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馬鹿で……あってくれ。で……電波?り……りょうほーですかあああ~(前編)

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馬鹿で……あってくれ。で……電波?り……りょうほーですかあああ~(前編) ◆wKs3a28q6Q


今から殺し合いをしてもらう。
バーイ、自称・アンドロメダ星人。

全くもって意味不明なことだった。
自称・お花の国のプリンセスな知り合いは昔いたし、異星人を自称するヤツがいるのも知っている。
整った顔立ちで真顔のままやられたのには若干驚いたけど(脳味噌まるごとお花畑プリンセスはぶりぶりした面構えだった)

まぁ、とにかく……
異星人を名乗るのはいい。
誰も本気にはしないし、そういうキャラクターなのだろうと周りも認めるからだ。
日常の中でやっていたらドン引きだが……まあ、一種のファンタジー空間であるテレビの中や“お店”の中なら許容範囲。
私は死んでもやりたくないが、客観的な視線で見たら「そんなヤツいねぇよ」ってキャラクターを演技をしているという点では、私も変わらないだろう。

私――花緒璃乃は、清楚可憐な女学生なんていうファンタジーの産物そっくりの外見が売りである。
その容姿を巧みに使い、多くの男を手玉に取って弄んできた。
それを、至上の喜びとしている。

だから、拉致をされるだけならば、分からない話じゃないのだ。
プライドをズタズタにし、社会的地位も根こそぎ台無しにしてやったオッサンどもが、結託して拉致をしてくる。
ありえない話じゃない。
何せもう失うものなど無いのだから、最後に復讐くらいしてきてもおかしくはない。
デフォルトで失うモノを持っていない無職のオヤジが強姦目当てで拉致という凶行に出る相手として選ばれる、という可能性もある。
……それが分かっているからこそ、刃向かう気力を無くすくらい徹底的に傷めつけてから捨ててたし、常にボディガードとなりえる男も抱え込んでいたのだけど。

どう拉致ったのかは分からないが……とにかく、拉致だけなら仕方あるまい。
勿論嫌に決まっているが、リンチの末殺害されてもおかしくはない人生を歩んできた自覚はある。
場合によっては、輪姦されるかもしれない。
……どちらかと言えば、時間を稼いで私の恋人(と思い込んでる哀れな男)が救助に来るのを待てる分、リンチよりは輪姦の方がいいんだけど。
この肉体も、立派な武器の一つだし。
リンチされていたとしても、無様で哀れな命乞いという体で体を差し出せば、嘲笑しながらこちらのプライドを引き裂くために犯してくるんじゃなかろうか。
まあつまり、拉致されてもすぐ殺されなきゃなんとかなるということだ。

(でもこれは、ちょっと予想外よねぇ……)

何せ拉致をされたのに、危害は加えられなかったのだ。
そしてただ、殺し合えと命じられた。
まるで意味が分からない。

(そもそもアレ、男だったのかしら?)

中性的な容姿もあり、そもそも得意の色仕掛けが効いたのかも怪しい。
いきなり殴られていたら、最悪何も出来ないままに殺されていた。
なのにヤツは、殺し合いを命じた後で私を普通に解き放った。
……いつの間にどうやってこんなところに解き放ったか、さっぱり分からないのだけど。



(……何よ、これ)

考えていても仕方がない。
というか、考えるには材料があまりに少ない。
今の状況で考えても、「わけがわからないよ」と約10文字の結論しか導き出せない。
だから、少しでも判断材料を増やすため、配られたバッグの中身を確認したのだけど――

(ひょっとして、これが武器?)

トンカチ。もしくは、カナヅチ。
トンテンカンテン釘を打つ物。
赤い帽子の配管工を阻む投擲アイテム。
それが、バッグに入っていた。
地図の次に拝んだものが、まさかこんな日用品だったなんて。

(宇宙人さんは随分と泥仕合がお好みのようで)

日用品での殺し合いとは、趣味が悪い。
殴り合いのキャットファイトでも見たいということか。
……よもや、自分は見せ物として拉致されたのだろうか。
どこぞの大物を貶めた馬鹿の見せしめに巻き込まれ、その大物の知人を貶めていた私まで拉致された――
ありえない話ではない。

(なにこれ、アンドロメダ制マジカル消臭スプレー……?)

