69-154『チョコレート症候群』

別題『バレンタイン症候群』

「そういえば、二月はバレンタインだな。」
こんな女臭い集団にいるんだ。さすがにゼロはない。これは規定事項だ。そのはずだ。
佐々木は、さも興味なさそうに言った。
「バレンタインねぇ。僕はキョンに渡すつもりだよ。案外イベントに拘るんだ、キョンは。」
ああ。お前はあの現地人と盛って猿になっていろ。僕の目当ては橘だ。
「古泉さんもなのです。案外嫉妬深いのです。」
お前もか。いや、まだ周防が……
「――佐々木――橘――チョコ――レート欲し――――い」
ああ。宇宙人に求めた事が間違いだったよ。昆布め。利尻島で売られていろ。
「構わないよ。友チョコというやつだね。」
「バレンタイン、楽しみなのです!」
和気藹々とした雰囲気……ダメだ。ここは僕の居場所じゃないよ、姉さん。僕は彼女達から離れ、街を歩く事にした。

「で、藤原くん。君もチョコはいるかい?友チョコで悪いんだが。……あれ?」
「あれ?藤原さん?」
「――――?」

街に出て、花屋に行く。……やはり安らぐ。僕に似合う花は、あの【表記不可】どもではない。
花の香気に癒されつつある僕に、店員は声をかけてきた。
「彼女さんへのプレゼントですか?」
「む?……ああ。そんなところだ。」
……こうした見栄。男とは悲しいものだな……。結局、僕はパンジーを買ってしまった。

「ふええ~……彼女さんへのプレゼントですかね?涼宮さん。」
「あいつ、ルックスだけは古泉くんばりに良いからね。でもパンジー贈るなんてねぇ。意味深長ね!」
「花言葉…私を思って下さい、など……」
「片思いで、バレンタインに告白とか?」
「「きゃー!きゃー!」」
「ユニーク。」


さて……買ったはいいが、どうするかね、このパンジー。
佐々木や橘や周防に渡しても、あいつらは喜ばないだろう。まぁいい。明日考えるとするか。

「あれ?ハルヒ。お前何してんだ?」
「キョン。古泉くんも。」
「二人とも、彼女さんと今からデートですか?」
「んっふ。そんなところです。」
「そうそう、さっきね……」
「ほ、ほう……」
「佐々木○○と、橘京子に確認していて欲しい。」
「ええ、わかりました。貴方も宜しいですか?」
「ああ。」

しかし、見れば見る程愛らしい花だ。寒さに耐え、誇り高く咲く花。僕にぴったりだな。
「ふくくっ……所詮あいつらに僕の魅力なんて……。よし、北高のあいつらにアピールしよう。」

「へぇ!藤原くんがねぇ。」
「らしいぜ。」
「そうか。なら、彼にチョコは渡せないなぁ。」

「藤原さんが?初耳なのです!」
「まぁ、彼も魅力的ではありますからね。誰にあげるかは存じませんが、幸せになって欲しいものですね。」

次の日。僕は北高に行った。
まずは僕の魅力をアピールしなくてはなるまい。これは規定事項だ。
「よう。」
む?現地人か。何故こいつはこんなに友好的なんだ?
「貴方でしたか。お待ちしていましたよ。」
こいつも……。僕は結局、あのSOS団とファミレスにいた。
赤い顔をしたみくる姉さんと、涼宮ハルヒ。興味津々といったインターフェース。
こ、これは……?

「(ほ、ほら!みくるちゃん!聞きなさいよ!)」
「(ふええ~!は、恥ずかしいですぅ~!)」

ふくくっ……!時代は僕に向いているという事か!
結局、何も起きないまま2月14日を迎えた。しかし。僕はあの三人のうち、いずれかからチョコを貰えるはずだ。これは規定事項だと言って良い。
僕は、機会を待った。


「はい、キョン。古泉くん。義理。」
「お前……古泉には豪勢なのに、何故俺には『五円があるよ』1つだ……!」
「(羨ましい人ですねぇ。)」

「キョンくん、古泉くん、チョコレートですぅ。」
「ありがとうございます!凄い嬉しいですよ朝比奈さん!」
「お手製ですか。んっふ。御返しに迷いますね。」

「カカオマス、砂糖、油脂を混合し、調合した。」
「す、すげぇ……板チョコだが、SOS団のマークが入っている……」
「ど、どう見ても市販のチョコレートですね……」

……あ、あれ?

「キョン、待っていたよ。僕の本命さ。有り難く受け取りたまえ。」
「ちょっ!お前!」
※詳しくは、バレンタインに佐々キョン書きます。

……は、はは……結局は、ゼロ……
未来に帰ろうかな……。僕はパンジーに目を落とした。
「お兄さん、何やってるのー?」
顔を上げると、そこには猫を抱いた少女が。
「なんでもない。それより暗くなると危ないから、送ってやろう。」
「ありがとう♪」
「にゃあ♪」

少女を自宅に送り届ける。少女は、暫く待つよう言うと、僕に山盛りの四角いチョコをくれた。
「ありがとう。お礼にこれあげるー。」
純粋な好意が暖かい……。
「……ありがとう。なら、これは僕からのお礼だ。もらってくれるか?」
僕は、少女にパンジーを手渡した。
「お花ー♪ありがとう、お兄さん!ねぇ、お名前は?」
僕は、立ち上がると言った。
「どうしても呼びたいなら、藤原というといい。」
「うん!ありがとう、藤原くん!」


翌日。目が覚めると、枕元に姉さんとお母さんからのチョコが。
ああ。ありがとう。素直な気持ちで受け取った。

「おはよう、藤原くん。」
佐々木だ。顔がテカっているが……突っ込んだら負けだろう。禁則事項を朝から聞きたくもない。落ち込む僕に、同じくテカった顔をした橘が声をかけてきた。周防は、悲しそうな表情をしている。
「残念でしたね。……でも、藤原さんなら大丈夫なのです!」
何がだ?お前ら、二人して僕を虐めに来たのか?
「よし。皆で遊びに行こう。僕とキョンが、君の分を全額出してやる。」
「私と古泉さんが出しますよ、佐々木さん!」
あ、あれ?

「よう、藤原。残念だったな。」
お前まで何を……
「あんた、良いところあるからさ、絶対次があるわよ。ね、みくるちゃん。」
「そうです!落ち込まないで下さいね?藤原くん。」
だから、お前ら……何を……
「……これ、読んで。」
は、ハードSF……このインターフェースは何を……
「んっふ。次の日曜日にでも、皆で遊びに行きますか。」
「そうね!キョン、古泉くん、佐々木さんと橘さんも誘いなさい!」

そして、遊びに行ったわけだが……訳がわからない。ただ、やたらと現地人が優しかったのが印象的だった。
そして……

「藤原くーん!」
「ふくくっ。待たせたかな?」

時々、あの少女と会い、優しいお兄さんをしている。つまらんプライドを壊してくれたお礼だがな。

……この少女が、あの現地人の妹だと知り、かつ六年生という事実を知った時は、自分で自分に禁則事項を仕掛けたが、それはまた別の話だ。

END…?

作者注:
バレンタインに書く佐々キョンとリンクしますので、END…?です。

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最終更新:2013年04月01日 01:22
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