24-434「泣いたユキ女」

『お茶を飲んでいって下さい。おいしいお菓子もあります』有希

雪女の有希は茶店を開きましたが、誰も来てくれません。
そうでしょう。雪女の店なんか恐ろしくて。
「お、茶店があるぞ。あそこで休んでいこう」
「馬鹿、あれは雪女がやっているんだぞ。
氷づけにされて魂を抜かれるぞ」
「くわばら、くわばら」

そのため、有希の店に来るのは親友の青眉:涼子と、キョンと呼ばれる変な人間だけでした。
キョン君が来た時だけは、有希の無表情な顔も、僅かに綻ぶのでした。
「おいしい?」
「ああ、うまいぞ。帰りも寄ってくからよろしく」
「待ってます。あなた」

ところで、キョン君には幼馴染みの恋人がおり、いつも仲良くしていました。
「キョン、君との結婚はいつにしようか。
僕は早い方が良いな。何なら明日でも、」
「お前は美人だから、金持ちの男を狙えるぞ。
俺なんかと結婚すれば、一生貧乏暮らしだ。
もっと将来のことをじっくり考えろ」
「君はあの雪女がそんなに良いのかね?
一体あの雪女と何回寝たのかね?え?僕とは一度も寝てくれないのに」
「有希と俺はそんな関係じゃない。
それに、お前は体を安売りするな」
「お為ごかしは、もう結構だよ」
(金持ち、金持ちって。
君が気に入られている鶴屋のお嬢さんみたいな、感じの良い金持ちは例外的なんだよ。全く)


そんなキョン君と恋人のやり取りを、有希はいつも、いつも見ていました。
透き通ったダイヤモンドの瞳で、遠くから寂しそうに。
「有希、元気出して。わたしに良い策があるから」
「何?」
「わたしがキョン君達を苛めるから、
あなたはわたしを殴って追い払えば良いのよ。
そうすれば、あなたはキョン君の恩人として感謝され、結婚してくれるのよ」
「でも、そうすると、あなたは」
「キョン君と結婚したくない?」
「したい」
「じゃ、決まりだね。
キョン君とわたしは直接会ったことないし、バレないわよ、大丈夫」


次の日、涼子はキョンの村で傍若無人の振る舞いをしていました。
「青眉だ、青眉が現れたぞ。恐ろしや」
「何で乱暴するんだよ。俺達に悪い所があるなら謝るから、どうして欲しいか言ってくれよ」
(有希、早く来ないと、二、三人死んじゃうぞ
それにしても、キョン君やさしいな。有希が惚れるのもわかるわ)
「乱暴は止めなさい」
(よし、有希来た)
「あなた、誰?邪魔するの?」
「私は有希」
「人間と仲良くしたがっている可哀相な妖怪ね。これでも食らえ」ゴツン
(痛かった?有希。台本には無いけれど、それくらいはしないとね)
「お返し」

しばらく戦っていたが、ついに、涼子は有希のあまりの強さ?に逃げ出した。
「ありがとう、有希。俺達を助けてくれて」
「当たり前の事をしたまで」
「キョン騙されるな。それは仕込みだ、八百長だ」
涼子との八百長がバレたら、今までのことは全て水の泡。

しかし
『パシーン』
「お前は有希が俺達のために命を張ってくれたのがわからないのか?」
「だって、見え見えの八百長だもの」
「まだ言うのか、お前とは絶交だ」
「そんな。キョンの分からず屋ー」
キョンの恋人だった女の子は泣きながら走り出しました。

「あのー、有希さん。ありがとうございます」
「我々はあなたのことを誤解していました」
「お礼に、我々ができることがあれば何でもします」
「キョン君と結婚したい」
「有希、俺なんかで良いのですか?」
「良い」
「それじゃ、今度の吉日に二人のための盛大な結婚式を挙げよう」
「異議無し」


(涼子ちゃん。キョン君が私をお嫁さんにしてくれるって。
大成功だよ、ありがとう)
有希は足取り軽く、自分の家に帰りました。涼子に会ってお礼を言うために。
家に帰ると、涼子はいなく、代わりに、妖怪しか読めない字で手紙が書かれていました。

『わたしはこれで有希とはお別れです。
永い旅に出ます。
有希が、キョン君とわたしの間を行ったり来たりすれば、キョン君も怪しむでしょう。
だから、わたし達はもう会わない方が良いでしょう。
離れても、有希のことは、遠くから見守っています。
キョン君といつまでも、お幸せに。
あなたの親友:涼子』

「涼子ちゃん。ありがとう。そして、ごめんなさい。痛かったでしょうに。
私は幸せになるよ。きっと
これは涙?まるで人間のように」
有希がダイヤモンドの瞳から流した涙は本物の大粒ダイヤになりました。
そのダイヤモンドを売って、キョン君と有希は一生楽に暮らしました。とさ
めでたし、めでたし

「そんなに君はあの雪女が良いのかい?え?
僕は3Pなんかしないよ。
君は僕とはただの遊びだったのだね。
よくわかったよ。フン」
(終わり)

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最終更新:2007年11月12日 10:04
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