この流れだと他の参加者は花瓶や灰皿なんかで戦ってるのではないか。
そうだとしたら、最強の狂気は階段と階段したの大きな石に違いない。
そんなことを考えながらバッグを漁っていたら、今度は怪しげなスプレー缶が出てきた。
目潰しに使えそうだし、ライターがあれば火炎放射にも使えそうだ。
そんなことを考えながら、スプレー缶の説明を読む。

『アンドロメダ制の消臭剤です。全身に吹きかければ、血の臭いや火薬の臭いが綺麗サッパリ落ちます。
 プロの殺し屋でも気付けないほどのその威力! デートの前のエチケットに!』

……バッカじゃなかろか。
血の臭いを綺麗サッパリ落とすとか、そんなものがあるわけない。
消臭剤なんてものは、そんな万能じゃないっつーの。


「…………あ」

バッグの中身をさらに出し、思わず声を上げてしまう。
宇宙人の言っていた、カードとやらが出てきたのだ。

(手に取り宣言するだけ、ねぇ……)

そんなことがあるわけない。
馬鹿馬鹿しくて仕方がなかった。

だがしかし、ありえないと切って捨てることもしない。
何せ『いつの間にか拉致される』など、ありえないことは既に起きているのだから。

「スキル・『光りあれ!』――これでいいのかしら」

馬鹿みたい。
そう思いながら、一応カードに書かれた名前を宣言する。
すると、どういう原理なのか分からないが、カードがまるで手のひらに溶けていくように消えていくではないか。

「うっそ……マジ?」

思わず呟いてしまう。
カードが消えただけなら、トリックだろうと考えただろう。
だがしかし、もっとすごい“ありえないこと”が起こっている。

脳内に、このスキルの使い方が流れこんできたのだ。

「…………光、あれ」

とりあえず、周囲を照らさないように掌で小さな輪を作り、その中に極力小さな光を出そうと試みる。
これで万が一光が出たら、出鱈目なファンタジーじみたことが現実だということになる。
即ち、アンドロメダ星人は本当にいてもおかしくないし、この殺し合いは本物の殺し合いということだ。

(……参ったわね)

掌が、生まれた光で照らされる。
これで、ある程度は確定した。
殺し合いは事実である可能性が非常に大きく、スキルカードとやらも本物である。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

突如聞こえてきた大声に、慌てて光を包み隠す。
消滅させたらしばらく使えないらしいので、無思慮に消すのは躊躇われた。
どうやらただ純粋に周囲を照らすだけの能力らしく、掌に熱を全く感じない。
光が最小ということもあって、掌で完全に密閉することができた。

こちらの位置が気付かれる可能性は減った。
逃げることも出来るのだが、どうするべきか考える。
声は、背後から聞こえてきた。
逃げるなら前方に行き、接触するなら後方に行くことになる。
――聞こえてきたのは、頭の非常に悪そうな男の声。

(男、か……なら、イケそうね)

男相手に取り入るのは、得意としていることである。
それはこんな状況でも変わらない。
バッグの中に消臭スプレーをしまい、金槌を手に声のした方に駆け出した。
最小化していた光を掌から出し、周囲をしっかり照らすくらい大きくする。
今いるのは森の中ゆえ、暗いまま走りまわると転びかねないからだ。

あの大声を聞いた参加者が集まるとしても、せいぜい1人か2人程だろうという考えもあってのことだ。
この島で殺し合いをさせるなら、遠すぎず近すぎずな位置でバラけてスタートさせるはずだ。
ということは、あの声に反応できる距離にいる人間も、そう多くはないということ。
そしてその人物がいる場所は、声の主を挟んだ“向こう側”である確率の方が大きいだろうと考えている。
だから、遠慮無く足元を照らさせてもらう。
声の主は男なのだ、あまり警戒を出来ていないお嬢様のふりをした方が奇襲しやすいという打算もある。

――そう、私は、この殺し合いに乗ることにした。

何故かって?
勿論ちゃんと理由はある。
自棄になったり無思慮で殺し合いに乗るほど、私のおつむは悪くない。
さっき「失うものが無ければ何だって出来る」と言ったが、私には失うものがいっぱいあるのだ。
だから、何でも出来るわけではない。

じゃあ何故殺し合いを受け入れたのかって?
それは、私が多くを持っているからだ。
確かに何かを持っている人間は、周りを気にせず大胆に暴れる事ができない。
しかし持っている人間は、持っているものを上手く組み合わせることで、特定の行為をしても『許される』権利を手にできるのだ。
それが、持っていない者との違い。
何もかも許されるわけではないが、何ひとつ許されずに最終的に破滅が確約されている持たざる者とは違い、未来を許されるのだ。
私はまだ死にたくないし、今の地位を捨てたくもない。
だから、許される行動の内で最も手堅いものを選ぶ。

