70-437『卒業アルバム』

寄せ書き。

学校は離れるが、ずっと友達でいようぜ!
須藤

また遊ぼうな。
中河

高校でも宜しく!
国木田

キョン
キミと進路は離れるけど
僕達が築いた友情は
高校でスタートする
生活でもきっと続くと信じている。
佐々木

SOS団の罰ゲームで、卒業アルバムを持ってきたわけなんだが、何故か空気が最悪だ。
皆揃ってお通夜の雰囲気なんだが……。

別に至って普通のアルバムだぜ?
オリエンテーリングだって端に少し写っているだけだし、中総体だって中河の応援に行った時に軽く写っているだけだし。
体育祭だって文化祭だって、合唱コンクールだって修学旅行だってそうだ。
こんな普通のアルバムを見て、何故こいつらはこんなに凹むのかね?

「……バイトが入りました……」
古泉が席を立つ。何故お前まで暗いんだ?!

※ここからは第三者視点。
写真。オリエンテーリング。
楽しそうに弁当をつつきあう二人。見ているほうが微笑ましくなる、初々しいカップルのそれだ。

写真。修学旅行。
大部屋の写真にさりげなく映る二人。寝そべり本を読み、まったりと過ごしている。佐々木もキョンも、心底リラックスした様子だ。

写真。中総体。
中河のトライの後ろで、興奮しながら手を繋いでいる二人。

……などなど。
想定はしていた。しかし。ここまでとは予想外だ。
今なら瞬獄殺が出来るかも知れない。いや、獅子咆哮弾も可能だろう。ハルヒはそう思った……。


「おや、キョン。涼宮さん達も。皆さんお揃いで。」
佐々木がハルヒ達に声をかける。
ハルヒは、噛みつきそうな。長門は絶対零度の。みくるは泣き出しそうな視線を佐々木に送る。
「アルバムかい?これはまた懐かしい。」
しれっ、とその視線をかわし、佐々木はキョンの横に座ろうとしたが、長門に引っ張られ、女性が座る席側に引き摺られた。
恨みがましい目で長門を見る佐々木だが、長門はどこ吹く風といった表情である。
端から見ると針のむしろにいるキョンだが、キョンもまた普段と変わりはない。
「佐々木、何か飲むか?」
とまで言う始末である。
鈍感も極めれば罪。キョンの場合は愚鈍というよりはある種、自分を理解していない、といったほうが正しい。
人の事は良く見えて、気配りも出来る。しかし、こと自分の事になるとてんでダメ。そんなタイプだ。
「すまん、少しトイレに行ってくる。」
キョンが席を立ち、トイレに向かう。
キョンがトイレに入ったのを確認し、ハルヒが寄せ書きのページを開けた。

「宣戦布告、でいいのかしら?」
「くっくっ。御随意に。」

キョン
キミと進路は離れるけど
僕達が築いた友情は
高校でスタートする
生活でもきっと続くと信じている。

斜めに記された、佐々木の『宣戦布告』。いや、ハルヒが遅かったのかも知れない。

「彼の個人的な卒業アルバムに、誰が載るか。賭けてみる?」

北高の卒業式。キョンの隣で写真に映るのは――――

END

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最終更新:2013年04月29日 13:24
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