6-658「笹の葉ワルツ」

 たしか、そう、その日は七夕だった。塾の帰り道、ベガだのアルタイルだのそんな話しを
今にも降り出しそうな曇り空を見上げながら、お前と話していた記憶がある。佐々木と別れて、
自転車に乗ってそこから先の記憶がどうもはっきりしない。ただ、通い慣れた道だ。ぼーっと
しながらも、事故にも遭わず、俺は帰路についていたようだ。はっきりとした記憶があるのは、
風呂に入ったこと、夕飯をキチンと平らげたこと。何もする気がなくて、さっさと寝てしまった
こと、ぐらいだ。
 で、なんだって佐々木?
「だから、当時は聞きそびれていたんだが、二年前の七夕の夜、といっても深夜に近い頃だ。
キミは僕と会っていなかったか」
 そりゃ、お前と友達になったのは、二年前、中三の春だが、七夕の深夜にお前と会っていた
記憶はないぞ。
「うむぅ、となると、やはりキミではないのか。仕方がない、これ以上は埒が明きそうにない。
僕と七夕の関わり合い、僕の秘密から話そう。全部聞いてから、キミの意見を聞かせてくれ。
実は僕は七夕と僕らの出身中学にはちょっとした思い出があってね…………

「笹の葉ワルツ」

 俺が目を覚ましたのは、風によってだった。柔らかで無機質な感覚が頭の後ろにある。
すっと、顔をひと撫でされた瞬間に、眠気は吹き飛んでいた。どこまでも、冷たい無機質な手、
この手には覚えがある。冬眠明けの熊のような動きで、身体を起こす。
 公園のベンチには、去年の春の頃と同じように身じろぎもせず、一年前から座っていたかの
ような、長門の姿があった。どうやら、俺は長門に膝枕して貰っていたらしいな。ち、もう少し、
後ろ頭に鋭敏な感覚があればな、そう思わないでもない。
「長門、一体何が起こってるんだ…って蒸し暑いな……この暑さ、もしかして、“また”なのか?」
 とりあえずは、この宇宙人に状況を確認する。コンマ2ミリ、長門の顔が首肯する。
「また、三年、いや四年前の七夕か……一体、ここに、俺はあと何回来るんだ」
 今度は、髪の毛二本分くらい長門の顔が振れた。違うのか、今は何時なんだ。
「現在のあなた、からすれば2年前に相当する」
 今回は、朝比奈さんじゃないのか、朝比奈(大)さんでもなく。座ったままの長門が俺を
見上げる。そうか、今回の黒幕はお前なのか、長門有希。お前は一体、俺に何をやらせる
気なんだよ。
 長門は応えず、すっと右手の人差し指を北の方角に差す。
「この先に、中等学校が存在する」
 東中はあっちだぞ、俺はハルヒの通っていた、東中の方向を指した。
「あなたが、かつて通っていた、学校」
 俺の中学で、俺の在学中に奇天烈な事件なんか、何もなかったはずだがな。
一体、何があるんだ。
「そこにあなたを待つ、人がいる」
 今度は一体、誰がいるんだ。その質問には答えが返らなかった。まったく、どうしてこう
未来から俺を引っ張ってくるヤツは、何も話さないんだ。
 ああ、わかっているさ、既定で禁則なんだろ。
 俺は口から半ばほどはみ出ていた文句を飲み込み、長門に背を向け、かつて通い慣れた道を、
自分の中学校への通学路をたどり始めた。
 ちぇ、あんな顔を見せられちゃ、問いつめることすらできやしない。いいさ、今は長門を信
じるだけだ。コレは、今の俺、あるいは未来の俺、もしくはハルヒとSOS団にとって必要な
ことなのだ、きっと。
 長門にとって、とは考えなかった。何でなんだろう。アイツにだって、親玉はいるし、アイ
ツ自身の意志ってものがあるんだって、俺は誰よりも知っていたはずなのに。