人を殺す――さすがの私も経験がないし、普通ならば手堅い選択とは言いがたいものだろう。
しかし今は殺し合いを強要されている場面。
言うならば、ここでの殺しは所謂『緊急避難』なのだ。
今まで何度か緊急避難を利用して男を傷つけてきたのだ、後から緊急避難でしたと演じることなど余裕だ。
もっとも、演じるまでもなく、この場合は緊急避難になるだろうけど。

まだ僅かにこの殺し合いが現実ではないという可能性が残っているが、その場合でも殺し合いに乗っておけば問題ない。
何せ、殺し合いを否定できる根拠がないのだ。
これが悪質なドッキリのようなものだった場合、素直に引っかかっちゃった可哀想な少女として「怖かったよぉ」と声を上げて泣き出せばいい。
ドッキリなのに本当に相手を殺してしまったというケースでも、「本当に信じこんでもおかしくないクオリティだった故の悲劇」を演じることでどうにかなる。
もしもこれが夢ならば、数多の屍の上で目を覚ましても問題はない。
最悪のパターンを想定するなら、殺し合いには乗っておくべきなのだ。
嘘だと思って命を落としてしまうほど馬鹿馬鹿しいことはない。

勿論、すぐに殺しにかからずに徒党を組むという選択肢だってある。
一人より、二人の方が生存率は高いだろう。
しかし徒党を組む場合、裏切られる可能性が付きまとうことになる。
いつ仲間割れが起きてもても大丈夫なように、優位に立てる状況下でのみ徒党を組むべきだろう。
金槌だけしか武器がない現状では徒党を組むべきではない。

それに、殺すことには明確なメリットがある。
あの自称アンドロメダ星人の話を信用するならば、相手を殺せば相手のスキルはカードに戻る。
そしてそれを再び私が取り込むことで、扱えるスキルが1つ増えるのだ。
武器が増えるのも大きいが、やはりこのスキルの増加というのが大きい。
何せこれらの能力は、複数持っているかどうかを調べようがない。
眼に見えないものなため、誤魔化し放題である。
武器は初期の数以上に増やしすぎると殺し合いに乗っていることが筒抜けになるが、これらのスキルはいくつ集めてもバレる理由に繋がらないのだ。
私のようなか弱い女が勝利するには騙し討ちが一番な以上、正体バレをする恐れがなく自身を強化できるのが大きい。


「あ、あのっ! 大丈夫ですかっ?」

哀れな獲物の姿が見えた。
心配そうな声を上げ、不安げな顔を作る。
そして呆然と自身の手を見つめている男――いや、少年か。制服だし――へと駆け寄った。

「ヤッベ! マジヤッベ! ちょ、あんた見た!? 今の見た!?」

私の声に反応して、少年が顔を上げた。
そして掌を向けて、興奮したように語り出す。

(あらっ、いい男……)

少年の顔は、それはそれは整っていた。
きっと自身のその容姿に自身があり、可愛い彼女もいるのだろう。
平時なら、そのプライドをズタズタに引き裂きたくなっているところだ。

「今来たばかりなので見てないですけど……この手がどうかしましたか?」

そっとその手を握り、優しく微笑みかける。
相手を安心させる、天使のような微笑みだ(自分で言うな? いいのよ、信頼と実績があるんだから)

「いや、それが、何かカードがビャーって! こう、ビャーって」

やはり女慣れをしてるのか、ときめき一つ感じているように見えない。
少しばかりカチンとくるが、まあいいとしよう。
おそらく彼が言いたいのは、スキルカードのことだろう。
あまりの非現実的さに、きっと動揺しているのだ。
色仕掛けにかからなくても無理は無いし、責めるのはよそう。

だっておかげで、相手を殺す絶好の機会が生まれてくれたんですもの。

「落ち着いて下さい……私だって、何が起きてるか分からないですけど……
 その、殺し、合い……なんですよ……落ち着かないと、危険です……」

ふわふわと浮き足だっている内に、相手の心に入り込む。
注意力散漫よ、坊や?
今から落ち着き払っても、もう手遅れなんだから。
だって、その時はもう、落ち着かせてあげた私を信頼してるだろうから。

