69-22『LOVE THING』

日曜日。誰もいない俺の家。両親と妹は、親戚の家に行き、夜まで帰らない。
…………となると、やっぱり彼女を招きたくなるのは、男の性だよな。
「ねぇ、キョン。知っているかい?人の身体で一番大きい細胞は、卵細胞だよ。その卵細胞にこの精子が受精し、子宮に着床したら妊娠となる。」
「生物かよ。雄と雌に別れた生物は、概ねそうだろ。」
雄が精巣から精子を出し、雌が卵巣から卵を出し。
「確かにそうだが、快楽目的で生殖行為に励むのは、『知性』を持つ故なのかな。」
「知性ねぇ。知性ってよりは、原始的な本能に近い部分を刺激されるから、擬似的な生殖行為をするんじゃないのか?
例えば猿にオナニーさせると、死ぬまでオナニーするそうだ。猿には知性は多少あるが、理性はない。」
彼女………佐々木を呼んで、とりとめのない話をする。
「成る程。それらをカテゴライズするのが知性と理性なんだろうね。」
「昆虫なんか、反射だけで生きているからな………………」
ぺったりくっつき合い、ベッドの中での会話。これはピロートークってやつなんだろうか。
「ん?君は何を言っているんだ?今からが本番だろう?ピロートークは、後戯だよ。」
そうなのか。
「くつくつ。本能に任せて朝から夕方まで盛るのもいいが、やはりこうした君との時間は、僕には必要でね。」
「そうかい。………ま、確かにお前とこうした時間を過ごすのも悪くない。」
普段が普段だ。ハルヒやら橘やらでお互いゆっくり過ごす時間もないからな。
「それに、だ。お前は俺が求めて猿になるようなヤツだったら、まず家に来てねぇだろ。」
俺の言葉に、佐々木は含み笑いをする。
「くつくつ。御名答。もし朝から夕方まで盛るなら、僕は君との付き合いを考えていたよ。」
「やれやれ。」
確かに佐々木とのセックスは、好きだ。しかし、だからといってそればかりをメインにしても面白くねぇよな。
「お前の想いに気付いたのが今で、良かった。」
中学時代なら、こっちだけの思いをぶつけていて、佐々木に負担をかけていただろう。
「くつくつ。それはお互いだよ。中学時代なら、君が僕を壊すか、僕が君を壊していたか、お互い自壊したか。または奇跡的にうまく回るかだろうね。」
傍目には、佐々木はサバサバ振る舞っているし、本人も『物分かりの良い』風にしていたが…………付き合ってみるとよくわかる。佐々木の本質は、独占欲が強く、表に出さないだけで、子どもっぽく我が儘だ。
そこを理解しない限り、佐々木と付き合っていくのは絶対に無理だ。中学時代なら、佐々木の被るペルソナを勘違いしていたはずだ。そうなっていた時の佐々木を想像すると…………実に怖い。
どこまでも堕ちて行っていただろうからな。
「くつくつ。…………そこは君だけ理解してくれていたらいいんだよ。」
佐々木はニヤリと笑う。
「くつくつ。」
……………さ、佐々木?何故また服を脱がす?
「いや、見解一致が嬉しくてね。…………正解者には御褒美をあげないといけないだろう?」
「アホか!」


こうした場合は、やっぱり俺がリードしたいものだ。…………しかし、こういう場合の佐々木に逆らわないほうがいい。
佐々木が『俺を気持ちよくしたい』と思ってくれているんだ。それを素直に受けておくか。
「んっ……………」
佐々木の舌が、首筋を這い、胸に流れる。…って!
「さ、佐々木?!」
「くつくつ。性感帯というものは、男女差が少ないらしくてね。」
ま、まさか……………
「くつくつ。君によって生じた、僕の気持ちいいところを知ってもらいたくてね。さぁ、その不粋な手をどけたまえよキョン。」
佐々木がニヤリと……………こ、怖え!めっちゃ怖え!
「くつくつ。」
佐々木は服を脱がせ、背中に指を這わせる。………………ゾクッとするが、これは…………
「気持ちいい………よね?」
「…………ふっ…………ああっ!」
耳を舐められ、思わず声が漏れた。ぎゅう、と佐々木にしがみつき、声を洩らすのを必死に耐える。
「くつくつ。」
嗜虐心をそそられたらしい。佐々木は………
「『可愛いぜ、佐々木………』」
と、耳許で囁いた。急速に頬に血液が集まる。……………お、俺は普段なんつー事を…………!佐々木は俺のズボンのベルトを外した。
「『普段澄ました顔なのにな。………見せろよ、その顔。』」
佐々木が囁く。や、やめ……………っ!

