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Sword of legend ~伝説の剣~ (ヨシヅミ)

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匿名ユーザー

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Sword of legend ~伝説の剣~

*この作品にはオリジナルキャラが結構出てきます。そう言うのが嫌な人は見ない事をお進めします。

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第1話 ~Sword~

ーこれはとある村での伝説ー

「森に眠る封印の剣を抜いたとき、次元の扉が開かれる。

それと同時に封印されし力目覚め、封印を解きし者と共に次元の扉へと堕ちていくだろう。

その先に待っている物は封印を解きし者によって、栄光へ絶望へも変わる。」





たったった。1人の少年が、光のカーテンのように葉と葉の間から差し込む木漏れ日の中を走る。
草をかき分け、少年は開けたところに出た。

「おっ、来た来た。遅いぞ、ギコ。」

彼の名はモララー。マイペースな男だ。何を考えてるのかよく分かないが。

「待ちくたびれちゃった。さあ早くいこうよ。」

彼女はしぃ。俺のグループの中の紅一点だ。

「まぁ時間もたっぷりある訳だし。じゃあそろそろ逝くモナ。」

彼はモナー。温厚な性格で、鈍感なやつだ。

「今日は伝説を確かめる為に集まったんだろ。モタモタしてると日が暮れるぞ。」

「まあそんな焦る事は無いだろうが…。まあ早いに越した事は無いしな。」

緑色のAA、モララーの言った通り、4人は村に伝わる伝説を確かめる為に集まった。

まぁ、みんな伝説をそこまで本気にしていないようだし、森の冒険と言ったところだろう。



この4人は何らかの理由で親が居ない為、孤児院で知り合った。

孤児院の中でも4人は浮いた存在で、いつも仲間はずれだ。

なので彼らの帰るべき場所はこのグループの中であり、全員がそれぞれを信頼していた。

要するのこの4人は、とても仲がいいという事だ。




「おい、見ろよ。洞窟だぜ。」

しばらく歩いたところで、黄色のAA、ギコが言った。

洞窟は地面から斜め下に伸びており、5メートル先も見えないほど暗い。

明かりも無しに入ったら、すぐに迷って出られなくなりそうだ。

「時間も結構あるし…。入ってみるモナ?」

白色のAA、モナーがそう言ったが、他の3人は、少し考えていた。

「明かりは有るの…?」

桃色のAAしぃが問い掛ける。それを聞いたモララーは、何かを思い出したかのように、手と手をたたき、リュックの中をあさり出した。

「有った、有った。」

そう言うとモララーは、リュックの中からカンテラと糸を取り出した。

「カンテラとは随分原始的な…。」

「原始的で悪かったな。この糸は入り口にある木につけといて、これをたらしながら歩く。そうすれば迷っても糸をたどって戻って来れるってわけ。カンテラは見れば分かるよな?」

見かけによらず機転の利く奴だ。

「よく持ってたなこんな物。ある意味凄い。」

「オレは全部が凄いが何か?」

「まあ、道具もそろった事だし、入って見るモナ?」

モナーがなんだかうきうきしたような感じで言った。冒険が好きなのだろう。

「先頭はギコね。好きだろ?リーダーとか。」

「まあね…。でも流石にこれは…。」

「はい、そう言う事で出発!ここで時間食ってると冒険する時間が減るモナ。」

ギコは無理矢理先頭を押し付けられたようだったが、元々「リーダー」という役割が好きだったので、結構簡単に引き受けた。

「じゃ、じゃあ行くぞゴルァ!」




張り切って歩き出した4人だったが、しばらく歩くと流石に疲れてきたようで、歩く速度のも下がってきた。

「ねぇ、そろそろ帰らない…?」

最初に音を上げたのはしぃだ。

真っ暗な洞窟の中を女の子が数時間も歩いたのだ。当然である。

「ぼ、僕も賛成モナ…。」

疲れたような様子でモナーが言った。最初は張り切っていたモナーだったが、疲れてきたのだろう。

ギコもモララーも帰ると言う意見には賛成らしく、糸を巻返し出した。

その時だった。不意にしぃが立ち止まり、壁に手を当てている。

「どうした、しぃ?」

「何かここの壁、他の壁かと少し離れてる…。」

「何!?まさかお宝が!?」

ギコが冗談っぽく言い、しぃの居るところに向かって走り出した。

「グハァ!!」

次の瞬間、ギコは暗い中走ったせいか、壁に激突した。

「何やってんだよ…。って!?」

モララーが叫んだのも無理は無い。ギコのぶつかった衝撃で、壁が倒れて来たのだ!