「確かに! つーか殺し合いってどーゆーこと?
 なんかさっきのあの変な人、何言ってんだかよくわかんなかったんだけど」
「…………えっと……信じたくないですけど、殺し合いをしなくちゃいけないみたいですよ……」

こいつアホか。
いや、私が賢すぎるのか?
早々に理解できた私が少数派だったら、今後随分楽になるのに。

「貴女に話しかけるのにも、勇気、いったんですから……」

俯いて、表情を隠す。
それから手を小刻みに震えさせる。
これで、どこからどう見ても怯える可哀想な少女だ。

「貴方は優しそうだったから、声、かけられましたけど……
 ホントは、私だって他の人が怖いんです……」

本当は、アホそうだったから声をかけたんだけどね。



「お願いです……どうか……私を守って下さい……」

目尻に涙を溜め込んでから、顔を上げる。
嘘泣きくらい朝飯前だ。
少年はやや戸惑っているようだが、さすがに少し照れ臭そうにしている。

「あ、ああ……任せとけって! よくワカンネーけど、俺が守ってやっからさ!
 なんだっけ、ほら、あれ、いわゆる、えーっと……盆暮れ? に乗ったつもりで?
 とかほら、そーいうやつだ。だから安心していいぜ」

これで安心できる奴がこの世にいると思うのかアホタレ。
盆暮れどころかボンクラだよオメーは。
そのスッカスカの無様な頭を、今凹ませてやろうじゃない。

「ありがとうございますっ……よかった……私、私――」

感極まったフリをして、相手に思いっきり抱きつく。
両手を相手の腰に回し、裾の中に仕込んでおいた金槌を滑らせて取り出した。
右手から出してついさっき消した光は、金槌を仕込んでいた左手の裾から注意をそらす意味も持っていた。
光の玉について色々言われた際の応対も考えていたのだけど、結局使うことはなさそうだ。




「がっ!?」

左の裾から取り出した金槌を右手で握り、そのまま頭部へ振り上げる。
こんな体勢で放った打撃に、そんな大きなダメージはない。
狙いは、別。

「な、何だ!?」

それは、隙を作ること。
嘘と周囲の人間を駆使して生きてきた身ゆえ、私は喧嘩慣れをしてない。
豹変して金槌を振りあげても、下手をしたら防がれる。
そんなに素早く振りかぶれるほど運動神経はよくないし、相手は上手く強襲しても腕で防ぐくらいはしてもおかしくない程いい体をしていた。

だから、まずは背後から頭を殴った。
そうすれば、人は必ず振り返る。
何をされたか確認するため、誰にされたか確認するため。

そして、今度は無防備極まりない姿を、私の前へと晒してくれる。
後は、多少遅くてもいい。
力強く、性格に後頭部を殴るだけだ。

「――私、これでようやく貴方を殺せます」

倒れた相手に、感謝の言葉を投げかける。
きっと今、私は極上の笑顔を浮かべていることだろう。
こうして騙していたことを最期に教え、何が起きたか自覚させてから殺す。
命を奪うだけなら不必要な行為ではあるが、殺し合いに放りこまれた理不尽へのストレスを解消しなくてはならないのだ。
ストレスを貯めこむのはよくないし、まぁ、仕方がないわよね。

「な……で……」
「ごめんなさい、私だって本当はこんなことしたくないんです。
 でも、殺し合いをしなくちゃいけないから……相手を騙して、殺す以外に生き残る道はないんです。
 仕方ないんです。ごめんなさい」

万が一録画でもされていた時のことを考え、あくまで悲劇のヒロインぶるのも忘れない。
そして勿論、相手の頭部を殴打しまくることも忘れない。
さて、あと一撃。
思いっきり振りあげて、その命を終わらせてやろう。



ドン。



男の頭部が、鈍い音を立てて砕ける。



――そのはずだった。
しかし辺りに響いたのは、頭部を砕く鈍い音などではなかった。
辺りに響き渡ったのは、鋭い痛みを伴った、一発の銃声である。

「あああああああああああああああっ!?」

金槌がゴトリという音を立てて落下する。
右手の指が二本ほど、一緒に地面に落下していた。

「突然の無礼をお許しください。また、今から命令させて頂くことを、重ね重ねお詫びします」

激痛の走る右手を押さえる。
吹き出す血が瞬く間に左手の袖を染め上げた。
ああ、衣服に血液がついてしまったじゃない。
これじゃあ消臭しても、あまり意味なんてないわ。
漂白剤も付けてくれないと――