 しかし、暑いな。もっとも前の時と違い、俺は夏っぽい格好をしていた。もっとも、サイズ
が微妙に、極めて微妙に小さい。身体を動かすたびにあちこちが突っ張る。目に入る範囲では
身体に異常はないんだが、とりあえず、身につけている物を確認する。財布はある。携帯はな
いようだな。ってこの財布、俺の財布じゃない……どういうことなんだ? いや、この財布は
俺のだ、確かに。そう、今の俺ではなく、二年前の俺の財布である。
 まったくもって意味が、わからん。
 そんなとりとめもない思考を垂れ流しにしながらも、俺の両足はきっちりと俺の身体を、
中学へと届けていた。
 そこには、ひとりの女性が、校門には寄りかかるようにして、立っていた。

「誰かと思えば、まさかキミがここに現われるなんて、想像すらしていなかったな。一体、
どんな風の吹き回しだい? キョン」

 容姿は多少幼いものの、その表情は、ある意味では今の彼女よりもよく知っていた。そう、
このころ、俺は他の誰よりも、彼女と連んでいたからだ。二年前の佐々木がそこに立っていた。
「……ん、キョンじゃない? 失礼だが、あなたは、キョンの……」
 果てさて、どう説明したもんだろうか。ハルヒの時とは違う。佐々木は、俺のことを見知っ
ている。どうしたものか、俺は確かに、ヤツのことはよく知っている。生まれてこの方十六年
も付き合っているのだ。利発な佐々木のことだ、下手な嘘は通じないだろう。だから、嘘だけ
は吐かないように注意して口を開いた。嘘は吐かない。だが、真実も告げない。
「ああ、確かにキミがキョンと呼ぶ人間についてはよく知っている。たぶん、キミよりも、他の誰よりも」
 佐々木は眉を潜めて、値踏みするように俺を見つめた。
「あなたが着用している衣服は、今日、彼が着ていたものだ。だが、あなたは彼によく似てい
る、生き写しだが、彼ではない。これは一体、どういうことなのだろうね。世の中には似た人
が三人はいるとは聞いたことがあるが、ここまで似ていたら、そこには何か、作為的なものが
あるとしか思えない」
 俺は、首を窄めて、降参というように両手を広げた。世の中には告げることのできない事実
もある。言うべきじゃないこともある。今がその時で、これがそれだ。
「詮索無用という訳か、ではあなたの名前は? あなたはキョンによく似ているが、彼ではな
いのだから、そうは呼びたくない」
 とりあえずは、好きに呼んでくれて構わないが、敢えて言うなら、そうだな。ジョン・スミス
とでも呼んでくれ。
 それを聞いた、佐々木はくつくつと、転げる鈴のような笑い声を上げた。……なんか、懐か
しいぞ。この春に再び聞いた笑い声だが、二年前の佐々木はこんな風に良く笑っていた。
「匿名希望くん、そうか、キミもジョン……そうか、そうだっ。キミだ、ジョン」
 …………はぁ?
「再びキミに会えるとはな、どうしたことだ。いや、これはアルタイルが起こした奇跡なのか
な。おかしいな、あれから二年だ。半額バーゲンセールでもあと十四年はかかるはずじゃ
あないか? しかも二年前とまったく変わっていない、キミはあれかエルフかメトセラなのか」

