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L7-0XXXc イブニングスター

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L7-0XXXc イブニングスター

  • 性別:女性人格
  • 年齢:5年(活動が確認された期間)

特殊能力:超遠域電離投射兵装『乙女の指先』

■能力原理
極西機関が多数保有していた秘匿技術の一つであると推測される、一連のシステム群。
現象的には、制動翼部からのゼルエ光子散布に伴って周囲の大気分子を低温プラズマ化し、
広範囲に渡る歪曲EMFを形成する、原理不明の兵装を呼ぶ。
実体媒質を用いている他は、現行の界(フィールド)兵器と機能的に酷似するものの、
現行技術水準でOMサイズに搭載可能な界兵器の最大射程――半径154m――に対し、
本機出現時に観測された歪曲EMFの領域範囲は実に半径730km以上にも渡っており、
これを再現し得る技術は、大陸衝合戦争を挟んだ現代においても確立されていない。

『乙女の指先』の主な機能は、電離投射による索敵能と防御能の拡張である。
構成される歪曲EMFはE3ランダマイズと思われる8~14次元乱数に基づいて形成され、
これに接触したOMまたは実体兵器が引き起こす電磁場パターンの乱れを感知する事で、
珪素感覚群に依らず戦況を把握可能な広域感知としての機能を果たすとされる。
本機の「体性感覚」を数千km圏にまで拡大する、と言い換える事も可能だろう。
防御能に関して言えば、荷電粒子砲や電磁パルス弾は言うまでもなく、
プラズマ化した大気分子の作用により、純光学兵器の軌道すらをも歪曲、無効化する。
こちらの機能は、一般的に知られる界兵器の防御的応用と殆ど変わることはない。
しかし単純な展開半径の広さが、この威力を戦略レベルにまで引き上げている。
本機が出現した戦場では、実体弾、非電磁エネルギー、界兵器以外の攻撃手段は
常に本機に逆転用され得る、と表現すれば、その脅威を端的に理解できるだろう。
全物理運動を「接触」により感知し、戦場に飛び交う光の弾道を自在に動かす様は、
まさに見えざる乙女の指先、という形容が相応しいものであったといえよう。

『乙女の指先』は、戦闘記録内で観察されたこれら2つの機能のみに限定しても、
まさに単独で当時のパラダイムを塗り替えるに足る画期的な兵装であった。
にも関わらず、極西機関製OMでこれを採用した機体は本機の他に存在しない。
その理由についてはいくつかの仮説が存在するが、最も有力な説は、
本機が発生する歪曲EMFが搭乗者に与える、生体影響予測に基づくものである。
8次元乱数パターンに限定しても、リアルタイムに変化する大規模な歪曲EMFは、
EMFの中央付近に位置する搭乗者自身に許容外の生体負荷を与える可能性が高く、
現行での最新型となる第VII世代型強化処理を施した搭乗者であっても、
試算では最大継戦時間は241秒、その後122秒で脳停止との結果が導かれている。
OMの神経全統連結システムとは本質的に両立不能な、死に至る兵装だったのである。

事実、唯一『乙女の指先』が搭載された本機――L7-0XXXcに、搭乗者は存在しない。
本機があまりにも異例なAI制御式OMである事が、逆説的にこの仮説を裏付けている。

キャラクターの説明

【1.概要】
東亞圏攻渉介入末期に開発されたと思われる、詳細不明の極西機関製無人OM。
極西機関はFN00186年5月、伊嶋量子器工およびC&W供電公司の共同攻略戦を受け壊滅したが、
本機が現在知られる不可解な独立活動を開始したのは、この時期に前後するものと思われる。

【2.機体特性】
本機の外観は、通常知られる類人型OMとはかけ離れた異形形態に特徴付けられる。
神経全統連結システムによる帰還制御を要さない(=人型である必然性を持たない)事で、
下半身部に脚は存在せず、6基の空力制動翼および長大な尾部重液置換槽となっている。
光沢を含む純白色からは、装甲材質は単分子化等方層カーボンを主材構成に含むと推測される。
搭載する攻性兵装は射程わずか3kmのレーザー発振スピン反転型量子切断のみであるが、
(副兵装として対艦戦級重力線パルスの搭載も推定されるが、自発破棄されたと思われる)
発振されたレーザーは、歪曲EMFを応用した軌道確定によって多条かつ歪曲した軌跡を描き、
まるで本機を取り囲む茨の如く、不可避かつ必殺の近接兵装として機能する。

