オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd(ver.2)まとめwiki

許さざるもの

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許さざるもの ◆Z2CJJz2v/o


頭に響く天よりの声。
晴れやかな朝日とともに舞い降りたそれは、福音などではなく凶事を知らせる凶報である。

それはこの少女、安田智美にとっても当然のごとく例外ではない。

「――――――――」

幾多の名を聞いた。
漏らす声などない。
懐く感想もない。

何が呼ばれたのか。
何故呼ばれたのか。
それがどういう意味なのか、認識ができない。
彼女には受け入れられない。

「――――――――」

何故そこに聖澤めぐるの名が含まれていることが理解できない。
いや、少し考えればわかることなのだろう。
だが考えることを脳が拒否する。
考えてしまったらきっと何かが終わってしまう。

「…………めぐる」

だというのに、乾いた喉からその名は呟かれた。
自ら口にした言葉は、乾いた大地に水が浸み込むように彼女に現実を認識させる。

「めぐる、めぐる、めぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐるめぐる」

その名を繰り返す。
そう呼び続けることしかできない。
その度に侵食するように、親友の死が彼女の理解へと及び。

「ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

堰を切ったように感情が噴出した。
喉が張り裂けるような絶叫。
涙と叫びで全てを吐き出すような慟哭だった。

戦友だった。
親友だった。
今の自分の全てだった。

永遠に響き続けるのではないかと思われた絶叫もいつしか止まる。
すべて吐き出した後に音はなく、静寂が辺りを支配する。
辺りに動くものはない。
智美は蹲る様な体制のままで、唸るように呟く。



「―――――許さない」



それは誰に向けての言葉だったのか。
この舞台を生み出したヨグスに向けてか。
目の前で龍造寺さくらを殺したオーヴァーに向けてか。
それとも聖澤めぐるを殺した誰かに向けてか。

憎悪を込めた言葉は融けるように、誰に届くこともなく消えていった。

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「12人、ねぇ」

放送を聞いた御木魚師は表には出さないものの、内心で焦りを感じていた。

既に12人の死者が出ているということは、当然殺した人間もそれだけいるという事である。
三分の一が死んで生き残りは早くも三分の二。
一人一殺してその全員が生き残っているとしたら、最悪の場合この島にいる二人に一人は殺人鬼になる計算だ。

そして御木は最悪を想定する。
それが生き残るコツだ。

御木は小悪党だが殺人という一線だけは超えちゃいない。
彼に騙された挙句、破滅して自殺した人間はいるのだろうが、それはノーカウントだ。

日本は治法国家である。ヤクザといえどそう簡単に人を殺せるわけではない。
そういうことが平然と出来るネジのイカれた野郎はすぐに御用になるのが常だ。

だがこの場は治外法権だ。
開始直後にホイホイと人を殺す奴が3人もいることといい、もしかしたら猪目だけじゃなく”そういう人間”を集めているのかもしれない。
もちろん言葉さえ通じれば猪目だろうと口八丁で乗り切る自信はあるが。そもそも言葉すら通じない相手ではそれも不可能だ。

この場は思った以上にヤバイ。
これまで危険人物に出会わなかったのが奇跡の様なものだ。
真奈美で楽しむ予定だったが、身の安全が第一である。彼は何よりも我が身が可愛い。
開始直後から行動を共にしている連中が殺人を犯している可能性はないだろうが、これから合う連中には最大限警戒が必要になるだろう。
その辺の人間性の見極めは真奈美やエジソンじゃ無理だ。
その見極めは御木が行うべきだろう、彼女らのためではなく、あくまでも己ために。

だが、御木は失念していた。
あまりにも近すぎて見逃していた。
と言うより、動ける存在として認識していなかったため見落としていた。
既に一人、異物が侵入していることを。
素性のしれない人間が、本当にすぐ近くにいることを。

ゴキン、と鈍い音が響いた。

「…………うわぁあぁあああぁぁあぁぁ!!!!!」

少し遅れて聞こえる、耳を劈くような悲鳴。
何事かと真奈美が声の方向を振り返れば、目に入ったのは悲鳴を上げながら脱兎のように駆け出すエジソンの後ろ姿。
そして、首が180度捩じれた、御木魚師の姿だった。