 ちょっと、ちょっと待って欲しい。佐々木、お前と会うのは初めてのはずだ。なぜ、俺のこ
とを知っている。
「その言葉は、そっくりそのままキミに返そう。ジョン、初めてあったはずのキミがどうして
僕の名字を知っているのかな?」
 そういって、佐々木はウィンクを返した。
 ぐぅの音もでないとはまさにこのことか。まったくもって、返す言葉もない。
「僕の質問には答えられない、答えたくても……か」
 俺の表情を読み取って、佐々木はそう嘆息した。このころから、佐々木は俺の顔色を読む
プロフェッショナルだった。彼女に見抜かれない嘘を吐くのは至難の技であった。
 ……いや、いま思い返せば、きっと佐々木は俺の吐く嘘など、初めっからまるっとすべて
お見通しだったのだろう。
「ジョン、答えられない質問には答えなくても、構わない。だけど、嘘は吐かないでくれ。
僕からのお願いだ」
 そう、こんな風に即座に先手を打ってくるのが、佐々木だった。
「あの時と同じ質問をするよ」
 どの時だ? いや、決まっているな。佐々木がジョン・スミスと合った二年前…俺からすれ
ば四年前の時だ。どうやら、あと最低一回は、俺はタイムトラベルを体験することになるらしい。
「ジョン、キミの知り合いに超能力者はいるかね?」
 にやけた二枚目と、人畜無害そうな笑顔を振りまく誘拐犯、そして森さんや新川さん、多丸
兄弟の顔が浮かぶ。結構、多いな、超能力者の知り合い。
 ああ、結構いるぜ。
「次の質問だ、キミの知り合いに宇宙人はいるか?」
 即座に本を読む長門の横顔が浮かんだ。何を考えているかよく分からないエプロン姿の喜緑
さん、連想的に彼女が思い浮かぶが、これは途中で止めておく、痛くもない脇腹が痛むからな。
そして、違和感の塊である周防九曜のモップ頭が浮かぶ。
 宇宙人の知り合いも……増えたな。
「次だ。キミの知り合いに未来人はいるか?」
 即座に、メイド姿の朝比奈さんが浮かんだ。ああ、こんな瞬間にも、あなたは実に愛らしい。
そして、特盛りの朝比奈(大)さん、パンジーの花壇は記憶から追い払う。……アイツにも(大)
がいるんだろうか? そして、何よりこの俺が未来人なのだ。だが、これは答えられない。
「ふむ、これには答えがない……と、そうだ。異世界人なんてのはどうだね」
 それはまだ、知り合っていない。だが、知り合って分かるものなのかね。
「……さてね、超常の知り合いなど、僕にとってはキミだけさ、ジョン。コホン、さて最後の
質問だ……重要な質問だから、よく考えて、答えてくれ」
 咳払いして、佐々木は俺を真剣な眼差しで俺を見つめた。ごくり、とつばを飲み込む。嘘は
吐かない、真実も語らない、心の中で不文律を口ずさむ。
「ジョン、“今の”キミの側に僕はいるだろうか。キミの側で、僕は笑っていられるのだろうか」
 佐々木はそう聞いた。彼女は今にも泣き出しそうな、そんな不安定な表情を見せていた。
迷子の猫のような、すがりつくような、そんな瞳で、俺を射抜いた。この質問に俺は答えなけ
ればならない。じっとりと湿った空気が喉に張り付いた。
「答えて、くれないか?」
 なんで、その答えが必要なんだ。佐々木? 佐々木のあまりの必死さに、思わず、そう問い
返していた。
「質問に質問で返すな、と学校では教わらなかったのかな? でも、その質問には答えさせて
貰うよ。僕ばかり質問していて、そのフェアじゃないからね。僕には友達がいる、とても仲の
良い友達が、親友、そう親友と呼んでも、差し支えはないだろう。だけど、僕らは離ればなれ
になる。そう、十ヶ月後には、確実に」

