モナー小説掲示板ログ保管庫@wiki(´∀`*)

Ascii Art Adventure (猫’s尻尾)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

―その昔

―大陸がまだ一つであった頃

―突如現れた魔の集まり「魔王」は

―世界を混沌へと陥れた

―永きにわたる光の無い闇だけの世界

―人は希望を失ったかに思えた

―だが

―集いし七人の者たちによってそれは打ち砕かれる

―かくして魔王は戦士たちによって倒され地の底に封ぜられた

―人々は束の間の平和を得た

―しかしそれすらも打ち砕かれる。

―魔王を地の底から呼び戻そうとするものがいた

―戦士たちは再び集いその者と戦った

―圧倒的な力の差

―戦士たちはそれに敗れてしまった

―魔王は蘇り世界は再び混沌の時を刻もうとしている

―だが私はあえて信じよう

―この伝記に希望ある未来が書き足されることを


           Ascii Art Adventure 

             + + +

山に囲まれ、白いレンガで出来た家が立ち並ぶ小さな村「スターティング」。
そこで最も評判といえば、彼のことであった。
「コラァ!ドロボー!」
中年の女性がフライパン片手に飛び出してくる。
それよりも早く、先に家から飛び出した者が一人。
彼がその村の中での有名人。
人は泥棒と叫んでいる女性と、追いかけられている少年を笑いながら見ていた。

              一章 旅立ち

「パン一個でケチケチすんなって、おばさん!」
青色の澄んだ瞳、それに伴う青い体。
少年は幼い笑顔で、パンを片手に女性に向けてあっかんべーをした。
だが、逃亡劇はわりと早く終わる。
前に立っていた老人を、抜かそうと横に走ったが、老人は足一つ動かさず抱えていた分厚い本で彼の脳天を鈍い音を響かせて殴る。
少年はクックルが頭の中で自分を抱えて「エリア51」という看板と共に回っている姿が脳内で展開されていたが、パンは勢いで遠くにすっ飛ばされてしまう。
それが朦朧としている彼の眼に映った瞬間、はっと我に返り老人をよそにしてパンの方向へと走っていった。
弧を描いて落下していくコッペパン。
少年は尋常ならざる速さで突っ走り、
「パンゲットォォオオオォォオ!!おお!?」
パンは見事滑り込みでキャッチしたものの、それを抱えたまま頭を直線状にあった木に勢いよくぶつかる。
分厚い本と、木への覚悟せぬ頭突き。
これぞまさにダブルインパクト。
再びクックルが回り始めた。

「全く、やんちゃにもほどがありますよ」
頭から二つのたんこぶを生やし、木に縛り付けられているのは無論、彼。
その前に立つは、あのパン屋の女性と本を抱えた老人。
「いくら親がいなくったっても、あんたはもう働ける年頃なんだから、万引きなんかせず真面目に!しっかりと働いて・・・」
「まあまあ、もうそろそろいいじゃないか。彼も反省しているようだし」
頭から湯気を出しそうな勢いで怒りながら説教する女性を、老人は止めた。
彼にはどれほどの救世主に思えたか。
「今回はまだいいけど、次やったら承知しませんよ!」
そういうと、さっさと家に戻っていった。
残ったのは、老人と彼。
「ところで、ギコ。魔王討伐隊の話じゃが・・・」
ふてくされた顔だった、彼ーギコは、急に目を輝かせた。
「え!マジで!」
「まだ何もいっておらん。結果からいってしまうと、お前は落ちた」
ギコにとっては人生最大の吉報であったに違いなかったが、その期待はあっさりと谷の底へと落ちていった。
「・・・まあ、確かにお前は魔法が使えないし、落ちるのは当たり前といえば当たり前じゃが・・・」
「なーにが魔法だ!んなもん、剣士にゃ必要ねぇだろ!」
そう、魔王を討伐すべく結成された魔王討伐隊。
近くになってその実力はかなりのものとなったが、それらは全て魔法と剣、両立したエリートの集団であった。

「とにかく、これにめげず、明日からまた修行しなおせい。さすればお前でも・・・って、聞いておるか?」
「・・・腹減った・・・」
大きな腹の虫の音と、力のない声。
仕方なしという表情で、老人は長いローブから先ほどのと同じコッペパンを出した。
「食っておけ。ただし、今日は朝までそのまんまじゃ」
パンを縛られているギコの手の平に置き、老人は去っていった。
老人の後姿に、ギコは軽く礼をした。

腹の音が、規則正しく夜の村に響く。
10分ごとになるそれは、いい時計代わりとなっていった。
「・・・腹減った・・・寒ぃし・・・」
首を傾けて、だらんと縛られている。
ていうか、朝までこんなんだったら死んでしまうじゃないか。
こういうところにこの村の人はうとい。
しばらく空腹で眠れぬまま、だらっとしていると茂みを掻き分けて誰かがギコに近づいてきた。
「ギコ、何やってるモナ。家から抜け出してきたモナよ」
薄暗くてよく見えなかったが、その真っ白な体の色、聞きなれた声は容易に誰かを想像させた。
「おお!モナー、ちょうどいい!これほどいてくれ!」
自分が縛られているロープを指差しながら、ギコは足をばたつかせる。
モナーと呼ばれた白い肌をした少年は、ギコの縄を解こうとした。
ーーが、どうやっても解けない。
「困ったモナね、魔法で固定されているみたいモナ」
その半分が絶望的な言葉を聴かされ、さらにあわてるギコ。
「な、な、なんとか出来ないか?!お前確か魔法使えたろ!」
「確かに使えるモナ、けど魔力が少ないから多少弱めるぐらしか出来ないモナよ?」
「構わん!後は自力で脱出する!」
ギコは息を荒げながら、モナーはその細い目を閉じ、両手の平をロープに向けた。
「“カッター”」
小さくつぶやくと、手の前に風が収縮され、一つの刃を作り出す。
空刃はロープに突き刺さり、ぶちぶちと引きちぎりながら進んでいくが、半分よりも少し前ぐらいで止まってしまった。
「やっぱり、風系の低級魔法じゃ全部切るのは無理モナ」
頭をかきながら、モナーはあきらめ口調でつぶやく。
が、ギコはそれに失望することなく、さっきよりは幾分か元気のよい声で答えた。
「大丈夫!これだけ千切れてりゃ・・・・リャアア!!」
ギコの二の腕に十字の青筋が入り、千切れかけたロープはいとも簡単に、いや彼だからこそできたのかもしれないが吹き飛んだ。
「サンキュ、モナー」
礼をすると、モナーは照れくさそうにしていた。
「さて、これからやることがあるわけだが」
「何モナ?」
ギコは、遠くに見える山々を指差す。
意気揚々と、高らかに宣言した。
「この村から出る!」
数秒の沈黙。

「ええええぇぇぇぇえええ!!?」

まだ続きそうだったその驚きを交えた叫びは、とっさにギコの手でふさがれる。
誰もこないところを見ると、全員寝ているようだ。
「とにかく、約束やぶってロープから抜け出しちまったし、これだとまずお前の爺さんに怒られることになる。それに、魔王討伐隊にゃあ落ちたが、自分で対峙すればいい。ということで、共犯のお前も巻き添え。家帰って準備しろよ」
そういうと、まだ夜明け前の暗い中ギコは家に戻っていった。
残されたのは、唖然としているモナー。
いつも見せている笑顔は、非常に哀愁漂うものとなった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー