オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd(ver.2)まとめwiki

エゴイズム

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エゴイズム ◆BUgCrmZ/Lk


恐るべき殺人鬼の襲撃を辛くも退けたものの、その結果、加山圓は精神的にも肉体的にも疲労困憊となっていた。
そのため、ひとまず身を休めようとしていたのだが、休憩するにしても辺りは見る限り血と肉片のまき散らされた地獄絵図である。
流石にこの場に居続ける気にはなれないし、何よりイロハにこんな光景を見せ続けるわけにもいかないので已む追えずその場を離れ、深い森を後にした。

『やぁやぁ、久しぶりだね。ボクだよ』

そして場を移し、ようやく休息が取れると思った矢先の出来事だった。
どこから流れているのかすら不鮮明でありながら、だが確かに聞こえる声。
聞き覚えのあるその声が、この場に連れてこられる直前に聞いた声と同一のものであると気づくのにさして時間は必要なかった。
ふと時計を見れば、時刻は6時丁度。
脳内に直接響くかのように聞こえる、これが事前に告げられていた『放送』なのだろう。

いったいどんな内容が告げられるのか。
警戒心を強めながらも、聞き漏らさぬよう耳を傾ける。

まず放送によってもたらされた情報は『禁止エリア』についてだった。
何でも侵入しただけで死亡するエリアが追加されるという、どうにも聞き流せない情報である。
忘れぬよう慌てて荷を漁りメモを取りだしその内容を書き記してゆく。
告知された禁止エリアは『B-2』『D-4』『E-8』の三つ。
今いるエリアは地図で言うところの『E-7』エリアであるため、禁止エリアに指定された『E-8』エリアに近い。
誤って踏み込むことはないだろうが、注意は必要だろう。

『さて、それではお待ちかね、参加者の告知をしよう。
 と言っても、既に参加者名簿を各自の荷物の中に転送しいるので、各自で確認してくれ。
 荷物ごと無くしてしまったモノは、近くのモノに見せてもらうといい』

言われて荷物を確認してみれば、何時の間に紛れ込んだのか、参加者名簿と思しきものが確かにあった。
先ほどメモを取り出した時にはなかったものがある。底知れぬヨグスの力に、うすら寒いものを感じながらも、名簿を開きその内容に目を通す。
ずらりと並ぶ36の名。
日本人だけではなく外人のような名前もあり、多国籍にわたり多種多様である。

「って、姫さんまでいんのかよ……!?」

その中で、もっとも脅かされたのはとある事件で知り合った某国の王女の名である。
それだけではない。他にも、幼馴染にクラスメート、学校の先輩や近所の知り合いまでいる。
イロハの様な例外はあれど、北で激戦を繰り広げていた奴らや、先ほどであった男の様な殺し合いに則した化物が参加者の殆どであるのだと思っていただけに、知った名がいくつも連なっているというのは完全に予想外の事だった。
どんな基準で人選をしているのか。全くの謎である。

『確認したかい?
 それではそれを踏まえた上で、この6時間で脱落した死者を発表する』

天からの声に思考が引き戻される。
死者の発表。
その言葉に、全身が総毛立つような感覚を覚える。
それはつまり。
この名簿に載っている者は。
日常を共に過ごした同級生も。
子供のころから知る幼馴染も。
共にあれほどの事件を潜り抜けた姫様も。
全て今から死者として呼ばれる可能性があるという事。
そんな、こちらの気持ちを無視して、死亡者の名が淡々と告げられていった。



「――――――――」

思わず、無意識のうちに地面に拳を打っていた。
告げられた名は12。
呼ばれた中には、知った名がいくつかあった。
言いようのない無力感。
この殺意と悪意を持った化け物たちが跋扈するこの場で、自分が何ができたとも思えない。
それでも何かできなかったのか、そう思ってしまう。

打ち付けた拳にジワリとの痛みが感じられてきたころ、ハッとしてすぐ近くで佇むイロハを見る。
自分のことばかりでイロハを気にかけるのを忘れていた。
この少女も、自分と同じように知り合いが巻き込まれ命を落としているかもしれないというのに。
己の気のまわらなさに心底呆れながらも、イロハに向かって問いかける。

「…………イロハちゃん、大丈夫?」

何を問われたのか分からないといった風に、イロハは小首をかしげる。
放送の内容を理解できていないのか、それとも本当に思うところはないのか。その表情にこれといった変化はない。
言葉を話せないこともあり、この少女に関しては分からない事の方が多い。
イロハが名簿を確認した様子もなかったようなので、この場に知り合いがいるのかどうかすらわからない。

