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はじめに……
この小説は既存AAはかなり少ないです。オリキャラが苦手で、苦情を言うのは出来るだけ控えてください。
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~素直な気持ち~
どんなに冷酷な者でも、何かに縋りついて泣きたくなることだってある。
どんなに能天気な者でも、強い心を持っていることだってある。
素直な気持ち――― それは、心の奥底にある本当の自分。
第一章 幸せすぎた日常
小高い丘の上に、その建造物は建っていた。
白い煉瓦造りの建物で、中心に位置する尖がり帽子の屋根には、一つの旗が付けられている。黄色い布地の中心に、翼のようなものが描かれている旗だった。
屋根は全面赤色に統一されており、一部にはテラスのような所も見える。
そこから見下ろされる所には、沢山の家々が軒を連ね、南東から当てられる太陽の光は、暖かみを帯びていた。
小さいながらも立派な城と、のどかな町が肩を寄せ合っている。
ここはディアルド。名を知るものは少ない辺境の王国である。
そこに響くのは、元気な子供の声だった。
「うわぁーい! 引っかかったー!」
煉瓦で造られている壁の中から、その声は響く。同時に、若い男女の声も聞こえてきた。
「王子っ! 悪戯はお止めください!」
その声は、困ったかのように響いている。だが、その嘆きのような声も、元気な子供の声でかき消された。
「やっだねー!」
内部――― 廊下は赤い絨毯が敷き詰められ、壁や窓の脇には立派な文化財らしきものが置かれている。高価そうな壷、永久銀 ――永遠に反射光を放ち、錆びることのない貴重な物質――で出来た鎧など、それは何十個にも上った。
そんな廊下を、一人の少年が駆けている。藍色の体に、貴族の服を着させられており、精悍で大人らしい顔つきなのだが、表情は正に悪戯っ子そのものだった。
不敵な笑顔で笑いながら駆けていく少年を、何人かの男女が追いかけている。鎧に身を包ませた兵士や、女官姿の女性だった。
その後ろには、慌てふためいている女官の姿がある。彼女の抱えている洗濯籠には、粘着性の強いスライムが置かれていた。
「少しは王子らしくして下さい!」
困ったような表情で、追いかける男女の先頭を走る兵士が嘆く。それに聞く耳を持たず少年、否、王子は廊下を全力疾走していた。
「王子なんてかったるいよーだ!」
後ろを少し振り向き、口元から舌を出す。後ろの男女達は息切れしながら、前方を走る、自分が仕える主の子に嘆息する。
これはこの城普段の日常。
だが、何気ないこの日常は崩れ去ろうとしている。
ディアルドの王子、ディス・イング・ディアルド七世。まだ、七歳の春であった―――
はじめに……
この小説は既存AAはかなり少ないです。オリキャラが苦手で、苦情を言うのは出来るだけ控えてください。
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~素直な気持ち~
どんなに冷酷な者でも、何かに縋りついて泣きたくなることだってある。
どんなに能天気な者でも、強い心を持っていることだってある。
素直な気持ち――― それは、心の奥底にある本当の自分。
第一章 幸せすぎた日常
小高い丘の上に、その建造物は建っていた。
白い煉瓦造りの建物で、中心に位置する尖がり帽子の屋根には、一つの旗が付けられている。黄色い布地の中心に、翼のようなものが描かれている旗だった。
屋根は全面赤色に統一されており、一部にはテラスのような所も見える。
そこから見下ろされる所には、沢山の家々が軒を連ね、南東から当てられる太陽の光は、暖かみを帯びていた。
小さいながらも立派な城と、のどかな町が肩を寄せ合っている。
ここはディアルド。名を知るものは少ない辺境の王国である。
そこに響くのは、元気な子供の声だった。
「うわぁーい! 引っかかったー!」
煉瓦で造られている壁の中から、その声は響く。同時に、若い男女の声も聞こえてきた。
「王子っ! 悪戯はお止めください!」
その声は、困ったかのように響いている。だが、その嘆きのような声も、元気な子供の声でかき消された。
「やっだねー!」
内部――― 廊下は赤い絨毯が敷き詰められ、壁や窓の脇には立派な文化財らしきものが置かれている。高価そうな壷、
そんな廊下を、一人の少年が駆けている。藍色の体に、貴族の服を着させられており、精悍で大人らしい顔つきなのだが、表情は正に悪戯っ子そのものだった。
不敵な笑顔で笑いながら駆けていく少年を、何人かの男女が追いかけている。鎧に身を包ませた兵士や、女官姿の女性だった。
その後ろには、慌てふためいている女官の姿がある。彼女の抱えている洗濯籠には、粘着性の強いスライムが置かれていた。
「少しは王子らしくして下さい!」
困ったような表情で、追いかける男女の先頭を走る兵士が嘆く。それに聞く耳を持たず少年、否、王子は廊下を全力疾走していた。
「王子なんてかったるいよーだ!」
後ろを少し振り向き、口元から舌を出す。後ろの男女達は息切れしながら、前方を走る、自分が仕える主の子に嘆息する。
これはこの城普段の日常。
だが、何気ないこの日常は崩れ去ろうとしている。
ディアルドの王子、ディス・イング・ディアルド七世。まだ、七歳の春であった―――