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福来友吉『催眠心理学概論』(成美堂,明38.6)

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 同時代の水準をはるかに凌駕する、催眠に対する科学的(心理学的)アプローチの成果。取り扱うトピックの広さ、そして深さは驚愕に値する。うわさに違わぬ傑作。
 福来博士については千里眼・念写事件ばかり語られることが多いが、この書を読めば千里眼・念写事件で博士と共に失われたものの大きさがわかる。催眠研究に限っても日本のそれは福来を失うことで100年は遅れてしまったという人もいるくらいである(とすると、この100年前の催眠書は、今も現役ということになる)。変態心理学(心理学的精神病理学)や臨床心理学に続いたであろう学統がここで途絶えた。
 おかげで他の諸学とことなり東京大学は臨床心理学の分野ではナショナル・センターになることなく、臨床心理学は戦後設置された教育学部に居を定めることとなり、科学としての心理学研究との間に長い間、溝が広がることになった。

国会図書館近代ライブラリーでオンライン閲覧可能(無料)。ここから直接ジャンプできます。



目次

第一章 連合作用

 連合作用の意義
 観念相互間に於ける連合作用即ち観念連合
 接近的経験と観念連との関係法則
 観念と運動との間に於ける連合作用、即ち観念運動
 先天的観念運動
 後天的観念運動
 運動相互間に於ける連合作用、即ち習慣運動
 習慣運動の法則
 観念と感覚との間に於ける連合関係
 観念想像の強き人
 観念と感情、欲望との間に於ける連合関係
 感覚・観念・知覚と身体の病的変化との間に於ける連合関係
 連合関係の図式的説明

第二章 暗示と連喚活動と暗示感性

 無数の連合関係
 暗示の定義
 連喚活動の定義
 暗示感性の定義
 命令の意義
 暗示と命令との比較

第三章 顕在的精神活動と潜在的精神活動

 精神の顕在活動と洗剤活動との意義
 喚想し得ざる観念の潜在活動
 知覚及び理解に於ける観念の潜在活動
 推理に於ける観念の潜在活動
 感情における潜在活動
 よく欲望の潜在活動
 結論

第四章 暗示奏効の法則

 暗示奏効の既定条件
 反対精神活動の有無強弱
 暗示感性の強弱
 暗示の強弱

第五章 暗示術

 暗示術の意義
 暗示者の信用
 暗示者の自身及び熱心
 被暗示者の注意を引くこと
 被暗示者の精神を真面目にすること
 気合術
 伝気術
 挫折法
 誘念術
 利用法
 放任法

第六章 催眠状態

 醒覚に於ける精神の自発活動
 自発活動の絶無と暗示感性との関係
 催眠の定義
 催眠に於ける暗示奏功の実例
 運動不能
 観念運動
 模擬運動
 幻覚及び錯覚
 感覚脱失
 器質的変化
 催眠と暗示感性との関係
 催眠の測定評尺
 精神と脳神経との関係
 睡眠と脳貧血との関係
 モッソ氏の実験
 催眠と脳貧血との関係
 著者の実験

第七章 催眠と睡眠との異同

 催眠と睡眠との異同に関する諸家の説
 心理的方面に於ける両状態の異同
 催眠と睡眠との鑑別法
 催眠と睡眠と醒覚との対照定義
 催眠と半睡半醒との差別
 純粋催眠と不純粋催眠との鑑別法
 生理的方面に於ける両状態の異同
 睡眠と脳貧血と疲労との関係
 睡眠の生理的条件と催眠の生理的条件との比較
 催眠と睡眠とを同一視する説に対する批評

第八章 催眠術

 催眠術の意義
 催眠術の分類
 心理的催眠法
 注意凝集法
 注意対象の変化
 単調無変化なる注意対象
 注意対象は不快なるべからず
 古来使用されたる注意対象
 暗示法
 暗示法に関するし術者の用意
 リェボール・ベルンハイム方法
 生理的催眠法
 頚動脈及び頚鎖動脈圧迫
 深呼吸
 催眠室の温暖
 温湯浴
 温湯の服用
 生理心理的催眠法
 撫擦
 メスメリズム
 結合方法
 著者慣用の催眠法
 自己催眠
 純粋催眠を得る法
 解眠法
 催眠術士の技術と人格

第九章 催眠と感覚

 催眠と視感覚
 催眠と聴感覚
 催眠と嗅感覚
 催眠と触感覚
 注意と感覚の関係
 醒覚中に於ける注意
 催眠中に於ける注意

第十章 催眠と記憶

 記憶の二過程-喚想と把住
 催眠中喚想の容易なること
 喚想と反対精神活動との関係
 催眠中喚想の容易なる理由
 催眠中把住の強きこと
 著者の実験法
 実験の成績表
 催眠中把住の強き理由
 

第十一章 催眠と観念運動

 言語暗示に因る観念運動
 事物暗示に因る観念運動
 日常生活に於ける観念運動
 模擬運動
 潜在観念に因る観念運動
 観念運動及び模擬運動の図式的説明
 行動の伝染
 動物に於ける行動の伝染
 睡眠中観念運動の現われ易き理由

第十二章 催眠と錯覚及び幻覚

 知覚の定義
 正覚・錯覚・幻覚の定義
 催眠中に於ける錯覚及び幻覚
 積極性幻覚と消極性幻覚
 幻覚の説明に関する異説
 中心説
 遠心説
 求心説
 投影説
 観念の刺激力
 想像と幻覚との差別
 夢
 錯覚の説明
 潜在観念に因る錯覚及び幻覚
 潜在観念に因る幻覚の催眠的実験
 欲私的里患者に於ける潜在観念の幻覚
 クリスタル・ゲージング
 催眠中錯覚及び幻覚の生じ易き理由

第十三章 催眠と感情

 観念と感情と身体的変化との関係に関する伝来の心理学説
 ゼームス氏の反対説
 ランゲ氏の実験
 リボー氏の説
 レーマン氏の説
 著者の説
 全身感覚脱失と感情脱失との関係に関する催眠的実験
 表出と感情との関係

第十四章 人格の転換

 重複人格の意義
 複重人格に関する現象の分類
 両人格の交番的活動
 人格転換の法則
 人格転換に関する催眠民的実験
 自然に自発したる人格転換
 ベンシルヴァニヤの女
 アンセル、ブールン
 両人格の同時的各同
 両人格の活動が独立不関的に平行して発現せる場合
 催眠中に於ける同時的活動の実験
 催眠後暗示によりて醒覚中に現はれたる同時的活動の実験
 一人格が他の人格の活動を傍観する場合
 自動書記
 両人格の活動が衝突争闘する場合
 アンナ、ウィンソール
 魍魎憑依
 両人格の官能的交通
 把住に於ける交通の実験
 選択に於ける交通の実験
 ハンナ
 幻覚に於ける交通の実例

第十五章 催眠術の実用的効果

 治療上の効果
 ベルンハイム氏の成績表
 フォーレル氏の成績表
 リンギエール氏の成績表
 催眠の深度と治療効果との関係に関するリンギエール氏の成績表
 月経症に関するチコ、ベルンベルグ氏の成績表
 神経衰弱に関するシユレンク、ノッチング氏の成績表
 中毒症に関するウェツテルストランド氏の成績表
 催眠によりて治療すべき疾患に関するフィーレル氏の成績表
 教育上の効果
 催眠と記憶との関係に関する著者の実験
 実験の成績表
 催眠を応用せる習字に関する吉川氏の実験
 実験の成績表
 悪習慣、悪癖等の催眠矯正に関する諸家の実験

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