だが、それら以上に強力に本機を特徴付けているのは、異常とも言える総合機動性能だろう。
制御ユニットとしての搭乗者の脆弱性を一切考慮しない一連の推力配置は、
元より推進系において他企業より「3世代先の技術」と評された極西機関製OMにあって、
さらに非現実的な水準――平均戦闘速度8000km毎時という「怪物的速度」を叩き出している。
原理は一般的OMと同様の圧縮ゼルエ光子による光帆駆動とされるが、その出力量は凄まじく
座標導出タイムラグを含めれば、艦船級ワープドライブをも直線速度上で凌駕し、
環境核の爆風ですら、上記『乙女の指先』との併用で接触反応後の完全回避を実現する。
OMはおろか実体弾にすら一切の接触を許さないその非人間的機動と、
不可解ながらも何らかの「意思」を感じさせるその活動ロジックへの恐怖と崇敬が、
下記されるような数々の噂を生んだ事は間違いがないだろう。

【3.活動ロジック】
本機の活動ロジックは資料に多数記録されている通り、OM戦闘区に前兆なく出現。
俗に言う「エース」が駆るOMを撃墜し、再び成層圏へと消えるという行動を繰り返している。
AIの暴走との仮説も存在するが、この単独活動の理由は現在でも不明のままである。
その非現実的な程の戦闘能力と目撃証言の少なさは戦場に様々な憶測と幻想を産んだ。
わけても、散布され青白く発光する膨大な量のゼルエ光子が巨大な翼に例えられ、
前線のOM乗り達の間では『白い天使』の通称で伝説化していた事は、周知の通りである。
特に、ごく稀にOM乗りに発生する『天使の口づけ』――珪素感覚群への体性運動入力と
帰還制御信号の複合による、OM全体を自らの肉体の延長と捉える幻肢的錯覚効果――
の名は、この体験を経たものから先に「天使に連れて行かれる」とのジンクスを元にする。
OMに神がかり的な機動を与えるこの効果が戦場において歓迎されると同時に、
今なお不吉さの象徴として忌避される理由も、これに遠因を求める事ができるだろう。

本機の開発経緯の詳細に関しては、遺された乏しい資料より推測する他ないが、
活動ロジックの構築に限定するならば、特記すべき人物は存在する。
生身のOM乗りを凌駕する反応速度と演算能力を備える本機のAI中枢は、
他の機能同様、解析再現共に不可能な秘匿技術の一つとされているが、
このAI中枢のマクロ神経系を構築したとされる人物の名は、第17総区合成槽出身の少女、
検体名「相原依」と記されている。彼女は配列調節体(デザインド)でこそあったものの
本機の開発過程では他の調整体に比して「天才的な」異能を発揮したと記されており、
16歳時点から僅か2年、単独作業で本機のマクロ神経系を構築完了したとされる。
当時の状況は再現すべくもないが、生まれついて生殖能を持たない彼女にとっては、
本機――L7-0XXXc イブニングスターは正しく「娘」であったと言えるのかもしれない。
(相原依の消息は不明。配列調整体の個体寿命を考慮すると、生存は絶望的である)

【4.活動記録と、その最後】
本機の活動は東亞圏攻渉介入後、大陸衝合戦争終戦までの5年間に渡って記録されている。
襲撃による被害は、敵性企業である伊嶋量子器工軍所属の企業OM部隊はおろか、
極西機関の同盟勢力であった筈の第伍號工業領区やイヅチ環太平洋通信財団にも及び始め、
最終的には連盟軍、科学保全条約軍の両陣営に対して無差別かつ甚大な被害を生んだ。
なお、情報の錯綜により本機の機体特性の一切が未整理であった衝合戦争中にあっても、
前線のOM乗りの間では『白い天使』には決して勝てない、という認識は広まっていた。
命を奪い続けた咎を負うエースが『白い天使』に「連れて行かれる」事に関しては、
一種運命論にも似た心理で、この存在を受け入れていた節がある。

