18-727「おもらしねた」

水泳の授業中、自由時間になったが、残念ながら今日の佐々木は見学だった。
俺と国木田は、何だかつまらなそうにしている佐々木の側へ行ってやった。
「まったく、佐々木さんも授業が始まる前に言ってくれれば、僕が剃刀貸してあげたのに……」
「いや、僕が今日、水泳を見学に回ったのは、下の毛の処理を怠ったからではないよ……」
国木田の推測は即座に否定された。
それはそうだ。
何故なら、俺の知る限り、佐々木には処理をしなければならないような下の毛など1本たりとて無いのだから。
「え?そうなんだ、クールな佐々木さんにしては、意外なチャームポイントかもしれないね」
まあ、正直なところ、俺も初めて見たときは、そのつるつるぶりに、笑いそうになったがな。
九歳の妹と比べて、全く遜色なかったからな。
「くっ……そういうキョンの方は、随分と生え揃っておいでで……」
おう、俺は成長が早かったからな。
「くっくっ……しかし、陰毛が生えるのが早かったからといって、自慢になるのかな……」
な……何だと?
「そもそも陰毛とは、性器を守るために生えてくるのだろう?だとすると、早めに生えてきたキョンは、
 他の人に比べて防衛本能が強いということじゃないかな?……つまりは臆病者ってことさ」
ふん、モノは言いようだな。
「それにだね……進化論を信じるならば、人類は猿から進化する過程で、徐々にその体毛を減らしていった。
 つまりは、僕の方がより進化した人類なんだよ」
おいおい、佐々木の理屈からすると、ハゲたオッサンが一番進化していることになっちまうぞ。
「う……しまった……」
「ははは、佐々木さんが言い負けるなんて珍しいね」
どうやら、無毛を指摘されて、言い返そうと思ったが、咄嗟に思いつかなかったのが本当のところだな。
「まあ、進化論は置いといて……佐々木さんが見学だったのは、今日が女の子の日だったからだね?」
「そうだよ。全く、今日という日ばかりは、自分が女性であることを恨めしく思うよ」
女の子の日?
何だ?佐々木は日によって女だったり男だったりするのか?
「キョン……君には保健について、みっちり教えないといけないようだね。実地研修が必要かな?」
おいおい、冗談だよ。生理だろ?知ってるよ。
しかし、生理ってのは……何と言うか、グロテスクだな。
「その言い方はひどいな……」
だって、股間から血の塊が出てくるやつだろ?あれはグロテスクだろ。
「え?キョンは見たことあるの?」
ああ、佐々木のを見たことがあるが、進んで見たいとは思わないね。
あの時は仕方が無かったんだ。
「そうだね、あの時はキョンに申し訳ないことしたね……」
「え?どういうこと?」
国木田よ、この前佐々木が風邪で学校を休んだだろう?
「ああ、キョンが『どうせ水風呂にでも入って調子に乗ったんだろう』とか言ってたとき?」
「人が休んでると思って……言いたい放題だな……」
ああ、そのときだ。
俺が佐々木の家に見舞いに行ったら、寝込んでいる佐々木を見つけたが、他に誰も居なくてな。
「ああ、キョンが来たときは、ちょうどお母さんが薬をもらいに行ってたときだったんだよ」
で、寝ている佐々木の側にいってやると、『替えなきゃ……』『替えなきゃ……』って、
うわ言のように呟いてんだよ。
で、俺が『おい、何を替えなきゃなんだ?』って聞くと『タンポン……』って言いながら、タンスを指差すんだ。
正直焦ったね。そんなの使ったこと無いから。当たり前か。
それで、佐々木の言う通りタンスの一番下のところに『チャーム』とかいうそれらしきものはあったんだが、
使い方がわからない……
とりあえず、佐々木の下を脱がしてはみたものの、どこをどうするのかよくわからん。
「あれは……風邪をひいてるのに更に下半身をさらけ出しながら放置されて……病状が悪化したよ……」
すまん。それで、俺が必死に考えてると、佐々木が懸命に股間のところを指差すんだ。
よく見たら、何か紐みたいなものが出ていたから、それを引っ張ったんだ。
そしたら、出てきたんだよ、例のグロテスクなやつが……
佐々木の股間の小さい穴から、ズルリと出てくる赤黒い塊。
俺は青ざめたね……
まあでも、佐々木がピンチなんだからな、逃げ出すわけにはいかなかった。
とりあえず、今抜き出したやつの替わりに、新しいやつを突っ込めば良いのはわかったからな。
あとは、袋の横の説明に従うだけだった。
「……キョンはうまくやったように言ってるけど……必要以上に奥まで差し込まれそうになったのはきつかったよ」
ああ、入口に収めるだけでいいとは知らなくてな。
グイグイ押し込んでたら、佐々木が『痛い』って言うから余計に焦った。
何はともあれ、難解なミッションをクリアした俺は、心に余裕が出てきてな、
下を脱がしたついでだから、見舞いにと持ってきた座薬も、尻の方に突っ込んでやった。
「そうしたら、あっと言う間に熱がひいたんだ。僕も驚いたよ」
まあ、俺は妹が高熱出したときに、お袋が座薬使ったらすぐ治ったのを見てたからな。
「うん、最初はお尻の中がスースーしてへんな感じだったんだけど、次第に気分が良くなってきたね」
ああ、俺もこんなところで自分の人生経験が役に立つとは思わなかった。
「くっくっ、あのときのキョンは妙に優しくてね。帰ってきたお母さんが作ったお粥も、
 キョンが食べさせてくれたんだったね」
まあ、病気のときはお互い様さ。
でも、俺は佐々木に一つだけ謝らなければならないことがある。
「何だい?」
実は、お前にお粥を食べさせたときな、俺、お前の尻の穴に指突っ込んだ後、手洗ってなかったんだ。
「最悪だよ……せっかく感心してたのに……」
「まあ、その方がキョンらしくていいけどね」
国木田よ、そりゃどういう意味だ?
「カッコつけてても、どこか抜けてるんだよね」
俺……そんな風に思われてたのか……
「まあでも、僕を助けてくれたキョンはカッコよかったかもしれないね。ありがとう、キョン」
よせやい、照れるじゃないか。
「やれやれ……まったく、お二人さんは見てらんないね」
そう言うと、国木田は立ち上がった。
そろそろ授業も終わりのようだ。

おしまい

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最終更新:2007年08月25日 15:57
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