「…………と、まぁこんなところさ。普段の仕返しも兼ねた、君へのお返しなんだが、お気に召したかな?」
「顔から火が出そうだ……………。」
ああ。あれは恥ずかしい。気持ちいいが、恥ずかしい。
「お気に召したならば、何よりだ。キョン。僕は君といる今日を楽しみたい。…………意味はわかるよね?」
無論だ。つまり、こうした恥ずかしい事よりは、愛情を確かめ合いたいんだよな?
「分かって頂けて、それは何より。」
佐々木は服を脱ぐと、丁寧に畳んでいく。
「嗜虐的な事もいいんだが、しょっちゅうされては堪らない。奴隷じゃないんだ。」
「善処する。」
絶対にこいつ、何かの機会で仕返ししてくるからな。…………ん?待て。
「んじゃあ、お前もあれは気持ちよかったのか。」
佐々木の顔が赤くなる。
「君が僕を開発したんだろうが。あれでもソフトなうちだ。それ以上言うなら、一番きつかったヤツをしてやる。」
佐々木が真っ赤な顔をして睨む。失礼しました。佐々木が攻めに回ると、えげつないだろうしな。
「えげつないのは君だろうが、全く。………そう言うつれない男は、僕が仕置きをしてやろう。」
おーい、普通にするんじゃないのか、佐々木さーん?!

と、まぁ…………佐々木にこってりやられちまったわけだ。


「正真正銘のピロートークだな。」
佐々木が、ベッドの上で枕に顔を預けるのを見て、俺は皮肉たっぷりに言った。
「…………お前が、どういう感覚でいたか、知れたのは良かったが。」
「やめたまえよ、キョン…………。僕は自己嫌悪の最中なんだ。」
真っ赤になる佐々木。
「いやらしいお前も、俺は好きだぜ。」
「また、そういう………………!」
普段が理性的だからな。たまに暴走する位でいいだろ。………控えて欲しいが。これじゃ、別の何かに目覚めちまう。
「さ、飯食って勉強すっか?佐々木。」
真っ赤になる佐々木の髪を撫でる。佐々木は俺を睨みながら言った。
「その前にシャワーだよ。君の身体中の僕の唾液を洗い流す!」
やれやれ。

――――――平行世界――――――――――――
「で、どうだった?佐々木。あんたがあたしにしてた事を仕返してみたが。」
「…………いざ、されると…………は、恥ずかしいものだな……………」
ポニーテールの少女が、茶髪の美少年に笑いかける。
「最中に何度もやられてみろ。お前は一回で済むけど、あたしゃ何回もだ。ちったぁ自制しろ。普段、理性的な分際で、ったくどうしようもねぇ。」
「き、キョン子………すまない。そこは広い心で…………」
ぎゅう、と少女を抱き締める茶髪の美少年。
「よし、シャワーだ。べたついて気持ち悪い。」
「くつくつ。君の唾液だろう?別に洗い流さなくても。」
「あたしが気持ち悪いんだよ、アホ!」
少女は思った。
「(な、なんか…………もし平行世界があって、性別が反転してたら、同じような事されてそうな予感がするわ…………)」

…ハルヒが「性別が反転してて、その人達と話せたらいいわ!」と言い出す少し前のお話。
そして、キョン子と佐々木(男女)が話して赤面し合い、キョンはハルヒとハルヒコの面倒を見させられ、貧乏クジを一手に引き受けたという…………。

END

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最終更新:2013年03月03日 03:04
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