戦場における死の象徴『白い天使』の記録は、FN00191年10月――終戦2日前にして、
連盟軍機械戦闘団BN204番小隊(原隊名:弓筈生学重機13番侵攻業務部)との遭遇に途絶える。
現代でも衝合戦争のトップエースとして知られるOM乗り、「黒羽」回導京と本機の交戦は、
公式な記録の残された戦闘ではない。だが証言によれば、この戦闘において両者は、
OM戦の一般的常識からはおよそ信じ難い、750秒以上もの近接戦闘機動を継続し、
限界を越えた機動により互いに大破しながらも、共に成層圏の彼方へと消えたとされる。
そして事実、この最終交戦を境に本機の目撃例は一切報告されていない。
よって本機に搭載された無数の秘匿技術の実態に関しては現象例より推測する他なく、
何を目的にこの1機のみが製造されたのか、何を求めエース達を「連れていった」のか、
その理由すらも今はただ、様々な憶測として語られるのみである。
死亡したエース達が撃墜直前に「声」を聞いた、と述べる通信記録を始めとして、
本機に関わったOM乗り達の中に、不可思議な体験を語る者が多い事は事実である。
回導京にしてからが、軍属以前に一度、本機との接触を果たした過去があったという。
いずれにせよ『白い天使』の存在は、戦地においてあまりにも幻想じみていたのである。
そもそもOMではなかった、との説すら存在する。人工知能と愛に関する、荒唐無稽な説すらも。
しかし彼女も、共に消息不明となった回導も、我々の前に現れる事は、もはやないだろう。

嫁アピール

「人形みたいなガキだ。最初見た時にそう思ったのは覚えてる」

BN204番小隊隊長、『鉄刀』逆藁臣。
一番機として『黒羽』を新兵から育て上げた、軍産分裂時代からの古兵。
不死身と称された歴戦のOM乗りは、回導京をそう評している。

「気概が強過ぎるOM乗りは早死にするが、当然その逆も同じだ。
自殺志願者が進んで前線業務を志望する事だって、当時じゃ珍しくなかった。
どうせこいつも、その類の奴なんだろうってな」

極端に感情表現の少ない少年だったという。
彼の達観した眼差しは戦場を経験した兵士のそれとも異なるもので、
夢想癖じみた危うさを秘めていた、と逆藁は語る。

入社した回導は、自ら進んで最も死傷率の高い13番侵攻業務部を志望。
衝合戦争開戦から9ヶ月後、BN204番小隊の三番機に配属される――当時僅か14歳。
他の企業区と同様、弓筈生学重機の侵攻業務部でも、既に少年兵は珍しいものではなかった。

「あんたらが知っての通り、俺の予想は外れたわけだ。
地獄みたいな戦場で、俺なんかより才能のあった部下が次々入れ替わっても……
三番機の黒揚羽のエンブレムだけは変わらなかった」

「開戦当初はBNナンバーの小隊なんざ、それこそ生きた物理弾頭みたいな扱いだったからな。
その頃は、低軌道衛星群撃破に、環境核サイロ強襲……それと瀋陽の要塞列車か。
クハハッ、今思い出しても怖気の走る任務にばかり送りこまれたもんだ。
あの悪名高い『ウルリクムミ』や、グラウデーゲンの焦土化機構みてえなデカブツもやった。
俺の三番機が『黒羽』じゃなきゃあ、何度くたばっていたかも数えきれないだろうよ」

他にも、BNナンバーの小隊は、開戦当初の連盟軍の劣勢を覆すべく、
居住区の焦土化や、遺伝子汚染兵器散布等の非人道的任務を担った事でも知られている。
過酷な任務で精神を病み、前線を退く兵士達も多い中で、
無辜の市民の虐殺に手を染めてすらもなお……回導の表情が変わることはなかったという。

「一度だけ、奴に聞いた事がある。
部下の詮索をしないのが上官を長く続けるコツだからな。あの一度だけだ。
『どうしてこんな事を続けられるんだ?』ってな。
その時は……もしかしたら俺自身、嫌気がさしていたんだろう」

伝説のエースの心の内を窺い知る事ができる資料は、極端に少ない。
今日我々が目にできるのは、輝かしい戦績としての、数値の記録のみである。

「――『愛するものの為ですから』ってな。そう言ったんだ。
人形みてえな無表情が、その時だけは恥ずかしそうに笑っていたよ。
歳相応の……ガキみてえだった」

弓筈生学重機内、緑18居住区の一般社員層出身である、と記録にはある。
しかしながら、彼の過去については記録以上に辿る事はできない。

緑18居住区は、FN00186年10月に『白い天使』との交戦で壊滅、放棄されている。
生存者は4名(後に1名は襲撃に伴う光子症により死亡)。回導京の名もその中にあった。
当時の親族や知人は、全てこの襲撃により死亡している。

