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一度催眠にかかると、その後もずっと操られっぱなしになるのですか?

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匿名ユーザー

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 多分、あなたが想像しているのは、後催眠暗示のことでしょう。後催眠暗示とは、催眠を解いた後も有効な暗示のことで、ショー催眠では一番の見せ場です。催眠中に「私が手を叩くとあなたは窓を開けます。催眠を解いた後もこの暗示は有効です。しかし催眠から醒めるとあなたはこの暗示のことは忘れてしまいます」と暗示しておいて催眠を解き、手を叩く、被催眠者は催眠術師が先ほど言ったとおりの行動を、自分でも何故だかわからずしてしまう。それを見ている観客は、「催眠で人を操ってる!すごい!」となる訳です。

 催眠導入で「十分な深さの催眠状態」になってもらうには、それだけで結構時間がかかってしまうので、臨床催眠でも限られたセッションの時間を有効に使うために、「次回からはこの合図であなたは速やかに催眠に入ります」という後催眠暗示を使うことがありました。例えば催眠療法士手を叩けばクライエントは即座に催眠に入ることができるとすれば、催眠導入に費やしてた時間を他のもっと別のことに使うことができます。ただ、こうした催眠療法は、今ではいささか古風です。催眠導入とその後の治療介入のための暗示をはっきり切り離していたのは、かなり昔のことで、現在ではまともな臨床催眠はもっと洗練されており、催眠導入にかかる時間はあまり問題ではありません。

 質問の趣旨を、後催眠暗示という言葉を使って言い換えれば、次のようになるでしょう。「一旦、催眠にかけられ、瞬間的に催眠に入る後催眠暗示を埋め込まれてしまうと、その催眠術師が仕掛けた後催眠暗示によって、いつでも催眠術師の思うがままに、催眠に入れさせられるのではないか」。

 まず後催眠暗示の効き目は、通常はきわめて短時間(数時間から数日)です。加えて、後催眠暗示の効果は、被催眠者が置かれた状況に依存します。臨床催眠での「次回からはこの合図であなたは速やかに催眠に入ります」という後催眠暗示は、そのセラピストとクライエントの間の治療関係において、そして決まった時間、いつもの診察室でいつもの椅子に腰掛けた場合にのみ、効果を発揮するものです。それは、被催眠者が「この場面は安心して催眠に入ることができる。この場面で催眠に入ることは私の治療という利益に適うものだ」という、催眠を受け入れるスタンスがあることが必須条件であるからです。

 催眠中であっても被催眠者本人の意向に沿わない暗示には従わない、というのが催眠暗示の基本ですが、後催眠暗示についても同様に考えることができます。というわけで、瞬間催眠の後催眠暗示をかけられても、いつでもどこでもそれに従う訳ではない、あなたの意に反する場合はその暗示は効かない、と考えてよいと思います。

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