Chronicle

Chronicle
1st Story CD

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[表紙] Black Chronicle


古き遺跡より発掘されし 黒き書物
それは歴史を覆す…否
その全てを肯定する 最悪の予言書…

色褪せた紙 くすんだ文字
古代語で書かれた目次
最後のペ-ジ…「審判者の来訪」…

──序章「殺戮への前夜祭」──

昨日 多くの父達が死んだ…
今日 多くの母達が死んだ…
明日 多くの子供達が死ぬだろう…

一つのパンを奪い合う者
一つの椅子を奪い合う者
一つの王冠を奪い合う者
一つの栄光を奪い合う者

「息の根を止めろ、邪魔する者は全て消せ!」

闇だ 深い闇だ 歴史の闇だ 誰かが笑っている
何故僕らは 仲間同士で殺し合っているんだ…

書に刻まれし魔物
黒い秩序に従い 歴史を辿る調べ
時は 寸分の狂いもなく
針の上を滑り堕ちるように
ただ 最後のペ-ジめがけて…

──最終章「終焉の海に漂う箱舟」──

逃げろ やってくるぞ
最期を告げる鐘の音 終焉の洪水だ
幾多の記憶 歴史を飲み込んで尚
その魔物は止まらない…

世界はノアを探している…

我らの救世主は 最初から箱舟の中
闇に沈んでゆく世界を嘲笑い
黒い書を片手に 幾千の罠を投げ掛ける…

それでも僕達は諦めなかった
本当の 最後のペ-ジを探すことを…

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[168p] 詩人バラッドの悲劇


最期の詩…

それはあまりにも素晴らしく
兵は街の恋人に詩って教えた
やがてその詩は 人から人へと伝わり
誰が綴ったかもわからぬ
その名もなき詩は やがて大陸中に広まった…

強く美しき時の女王
絶対的な権力の前に 誰もがひざまづく
来たる女王の誕生祭
その美貌を称える詩を捧げよと 一人の詩人に命じた…

女王は問う…
「この世で一番美しいのは誰じゃ?」
…しかし 彼は譲らない
「私の世界では、陛下は二番目にお美しい…」

「枯れてしまった花の美しさ…
それは、追憶という名の幻影…
朽ちることなく永遠に咲き続けられる庭園…
例え、気高く美しき薔薇でさえ…
花である以上、枯れてしまった花には及ばない…」

その詩に女王は激昂した
「そなた、余に枯れてしまえと申すのか!?」
宰相の合図一つで 兵達は詩人を取り囲んだ…

天才と謳われし詩人…彼の名はバラッド
今は冷たい地下牢の隅 最期の詩を綴っている…

処刑の刻が近づき 胸に薔薇の紋章を抱いた
牢番の兵は聴いてしまった 彼の綴った最期の詩を…

最後の鐘が鳴り終わり
処刑は厳かに執り行われる
最期の瞬間 思い出すのは…
故郷の空 風の匂い
今は亡き彼女と過ごした日々…

冷たい秋風が冬を導くように
旅の娘が一人 想い人を尋ねて流離う
どこか懐かしい その詩を口ずさみながら…

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[324p] アーベルジュの戦い


「…アーベルジュ」時代が求めた英雄
それとて満ち足りた事ではない
いや むしろ欠けてさえいる
大切な何かを置き忘れてきてしまった…

「…アーベルジュ」理由などに意味は無い
斬ってしまえば同じ 悪意なき剣など無し
身を寄せる場所もなく
ただ血の雨の中を駈け抜けた時代…

「…アーベルジュ」繰り返す痛み
願わくば 戻りたいとさえ想った
何も知らなかったあの頃に
何一つ歴史は変わらないとしても…

…最初の惨劇…

「若者よ臆するな、震える膝を鞭打って進め…
迫りくる敵軍は五千、何としてもこの森で食い止めろ…」

幼き日の思い出よ 泣き虫だった少年は
騎士の誇り 信念を胸に
絶望が渦巻く戦場へ…

その身朽ち果てようとも 守りたいものがあった…

母さんと木の実を拾った森…
父さんと釣りをした川…
君と約束を交わした丘…

幼き日の思い出よ あの夏の少年は
右手に剣 鈍い光を放ち
死神が招く戦場へ

その身朽ち果てようとも 守りたいものがあった…

彼は逃げない 運命は誰を選ぶ…
彼は逃げない 歴史は何を紡ぐ…

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[457p] 樹氷の君 ~凍てついた魔女~


女は 男の子を庇う様にして 雪原をゆく
かじかむ手足 凍えそうな身体
それでも 弱音一つ吐かずに歩く
彼女は母親だから…

醜きは人の世 迫害の歴史は繰り返す
都合の悪いことは 全て他人のせいにしたいのだ
暗い時代の犠牲者 災いを引き受ける者
生贄という名の救世主…

追われるようにして 樹氷の森を抜け
辿りついたのは 氷の城
女の身体は 既に限界を超えていた…

「この子だけでも生きて欲しい…」

忌み嫌われた 魔女の力
その最期の力を振り絞り
命の灯を息子に託した…

激しい吹雪の中 佇む二つの影
凍ってしまった女の氷骸と 決して凍らない少年
彼は 母の命と引き換えに
凍てつく樹氷の王となった…

「生きて欲しい…」

それは 愛という名の呪縛
その想いは今も彼を縛る
朧気な記憶の中 優しく微笑む人
その温もり触れたくて 今日もまたひとり…

生きることに 特別な意味など無いだろう
全ては消え往く運命 と知りながら
それでも 終わり往くモノは永遠を望む…

彼は 今日もまたひとり…

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[602p] 蒼と白の境界線


海の匂いが好き
心地良い潮風が頬を撫でる
ここから見える景色が好き
海と空が同じ蒼で出来きているから…

それは愛しき日々 今でもよく覚えてる
いつも肩車してもらってたよね
パパの背中は 何て大きかったんだろう…

少女は父親が大好きだった
父親は勇敢な船乗りだった
いつも優しかった いつも笑っていた
海の向こうの話を聞かせてくれた
少女の小さな地図は
いつもその話でいっぱいだった…