「ちょっ…。」

ギコは転んでいる状態から回転して避け、しぃも横にジャンプして避けた。

「大丈夫モナ!?」

遠くにいたモララーとモナーが駆け寄ってきた。

「何とか…ぶつかった時以外の怪我は無いよ。」

「私も無事。」

仲間に怪我が無いかに気を取られていたせいか、気がつくのが遅れていたが、

崩れた壁の向こうには大空洞が広がっていた。

いきなり、カチッという音がしたかと思うと、炎が走り、壁際にあった燭台に火がついた。どうやら人工的に作られた物らしい。

「なんなんだここは…?」

みんなあっけにとられながらも、空洞の中を見渡す。

「なんかちょっと危なそう…。」

ギコが、その通りだと思いつつも、恐る恐る足を踏み入れる。

「気をつけるモナ。罠とかがあるかもしれないモナ!」

それでもギコは立ち止まる事も無く、ゆっくりと、それでいて真っすぐに奥に進んで行く。

何やらギコの様子がおかしい。

「おい、戻ってこい!危ないぞ!」

モララーが必死になって叫んだが、聞こえていない振りをしているのか、それとも本当に聞こえていないのか、ふらふらと奥に進んで行く。

「あれは!?」

しぃが驚いたように指を指した。なんとその指の先には、信じても居なかった「伝説の剣」があったのだ。

しかもその剣は、ギコの向かっている先に丁度ある。

「待て、ギコ!危ないぞ!!」

3人は何かを感じたのか、ギコの方に走って行き、止めようとした。

しかしそれは遅かった。ギコは剣に手をやると、一気に引き抜いたのである!

その行動は意識的にやっているというより、何かに導かれているようだった。

キィィィィィィィン

何かよく分からない高い音とともに、剣を抜いたところからか光が溢れだした。

「うっ。」

「これが…。伝説…!?」

光に包まれる4人。

そして数秒後、4人は光に飲み込まれて姿を消した。

伝説は本当だったのか!?そして4人の運命は…?


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第2話 ~Dimension~

「………………………。ここは…?確か大空洞を見つけて…。それから俺はどうしてたんだ?それにみんなは?」

ギコが目を覚まし、あたりを確認する。

見慣れない家だ。しかし、家の壁などに鉄などの、丈夫な資材を使っており、ギコの村より技術が進んでいる感じがする。

とにかく、ここはギコの村ではないと言うことだ。


ギィ……


いきなりドアの開く音がする。

「よかった…。やっと気がついたのね…。」

何とドアから出てきたのは、しぃだった。

「し、しぃ!!ここはどこなんだ!?みんなは!?」 

ギコはかなり動揺しているようだ。

「ま、まぁ落ち着いて。ここの家の人を呼んでくるから…。」


しばらくすると、同い年位の男の子を連れて、しぃが戻ってきた。

「おお、気がついたか。初めまして。俺の名はゼルエル。この家の主だ。」

「え!?主って…。大人は居ないのか!?」

しぃは、ギコを落ち着かせた後、大空洞を見つけてから今までのことを説明した。


「ふ~ん。てことは、俺は無意識のうちに剣を抜いて、気がついたらここに飛んでいた、ということだな。しかも剣は行方不明と。」

「そう言うこと。でもなんでギコは剣に吸い寄せられるように…?」

「じゃあそのことについては俺が説明する。」

ゼルエルは、何かの分厚い本を本棚から取り出し、ギコが寝ていたベットに置いた。

「えっと…。あったここだ!!」

そう言うと、本の1部を指差した。その指の先にあった物は、何かの剣と、それについての説明だった。

「この本によると、この世には2つの世界があり、それをつなぐ物がある。
まぁそのつなぐ物が剣だったんだろう。そしてギコ。お前は神に選ばれた者なんだ。」

「!?」

「神に選ばれた!?」

「そう・・・。なぜそう言えるのかというと、まず1つに、剣を発見出来たことだ。
剣には選ばれし者が、剣の存在に気づくように、オーラーにより吸い寄せる力がある。
君たちが剣を見つけたのは偶然ではなく、その力のせいだろう。
そしてもう1つは、剣に無意識に近づき、抜いたことだ。
これも、剣の力によるものだと思う。」

