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トラウマに苦しめられています。催眠は有効でしょうか?

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匿名ユーザー

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トラウマとは、「個人にとって心理的に大きな打撃を与え、その影響が長く残るような体験」のことを指すことが多いですが、大きく分けて2種類の使われ方をしているように思います。

(1)ひとつは、その刺激による恐怖や不快な感情を今現在もありありと感じ続けている場合、たとえばPTSDのきっかけとなる体験を指す使われ方。PTSDやASDの他の精神障害に対して異なる顕著な特徴は、その原因がはっきりしていることですので、次の場合とはことなります。

(2)もうひとつは、何らかの治療・療法を受けたけれども、症状が改善せず原因もはっきりしない場合、「トラウマに原因があると思われるので、退行催眠で探りましょう」などと言われる用法。

 「他の治療法で治せるもので催眠療法で治せないものはたくさんあるが、催眠療法で治せるもので他に治療法がないものはない」と言われるように、(1)の場合、たとえばPTSD(心的外傷後ストレス障害)やASD(急性ストレス障害)について、催眠を使った治療法も行われていますが(実際には催眠下でのエクスポージャーといったもので、認知行動療法に催眠を組み合わせたものです)、他にもEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)や認知療法による治療などが行われています。いずれも催眠だけしかできない催眠術師ではなく、心理療法・精神療法の専門家によるものです。

 問題があると思われるのは、(2)の「はっきりしない原因としてのトラウマ」の方です。退行催眠などで「原因さがし」をしていく過程で、実際に体験しなかった虐待などの記憶がつくられる「偽りの記憶」が、アメリカでは多くの訴訟沙汰に発展するなど社会問題となりました。心を表層と深層、あるいは意識と無意識に分ける二分法的な捉え方は、現在の認知科学や神経科学の知見からすれば、あまりに単純すぎる見方ですが、この「単純すぎる見方」が現実社会に問題を引きおこしたケースであるといえるでしょう。こうした二分法をまじめに信じている療法家は、心についてのここ何十年もの研究を知らないか無視している訳で、到底トラウマといった問題を扱うのに適しているとは言えないでしょう。

 重要なのは、催眠が有効かどうかよりも、その治療者・療法家がどのような者なのか、だと思います。
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