しゅくしょうしゃしゃきⅠ


遠くで何か電子音がなっている。
なんだ?どこかで聞いたことがあるぞこの音。
ああ電話だ。携帯か。そうかそうか携帯が鳴っているのか。
寝ぼけ眼で辺りを見渡し充電器に挿さったそれに手を伸ばす。
ついでに時計を見る。

4:26…………

なんだってこんな時間に………。
まぁ他ならぬ親友からの電話だ。出ない訳にはいくまい。
「もしもし佐々『早く出てくれないと困るよキョン!君は僕が慌てて電話をかけてるのがわからないのかい!?』

…………そのままの意味で耳が痛いんだが。ていうか言ってる事が目茶苦茶だぞ。

「こんな時間にどうしたんだ?」
『どうしたもこうしたもないよ!ああもう一体どうなってるんだ。遊園地で闇取引の現場を目撃した訳でもないのになんだってこんな………』
すまん。全く意味が分からない。寝起きの頭でも分かるように簡潔に説明してくれ。
『縮んでたんだ!朝起きたら!』
なんだそんなことか。
『そんなことかってどういうことさ!いやに落ち着いてるな。君には事の重大さが分かっていないのかな?』
なに。お前は寝ぼけてるだけさ。大方モデルにでもなる夢でも見てたんだろう。
『言ってる意味がわからないのだが………』
気にすることはないさ。大きさなんて人それぞれだ。それにお前は元々縮む程ないだろう?
『キョン………まさか君は…』
大丈夫だ。牛乳飲めば大きくなるってテレビでやってたぞ。なんなら俺が揉んでやっても……
『胸のことじゃない!!!』


《しゅくしょうしゃしゃき》


「本当に申し訳ありませんでした。」
「寝起きだったとは言え君は最低だ。どこぞの団長様じゃないが下せるなら死刑を下してやりたいね。」

現在5時ぴったん。
今、俺は佐々木の部屋で土下座している。
あの後佐々木宅に呼び出されたのだ。もちろん断る訳にはいかない。何故って、親友の頼みだからな。恐怖に駆られた訳ではない。断じて違う。

「………まぁいいさ。顔を上げてくれ。」
「ははぁっ!」
面を上げた俺と佐々木の目が合う。
「どういう状況か飲み込めたね?」
「本当に佐々木さんですよね?」
何を聞いてるんだと思うかもしれない。
しかし正座する俺の目の前で呆れた顔をしている少女は、だぼだぼのパジャマにタオルケットを腰にまいた格好でしっかりと床に足をつけて仁王立ちしているのだ。

身の丈120cmと言ったところか。
「えらく縮んだなぁ。」
頭を撫でながらあえて落ち着いて言ってみた。
「君というやつは………僕をナメているのかい?」
あはは可愛いぞ佐々木。撫でられるのは拒否しないんだな。
「いいかげんやめたまえ。ロリキョンだと言い触らされたいのかい?」
ゴメンナサイ。
「ふぅ。まぁ僕は構わないが……。それよりキョン。何でこうなったか心当たりがあるんじゃないかい?」
……………ハルヒか。
「だろうね。僕もそう思う。でもそういうことを聞いている訳じゃないよ。」
どういうことだ?
他に心当たりはないが。
「……………古泉君に聞いてみるといいよ。」
………そうか。
「で、お前これからどうするんだ?さっき家にはいる時も親御さんのことをまるで気にしていないようだったが。」
「両親は結婚20周年記念で海外旅行中でね。帰ってくるのは三日後ぐらいかな。」
それは大変だな。それまで家に一人か。
「まぁそういう事になるね。さらに言うと今この家には僕らだけという事さ。」
お前なに顔を真っ赤にしてるんだ?
安心しろ。俺一人じゃ心許無いかも知れんが、ちゃんと守ってやるからな。
「…………ありがとう」なんで複雑そうな顔してるんだ?
「じゃあ俺は一旦帰るからな。学校終わったらまた来るからよ。戸締まりちゃんとしとけよ。」
「………っ…………だ」ん?
なんだ?
「……行っちゃいやだよ。キョン……」
ぐおぁ!上目遣いは………反則だ。
「………わかった。とりあえず朝まで一緒に居てやるから。お前は寝ろ。」
「うん……。ありがとう。」
そういって無邪気に微笑んだ佐々木を見ていたら今日ぐらい学校休んでも良いかなと思った。
…………そういえばこいつは学校平気なのか?と気付いたのはその日の3時間目が終わろうとした時だ。

 

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最終更新:2008年01月20日 10:40
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