「13人目ね、これで」

薄い笑みを張り付かせたような声。
御木の体がゆっくりと倒れ、捩じれた頭から防弾ヘルメットがカランと落ちた。
入れ替わるのように、御木の背からスカートを翻して少女が降り立つ。

「貴様は…………」

真奈美目が驚愕に見開かれる。
あれほど酷かった顔の傷が、この短時間で完全ではないもののある程度見れるレベルまで回復している。

そして幾分か傷の引いたその顔には覚えがあった。
直接的な知り合いではなく、調査資料の中でだ。
それは前代未聞の大量殺傷事件を巻き起こした張本人。

「――――藍葉水萌!」
「あら、私って有名人」

名前を言い当てられた水萌は動じるでもなく、嗤いながら御木の体から排出されたスキルカードを回収する。

情報を聞き逃さぬようじっとしていたが、意識自体は放送のタイミングで覚醒していた。
あの老人、板垣退助からうけたダメージで頸椎を損傷してなかったのは幸いだった。
裂傷はふさがった。まだ見た目上は傷跡は残っているだろうが傷口がふさがっているなら十分だ。
赤黒い風船のように膨らんでいた顔の腫れは、顔の造詣が見て取れるレベルにまで引いている。
完全に砕かれ外れた顎骨も繋がっている。言葉を話すだけなら支障はないだろう。
鼻骨の粉砕骨折はまだチクチクと痛むが、呼吸はできる。戦闘には影響はなさそうだ。

いずれをとってもこの短時間で成せる次元の回復ではない。

「スキルってのも意外と使えるわね」

最強を自負する勇者のまさかの敗北。
油断していたというのも確かにある。
だが、それを差し引いてもあの老人は強い。身を持ってそれを実感した。

当然のごとく借りは返す。そうでなくとも殺すが。
そのためにはレベルアップが必要だ。
だが、彼女のレベルはカンストしている。これ以上の成長は見込めない
ならば、装備を整えるしかない。この場合はスキルも含む。

「という訳で頂戴、あなたのスキル」

ペロリと赤い舌をだしながら踏み込んできた水萌に対して、真奈美はH&KMP5を構える。

「動くな!」

相手は大量殺人犯である。
容赦する道理はないし、容赦すればこちらがやられる。
何より殺人者は許せない。
相手の動きによっては、すぐさま引き金を引く覚悟を決める。

「うふふふ。おバカさん。そんなものが当たると思って?」

だが、銃口を突きつけられながらも水萌は余裕を崩さない。
不敵な笑みのまま水萌はさらに一歩、真奈美へと踏み出した。

「ッ!!」

その動きに、真奈美は反射的に引き金を引いた。
フルオートマチックで降り注ぐ9㎜パラベラム。逃げ場などない弾丸の雨。
だが、命を奪う事への躊躇いからか、足元を狙っていたのが災いした。

水萌は上に向かって跳んだ。
完成された勇者である彼女は、単純に身体能力が常人とは桁違いである。
見惚れるほど美しい伸身宙返りで弾幕の遥か上に弧を描くと、そのまま身を捻り真奈美の背後に着地した。
真奈美もその動きに対応すべく、振り返りながら残弾を撃ち尽くしたサブマシンガンの装填を行おうとするが。
それよりも速く手首を強かに弾かれ予備カートリッジを地面に落とした。
そのまま後ろ手に関節を固められ、真奈美は動きを封じられる。
少しでも腕をひねれば関節が破壊されるという体制のまま、水萌は真奈美の耳元に語りかける。

「スキルは使わないの?
 戦闘用のスキルじゃないのかしら?
 それともまだスキルを取り込んでない?
 まあ、どっちでもいいわ。殺してしまえばわかることだし」

水萌の腕に力が籠められ、ミシリと真奈美の骨が軋みを上げた。
関節が破壊されるその直前。
唐突に水萌は真奈美の拘束を放棄して、大きく後ろに飛びのいた。
同時に響く短い銃声。それが水萌を狙った第三者の存在を知らせいた。

「いい所だったのに、邪魔するのはだぁれ?」

水萌が銃声の先に視線を向ける。真奈美も水萌を警戒しながらも同じく視線を送った。
その視線の先に表れたのは小型拳銃を片手に構えた、青と白のドレスに身を包んだ少女だった。

