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勝手にNIGHTMARE CITY~The second chapter~ (???)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
~注・読む前に~

本作品を読む前に前作、勝手にNIGHTMARE CITY を読まれますと、より楽しく読む事ができます。
前作のURL→http://town.s96.xrea.com/cgi-bin/longmoto/anthologys.cgi?action=html2&key=20060221122112



第二部~The second chapter~



episode1 絶体絶命!!!


“8頭身”に追い回され、軽トラで逃げ続けていた1さんとおにぎりは、しつこく追い回してくる“八頭身”からどうにかこうにか逃げていた。

「1さん待って~」

「なんなんだよアイツは…もう四時間近く走り続けてるのに……アイツのスタミナは底無しか…?」

1さんは、全く疲れる様子のない“八頭身”を見て、思わず身震いした。

「どこまで逃げれば諦めてくれるんだよ~」

運転席のおにぎりはもう泣きべそをかいていた。そしておにぎりがハンドルを切り、コーナーを曲がったとき…ドン!!!と言う物凄い音と同時に、衝撃が伝わった。

「うわわっ」

1さんは跳ね飛ばされそうになる

「何…? どうしたの?」

1さんが驚いておにぎりの方を見る、すると運転席のおにぎりが泣きそうな顔で、「ぶつけちゃったよ……」と言った。

その言葉に1さんが前を見ると、軽トラが街灯にぶつかっている、すごいスピードで衝突したもんだから、軽トラはペシャンコになっていた。おにぎりの顔からも恐らく割れたガラスで切ったんであろう、傷があった。傷からは血が出ている……

「痛い…痛いよ…1さん…」

おにぎりは泣きながら1さんに言う

「おにぎり君! 早く軽トラから出て!!」

1さんはおにぎりの手をつかみ、軽トラから降ろしてやると、「さぁ!! あのキモイのが追ってくる!! 早く逃げよう」と、おにぎりに言い、二人で走って逃げ出した。

「よし!! すぐに見つからないようにあのビルの中に入ろう!!」

1さんはビルの中に入った。やがて…“八頭身”も追ってきた。

「1さ~ん…ってあれ? どこにいったの? 軽トラには誰もいないし…」

“八頭身”は1さんを探している…1さんはその隙に、ビルの階段をゆっくり一段一段上り始めた。

「困ったな~どこだろ……ん…? こっちから1さんの匂いが…!」

ビルの中の1さんは外にいる“八頭身”の言葉を聴いてギクッとした。そして怖くなり、すばやく階段を上る

「あっいたぁ~1さんだ~」

“八頭身が”ビルの中に入ってきた。

「うわああああっ!!! にげろぉぉぉっ!!!」

1さんとおにぎりは悲鳴を上げながら階段を駆け上がる

「ハァ…ハァ…1さんっていい匂いがするんだなぁ~その匂いですぐ分かっちゃったよ~」

“八頭身”も、猛スピードで階段を上がってくる

「僕の匂いって何だよ!? 僕の匂いって!? もういい加減勘弁してくれよぉ~!!!!」

1さんはもう半狂乱だ

「1さん!! もうすぐ屋上だよ…もう逃げ場がないよ…」

おにぎりが走りながら言う、そして二人はついに屋上まで来てしまった。

「はぁ…はぁ…くそっ…!! もう逃げ場が無いなら………やけくそだっ!!戦うぞ!!! おにぎり君!!!」

戦うと言った1さんの顔を、おにぎりは信じられないという表情で見つめた。

「そんな…無茶だよ……! 相手はあんなにデカイ奴なのに…」

おにぎりがそう言った時、“八頭身”が来てしまった。

「1さぁ~ん…やっと追いついたよ~」

“八頭身”は、1さんを見ると、嬉しそうに言った。

「来た……1さん…!!」

おにぎりは1さんの後ろに隠れる

「やるしかないっ……! やるしか…!! いくぞぉぉぉぉぉぉっっ!!!」

1さんは“八頭身”に突っ込んで行った。1さんは“八頭身”の急所…つまり金的めがけて蹴りついた。しかし“八頭身”は長い腕で、1さんの足を払った。1さんはバランスを崩し、転んでしまう、そして“八頭身”は1さんの襟首をつかむと、そのまま1さんの体を持ち上げた。

「うっうわぁぁぁっっ!!! はなせっ!! はなせぇぇっっ!!!」

1さんは“八頭身”に吊り下げられたまま、腕や足を振り回し、逃げようとする

「もう…まったく…いきなり大事な所を狙うなんて…1さんは大胆だなぁ…お・し・お・き しなくちゃね♪」

“八頭身”は、だらだらとヨダレを垂らしながらにやけた顔で言うと、手の中から光るムチを出した。

「うわぁぁぁぁっ!!! 誰か助けてくれっ…!!!!」

1さんは狂ったように喚きながら助けを求める…その時…

「うおぉおぉぉぉおぉおっっ!!!!!!」という声と共に、おにぎりが思いっきり“八頭身”に体当たりを食らわせた。

「うわっ…!」

“八頭身”はバランスを崩し、倒れた。1さんとおにぎりはその隙に“8頭身”から離れた。

「おにぎり君っっ!!! ありがとうっっ!!! 怖かったよ~」

1さんはおにぎりに駆け寄って泣き叫んだ

「もう…1さんは素直じゃないんだから~今度こそ捕まえて見せるよ~」

“八頭身”は光るムチを振りかざす、すると、こともあろうに“八頭身”は三体に分裂した。

「何ぃっ!!!」

「そんな~数が増えるなんて…もう絶望的だぁ~」

1さんとおにぎりは今度こそもうだめだと思った。

「「「行くよ~1さ~ん そぉれっ!!!」」」

三体に分裂した“八頭身”は同時に同じ事を言うと、三体そろって同時にムチを振り上げ…振り下ろした!!

「ぐぁぁぁぁぁっ!!!」

「ぎゃあっっっ!!!!」

1さんとおにぎりは、二人そろってフッ飛ばされた。

「ぐっ…体が痛くて……動かない…」

1さんは頭から血を流していた。おにぎりも全身傷だらけだった。

「さぁ…トドメだよ…1さん……」

三体に分裂した“八頭身”の一人が言った。

「くっ……これまでか……万事休す……!」

1さんは、もはやこれまでと観念して目を閉じる……その時!

「待ちなさいッッ!!!」

「やめるニダ!!!」

「待てYO!!!」

それぞれ違う三人の声が響き、1さんとおにぎりは振り返った。“八頭身”も同じように、声のした方を見る

そこにはレモナ、ニダー、ぼるじょあの三人がいた。


episode2 本当の強さ


「あそこにいる二人は被験者ね!! 助けるわよ!!」

「ガッテン承知ニダ! 姉貴ィ!!」 

「押忍!! だYO!!!」

三人は“八頭身”の前に立ちふさがり、1さんとおにぎりを護った。

「まずはウリが行くニダッ!! おりゃぁぁぁ!!」

ニダーは“八頭身”の一人に突っ込んで行った。“八頭身”は拳を振り上げる…!