「そこの男性から離れ、両手を上に上げて頂けないでしょうか。抵抗なさるようでしたら、こちらも容赦は致しかねます」

見ると、修道服に身を包んだ美少女(私とキャラが被ってやがる。このクソが)が、銃をこちらに向けていた。






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






「ヤベェ。マジヤベェ。この状況マジヤベェ。ヤベェっつーかパネェ」

何が起きたかよく分からない。
それが今の俺の感想だ。

いや、って言ってもさ、さすがにヤベェこと位は分かるわけよ。
何かワープでもしたんじゃねーのっつーくらい、気付かない内に森ン中に放りこまれたし?
いやだって俺制服よ? 寄り道しまくってるとは言え、絶賛登下校中なのよ?
なのにこんな森ン中にいるなんて、森ガールでもない限りありえねーっしょ。
こーいう場所は亜矢ちゃんが居るべきだって!

それに、何か、自称宇宙人みたいなのに、殺し合いしろって言われたし。
いやいやマジで意味分からねえっつーの。
だってさー、殺し合いよ殺し合い。
そーいうのはバキとかガンツとかの世界で十~~~~分だっちゅーの!
何で俺みたいなフツーの奴が殺し合いなんてしなくっちゃあいけないんだ?


「どぉ~~すっかなぁぁぁ~~~~……つーか人とか殺せるわけねーし」

他の皆もそーなんじゃねーの?
ていうかマジで何で俺らが殺し合いなんてさせられてんだろ。
何だか長々喋ってたけど、それが関係してんのかな。
……殺し合いって単語のインパクトのせいで、他の話ほとんど覚えてないんだよなぁ。

「ん? なんだこれ」

どうしようか考えていたら、足元に荷物があるのを発見した。
やっべ、超ラッキー。
何か知らねえけど、ゲームでいう宝箱なんじゃね、的な。

「うおっ、バットじゃん。そういや明日の巨人戦先発誰になるんだろ」

鞄から、金属バットが出てきた。
それを掲げてみたり、素振りしたりしてみる。
段々思考がプロ野球の方向に行きそうだったが、素振りに飽きて金属バットを置いた際にカードが目に入ったことで、そちらに興味が行った。
金属バットを傍らに置き、今度はカードを手に取ってみる。

「何だこれ……スキル『<<]]巻き戻し』……?」

カードに書かれた単語を読むと、あら不思議。
カードが手に吸収されるではないか!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

思わず叫び声を上げる。
カードが消滅したこともそうなのだが、それ以上に脳内に直接カードの使い方が流れこんで来たことの方が驚きだった。

「何!? 何なんだこれ!?」

カードの効果が頭の中に流れているが、高度すぎて何が何だか分からない。
何がどーいうことなの?

「あ、あのっ! 大丈夫ですかっ?」

掌を何度もガン見していたら、女の子が現れた。
ちょっと清純そうな、年下っぽい女の子。

「ヤッベ! マジヤッベ! ちょ、あんた見た!? 今の見た!?」

この驚きを分かち合いたくて、思わず喋りまくってしまう。
カードの消えた掌を見せ、興奮気味に口を開いた。
しかしどうやら、少女には伝わっていないようで――

「今来たばかりなので見てないですけど……この手がどうかしましたか?」
「いや、それが、何かカードがビャーって! こう、ビャーって」

仕方が無いので何が起きたのか説明してやる。
こういう衝撃体験は、皆に教えて盛り上がりたいものだしな!
帰ったらモバゲーの日記にも書かねーと!


「落ち着いて下さい……私だって、何が起きてるか分からないですけど……
 その、殺し、合い……なんですよ……落ち着かないと、危険です……」

え、そーなの? アブナイの?
でも確かに、言われてみればここは殺し合いの場だ。
危険だと言われたら、「なるほどABUNEY(アブネイ)じゃねーの」と納得するしかない。

「確かに! つーか殺し合いってどーゆーこと?
 なんかさっきのあの変な人、何言ってんだかよくわかんなかったんだけど」
「…………えっと……信じたくないですけど、殺し合いをしなくちゃいけないみたいですよ……」

殺し合いの場所だから危険という理屈には納得だが、殺し合いをしなければという事には納得出来なかった。
殺し合う理由がないし、必要性も感じない。
実際、少女も何で殺し合うのか分からないようだった。

「貴女に話しかけるのにも、勇気、いったんですから……」

なるほど、少女は殺し合いをする理由が分かってないけど、殺し合いっていうものに恐怖を感じているんだな!
ここは男として、ビシッと安心させるべきか?