「――――チッ」

現れた少女は舌を打つと、弾切れしたのか手にしていた小型拳銃を乱暴に放り投げた。

その少女の目を見た、真奈美の背に戦慄が走る。
フリルの付いた可愛らしい衣装に見合わない、その瞳は深淵の闇のよう。
深い絶望と殺意が入り混じった色だ。

「―――――魔法使い」

そう口を開いたのは水萌だった。
そして相手を見下すように水萌はくすくすと嗤う。

「魔法使い如きが、勇者に勝てるとおもってるのぉ?」

挑発的な水萌の言葉に対する少女の返答は端的だった。

「――煩い。人殺しは、死ね」

言って。双剣を生み出し、水萌に向かって対峙する。
だがそれを静止する声が響く。

「待て! 待つんだ。
 助けてもらったことには感謝する。だが危険だ。
 相手は凶悪犯だ。この場は警察官である私が例えこの身がどうなろうとも抑えてみせる。
 だから、君は下がってるんだ。
 それに、どんな理由があろうとも君が彼女を殺そうというのなら私は、」
「―――――煩い」

静止を求める声は、怨嗟のような声に遮られる。

「煩い。煩い。煩い煩い煩い! 煩い!
 あなたは逃げた仲間でも追ってれば?
 邪魔するなら――――殺すわよ」

その気迫に思わず真奈美は押し黙る。

彼女にとっては、もはや何もかもが煩わしい。
目の前で殺人を犯した水萌は決して許せないが。
先ほどの銃撃が制圧ではなく殺すつもりで撃ったものだったなら、真奈美も殺している。

安田智美は――魔法少女は正義の味方ではない。
自らの目的を達するために力と契約した己の味方だ。

殺人者は許さない。

それは奇しくも真奈美と同じ信念ではあるのだが、その本質はまるで違う。
真奈美のそれは殺人という行為を恨み、行為者を逮捕するという形での許さないだが。

智美のそれは、目的のためなら、殺人者を殺して自らが殺人者になることは厭わないし。
そのためならば、無関係の人間を殺しても構わないと思う程度には矛盾している。

先ほど真奈美を救った銃撃もそうだ。
真奈美に当たっても構わないつもりで撃ったし。
そもそも彼女を救うつもりで撃ったのではない。

「ねぇ、その剣ってスキルで出したの? それともあなたの元々の力なのかしら?」

智美は答えない。
ただ殺意をギラつかせ双剣を構える。
そのつれない態度に水萌は肩をすくめる。

「そう。答えないならそれでもいいわ。私の経験値(かて)になりなさい、魔法使い」
「煩い。殺してやる。殺人鬼」

【御木魚師 死亡】

【一日目・朝 E-2】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】双剣
【スキル】『ブレインイーター』『ある魔法少女の魔法能力(めぐる)』
【所持品】基本支給品、空のカード(残り9枚)、不明支給品1~3(さくら)
【思考】
基本:人殺しは許さない
1.目の前の女を排除する
※双剣はめぐるの魔法少女としての能力で生成された物です

【藍葉水萌】
【状態】顔面にダメージ(大)、再生中
【装備】なし
【スキル】『自己再生』
【所持品】基本支給品、手榴弾×4 特殊手錠『パブリックエネミー』
【思考】
基本:板垣に報復。そのために装備とスキルを集める
1.経験値稼ぎ
※特殊手錠
一見ワイヤーのついたごく普通の手錠。何か特殊な仕掛けがあるらしい。

【真琴真奈美】
【状態】健康
【装備】H&KMP5(0/30)
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品
【思考】
1.エジソンを追う or 目の前の争いを止める
2.オーヴァーが居る…?

【一日目・朝 D-3】
【トーマス・A・エジソン】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、不明支給品1~2
【思考】
1.この場から逃げる


33:第一放送 時系列順 35:Do you struggle against trouble?
33:第一放送 投下順 35:Do you struggle against trouble?
26:目まぐるしく回る事態 安田智美 :[[]]
32:邂逅か、それとも 藍葉水萌 :[[]]
32:邂逅か、それとも 真琴真奈美 :[[]]
32:邂逅か、それとも 御木魚師 死亡
32:邂逅か、それとも トーマス・A・エジソン 39:その手の温もりを

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