「あ…危ない!!!」

1さんがそう叫んだ時、なんと“八頭身”の巨大な体が宙を舞った。“八頭身”が、ニダーに拳を当てるより早く、ニダーの拳がヒットしたのである、“八頭身”は、そのまま吹っ飛び、屋上のフェンスを突き破ってビルから落ちていった。

「押忍ッ!! ニダ!!」

ニダーはやったぞと言わんばかりに、大きな声で気合を入れた。残り二人の“八頭身”は、あまりの事に呆然としていた。それは1さんとおにぎりも同じだった。なんたって、巨大な体を持つ“八頭身”を、一撃で吹き飛ばしたのだから…

「流石ニダーだYO、相変わらずの馬鹿力だねぇ」

ぼるじょあはそう言うと、“八頭身”の一人に近づく

「な…なんなんだ、おまえら…な…なめるなよ!!!」

“八頭身”は逆上してぼるじょあに殴りかかる、ぼるじょあはそれを両腕でしっかりガードして、少しずつ間合いを詰める、そしてぼるじょあの体が攻撃の間合いに入った時、ぼるじょあは体をぐるりと回転させた。

「ぐがっ!!!」

“八頭身”は倒れた。ぼるじょあはオーバーヘッドキックの要領で、“八頭身”のアゴを下から思いっきり蹴り上げたのである、そうなれば当然、体のバランスがくずれ、いかに背の大きな“八頭身”でも倒れざるを得ない、ぼるじょあはその隙を見逃さず、“八頭身”に馬乗りになり、“八頭身”の顔面に正拳を叩き込んだ。

「ぶっっ!!!」

ぼるじょあの正拳はみごと“八頭身”の顔面にえぐり込み、鼻の骨と前歯を粉砕した。さらに、ぼるじょあは立ち上がり、倒れている“八頭身”に強烈な蹴りをお見舞いした。サッカーボールを蹴るときの要領で足を振り上げて思いっきり叩き込む蹴りだ。すると、また“八頭身”の体は浮き上がり、フェンスを突き破って落ちていった。

「押忍!!!」

ぼるじょあも、ニダーと同じように気合を入れる

「さぁ…残るはあなた一人ね、私が相手よ」

残る一人の“八頭身”の前にレモナが出る

「こ…この野郎っ!!! 死ねッッ!!!」

“八頭身”は手の中からムチを出し、メチャクチャに振り回す、レモナはそれをよけつつ前に進む

「なっ…何ぃ……!」

気が付くと、レモナはすでに“八頭身”目の前に来ていた。最初、“八頭身”とレモナの距離は約十メートル、レモナは“八頭身”のムチを正確に避けながら進み、“八頭身”の目の前まで来た。この間、約3秒…!! 電光石火の早技である…!

「たぁっっ!!!」

レモナは“八頭身”の水月(人間の急所の一つで、大体胃の辺りにある急所、いわゆるみぞおちの事、下から突き上げる様に正拳を叩き込むと良く効く)
に強烈な突きを叩き込む、“八頭身”はうめき声一つ上げず吹き飛び、他の二体の“八頭身”と同じく、屋上から落ちていった。

「…やったわ……あなた達…大丈夫だった?」

レモナは1さんとおにぎりへ駆け寄る


――パチパチパチ……


気が付くと、1さんもおにぎりも拍手をしていた。

「えっ…? ど…どうしたの? あなた達…」

いきなりの拍手にレモナは驚いた顔をする

「いや…あんまりあなた達が強かったもんだから…つい…」

1さんは正直な感想を述べた。

「そ…そう? ありがとね…」

レモナは照れたように頭を掻く

「とにかく傷がひどいから手当てしてやろうYO」

ぼるじょあが言った。

「そうね、ニダーちょっとこのビルの中から救急箱でも持ってきてよ」

「えっ…ウリがいくニダか?」

「当たり前でしょ! つべこべ言わずにさっさと行くの! カカト落とし食らいたいの!?」

「わっ…分かったニダ…」

ニダーはレモナに言われて、しぶしぶビルの中から救急箱を探しに行った。

やがて、ニダーは包帯などが入った救急箱を持ってきた。ニダーはそれをぼるじょあに渡すと、ぼるじょあは二人の手当てを始める

「それにしても…なんであなた達はそんなに強いんですか?」

おにぎりがレモナ達に聞く

「ああ、僕達はこのレモナさんに空手を教えてもらってるんだYO、レモナさんの家は空手道場だからさ」

ぼるじょあはレモナの方を見ながら言った。

「そうニダ、レモナの姉貴には昔からビシバシしごかれたニダ、なんせ姉貴は怒ると鬼のように怖くて…」

「ニダ~! 誰が鬼の様に怖いですって~」

レモナがニダーに怒りながら近づく

「ア…アイゴー…じょ…冗談ニダ…まったく姉貴は冗談が通じないニダ…」

「姉貴って呼ぶの止めなさいって言ってるでしょうが~!」

「ア…アイゴー…誰か助けてほしいニダ~」

レモナとニダーは追いかけっこを始める

「た…たしかに怖いですね~」

おにぎりが言う

「うん……でも…レモナさんは本当に優しい人だYO、僕達がここまで強くなれたのも…みんなレモナさんのおかげだしね…信じられないかも知れないけど僕とニダーは昔いじめられっこだったんだYO」

ぼるじょあはしみじみと言った。

「えっ…! そうだったんですか? 信じられない…あんなに強いのに…」

1さんは驚く

「僕とニダーがいつものようにいじめられて帰る途中…レモナさんに会ったんだYO」


『うわーん…また殴られたYO…』

『ひどいニダ…謝罪と賠償を(tr』

その時、前から自分達より何歳か年上の女の子が歩いて来た。

『どうしたの? あなた達…ひどい傷…いじめられたのね…』

『痛いYO~』

『ほら、男の子がいつまでもメソメソ泣かないの、私の家に来なさい…傷の手当てをしてあげるから…ついでにいじめっ子に勝てるような、強い子にしてあげるわ…』


「まぁこれが僕達とレモナさんの出会いだったわけだYO、そして今まで空手を教えてもらったんだ」

ぼるじょあは目を閉じて言った。

「へ~そうなんですか…」

おにぎりは言った。

「僕らはレモナさんのおかげで、昔より強くなれたけど…やっぱりレモナさんにはかなわないYO…それは実戦が強いとかそういう事だけではなくて、人を思いやる気持ちとか…そういった物を含めて、レモナさんは本当に強い人だと思う……うまく言えないけど…“本当の強さ”ってのをあの人は持ってると思うYO、決して上辺だけの強さじゃなくてね…」

ぼるじょあは星空を見上げながら言った。

「そうですよね……」

1さんとおにぎりは静かにそう言って、頷いた。

「コラ~! 待ちなさいニダー!! ぼるじょあ!! ニダーを捕まえて!!」

「ぼ…ぼるじょあ~レモナの姉貴を止めてほしいニダ~」

レモナとニダーはまだ、おいかけっこをしていた。

「エェー!? どっちの味方をすればいいんだYO!」

ぼるじょあは戸惑っている、1さんとおにぎりはそれを見て、大きな声で笑った。笑いなど有り得なかったこの悪夢の街に、一時の安らぎが訪れていた。


episode3 DEATH CHASE!!