「貴方は優しそうだったから、声、かけられましたけど……
 ホントは、私だって他の人が怖いんです……」

え、マジで? ヤッベ嬉しい。
俺、こう見えて優しいのよ?
何でか皆分かってくれねーのよね。
俺付き合ったらメチャ尽くすタイプなのに、皆俺の内面がダメとか言うし。

「お願いです……どうか……私を守って下さい……」

っか~~~~~~~!!
いいね! いいね! 燃えるぢゃ~ん。
守ってあげたくなる娘だし、ひょっとしたらひょっとしちゃうんじゃないの?

「あ、ああ……任せとけって! よくワカンネーけど、俺が守ってやっからさ!
 なんだっけ、ほら、あれ、いわゆる、えーっと……盆暮れ? に乗ったつもりで?
 とかほら、そーいうやつだ。だから安心していいぜ」

ニカッと笑顔を浮かべてやる。
よっしゃ、何かよく分からねえけど、この殺し合いでやることができた!
俺はこの娘を守ってみせる!

「ありがとうございますっ……よかった……私、私――」

キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
うっひょおおおおおおおおおおおおお!!
俺ハグまでイケたの人生初なんだけど!
マジかこれ! マジでかこれ!
おっぱいとかめっちゃ当たってるんだけど!
ぷにっとしててなんとも言えな……うひゃっほおおおおおおおおおおおおおい!!

これアレじゃね? キタんじゃね? 俺の時代とかそういうの!
ようこそ我がスプリンガルド!
……いや違ぇ、似てるけど春はスプリンガルドじゃなかったと思う。
俺そこまで頭悪くねーから分かるんだよな。
えーっと、何だっけな……スプリガン……違う……スプラッシュ?
またちょっと違う気がする……パトラッシュか? 離れた?


「がっ!?」

不意に、頭の後ろに衝撃が走る。
びっくりして振り返るも、そこには誰一人いない。

「な、何だ!?」

何で誰もいないんだ?
何で頭がイテーんだ?
誰かが殴ってきたのかと思ったのに、何でだ?

「――私、これでようやく貴方を殺せます」

さらに、衝撃。
しかもさっきより数倍強い。
思わず地面に倒れ込む。

「な……で……」

声の主は、紛れもなくさっき守ると心に誓った可憐な少女のものだった。

「ごめんなさい、私だって本当はこんなことしたくないんです。
 でも、殺し合いをしなくちゃいけないから……相手を騙して、殺す以外に生き残る道はないんです。
 仕方ないんです。ごめんなさい」

――ああ、そうか。
この娘は、俺を騙してたんだ。
それで、俺を殺そうとしたんだ。
そのくらい、アホの俺にも分かる。

(俺、死ぬのか……?)

何度も何度も殴られる。
その度に、生暖かい液体が頭を伝い落ちてきた。

(死にたく、ねぇよ……)

俺、やっぱり皆が言ってたように馬鹿だったのかな。
女の子を守るなんてカッコつけなきゃよかったのかな。

(やり直してえ……やり直してえよ……)

こんな間抜けな死に方なんて、したくねぇ。




『巻き戻しますか?』

不意に、声が聞こえてくる。
巻き戻す? 何のことだ?
よくワカンネーけど、やり直せるってーなら、やり直してえよ……












             >>]巻き戻し












キュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル












「突然の無礼をお許しください。また、今から命令させて頂くことを、重ね重ねお詫びします」

……あれ? 痛みがない。
それに、指先が動く。
さっきまで、指先が痺れるように動かなかったってーのに。


「そこの男性から離れ、両手を上に上げて頂けないでしょうか。抵抗なさるようでしたら、こちらも容赦は致しかねます」

体から、重みが消えた。
背中に乗ってこちらを殴打していた少女が、どいてくれたってことだろう。
多分、それをしてくれたのは今喋っていた人だ。
さっき銃声がしていたし、少女は手を押さえているし、多分撃って俺を助けてくれたのだろう。

「……そうです。ありがとうございます」

こっそりと顔を上げる。
シスター服に身を包んだ女の人が、こちらに銃を向けていた。
目玉だけを細めた視界で移動させると、少女の足が映りこんだ。
多分だけど、憎々しげに顔を歪めて両手を上げているんじゃあなかろうか。