覚えてるわ パパの話
白い鯨を見てみたい
双子島にも行ってみたい
潮風に揺られどこまでも…

大人達は皆 分かってはくれない
小さな身体には収まりきらない
大きな夢があるんだ
私は 絶対船乗りになるんだ…

覚えてるわ パパの話
歌う人魚を見てみたい
珊瑚の樹海にも行ってみたい
潮風に揺られどこまでも…

こんな晴れた日は
白い紙飛行機を飛ばそう
あの蒼い水平線の向こうまで…

何色にでも染まる白は 明日の私だ
境界線なんて何処にも無い
真っ直ぐ蒼に溶けこんでゆけ
どこまでも どこまでも…

その紙飛行機は
潮風に乗って飛んでゆく
どこまでも どこまでも…

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[816p] 雷神の左腕


こんな嵐の夜は 傷痕が疼く
右腕を引き千切る様な 在るはずの無い痛み
誰に話すこともなく 男はひとり苦惱している
残った左腕で何を為すべきかを…

不吉な予兆は 日に日に影を色濃く落とす
確實に その時が近づいている
あの日と同じ嵐の夜 男は人知れず旅立った
覺悟は決まっている まだ左腕がある…

男は扉を必死で押さえていた
扉の向こうは闇 邪悪な力が溢れ出ようとしている
それを左腕で必死に抑えていた
もうダメだ…右腕…右腕さえあれば…

男が諦めかけたその時
薄れゆく意識の中 温かい光を感じた
右手に槍を掲げ 嵐の中幾千の人々が祈っている…

あの時の子供達は皆 大人になった
雷神は右腕を失い 世界は生まれ変わった
右手が蒔いた種を育てたのは左手
そして美しい花がさく 幾千の花が咲く…

彼には勇敢な左腕と 幾千の右腕がある
決して負けはしない そんな想いが歴史を紡ぐ…

…やがて時は流れ…

「ねぇおじいちゃん、どうして?雷神様には、右手が無いの?可哀想だよ…」

と街角の子供は問う…

子供の小さな手を取り 老人は微笑んで答える

「雷神様の右手は、今もここにあるよ…ほれ、その右のポッケの中にも…」

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[903p] 少女人形


空は泣いている…

宵闇 街外れ 森の麓
大きな屋敷 何もない部屋
椅子に腰掛けた少女がひとり
人形に語りかけるが 返事はない…

「その人形は私だ…」

…返事などあるわけもなく
少女は硝子細工の瞳で 闇を見つめている…

鏡は嫌い 本当のことは何も映さないから
こんな世界など 壊れてしまえば良い…

ママ達は 私を商売道具としてしか見ていない
本当は要らなかった…
未来を読む力なんて 要らなかったのに…

今のママは 何人目だったろう
絆など…温もりなど…
それでも私は それを求める…

「ママ私を愛して、ママ私を愛して…
ママ私を愛して、ママ…」

始まっては終わり 終わっては始まる
支配人も観客も入れ替わる舞台
私は未来を読む少女を演じ
時の止まった屋敷で ひとり芝居を繰り返す…

闇だ 昏い闇だ 終焉は闇だ
どこまでも続く闇だ 世界の果ては何処だ
いくら歩いても この道の先は闇だ…

未来よ 黒い秩序よ 終焉の洪水よ
鳴呼ノア 嘘吐きクロニクル
早く何もかも終わらせて…

「ママ私を愛して、ママ私を愛して…
ママ私を愛して、ママ…」

空は泣いている
涙流さぬ人形に代わって…

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[背表紙] 君が生まれてくる世界


永い夜が明ければ 世界は再び輝きを取り戻すだろう
僕達には 届けなければならないモノがあるんだ
明日生まれて来る君へ…

「今夜は、いっぱい話そう…
君が生まれてくる、この世界のこと…」

歴史は繰り返す 忘れてはいけない
歴史は繰り返す 忘れてはいけないよ…

「君の瞳は映すだろう…
美しいコトも、醜いコトも全て…」

僕達は諦めなかった…
そして 遂に見つけ出した
黒い背表紙に 黒墨で書かれた
最後にして最初の物語…

「君は得るだろう…
愛しいモノも、憎いモノも全て…」

紐解かれた黒いクロニクル 歴史を彩る幾千の物語
例えばそれは…

終焉を知ってなお 諦めなかった僕達の物語…

最期まで 偽らざる想いを詩い続けた詩人の物語…

守るべきモノの為に 命を懸けた戦士の物語…

母の命と引き換えに 樹氷の王となったの少年の物語…

蒼い海に憧れた 限りなく白い少女の物語…

残された左腕で 再び世界を救った英雄の物語…

人形に記憶を封じられた 未来を読む少女の物語…

…そして
母なる海に抱かれ この詩を聴いている君達の物語…

「君は生きるだろう…
楽しいトキも、苦しいトキも全て…」

全てを許し 全てを受け止める
新世界の子供達 明日生まれてくる君へ
僕達からのメッセ-ジ…

「やがて君達の世界にも終焉が訪れるだろう…
それでも…どうか諦めないで…君を愛している…」

繰り返し詩い継がれる記憶 物語は次の地平線へ…
最終更新:2008年05月03日 01:51
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