「くそっ…! だめか…ここでも無かった…」

流石三兄弟は出口を探し回っていたのだが、一向に見つかる気配は無かった。

「兄者よ! まだ諦めるな、まだ見落としてる箇所があるはずだ!」

弟者は兄者を励ますように言う

「と…言っても…本当にあるのかな…出口なんて…」

妹者がため息をつきながら言った。

「おいおい…妹者まで弱気になってどうする…!」

「だってそうでしょ…兄者兄ちゃんが言ってた事は、仮説と言うか…ただの憶測だし…必ずしも、兄者兄ちゃんの言うとおり出口があるなんて事は言い切れないでしょ」

弟者の言葉に妹者はそう反論した。

「な…何を言ってるんだ妹者…! それは兄者の言う事を信用して無いと言うことか!? あの時妹者も、兄者の意見に納得してたじゃないか!」

妹者のその言葉に弟者は少しイライラして言った。

「そんな事言って無いでしょ! 私はただ……」

妹者がそこまで言いかけた時、兄者が口をはさんだ

「そうだ…妹者の言うとおりだ…出口があると言うのはただの憶測だ」

「兄者…」

「ただ…正確に言うなら…確実でないほうの案を言うしかなかったんだ…」

「どう言うことだ?」

兄者が良く分からない事を言うので、弟者は兄者に聞く

「つまり簡単に言えばこういう事だ、この街からの脱出方法…それはもう二つしかない…1つは俺達が今やってるウイルスがこじ開けたかもしれない出口を探し出す事…もう一つはウイルスの全滅によるシステムの復旧だ、この二つの方法…この中で成功確率が高そうに見えるのは…やはり出口を探すほう…確実にその出口があるとは言い切れないが…もし見つければ簡単に出ることが出来る…一方でウイルスの全滅によるシステムの復旧なんてのは、土台無理な話だ…あの凶悪なウイルス相手に戦い…相手を全滅させるなどと言うのはな…ただし、万が一俺らが何らかの方法でウイルス達を全滅させることが出来たとしたら…その時は100%確実に出られる…! しかしその100%に至るまでが至難の業…! ハッキリ言って不可能に近い…だからあの場では、みんなに危ない思いをさせないため…無理してウイルスと戦うなんて事をしないようにさせるため…そして何より…ウイルスに勝てる事など恐らくは有り得ない…だからこそ、ウイルスたちが出口を残してくれてる事を願って、そっちの作戦にするしか無かった…」

兄者は静かにそう言った。

「でも……やっぱり…出口が無いと分かった時は…戦うしかないでしょ…ウイルスと……無理だと分かってても…」

妹者がそう言った時、兄者が言った。

「逃げるぞ……! バイクに乗れ…!!」

「兄者兄ちゃん?」

突然の兄者の言葉に妹者も首をかしげる

「早くしろ!!! ウワサをすれば…何とやらだ!!!」

兄者のその言葉に、弟者と妹者は振り返る…するとそこにはウイルスがいた!“モナー”と“つー”だ…弟者と妹者は驚くと、すでにバイクにまたがっている兄者の後ろに乗った。バイクはすぐさま発進する

「アヒャ~会いたかったぜ~昼間のバイク野郎!! 今度は絶対逃がさねぇ!!」

「待つモナ~今日二匹目の獲物にしてやるモナー!!」

ウイルスたちも追いかけて来る、バイクの一番後ろに乗ってる妹者はそれを追い払うべく、拳銃を撃ちまくる、しかしウイルスたちには1発も当たらなかった。

「アヒャヒャ~! くらえっ!!!」

“つー”はナイフを投げる、照準から外れるべく、車体を左右に揺らす。

「ヒャッヒャ~!! うらぁっ!!! オラァッッ!!!」

“つー”のナイフはさらに飛んでくる

「兄者兄ちゃん!! 右に避けて!! もっとスピード上げて!!」

妹者は拳銃で応戦しながら、兄者に言う

「くっ…!!」

兄者は十字路を左に曲がる

「逃がさないモナ~」

「アヒャヒャ~」

ウイルスたちも追って来る

「おおおおおっ!!! しっかり捕まってろ!!! 弟者ぁ!!! 妹者ぁッッ!!」

兄者は最高速度で走る、ウイルスたちとの距離が少しだけ遠ざかる…!

「こしゃくな奴モナ…“つー”!! もっとナイフを投げるモナ!!」

「アヒャヒャ~テメーに言われなくてもそうするよ!! ウオリャッッ!!」

“つー”は再びナイフを投げまくる、するとナイフの1本が兄者たちのバイクに突き刺さった! 突き刺さった所からは何とガソリンが漏れている

「あ…兄者!! ガソリンが!!!」

「ちぃッッ!! 燃料タンクをやられたか!!」

兄者はそう言うと、バイクを止めた。

「兄者!!! なんで止めるんだ!!」

弟者が叫ぶ

「早くバイクから降りろっ!!! そしてさがれッッ!!!」

兄者がそう言うと、弟者と妹者はバイクから降りた。そして兄者はバイクから離れる、妹者と弟者も兄者と同じ位置まで来る

「アヒャ~追いついたぜ~!!!」

ウイルス達が追ってきた。

「兄者!! 早く逃げよう!!!」

弟者が兄者に言ったが、兄者は逃げようとしない

「兄者兄ちゃん!! 早く!!」

妹者も叫ぶ

(もう少しだ…! もう少し近くにこいっ!!!)

「ア~ヒャヒャヒャヒャ!!!」

「モナ~~!!!」

ウイルス達は、燃料の漏れる兄者のバイクの近くまで来た。

(よし…!! いまだぁッッッ!!!!!)