「……よく分からないけど…。」

ギコとしぃは、混乱しているようだった。

「うん。それでだな。話は変わるが、元の世界に戻る方法はまだよく分かっていないんだ。」

「え!?じゃあどうすれば…。」

「う~ん。手がかりを探して冒険するくらいかな。どこかに行けば分かるかも。
でも冒険に行く為には強くならなくてはいけない。
この世界に居る人間は何か特別な力を持っている。
それと同じように、別の世界からこの世界に来た者は、何か特別な力が目覚めるという。
外に出て試してみるか?」

「特別な力…?」

「試してみようよ。」

「ゼルエルって物知りだな~。色々知ってるし。」

「ま、まあな。勉強したんだよ。ほら、この辺草原じゃん。やる事ないし勉強でもと…。」

「ふ~ん。」

なぜかゼルエルは焦ったような感じだったが、ギコは褒められて照れてるのか位にしか思わなかった。

「ま、外に出ようよ。」



ギコたちは家の外に出た。そこには殺風景な草原が広がっていた。

「さてと。じゃあ、まずしぃちゃんから。目を閉じて、これに触れてみて。」

そう言うと、ゼルエルは水晶玉のような物を差し出した。

「う、うん。」

言われたとうりに、水晶玉に手を置き、目をつぶる。

そしてしばらくすると、水晶玉が光り始めた。

「な、何だ!?」

最初は弱く、黄色っぽい光だったが、だんだんと強く、赤い光に変わっていった。

「もういいぞ~。」

ゼルエルがそう言うと、しぃは力を抜いた。それと同時に、光も消えた。

「はあはあ、何だったの…?」

「赤い光かぁ。てことは魔法系かな。」

ゼルエルは何やらよく分からないことを呟いている。

「?」

2人とも不思議そうな目でゼルエルを見た。

「あ、ああごめん。この水晶玉はね、人に眠る力を判別するものなんだ。
きみは赤い光を発した。
つまり、魔法の力が目覚めるってことかな。でもってギコも試してみよう。
しぃちゃんと同じようにして…。」

しぃと同じように、ギコも目をつぶり、水晶玉に手をかざす。

するとギコからは、虹色の光が発せられた。

「お!これは特殊系だ。かなり珍しいもので、一見普通能力のようだが、何か隠された物があるらしい。よく分かんないけどな。ま、それは明日練習しよう。」




その夜、部屋で2人は色々な事を話した。

「モララーとモナーはどこ行っちゃったんだろう。生きてるかなぁ。」

「まぁ大丈夫だよきっと。俺たちみたいに親切な人に出会って、今頃ぐっすり眠ってるさ。」

「そうだといいけど…。」

「冒険かぁ。」

しばらくの沈黙の後、ギコが呟いた。その声は、不安とうれしさが混じったような感じだった。

「俺、冒険とかに憧れてたんだよ。自分はなんで生きているのかとか、
そういうのが分からなくて…。でも答えが見つからない。だから、答えを探したいなぁと思って…。」

ギコはそこまで話すと少しの間、何かを考えていた。そして、

「探してみせるぞゴルァ…。」

そう呟くと眠りに落ちてしまった。




ー翌日ー
「ファ~ァ。おはよう…。」

そう言ってゼルエルが部屋に入ってきた。

「冒険の準備だ!!」

いきなりそう叫び、2人を叩き起こした。

「何だよいきなり!!」

ギコがそう言うなり、ゼルエルはこう返した。

「冒険に危険は付き物なんだ。だから仕度はちゃんとしておかないと。
つー事で町まで行くぞ!!」

「町って…。この辺見渡す限りの草原だぞ!?」

「うん?まぁ。町まで30キロあるがな。」

「30キロって…」

(いきなり大冒険の予感…。)