「申し遅れました。私の名前は琥珀愛子と申します」

スカートの端を片手で持ち上げ、シスターは軽くお辞儀をしてみせた。
もちろんもう片方の手で、銃を掲げたままだ。
どうやら少女に話しかけているらしく、こちらに注意を払うような様子はない。

「気軽にシスター、もしくは愛ちゃんとでもお呼び下さい。勿論、それ以外の呼称でも私は一向に構いませんが」

ならば、やることは一つだ。
何で俺が元気になったか、未だによく分からねーけど、多分これはストールだかってものの効果なんだろう。
疑問を持つと未だに頭に解説文が流れてくるし。
とりあえず、何か時間を巻き戻すとかそーいうことらしい。
で、何か俺は殴られる前に巻き戻ったから無傷みたいな。

それはさておき。
やるべきことだよ、やるべきこと。
『それはズバリ、気付かれぬ内に金属バットを手に取って、シスターを殴ること』だ。
俺は頭が良い方ではない(悪いとまではいかないと思ってるんだけどな)し、よく分かってなかったけど、あの少女が教えてくれた。
殺し合いをする理由。それはとってもシンプルだった。

『自分が死にたくなければ、誰かを殺すしか無い。そうするしか道はない』

納得は出来ないけど、きっとそういうものなのだろう。
だったら、残念だけど殺し合いに乗るしか無いんじゃなかろうか。
俺だって、死ねない理由はたくさんある。
ネットで出来た友達や学校の連中――その他諸々、逝けない理由は存在した。
きっと各々死ねない理由を持っており、殺し合わねばならないものなのだろう。



「うらァッ!!」

バットを掴むと同時に、全身のバネを使って一気に立ち上がる。
そしてそのままシスターの脳天にバットをフルスイングした。

「くっ……天罰が、下りますよ?」

天罰が下る。
確かにそうかもしれない。
人なんて殺したら、天罰が下るものなのかもしれない。
けど、仕方ないだろ。
殺すしかないらしいんだから。

「せやァッ!」

今度は横に薙払うが、屈んで回避をされてしまう。
くそっ、高身長が裏目に出たか!
ちょっと避けやすそうじゃねえか!

「だあっ!?」

勢い余ってついシスターを通り越す。
そして、金属バットは樹の幹に激突した。
バットを持つ手がジーンと痺れる。

「わぷっ」

もう一回殴らなくてはと振り返ると、少女が鞄をシスターに投げつけていた。
手を怪我してるし後回しでもいいと思っていたのに……
なんという執念。
銃相手に荷物で視界を奪い、逃走を試みるなんて……パネェなー。

「死ねェ!!」

今度は当てる。
そう思い思いっきり振りかぶったが――

「ほげっ!」

頭部に衝撃を感じる。
振り下ろしたバットはスッポ抜けていった。
視界の端に、太い木の枝が映っていた。
……腐った太い木の枝が、さっきのバットの衝撃で落下してきたってこと?
つ、ついてねえっ……!



「ひぎっ!?」

スッポ抜けてクルクルと回転しながら飛んでいった金属バットは、前傾姿勢で逃げる少女のおしりにクリーンヒットした。
間抜けな悲鳴を発した後、少女がそのまま転倒する。
前のめりに倒れた表紙でスカートがめくれ上がり、薄桃色の下着が顕になっていた。

(うっわ……)

哀しいかな、男のサガ。
これでモテればちょっとは違うかもしれないけど、悲しいけれど彼女は出来ないのよね。
そりゃあ、普段目にする機会なんてないんだもの、女の子の下着に目が行っちゃうわさ。
顔に似合いの可愛いぱんつだなーとか、そういうことに思考も行っちゃうわけで。

「私はきちんと申し上げたはずですよ?」

だから、まあ、シスターのことが意識の外に行っちゃったのも仕方ないわけで。

「天罰が下りますよ、と」

いつの間にかシスターは、俺と少女に交互に銃を向けていた。






 ☆  ★  ☆  ★  ☆



09:騎士と姫 時系列順 10:馬鹿で……あってくれ。で……電波?り……りょうほーですかあああ~(後編)
09:騎士と姫 投下順 10:馬鹿で……あってくれ。で……電波?り……りょうほーですかあああ~(後編)
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