27条で規定されており、Suica/PASMO大回りでも同様に禁止されています
  • 「複数葉のICカードや乗車券との併用禁止」については、PASMO取扱規則には明文規定がありませんが、第5条の「使用時には改札を受けねばならない」ということから、同様に「事実上不可能」と思われます
  • 「片道乗車1回に限る」という禁止事項は、PASMO取扱規則では以下のとおり規定されており、Suica大回りと同様に禁止されています
(効力)
第15条 ICカード乗車券取扱区間内を、ICSFカードを使用して乗車する場合の効力は次の各号に定めるとおりとする。
(1)当該乗車区間において、片道1回の乗車に限り有効なものとする。この場合、ICSFカード1枚をもって1人が使用することができる。なお、無記名ICカードから大人片道普通旅客運賃を減額することを承諾して使用する場合には、小児1人が使用することができる。
(2)入場後は、当日限り有効とする。
(3)途中下車の取扱いはしない。

重箱の隅:Suica取扱規則とPASMO取扱規則の微妙な差異

(執筆中)
最終更新:2008年04月04日 19:41