兄者はこの時を待ってたんだとばかりに、拳銃を乱射する! すると、弾の一発がバイクの燃料タンクに当たり、引火した。そして漏れたガソリンにも一瞬のうちに火がつき、バイクはウイルス二体を巻き込んで爆発炎上した。

「うわっ…!」

「キャッ…!」

熱風が兄者たちの所まで来て、弟者と妹者は思わず叫び声を上げる

「さぁ…! 今のうちに逃げるぞ!!」

兄者が弟者達に言って、駆け出した。

「あ…ああ…」

弟者と妹者も兄者の後を追った。


episode4 決死の迎撃作戦


「走れ! どこか見通しのいいところまで逃げるんだ!!」

兄者たちは逃げ続けた。まっすぐ行くと、そこには大きな橋が見えてきた。兄者たちは橋の上まで来ると、そこで止まる

「兄者! これからどうするんだ!!」

弟者が兄者に聞く

「奴らは爆発に巻き込まれたが、絶対にまだ死んでない…! 奴らには、決定的な一撃を叩き込まないと死なない…そこでだ…一か八かこの橋の上で奴らを迎撃する!!」

兄者は銃を構えながら言った。

「でも…私達で倒せると思う?」

妹者が心配そうな顔で兄者に言う

「無茶な事はわかってらぁ…! でもバイクがなくなった今、ウイルスたちから逃げ切れる訳が無い…恐らくもうすぐ奴らも追いかけてくるだろう…しかし幸いな事に、俺達は三人が三人とも拳銃を持ってるんだ、さっきはバイクに乗ったまま妹者が一人で拳銃を撃ってただけだったから、奴らに当たらなかった…なら、三人が一斉射撃すればあるいは…勝機があるんじゃないか?」

兄者がそう言った時だった。ウイルス二体の声が聞こえてきたのは…

「いよっしゃ~追いついたぜぇ~!!」

「あの程度の爆発で、僕らを足止めできるでもと思ってたモナ~!?」

ウイルスたちはどんどん兄者達に近づいてくる

「ちっ……! 弟者ぁ!! 妹者ぁ!! もうやるしかねぇぞ!!! グダグダごたくを並べてる時じゃねぇっ!!!」

兄者はウイルスたちに拳銃を向ける

「ああ…くそっ…!! 分かったよ!! こうなりゃ死なばもろともだッッ!! 妹者も用意はいいな!!」

「うん!!」

弟者と妹者も拳銃を構える

「よし!! 一斉射撃だぁっっ!!!」

兄者の合図と同時に、三人の拳銃が一斉に火を噴く、しかし二体のウイルスはそれをみごとに避けながら前に進んでくる!

「ちっ!! 一発くらい当たれよッッ!!!」

兄者がそう言った時には、すでにウイルスはすぐ近くまで来ていた。

「アヒャヒャヒャ~ッッ!! あん時は世話んなったなぁ~お前ら! くらえやぁッッ!!!!!」

“つー”はナイフを五本投げた!!

「ぐぁっ…!!」

「がっ…!!!」

「つっ…!!」

ナイフは兄者たち三人の利き腕に深々と突き刺さった。激痛のあまり三人とも拳銃を放してしまい、弟者と妹者の持っていた拳銃はどこだか分からないところに飛んで行ってしまい、兄者の拳銃は妹者の足元に転がった。

「……!」

「ヒャヒャヒャ~!!死ねぇっっ!! まずは、昼間アタイを撃ってくれた貴様から殺す!!」

“つー”はそう言うと、ナイフを振り上げ、妹者に飛びかかった。

「この時を……待ってたのよ!!!」

妹者は傷を負ってない左手で、足元に転がっている兄者の拳銃を拾うと、飛びかかってきた“つー”の頭部に狙いを定め、トリガーを引いた。

「ぐぎゃっ!!!!」

“つー”は頭から血を吹き出し、倒れた。

「ア…アヒャ…まだアタイは…死ぬわけには…ゴフッ…!!」

“つー”は血を吐いて絶命すると、そのまま消えていった。しかしすぐそこにモナーが迫って来ていた!!

「さぁ!! 覚悟するモナ!!!」

モナーはヤリで妹者に斬りかかる、妹者はすぐに拳銃を撃とうとしたが、銃はすでに弾切れだった。

(くっ…! もうダメッ…!!)

妹者はそう思い、頭を両手でかばう

「妹者ぁッ!!!!!」

兄者は妹者の元に走ったが、その時すでにモナーは妹者の頭上に飛んでおり、そこからヤリを振り下ろそうとしていた。

(くっ…!! だめだッッ!! 間に合わないっっ!!!)

兄者がそう思った時、轟音が鳴り響き、モナーの体が爆発した。何だ? 何が起こった? そう思い、弟者が後ろを振り返ると、そこにはバズーカを構えたネーノと、ドクオ、ヒッキー、ショボが立っていた。

「ふ~何とか間に合って良かったじゃネーノ」

ネーノは額の汗をぬぐいながら言う

「ひ…被験者か!? よ…良かったぁ~本当に助かったよ、ありがとう!」

弟者が安堵しながら言った。

「いやいや、別に大したことはしてねーんじゃネーノ」

ネーノはそう言いつつ少し得意そうな顔になる、一方、危機一髪で難を逃れた妹者は安心してその場に座り込んだ

「大丈夫だったか!? 妹者」

兄者は心配して妹者に駆け寄る

「うん…何とかね…ありがとう兄者兄ちゃん」

妹者がそう言った時、ネーノが包帯などの応急手当に使うものを持ってきた。

「とりあえずお前ら怪我してるみたいだからそれでキズの応急処置をするといいんじゃネーノ」

「ああ、ありがとな」

そして、兄者たちはネーノ達の持ってきた物でとりあえず応急手当をする事にした。

「痛っ…!」

「あっ悪い…! 痛むか?」

兄者が妹者の腕に包帯を巻いていた。

「ううん、大丈夫…! それよりも兄者兄ちゃんにはいつも世話になってばかりだね…ありがとう」

妹者は笑顔で兄者に言う

「そっ…そんなこたぁねぇよ…俺だっていつも無茶やって妹者に心配かけちまうし…」

兄者はばつが悪くなり、赤面しながら言う

「兄者は本当に妹思いなんだよな」

「おいおい…弟者…」

弟者がそんな事を言うもんだから兄者はますます照れくさくなる

「単にシスコンなだけじゃネーノ?」

「ネーノぉ!!!」

兄者は真っ赤になってネーノを追いかけた。

「ハハハッ!!」

その様子を見て、みんな笑っていた。

1さん達と同じように、こっちにも一時の安らぎが訪れた様だった。


episode5 ソイツは!!


