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盲雨 (稲妻雷太)

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匿名ユーザー

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メクラアメ メクラアメ

愛した男が帰らない

奥方は雨に寄り道

学生は蛙に騙された

娘は雨から出たくない

想い人の全てを攫うは

憎らしや






ポク ポク ポクポクチーン

「観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時…」

ああ…本当に嫌な音だ。

俺はフサ。今日はつーちゃんのお兄さん、つまりギコさんの葬式に来ている。
俺は柄にも無く黒い服を着て、正座をして、じっとギコさんの写真を見ていた。
…死んでしまったんだ、ギコさんは。つーちゃんを残して、死んでしまった―――…

葬式が終わると、つーちゃんの家の和室に移動した。
モララーとモナーがつーちゃんがいるにも関わらず、こんな話をしていた。

「池の底から白骨死体で出てきたんでしょ?ギコ君」

「どうもそうらしいんですよ。行方不明になってからもう三年」

「恐ろしいことになったものだ……」


…恐ろしいのはつーちゃんがいるにも関わらずその話をするおまいらの残酷さだ。
小声のつもりらしいが、ばっちり聞こえるくらいの声の大きさだ。
つーちゃんにもやっぱり聞こえてしまったのだろう。
つーちゃんは下を向いてしゅんとしていた。
俺はそんなつーちゃんを慰めるかのように、自分なりに励ましの言葉をかける。

「つーちゃん!お兄さんのこと、その、あの、大変だったな。」

もっとちゃんとした言葉は探せば見つかるはずなのに、探さない俺。

「俺なんて言ったらいいか…」

本当になっていったらいいのか、俺の頭じゃでてこない。


「…《メクラアメ》ダ」


つーちゃんが重い口を開き、そう言った。


「え?」


「アニキダヨ。 アノ時モヒデエ雨ガフッテタ。メクラアメニ攫ワレタンダ」


《メクラアメ》に攫われた?
酷い雨が降ると雨は人を攫うのか?

つーちゃんが言った言葉からは疑問しか生まれなかった。
そもそも《メクラアメ》って何だ…?
聞いたことがある気がする、何だ…


「アノ女ガアニキヲタブラカシテアノ世ヘ連レテッチマッタンダ!」


「つーちゃん…」


そんなことを訴えても、ギコさんは帰って来ない。
どんなに叫んでも泣いても



ギコさんは 帰ってこないんだ




「アンナニ「ツレテカナイデ」ッテ タノンダノニ…」


「つーちゃん……」

…つーちゃんはギコさんを連れていかないでと誰かに頼んでいたらしい・・・
それが《あの女》なのかはわからない。
でも、必死でギコさんを連れていかないでと頼んでいたことは様子からして事実だと思う


そんなことを考えていたらつーちゃんが俺の胸に飛び込んできた。
つーちゃんはビーダマくらいの大きさの涙をポロポロ流していた。
少し震えていた。

──五年ぶりの池掃除で積もった泥の下からギコさんの骨が出てきたのが数日前だった


何故池の底で死んでいたのかは解らない


ギコさんは三年前から行方不明になっており、
家は妹のつーちゃんが一人で守っていた



こんな細くて、今にも消えてしまいそうな女のコが


たった一人で


この広い家を…




つーちゃんが涙を流している中、思い出した。《メクラアメ》―――――…








 
盲雨は、引き裂かれた男女が 迷って抜けられなくなる雨だと言われている。
暗闇から消えたかたわれが相手を呼ぶ

そしてそれに応えると、応えた方は”向こう側”へ行って
二度と帰ってこないそうだ。


もし、ギコさんがメクラアメに攫われてしまったのなら、つーちゃんの言う《あの女》に連れて行かれたのだろう。


「……」


俺は無言でつーちゃんを受け止めた。



…お兄さんのこと大好きだったんだな…



目眩がした。つーちゃんが好きなのは多分俺じゃなかった。

だけど俺はつーちゃんが好きだった。気がおかしくなるほどに。



気 が お か し く な る ほ ど に 。





―――――――サアアアアア



外は雨が降っていた。
強い雨が。

そんななか、傘を差し、モナーとギコは濡れた道をとおりながら家に帰ろうとしていた。



「──それにしても、よく降りますね」



モララーが言う。
六月は雨の季節だ。雨ぐらいは何とも無い。
だが、今日は異例だ。
おかしいほど雨が強く降っている。
まるで狂っているようだ。


「そうですね。じとじとじめじめして食べ物も腐りやすいし薄暗いし」


モナーは、この六月、食べ物を2回腐らせてしまった。
殆どは自分の不注意のせいだが、雨のせいだとも考えられる。
そして、薄暗いのは大嫌いなモナー。
この季節はいつも憂鬱だった。


「僕達も気を付けないと攫われちゃうかな」



モナーが言った。















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