 どうしてなんだ? 俺はかつて、そうしていたように、佐々木の言葉に相づちを入れた。
「ジョン、キミがあれからどれだけの時を過ごしたのかはわからない。僕にとっては、あれか
ら二年が過ぎた。僕はいま中三だ。高校受験だよ、そして彼と僕との志望する学校は異なっ
ている。同じ学校に通うことは……おそらくない」
 そうなのか?
「残念ながら、僕と彼の実力差はそれなりにあってね。今の状況のまま推移するならば、その
差が縮まることはおそらくないだろう。もちろん、彼と同じ高校に僕が志望校を変更することは
不可能じゃない。だけど、僕はそれをしないのだ、きっと。それは僕の、僕のちっぽけなプライド
が許さない。彼と別れるのが寂しい、そんなノイズに僕は踊らされたくない。僕がいま罹患し
ているのは麻疹のようなものだ、精神的な病の一種だよ。そんな物のために、僕は一生にわた
る選択を変更したくは、ないのだ」
 それなら、なんでお前はそんなに苦しそうなんだ。
 お前を苦しめているのも、不快な雑音なのか?
「……不安、なんだ。彼にこれ以上、踏み込むのが、怖い。何時かやってくる確実な未来が、
僕には怖い。でも、彼と触れあうと、心が、身体が喜びに震えてしまう。…………彼が微笑む
のを見ているのが好き、彼が困ったように、照れて笑うのが好き、妹さんの頭を愛しそうに撫
でる右手が好き、美味しい物を食べている時の楽しそうな口元が好き、無警戒な笑顔が好き、
どこかに行きたいのに、どこに行けばいいのかわからない、そんな風に悩んでいる横顔が好き、
自転車をこいでいる背中が好き、悲しい人を見ていられなくて、動き出してしまうそんな彼が
好き、大好きなの。離れたくないの。でも、こんなのは本当じゃない、こんなのはただのノイ
ズなんだ!! 本当の“僕”じゃあない!!」
 その時、風が雨粒を運んできた。夏特有のたたき付けるような通り雨が立ちつくす俺たちを包んだ。
 こんなことをしてはいけない。理性は俺に警告を発した。だけど、俺の身体は止まらなかった。
「それなら、どうして、お前は泣いているんだ。佐々木」
 俺は両腕でぎゅっと、彼女の抱きしめ、首筋に顔を埋めるようにして、そう囁いた。
「わからない、僕には自分が分からない、だから、知りたいんだ。僕は……別れてしまっても、
再び、キミに逢えるのか。教えてくれ、キョン」
 そのまま、俺たちはじっとしていた。俺はぼそぼそとささやき始めた。
「俺のことは教えられない、そういうルールだ。だけど、俺がよく知っている男の話をする。
聞いてくれ」
 その男は、特に何も考えずに、中三の時代を過ごす。それがどんなに得難い幸せかもしらず
に、親友と一緒に一年を過ごすんだ。勉強にはあまり熱心になれなかった。ソイツなりの人並
みに、受験勉強を続けて、最初の志望校より、ひとつランクを下げて、専願で受験する。無事
に、男は受かる。彼はそのまま何となく、卒業して、中三の時の親友とはそれきり、別れてしまう。
 腕の中の佐々木がぴくりと震えた。
 男は取り立てて、何の特徴もない、県立高校で一年を過ごす。その一年については割愛する
ぜ。いろいろあっただろうけど、悪い一年じゃあなかったそうだ。
 そして、二年目の春、男は親友と再び巡り会う。そうだな、その男は約束したぜ、もう親友
を泣かすようなことはしないって。一番近くで、男の大好きな親友の笑顔を見つめている、
そう約束するよ。

 そして俺は佐々木を離した。
 通り雨はすでにやんでいた。

 もう、行きなよ。ずいぶんと遅くなってしまった。親御さんが心配するぜ。
 佐々木はしばらく逡巡していが、やがて、佐々木の家の方向へと歩き出した。
 佐々木は何も言わなかった、俺も何も言わずに佐々木の背中を見送っていた。彼女が角を曲
がって、見えなくなって、しまうまで。
 俺も踵を返すと、公園へと、長門の元へと帰った。


 一年後も、そのまま座っているんじゃないか、長門は俺が立ち去った時と寸分変わらぬ様子
で、ベンチに座っていた。これでいいのか? 長門は、俺の言葉を聞いているのか、いないのか、
まったく反応しない。ただ、髪の毛が二三本、縦に揺れた。
 どうやら、この時間の俺の役目を俺は果たしたようだ。
 長門はゆっくりと、左手を上げて、俺を手招きした。長門の隣に腰を落ち着ける。長門は上
げたままだった、左手をそのまま俺の肩に回すと、豆腐でもつかむかのように、自分の方へと
俺を寄せた。何だ、また膝枕してくれるのか?
 ゆっくりと、コンマ一ミリ、長門は頷いた。今度はゆっくりと、長門の無機質な柔らかさを
右側頭部で味わう俺なのさ。
「催眠導入を開始、目覚めたら、あなたは元のあなたに戻る」
 なあ、これはどんな意味があるんだ。
「彼女にとって、今後二年間は規定事項となった。彼女は情報改変技能を保持したまま、情報
改変能力を受け付けない。情報統合思念体は彼女と涼宮ハルヒの違いから、情報改変能力の
解析のための貴重な示唆を受け取るだろう」
 ……なんだって、そう口を開こうとするが、急速に意識レベルが落ち込んでいく。長門がな
おも、何かを……。
「当該対象の異時間同位体との同期を解除、時間連結平面帯の可逆性越境情報の情報連結を解
除、バックアップデータのアップロードを……」