フサはガクリと膝をついた。モナーにやられた傷と、電車から落ちたことによる全身打撲、そして長いことギコを探して歩き続けていた事により、もう体力が限界に達していたのだ…

「はぁ…はぁ…くそっ…」

フサはギコの顔を思い浮かべた。


『でもギコ、お前丸腰じゃぁ……』

『いいんだ、力の無い俺が持ってても使いこなせないよ、やっぱりここは、力の強いフサが持っててくれ』


(ギコ……)


『……分かった…! その代わり…意地でも生き残れ!!』

『ああ、分かってる!』


「ギコ…っ…ギコっ…!」

フサは疲弊しきった体に鞭打って、再び歩き始めた。

「無事でいてくれよ…! ギコ…!! 頼むぞ!!!」


その頃…ギコはしぃを探して、街のあちこちを走り回っていた。

「しぃーーーっ!! どこだ!!」

あまり大声を出すと、ウイルス達に見つかってしまうかも知れないと言う心配はあったが、それでもギコはしぃの名前を呼ばずにはいられなかった。この声が…しぃに届いてることを信じて、呼び続けるしか無かった。

「しぃーーーっ!! しぃっ……!!」

ギコが街の広場に差し掛かった時、ようやくギコはしぃを見つけた。しぃは広場の中で一人寂しそうにうずくまっていた。そう…まるで…初めて出会ったあの時のように…

「しぃーーーーーーっ!!」

ギコは叫びながらしぃの元へ走った。

「ギ…ギコ君…! どうして…」

しぃはギコを見て驚いている

「しぃ!! 無事で…無事でよかった!」

ギコは笑顔でしぃに駆け寄る

「ギコ君…何で…? どうして戻ってきたの? こんな危険な所なんだよ…私なんかのために…どうして…」

「こんな危険な所だからさ! しぃを見捨てて、一人で逃げられるわけ無いだろ!! しぃを見捨ててまでして、俺は生き残りたくない!!! 俺は心に決めたんだ!! キミを…しぃを護るって!!」

「ギコ君…」

ギコが言い終わると同時に、しぃは目に涙を浮かべながら、ギコに抱きついた。

「怖かった…本当は……すごく…不安だった…でもっ……ギコ君にだけは…助かってほしかったから……」

「しぃ…」

ギコもしぃの背に手を回し、しぃを包み込むように優しく抱きしめた。

「しぃ…俺達は…二人で一緒にこの街を出るんだよ…俺一人だけが出たって駄目なんだ…俺達はずっと一緒だ…! 最後まで…ずっと…」

ギコはしぃの耳元でささやくように、そう言った。

「…っ…うっ…うう…えぐっ…ありがと……ギコ君っ」

しぃはギコに抱きつきながら泣き続けた。その時…

「ギコぉぉぉぉっ!!! やっと見つけたぞ…!!早くそいつから離れろ!」

大きな声がしてギコが振り向くと、そこにはフサがいた。フサようやくギコの元へたどり着くことが出来たのである

「フサ!! 無事だったか!!」

ギコはフサに駆け寄ろうとした。するとフサが叫ぶように言った。

「俺のことはいいから、早くそのピンク色の奴から離れるんだ!! ソイツは…ウイルスだぞ!!!」

「えっ…」

ギコはフサに言われた言葉の意味が理解できなかった。しぃがウイルス? まさか……

ギコはしぃの方を見た。しぃは俯いていた。ギコは俯いているしぃの顔をしばらく見ると、再びフサに向き直った。

「違うよフサ! しぃはウイルスなんかじゃない! しぃは…」

ギコがそこまで言いかけた時、しぃが静かに言った。

「ギコ君…あの人の言うとおりよ…私はウイルスなの…」

「な……何を言ってるんだ……そんなわけ無いだろ!? しぃ!」

ギコがそう言うと、しぃの手の中から…光る弓が現れた…ギコは“モララー”
との戦いで、わかっていた…光る武器を持っているのはウイルスだけだと…ギコは言葉を失った…

「そう…私は…ウイルス№4“しぃ”………だまっててごめんね……でも…言えなかった…私……ウイルスだったけど……被験者を殺す使命を与えられたウイルスの一員だったけど……出来なかった…人を殺すなんて……それで…途方に暮れて…一人であそこにいたの……その時だった。ギコ君に会ったのは…」

ギコは黙ってしぃの話を聞いていた。

「ギコ君が…私に…一緒に行こうって…言ってくれた…すごく嬉しかった……だから……ごめんね……ギコ君………」

しぃは悲しそうな声で言った。しぃはギコと敵同士になってしまうことを恐れていたのだ………やがて…ギコがフサに向かって言った。

「……フサ…信じてくれ…しぃは、たとえウイルスだろうと悪い奴じゃ無いんだ…絶対に……ずっと一緒にいたけど…俺に攻撃してくることは決して無かった。それどころか…自分の身を犠牲にしてでも、俺を助けようとしてくれたんだ……頼む…信じてくれ……フサ…」

フサはギコの言葉に少し考え込むと、「………分かった。お前の言うことを信じるよ…俺との約束どおり、ちゃんと生きててくれたしな」と言った。

「信じてくれるか…ありがとう…」

ギコはそう言うと、しぃの方を向いた。

「しぃ…大丈夫だよ、たとえウイルスの仲間でも、しぃはしぃなんだから…いつでも優しくて、綺麗な心を持ってる…それがしぃだ、しぃ………俺はしぃの手を引いて、この街を走るたびに、自分の中のしぃを護りたいって気持ちが大きくなっていったんだ。だから俺はこの街に戻ってきたんだよ、しぃ…キミは俺にとって、ただ俺の傍に居てくれるだけで…何だか安心できる…そんな存在なんだよ…上手く言えないけどさ…きっと俺は…」

ギコは…自分の心に秘めていた思いを打ち明けた。

「俺は…しぃの事が…好きなんだ」

ギコの言葉にしぃの目から大粒の涙がこぼれた。

「ギコ君……私も…私もギコ君が大好きだよ………」

ギコとしぃは再び抱き合った。お互いに…大切な人を…何よりも優しく…暖かく…包み込みながら……冷たい悪夢の街…そんな中でも…しぃの鼓動…体温…その全てに抱きしめられ…ギコは…さらに強くなれるような…そんな気がしていた。

その時……!

