14-331「佐々木とキョンが1年会わなくても平気だった訳」

佐々木とキョンが1年会わなくても平気だった訳

「やぁキョン、いらっしゃい」

眠っている俺の頭上から声が聞こえた。
聞きなれた声だ。
俺はゆっくりと目を開けた。
俺の横には中学のときの親友、佐々木が座っていた。

「久しぶりだね、キョン」

俺は目をこすりながら起き上がる。
体を見ると着ているのは中学時代の制服だ。
周りを見るとどうやら俺の通っていた中学のようだ。
やれやれ、またか。

「何が久しぶりだ、今月はもう5回目じゃないか」

因みに今日はまだ15日だ。

「くくっ、現実世界であっていないのだから久しぶりには変わりないさ」

あたりを見渡す、やはり人っ子一人いない。
そう、ここは普通の場所ではない。
閉鎖空間だ。
もっとも、俺がその名前を知ったのは最近だがね。

「やれやれ、それじゃいつものとこ行くか?」

「ああ、そうだね」

俺と佐々木は高校が別々に会ってから疎遠になっていた。
・・・・・・と、いってもそれは現実世界での話し。
この閉鎖空間・・・・・・ハルヒの奴と似てるからそう呼んでいるだけであってもしかしたらぜんぜん違うものかもしれないが・・・・・・。
とにかく、ここでは俺たちはしょっちゅう会っていた。
ここは、俺が眠りにつくとたまに呼び出される。
俺は古泉いわく完全な一般人らしいから恐らく佐々木の能力なのだろう。
最初はびっくりしたが今はもうなれた、数時間佐々木と適当にしゃべっていれば朝方目が覚める。
もっとも、俺が起きたときここのことは一切覚えてないけどな。
俺たちはこの閉鎖空間を歩いて喫茶店に入る。
ここに呼び出されたときはこの喫茶店に入るのが慣例になっているのだ。

「キョン、いつものでいいかい?」

「ああ、頼む」

佐々木がカウンターの奥に入ってコーヒーをいれる。
なんでもそつなくこなす奴だけあってコーヒーもうまい。
しばらくすると佐々木がカップを二つ持ってやってきた。

「最近は頻度が多くなってるな」

「そうだね、僕もどうにか制御が出来ればいいんだけどやり方がさっぱりわからない」

「ま、これが俺の見ている勝手な夢じゃないって保障は何処にもないんんだがな」

「くっくっ・・・・・・もしそうだとしたらキョンは頻繁に僕のことを夢に見ているわけだ、こんな嬉しいことはないよ」

ハルヒと出会ってから異常な事件に遭遇した俺はそこで得た知識を佐々木に話した。
佐々木は興味深そうに聞いていたがやはり自分もハルヒと同種だという実感はないらしい。
俺をここに呼んでしまうのもまったくの無意識だそうだ。
夢じゃないかと話し合いもしたが胡蝶の夢がどーたらこーたら言われて良くわからないがたいした問題じゃないそうだ。
まぁ確かに俺は起きたらここのことは覚えていないし佐々木も覚えていないらしいから確かめようがないんだけどな。

慣れてしまった今では閉鎖空間だから特にどうだということはない。
取り留めのない話をしてここを出るだけだ。
今日も4時間ほど適当に話して閉鎖空間をぶらぶらした。

「さて、そろそろ時間だね」

佐々木がそういってこちらを向き、少し笑った後目をつぶった。
これはいわば脱出の儀式みたいなものだ。

「じゃあな、佐々木。また呼んでくれ」

そういって俺は佐々木にゆっくり顔を近づけた。
俺と佐々木の距離がゼロになったとき、世界は歪み始めた。
毎回思うが覚えてないってのはやはりもったいないな。




そうそう、一つ言い忘れたここでは俺と佐々木は親友ではない。
恋人だ。起きたら覚えちゃいないがな。

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最終更新:2007年07月19日 21:44
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