 俺が目を覚ましたのは、頬に触れた雨によってだった。
 ふわ、柔らかな……って、俺、何してる。ここ、どこ、今、いつ、そんで、あなた、誰?!
 なんと、見知らぬ高校生のお姉さんに、俺は膝枕されているのだった。
 あわっわわわ、転がるようにして立ち上げる俺なのだった。
 え~~と、そのすいません、なにがどうなっていたのでしょう。
 お姉さんは固まったままで、ノーリアクション。沈黙が流れる。お姉さん、セーラー服の胸
ポケットから、眼鏡を取り出して、掛けた。残念、俺には眼鏡属性はない。
 お姉さんはゆっくりと、立ち上がると、俺の目の前に立つ。なんだかな、小柄だからか、
俺よりも年下に見える。だが、お姉さんの着用しているのは確か北高のセーラー服(夏服)だ。
「あなたは……そこ……で倒れていた。暑気当たりと思われる」
 ゆっくりと、指さしたのはベンチの脇、そこにはマイ自転車が転がっていた。
 あ、それで介抱してくれてたんですか? すいません、ありがとうございました。
 ぺこりとお辞儀をする俺である。ベンチのカゲで、横倒しになっていたママチャリを起こす。
「……待って」
 お姉さんが俺の、右頬に手を当てた。な、なんでしょう。
「……もう、大丈夫。……蚊が、いた」
 あ、そっすか。不思議な雰囲気をたたえた先輩からそっと離れる俺なのさ。でも、美人だね~。
 こんな先輩がいるんなら、北高もいいかな~。
「そう…………待っている」


 いつもの喫茶店で、飲み慣れたブレンドのカップをソーサーに戻しながら、俺は佐々木に返
事を返した。
 七夕かぁ。今、振り返ってみれば、俺が志望校を、北高に決めたのは、その当たりだったよ
うな気がするな。
 まぁ、志望理由は学力的に適当だったこと。自転車通学が可能な距離だったことが大きいん
だが。まぁどっちにしろだな、佐々木よ。俺はお前にあった記憶だけはないぞ。
 うん、神に誓って、ないな。
「ふむ、そうなると……そうか、そういうことか」
 佐々木は俺の言葉も無視して、ひとり得心することがあったようだ。心なしか頬が緩んでい
るようにも見受けられる。
 なんだよ、何か思い当たることでもあったのか?
「いや、結構、今日の話しは忘れてくれて、構わない。どうやら、まだその時ではなかったようだ」
 おいおい、どういうことなんだよ、ちゃんと説明しろよな。
「まぁ、待ちたまえ。いずれ、キミにも今日のやりとりを理解する日が来るはずだ、そうだな、
これくらいは教えておいて構わないだろう。あの日の熱い抱擁を僕は、一日たりとも忘れたこ
とはなかったよ。キミがいくら覚えがないと言い張ろうが、約束は絶対に果たして貰うからね。
僕は結構、計画的で執念深いのだ」
 はぁ、お前は何を言ってるんだ、ミルコっ面で、そう返す俺なのさ。この春の陽気で、どっか
やられているんじゃないだろうな。
 そんな俺を見ながらも、佐々木はにやにやくつくつと笑っていた。ちょっと、怖い。
 ちなみに、俺には本当に心当たりがない。佐々木が何のことを言っているのか、知っている
人がいたら教えてくれよ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年10月10日 20:51
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。