25-854「キョンの告白」

俺は佐々木と同じ大学に進学した。
1ヶ月もすると俺と佐々木は中学3年の時のように付き合っていると思われるようになった。
中学の時のクラスメイトもだが何で俺と佐々木が付き合ってるように思うのかね。

しかし、ふと疑問に思ったことがある。
佐々木は俺なんかと付き合っていると思われて困らないのだろうか。
そんな疑問を佐々木にぶつけてみた。

「佐々木、ちょっと聞きたいことがあるんだが……、
その……、お前は俺と付き合っていると思われて困らないのか?
お前なら俺とそんな噂さえなければ彼氏候補はいくらでもいるじゃないか。」
「別に困らないよ。中学3年の時にキミに言ったはずだ。
僕と噂になっていたらキミは困るのかい……?」
「現状は特に困ってはいないんだが、俺にもたまには彼女くらい欲しいと思うことがある。
しかしだな、お前と付き合っていると思われているとそうもいかない。二股野郎と思われてしまうからな。」

俺の彼女になりそうな奴なんて誰も居ないんだがね――

「僕と一緒に居るとキミは彼女が作れなくて困るんだね。
キミと過ごす時間は僕にとって非常に有意義なものだ。キミにとって迷惑なら……僕は……。」

そう言った時の佐々木の表情は何か悲しそうだった。
佐々木の表情を見ていると何だか俺はとても悪い事をしたのではないかと思った。
この表情を見続けるのは辛い……何か、何かを言わなければ……


「そこで、良い考えがある。その噂を本当にしてみないか。」

……………俺、なんて言った?

唐突だが、ここでシンキングタイムだ。


Q1.俺は何処に居る?
A1.佐々木の目の前である。

Q2.その噂とはなんだ?
A2.俺と佐々木が付き合っていることである。

Q3.噂を本当にするとは?
A3.佐々木への愛の告白である。

Q4.佐々木ってどんなやつ?
A4.恋愛感情は精神病の一種なんて考えているやつ


日本が銃社会ではない事に感謝した。
銃があったら間違いなく俺は頭を撃抜いていただろう。
しかし、そんな事を考えてみても仕方がないので佐々木の方を見てみることにした。

佐々木は今までの表情が一転してきょとんとしていた。

ああ、間違いない。俺は今からフラれる。
悲しい表情をさせた後に告白なんて聞いたことがない。
そして佐々木に告白して成功して付き合った男なんて聞いたこともない。
気まずいな。明日から誰と一緒に講義受けたり飯食ったりしようかな。

……

しかし、佐々木黙ってないでいい加減何か言ってくれないか!!
実際の時間では10秒も経ってないかもしれないが、俺には既に1時間は経過したように思えるぞ。
本当の時間はどれだか経ったか分らないが、佐々木がやっと口を開いた――

「キョン……、噂を本当にしてみないかとは、つまり、僕にキミの彼女になってくれと言っているのかい?」

出来ればその発言を『っていうのはウソぴょん』で流したいがどう考えてもそんな雰囲気ではない。
マジでフラれる5秒前!とは今の状態を指すのであろう。
後日談を語ろう。

結論を言えば、俺はフラれる事はなかった。つまり、俺と佐々木は付き合い始めて噂は本当になった。
しかし、それからも俺と佐々木の関係は見た目において大した変化はない。
一緒に講義を受けて、昼食に佐々木が作った弁当を一緒に食べて、一緒に帰って夕飯を食べているだけだ。
今更ながら考えてみると付き合っていると思われたのも当然かもしれない。元々半同棲していたようなものだ。


そんな俺たちで唯一変わった事はお互い付き合っているのかと聞かれた時に

『NO』と答えなくなり、『YES』と答えるようになったことだ。


そして

「ねぇ、キョン。今日の夕食は何がいいかい?」
「なんでもいいぜ。佐々木が作るものはなんでも美味いからな。」
「たまにはリクエストしてくれないと僕も困る。
毎日、メニューを考えるのは結構大変なんだよ。」
「俺がメニューを考えると栄養に偏りが出てしまうだろう?
ところで、俺に料理を教えてくれないか。お前の味を再現できるようになりたいしな。」
「教えるのは構わない。でも、キミが料理をする機会はないよ。
僕がこれからずっとキョンの食事は作るんだからね。」


こんな会話を大学でやっていると俺達はバカップルと言われるようになった。

(おしまい)

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最終更新:2007年12月09日 20:57
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