「フッフッフ…泣かせるじゃないか…良かったな…せめて死ぬ前に、想いを伝えることができて……」

聞き覚えのある声…邪悪に彩られた声が聞こえた。

「その声は…“モララー”ッッ!!!!」

ギコが声のした方を見ると、そこにはあの“モララー”が立っていた。“モララー”はギコ達から少し離れた場所に立っている…あの血のように赤い剣を持ち…ブラックホールの様な漆黒の瞳でギコ達を睨みつけながら…


episode6 諸悪の根源


ここは特別プロジェクト室…

「お…お前だったのか…! なんて恐ろしいことをしてくれたんだ!! キハラ!!」

警備員に連れられてきた男に向かってギコの父は叫んだ、その男は数ヶ月前に、会社を解雇された社員の一人のキハラだった。キハラはニヤニヤしている

「キ…キサマ…なぜこんな事をしたぁ!!!」

社員の一人がキハラに怒鳴る、するとキハラが口を開いた。

「ヒッヒッヒ…言ったろ…必ずこの会社に復讐するってな…」

キハラは不気味な笑いを浮かべる

「お前…そんな逆恨みで……一体どれほどの人達が、危険な目に遭っていると思ってるんだ…!!」

ギコの父はキハラをまっすぐ見て言った。


…このキハラと言う男は、数ヶ月前にこのDream Cityのプロジェクトに参加している社員の一人だった。しかしある日、このキハラのミスによって、データーの一部が消失してしまったのだ、それを正直に言っていれば良かったのだが、このキハラはお咎めを受けるのを恐れてそれを事もあろうに隠し通そうとした。しかし、数日後…当たり前のようにそれはバレてしまい、おまけにすぐにそれを報告しなかったものだから、すぐに言ってればまだ取り返しがついたのの、バレた時にはもうすでに取り返しの付かない事になっていた。そのため、キハラへの罰も当然のように大きくなり、キハラは解雇された。キハラはこの事が納得できず、社長室で「いつかお前らの会社に復讐してやる」と言って会社を去った。そして今…Dream Cityのメインコンピューターにウイルスを進入させたのだった。


「逆恨み? ハッ…! 何寝ぼけた事言ってんだ? え? チーフさんよぉ…お前が上にチクらなきゃこんな事にならなかったんだぜ…俺はしっかり働いてたじゃねぇか…あんたも俺の働きぶりを認めてくれてたじゃねぇか…! それをたった一度のミスで見捨てやがる……あの時お前が上にチクらず、内緒でどうにか俺のミスを対処してくれれば、俺はクビを切られる事も無かった…そういう事もやればできたはずだ…それを…お前は…ゆるせねぇ…」

キハラはギコの父を睨む

「何…何言ってんだ……貴様! さっきから聞いてりゃ…!! 逆恨みもいい加減にしとけよ!!!」

「待てっ!!」

キハラに掴みかかろうとする社員を、ギコの父は止める

「キハラ…お前は間違っている…私が上にお前のミスを報告したのは仕方の無い事だ…あの時、お前がもっと早く私にミスをした事を言ってくれれば、私も上に言うことは無かったろう…しかし、お前がすぐにそれを言わなかったせいで、状況はさらに悪化していた。もうああなったら、上に言うしか無かったんだよ…分かってくれ、キハラ…!」

ギコの父はキハラに強い口調でそう言った。

「クックック…ヒッヒッヒ……! 分かるかよ! あ~っ!? そんなたわごと…!! おめぇのせいで俺の人生はめちゃくちゃだ!! 女房、子供にも逃げられ……今は酒びたりの日々…! その苦渋が貴様にわかるかっ…!! 俺は貴様がなんと言おうと、もう聞く耳もたんわっ…!!! 俺は必ずこの会社および…元チーフ…上司の貴様にも復讐する!! まずは手始めに…この街の中に侵入させたウイルスで、おめぇの息子を殺してやるわ!!!」

キハラは高らかに笑いながら、ギコの父に向かって子供のようにわめく

「くっ…! こいつ…頭おかしいぜ…」

ギコの父の隣に居る社員が言った。

「と…とにかく…警察に通報だ!」

ギコの父がそう言ったその時! キハラは服の中から爆弾のようなものを取り出した。

「おい……俺が武器を隠して無いとでも思ってたのかよ…少しおとなしくしとけ…少しでも妙な動きをする奴が居たら…俺はこの会社ごと自爆してやるぜ…ヒッヒッヒ……」

「くっ…分かった…おとなしく…しよう…」

立場が一転してしまった。そして特別プロジェクト内の人間は皆、携帯電話などをキハラに取られ、通報ができなくしてしまった。つまりこの特別プロジェクト室の人間は皆、人質のようになってしまったのだった。ギコの父は何となくだが分かった。ここはおとなしくしてたほうが無難だと…この男…キハラなら……今のキハラなら…本当にやりかねない…持っている爆弾で自爆しかねないと…そう思った。その時、社員の一人が言った。

「チ…チーフ…どうやら5種のウイルスの内、3種が被験者の手によって消滅させられたようです!」

「な…なんだって…」

ギコの父は驚いた。街の中の人間が戦ってウイルスを倒しているのだから…

「このまま残るウイルスも倒す事ができたなら、システムが復旧し、被験者を呼び戻せます!!」

社員の一人は嬉しそうに言う、ギコの父もそれを聞いて顔が明るくなった。その時、それとは対照的に気に食わないような顔をしたキハラが口を開いた。

「へっ…! 無駄な足掻きだ! 無理なんだよ…ウイルスを全滅させるなんて事はな…」

「なんだとっ…!」

社員の声を無視して、キハラはさらに続ける

「5種の内3種を倒したと言うが…そんなのは単なる偶然にすぎん…大体…あの“モララー”と言うウイルス……あいつは別格だ…他の奴が全滅しても、あいつだけはどうにもならねぇよ…!」

キハラはニヤニヤと笑いながら言う、社員一同とギコの父は…そのキハラの言葉に不安になりつつも、被験者たちの無事を祈っていた。


episode7 全開…!


街の中…

ギコ、フサ、しぃの三人と、“モララー”が今こそ激突しようとしていた。

「フッフッフ…ギコ…この右足の傷の借りを返させてもらうぜ…あと…裏切り者のしぃ…!! 貴様だけは許さん…! バラバラに切り刻んでやる…! 生きながらな…!!」

あの時と同じだった。狂気がビシビシと伝わってくる、細胞の一つ一つに「殺すぞ」と語りかけてくるようだ…!

ギコは前に出る、しぃとフサをかばう様にして…

「待てギコ、お前一人を危険な目に合わせられるか、俺も戦う」

フサが前に出たギコの肩をつかんで言う

「でも…フサ…無茶は駄目だ、お前はケガを…」

ギコがそこまで言いかけたときだった。しぃが光る弓を出して構えのだ

「しぃ!!!」

ギコがしぃを止めようとすると、しぃが言った。

「ギコ君…ここは私に任せて、人間とウイルスじゃあ苦しい戦いになるけど、ウイルス同士なら…」

しぃはそう言って、“モララー”に向けて何本も矢を放った。

「ハッハッハ!!! 甘いわぁっ!!」

“モララー”はそれをすべて避けた。

「こ…これならっ!!」

しぃは矢を十本ほど一気に放った。しかし“モララー”はそれをすべて剣でなぎ払った。

「さぁ!! そろそろ死ねぇ!!!」

“モララー”がしぃに迫ってきた。

「しぃ!! 下がってろ!!」

ギコがしぃの前に出て、しぃをかばった。ギコはあの時も使った水の剣を出した。

「ギコ!! なんだよその武器は!」

フサが驚いてギコに聞く

「ワクチンソフトさ! 詳しい事は後で話す!!」

ギコはフサにそう言うと、“モララー”に斬りかかって行った。

「うりゃああああっ!!!」

「てええぇぇえええぇっ!!!」


バキン!!!