「この中にイロハちゃんの知ってる人っているかな?」

自分の名簿を開いてイロハに向かって問いかける。
その問いに、イロハはしばらく名簿を眺めてからふるふると首を横に振った。

名簿に知ってる名がないということは、この場に知り合いはいない、ということだろうか?
だが、先ほどの男は明らかにイロハを知ってる風だった。
どういう関係かまではわからないので、むこうが一方的に知ってただけという可能性もあるが。逆ならともかくそれは少し考えづらい。

「イロハちゃん、さっきのあの男ってイロハちゃんの知り合いなの?」

なので直接疑問を投げかけてみた所、この質問にイロハは肯定の意を示すように頷く。

「……えっと、どういう関係?」

思わず漏れたこちらの質問に、イロハは少し悩むような素振りを見せた後、小さな手足を動かし身振り手振りで応じてくれた。
なにやら答えを伝えようとするその様は大変可愛らしいとは思うのだが、答えとしては要領を得ない。
雰囲気的に険悪な関係ではなさそうである。
あの殺意の塊のような男と交友的な関係だというのも想像できないが。とりあえず知り合いなのは間違いないようだ。

なら、この名簿に名前がないのはどういう事だろうか?
この名簿に載っていない、あるいはジョーカー的な存在なのか。
もしくは、考えられるのはイロハの知る名と、ここに乗っている名が異なっている可能性か。
この名簿には魔王とかフィクションとか明らかに本名じゃない。偽名か異名みたいな名前も載っている(というか魔王ってのは北で戦ってた魔王っぽい奴だろこれ)。
奴もそうなのかもしれないし、他にも、そうであるというだけで認識できないイロハの知り合いがいるのかもしれない。

なんにせよ、いると分かった以上(あの男は例外としても)お互いの知り合いとの合流を目指したかったのだが。
イロハの知り合いを探すというのはいるかどうかも分からない以上、ひとまず保留にせざる負えない。

「…………となると、まずは加奈子と姫さんあたりか」

他にも知り合いは何人かいるみたいだが、探す宛てをつけるなら、まずはこの二人にしたい。
まぁ二人とも俺なんかよりもよっぽど逞しい女ではあるのだが、なんだかんだで女一人を放置しておくのは気が気でない。

探すにあたって性格上、あの二人が大人しくしているとも思えないので、おそらく人の集まる場所に向かっている可能性が高い。
ならば市街方向に戻るべきだろうか。
だが、その場合、北部で激戦を繰り広げていた奴らに出会う可能性や、先ほど立ち去ったあの男とまたかち合う可能性もある。
先ほどの戦いで生き残れたのは殆ど運だ。
また戦いになれば、今度こそ生き残る自信はない。

とはいえ、市街地を避けて移動するにしても、すぐ東の『E-8』エリアは禁止エリアに指定されているため移動は不可能。
北の発電所方向も死体の破片が撒き散らかされているため、できれば避けたい。
そして市街方向も除外するなら南しかないが、離れの小島が一つあるだけである。
そんな所に探し人がいる可能性は低いだろう。

西か南か。
西は彼女たちがいる可能性は高いが、リスクも高い。
南は彼女たちがいる可能性は低いが、リスクも低い。
どちらにするか、リスクと目的の両天秤だ。

自分だけじゃなくイロハのリスクも背負っているとなると迂闊な選択はできない。
だがそれでも、

「イロハちゃん。ここに俺の知り合いがいるみたいなんだ。
 だから少し危険かもしれないけど、人が集まりそうな市街方面に戻りたいんだけど、いいかな?」

こちらの言葉に何の疑いもなくイロハは頷く。
その様に、チクリと罪悪感の様なものを感じる。

自分の知ってる人間が自分の知らないところで死ぬなんてことは耐え難い。
これはそんな己のエゴだ。
この罪悪感は、そんなものにこの少女を突き合わせることに大してのものなのか。
いや、それだけではない。
疑うことを知らない無垢なこの少女に、応じると分かっていながら問いかけたことにだ。

己のエゴに巻き込んだ代償ではないが、この少女を守る。
その決意をより一層固めながらも、休息もそこそこに市街地に向かって動き始めた。

【一日目・朝/E-7 森】
【加山圓】
【状態】疲労、全身に細かな切り傷、過剰感覚による少々の気持ち悪さ
【装備】小太刀
【スキル】『五感強化』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本:徹底的に抗う
1.加奈子とフランドールを探す
2.イロハを守る

【イロハ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品×1~2
【思考】
1.マドカに付いていく

37:スリラー 時系列順 40:病の呪い
37:スリラー 投下順 39:その手の温もりを
31:なんだお前か 加山圓
31:なんだお前か イロハ

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