「結局、奴は俺の思っていたような死にたがりですらなかった。
――だが、狂っていた。『白い天使』に家族を殺されてから、ずっとだ」

『鉄刀』の庇護の下、回導は驚異的な精神力で最前線の戦闘を潜り抜け、
戦争開始から3年、僅か17歳にして、連盟軍のトップエース達の間にその名を連ねる事になる。
教導隊への編入や負傷による後方帰還指令をも拒否し、あくまで小隊の三番機を固辞し続ける。
昇進や受勲に興味を抱く事もなく、どれほど危険な任務であっても淡々と遂行し、
衝合戦争最多のOM戦闘をこなしつつも、撃墜記録は僅か3度であり、その全てを生還している。

いつしか漆黒の機体に描かれた黒揚羽のエンブレムは、
条約軍のOM乗り達に『黒羽』の名で恐れられるようになっていた。
その後の彼の戦績は、太陽風レンズ破壊、蝦夷圏防衛決戦、『墜国』撃破等、枚挙に暇がない。

そして運命の日が来る。FN00191年10月2日。

「……あの日のことか。
すまねえが、あの戦いは……俺も正直言って、整理はついてない」

「あの時の奴の平均戦闘速度を知ってるか?
6000km/hだとよ……クハハッ、冗談にもならねぇな。
最新世代の強化処理兵でも、一瞬で脳がシェイクになる速度をよ……
奴は750秒も持たせたんだ」

「『白い天使』が現れた時、俺は死を予感するより先に……耳を疑ったんだよ。
通信を通して聞こえてきた回導の声がな……
……そうだ。確かに泣いていた。歓喜か、憎悪なのか、いや……
どちらにせよ……ずっと人形みたいだったあいつが、泣いたんだ。
『やっと会えた』って言ったのかもな……今まで溜め込んでいた感情を爆発させたみたいだった。
まるで……獣の声みたいな…………クッ、クハハッ」

数分ほど、逆藁は沈黙を続けた。
当時の状況を思い返しているのだろう。

「環境核が落ちてまっさらになった地平線と……灰色の雲との境界で、
『天使』の青白い光と、『黒羽』のOMの赤い光が散って……
……ああ、今でも目に焼きついているさ。
誰もが、連盟軍も条約軍も、OM乗りの誰もが空を見上げていた。
回導だけじゃあない。『白い天使』まで、まるで歓喜に震えているように見えた。
人間の手では届かない……あれは天上の世界のダンスだ」

「俺みたいな人間がこんな事を感じるのは馬鹿げてるってのは分かっている。
笑ってくれていい。だが、それでも――
――美しかった。」

『白い天使』との交戦において、回導京は『天使の口づけ』の状態にあったと推測される。
機体の回収が成されていない以上、OMの操作棺内でどのような現象が起こっていたのかは不明である。

だが、仮に逆藁を含めた目撃者達の証言が正しいのならば、
少なくとも人間の耐え得る戦闘速度ではない、との見解はどの説でも一致している。

「あいつは、本当に……魂の底から、あの美しい鉄の塊を愛していたんだろう。
最初からただそれだけのために、OMに乗っていたのさ。
愛して、愛して、愛して……ただあの時見た『天使』に近づくためだけに……世界まで変えちまってよ。
きっとあの時、操作棺に収まっていたのは人間じゃあなかった。
……愛するために、人間であることを捨てたんだ」

あの逆藁臣からこのような言葉が出ることに、私は驚かされた。
不死身の『鉄刀』。現実主義者のOM乗りの中にあって、最も幻想から遠い人間――
そのような印象を抱いていたからだ。

「間違っちゃあいないさ。現実を見ねえOM乗りは生きていけないからな。
だがな、死臭と薬品に塗れて、潰れた鉄とイオン光の中を這いずりまわり続けていると、
……何でもいい。何か救いが欲しくなるんだ。あの場に居たOM乗りの誰もが、そうだった」

「平凡な子供は、幼い頃に見た天使を追いかけるうちに天に近づいて。
そして地上に落ちた天使は、本当に自分を愛してくれる男に出会って……
……遠い雲の向こう側で、永遠に愛を語り合うんだ。
クハハッ、こんな馬鹿馬鹿しい与太話を大の大人が、それもOM乗りの連中が信じてるんだぜ?
本当に、つくづく……笑えねえ話だ。クハハハハハッ……」

それでも、もしもクソッタレな世界の方が世界の真実だったとしても、と、逆藁は続ける。

「きっとあの時の俺達には――そんな神話が必要だったんだろう」





不死身のエースと恐れられた『鉄刀』逆藁臣は、今は侵攻業務部から離れ、もはやOMに乗る事はない。
あの『白い天使』と『黒羽』の最期を目撃したOM乗り達は、その大半が彼と同じ道を選んだという。

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