ギコと“モララー”の剣が音を立ててぶつかった。

「フッ…なんでこの街に戻ってきた…! 逃げてれば殺されることも無かったろうに…」

“モララー”は不気味に微笑みながら言う

「何とでも言え! しぃやフサには指一本触れさせない!!」

「ほう…言うでは無いか…だが…これでもそんな口が叩けるか!?」

“モララー”の力がさらに強くなった。

(ぐぁっ…何だ!? 前の時とはまるでパワーが違う!!)

ギコは必死に踏ん張って耐える

「フッフッフ…まさかあの時の実力が俺の全てなどとは思っていまいね」

“モララー”はそう言ってニヤリと笑う

「くっ……!」

「あの時は少し油断したが…もう手加減などしない…全力をもって貴様を叩き潰す…!」

“モララー”はさらに力を込めた。ギコは押しつぶされそうだった。

「くっ…ちくしょう…」

ギコの体力は限界に近づいていた。

「クックック…身の程知らずが…パワーも、スピードもあの時と違う俺に刃向かうとは…哀れなやつよのぉ…」

“モララー”は邪悪な顔で笑い続ける…

「黙れ…! お前は…俺が必ず…倒す!!」

ギコはそう言うと、“モララー”から素早く離れた。“モララー”もギコと同じように一旦ギコから離れる、その後…“モララー”は大きく跳躍した。

ギコもビルの壁を蹴り、高く飛び上がった。ギコの目の前には“モララー”がいる

「おりゃあああっ!!」

ギコはそのまま“モララー”に斬りつけた。ギコの剣の刃は見事“モララー”の体に食い込んだ!!

「やったか!!!」

しかし、ギコが喜んだのもつかの間…ギコの斬りつけた“モララー”が消えて行った。ギコが斬りつけたのは“モララー”の残像だったのだ。

「なっ…!!」

ギコはすぐに後ろを振り返ると、“モララー”が剣を振りかざしていた。ギコは間一髪で“モララー”の攻撃を防いだ!! しかし、“モララー”の力の強さに吹き飛ばされ、下のアスファルトに叩きつけられた!

「ギコ君!!!!」

しぃがギコに駆け寄った。

「くっ…体が…動かねぇ…骨でも折れたか……」

ギコは体に激痛が走り、起き上がれなかった。

「さぁ!! これで貴様も最後だぁっっ!!!!」

“モララー”が剣をギコに投げつけた。

「ギコぉーーーー!!!」

フサの叫び声がギコの耳に届く

(くっ…!! 駄目か!! 避けきれないっ!)

ギコは目をつぶった。

「………あれ…? 痛くない…?」

ギコは次の瞬間、強烈な痛みが襲って来ると思っていたが、痛みはなぜか無かった。

「ギ…ギコ君…」

しぃの声が聞こえて、ギコが目を開けると、すぐ目の前にしぃの顔があった。しぃはギコに覆いかぶさるようにしていた。

ふと、ギコがしぃの背中を見ると…“モララー”の投げた赤い剣がしぃの背に突き刺さっていた………


episode8 昇天


やがて、しぃの背に刺さった剣は、ブーメランのように“モララー”の手元に戻った。しぃはそのまま前に倒れた。

ギコはあまりの事に状況を把握できず、放心状態になっていた。程無くして、“モララー”の笑い声が聞こえた。ギコはその笑い声でふと我に返った。

「しぃ……? しぃっっ!!! しっかり……しっかりしろ!!」

ギコは倒れたしぃを抱き起こすと、しぃの顔を見た。

「お…おい! 大丈夫か!!」

フサもしぃのそばに駆け寄ってきた。

「しぃっ…おい……しぃっ!!」

ギコは必死にしぃの名前を呼ぶ、するとしぃが、かすれた声を出した。

「ギ…コ君……良かった……無事で……」

「しぃっ…! 何で…何でこんな事を……!!」

ギコはしぃを抱きかかえたまま叫んだ

「ギコ君…私は…もう駄目みたい……ごめんね…」

しぃの声は今にも消え去りそうだった。

「何を言ってるんだしぃ!! 死んじゃ駄目だ!! 一緒に…俺と一緒に生きるんだろ!? なぁ……しぃ!」

そう言ってギコはしぃの体をより強く抱きしめる

「ごめん……でも…どの道ムリだったんだよ……前にギコ君が外の世界に出たときの出口も、もう塞がってるし……もう…ここから出るには…ウイルスが全滅するしか無いんだよ…私も……ウイルスだったから…いずれは死ななきゃいけない運命だったんだよ……」

「そんな……しぃっ!!! 駄目だ!! お願いだ…! お願いだから…死なないでくれ……しぃ……」

ギコの目から涙がこぼれ落ち、しぃの顔を濡らした。

「ギコ君……泣いちゃダメだよ……私なんかのために…涙を…流しちゃ…」

しぃはギコの頬を伝う涙を手を伸ばし、すくった。

「しぃ……俺はどうなってもいいよっ……! だから…死なないでくれ……大切なんだ…しぃの事が……だからっ…! だから……もうダメだなんて…諦めないでくれよっ………」

ギコはしぃを抱きしめたまま泣き崩れた…だんだんと弱ってきているしぃも涙を流し始めていた。

「ギコ君……あのね…もう私……怖くないよ…今まで…ずっと……死ぬことが怖かった…でも…ギコ君に会えて……今こうして…抱きしめてもらってるから……大好きなギコ君の温もりに…包んでもらってるから……もう……怖くないよ…」

「しぃっ…!!」

ギコは自分が悔しかった…何もできない自分が…

「ごめんな…しぃ……俺は……何もしてやれなかった……ただ…お前を護ってるように自分で思えてただけなんだ……」

ギコは…ただただ…しぃを強く抱きしめてやることしか…出来なかった。

「ギコ君…私は…嬉しかったよ……幸せだったよ……とても……だから…泣かないで……ね……ギコ君には…いつも…笑顔……で………」


そこまで言うと…しぃはかすかに笑い…そのまま目を閉じて動かなくなった。


「しぃ……そんな……しぃ! ……うそだろ………目を開けてくれよしぃ! しぃっ!! うっ……うわああああああっ」


ギコは声を上げて泣いた。街に轟くような大きな声で…大粒の涙を…しぃの亡骸に落としながら……

やがて…しぃは光の粒子となり…星のように輝きながら天に昇った…

ギコは…崩れ落ちるようにその場に両手を付いた。

「フハハハハ!! 愚か者めが!!! これが無力の代償というものだ!! ギコよ! フハハハハハハ!」

“モララー”は高らかに笑った。ギコを見下ろして…

「……てめえぇッッ!!! こぉの外道がぁあッッッッ!!!!!!!」

ギコの隣にいたフサが、“モララー”に突っ込んでいった。

「ギコを笑うのはやめねぇかぁぁああッッッ!!!!!」

フサは飛び掛ったが、“モララー”に蹴り飛ばされた。

「がッッ!!!」

フサはギコの隣まで吹っ飛んだ

「フフフ…ハッハッハ!! もはや俺にかなうものはいない!! 下等な人間ども!! 俺の前にひれ伏すがいい!!」

“モララー”は大声で笑いながら言った。

「くっ……ギコ…!」

フサはギコの方を見る…その時…不思議な事が起こった。ギコの手の中に光が集まりだしたのだ、光はどんどん大きくなる…

フサがギコに声をかけようとした次の瞬間! ギコの体がまばゆいばかりの光に包まれた。


episode9 最終決戦!


まばゆい光…それはまるでこの世の光を全て爆発させたかのようなものすごい光だった。

「うわっ…なんだ…!!」

「くっ…!?」

フサも“モララー”も目を閉じる、眼球を刺すようなその光は目を閉じていても眩しいくらいだった。


……やがて…光がおさまった…フサと“モララー”はゆっくり目を開ける

「ギコ………!!!!」


フサは言葉を失った。本来フサの目の前にいるべきであるギコはそこには居なかった。そこには代わりに、まぎれも無い人間の少年(猫のような耳と尻尾を除いてはだが)が立っていた。猫のような姿のギコはどこかに消えていた。

「ギコ…なのか?」

フサはそう呟いた。目の前にいるこの少年はギコなんじゃないのか? フサにはそうとしか思えなかった。なぜなら…少年に不自然に付いた耳と尻尾はまぎれも無くギコのものだったからだ

「……そうだ…」

少年はそう呟いた。そう…この少年はフサの思った通りギコであった。精悍な顔立ちに、金髪の少年…そう…その姿は、現実世界のギコの姿そのものであった。

ギコはおもむろに手を天に突き出した。するとその手の中に光が集まり、大きな光の剣になった。

「貴様…一体何をした」

“モララー”は身構えながら言った。すると…次の瞬間、“モララー”の目の前からギコの姿が消えた。

「なっ…?」

“モララー”はギコの姿を探してあたりを見回す、すると突然“モララー”の目の前に、ギコが現れた!

「うわっ!!!!」

“モララー”はギコの振り下ろした剣をすんでの所で止めた。…が、しかし・・・“モララー”はなんとそのままギコの力に体ごと吹き飛ばされた。

「うおおおおおっ!?」

“モララー”は激しくビルに衝突した。するとギコの体が再び消えた。

「なっ・・・何だ!? どこに?」

“モララー”はギコを探す。

「………動いてる…ギコは目にも留まらぬスピードで動き回ってるんだ…」

フサはやっとの事でそう気づき、呟く…すると再びギコは“モララー”の目の前に現れ、斬りつける!

「くっ…!!!!」

“モララー”は体勢を低くしてこれをかわし、高く跳躍し、ビルの屋上へ行った。ギコも同じように高く飛び上がった。そしてビルの屋上に着き、ギコと“モララー”は再び戦いを始めた。

ギコは“モララー”に斬りつけた。“モララー”はそれを止めるが、ギコのパワーに明らかに圧倒されていた。さっきと全く立場が逆になっていた。

「がっ…馬鹿な…こんな馬鹿な話があるか! さっきまで虫ケラほどの力だった貴様が……貴様の力が…この俺を上回ってるなどッッ!!」

“モララー”は苦しげにそう言った。

「“モララー”!!教えてやろう!!」

ギコが人間の姿になって初めて口を開く

「さっき俺が光に包まれた時…俺も最初何が起こったか分からなかった! でも…その後すぐに分かったよ! 俺の体に…何があったのかがな!!」

「なっ…何…?」

「しぃだよ! 俺は光の中で…しぃの声を聞いたんだ!! 『この私の力を使って』って……しぃが俺に力を貸してくれたんだよ!!!」

ギコは強くそう言った。

「有り得ん……そんな事は有り得ん…!! 人間とウイルスが心を交わすなどッッ!!!」

“モララー”は信じられないと言った顔で叫ぶように言う

「なら…確かめてみろ! この力を…! お前の体で…!」

ギコは“モララー”にタックルし、二人そろって屋上から落ちた。そして…下にあった天井がガラスで出来ているビルの天井を突き破り、さらに二人は落ちていく…そして落下しながらギコは“モララー”に剣を突きつける

「これで…これで終わりだ!! “モララー”あああああぁぁッッ!!!」





(しぃ…俺は…たとえキミという存在が…現実には存在しないウソだったとしても構わない…キミが…俺を愛してくれる限り…永遠に……)


『ギコ君…』

(しぃ…)

『二人で…二人一緒なら……どんな強い敵だって…倒せるよね…』

(ああ…そうだ、キミが傍に居てくれれば俺は…もっと…もっと…強くなれるよ…)

『うん…ギコ君…私達…ずっと一緒だよ…』

(ああ、俺はお前から離れない…これからも…ずっと一緒だ…!)




ギコの剣は“モララー”の心臓を貫いた!


episode10 ありがとう…


「や…やりました!! ウイルス残り2種消滅!! システムが復旧します!」

特別プロジェクト室で社員の一人が歓喜の声を上げる

「ほ…本当か!! やった!! やったぞ!!!」

ギコの父がそう言うと、喜びは周りの社員にも伝わり、周りの社員も嬉しさに飛び上がっていた。

「……くっ……馬鹿な…想定外だ…」

キハラはその場に立ち尽くす。その時、どさくさにまぎれて社員の一人がキハラから爆弾を取り上げた。

「あ…」

社員は爆弾を警備員に渡し、警備員に部屋を出させた。

「これでお前も終わりだな、あとはあの警備員が警察に届けてくれる…お前のくだらんテロごっこはおしまいだ」

社員がキハラに凄みのある声で言うと、キハラはその場に座り込んだ。

「では、被験者を回収します」

社員の一人がコンピューターを操作した。



「ん…? 何だ…地面が消えていく?」

兄者達は、突然地面が消え始めたので、戸惑っていた。

「な…なんだこりゃあ…」<

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