こうして3人は、広大な草原を突っ切り、町まで行くのだった。


事の一部始終を知ったギコとしぃ。

そして3人は、長い旅に出る為の準備の為に、ゼルエルの家から

1番近く(といっても30キロ)にある町へ向かっていた。

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第3話 ~Darkness~


「はぁ…。どれくらい歩いたんだ…。」

ギコがため息まじりの声で言った。

「う~ん10キロ位かなぁ。時間にすると2時間半。あと2/3。大した事無いさ。」

それに比べ、ゼルエルは余裕綽々といった感じだ。

「もしかしてゼルエル君は、買い物の度に町まで?」

「 うん。そうだよ。ま、週に1回位だけどね。」

そんな感じで話していると、何やら雲行きが怪しくなり、黒い雲が空を覆った。

黒といっても、雨雲のような生易しい黒ではない。闇そのものような、人を不安にさせる黒だ。

「まずいな…。こんなときに…。」

ゼルエルはそう呟くと歩くスピードを速めた。

「どうしたの?あの雲は何?」

「ん……。あれは…。」

そこまでいうとゼルエルは言葉を詰まらせた。そしてもう1度ゆっくり口を開いた。

「あれはダークネスという組織の、上級魔物が来るときに出る雲だ…。まあいい。急ぐぞ!!」

(組織?魔物?何だろう…?)



雲が出てから、30分ぐらいたった。

ギコたちはペースを緩めず、町へ向かっている。

「30分くらい走ったのに疲れが少ないな?これも力の影響か?」

ギコがそう言った時だった。

不意に、地面が割れ、1本の巨大な花が現れた。

その花は生きているようで、牙がある。神話に出てくるような人食い花といったところか。

「来たか…。2人とも離れろ!!」

そう言うと、ゼルエルはどこからか巨大な鎌を取り出し、人食い花に向かって構えた。

そして一気に、人食い花に接近、鎌を振り下ろす。

ズサァ!!

鎌は見事、人食い花の頭の部分に命中した。 崩れ落ちる人食い花。

「ふぅ…。まさかこんなに早くダークネスがここまで来るなんて…。」

ゼルエルはかなり動揺しているようだった。

「さっきからいってるダークネスっていったい…?」

「ダークネスというのはこの世界を巣食う巨大な組織の事さ。
最近は規模を広め、いろいそなところを侵略している。まだこの辺は安全だと思っていたのに…。こんな事なら君たちに「力」の使い方を教えておくんだった。
ほら、昨日水晶玉によって自分に眠る力を確かめたろ?それにも使い方があって…。でも危険なものなんだ。使いこなせるかどうか分からない。だから…。」

そう言ったまま、ゼルエルはしばらく黙っていたが、何かを考えながら問いかけてきた。

「君たちに戦う覚悟はあるか…?」

2人はいきなりの質問に少し戸惑っていたようだが、少しするとギコが口を開いた。

「俺には戦う覚悟はある!だからその力の使い方を教えてくれ!!」

「私も!」

ゼルエルはこの答えを待っていたかのように頷き、「力」の使い方を二人に教えた。


「大切なのは、力のコントロールをイメージする事だ。魔法ならどんな魔法か、武術ならどんな技かをだな…。」

そう教えている最中に、巨大な地震が起こった。

地震はしばらく続き、地震発生から数分経ったとき、地面が割れ、今度は巨大な岩の魔物が現れた。高さ5メートルはある。

おそらくこれがゼルエルのいう上級魔物だろう。

「これまたバットタイミングだな…。」

「今ゼルエルが教えてくれた力を使って…。」

「でもまだお前は完全に力を制御出来ない!!ここは俺に任せて…。」

「でもあんなのお前一人じゃ無理だぞ!?」

そう言い合っているうちに、どんどん岩の怪物は近づいてくる。

「……分かった。試してみるんだ!!俺も一緒に戦うから安心しろ。」

ギコは大きく頷き、両腕に力をため、それを怪物に向かってはなった。

「くたばれゴルァ!!」


ドゴォォォォン

「やったか!?」

怪物の背中に命中した光弾は爆発とともに煙を上げた。

しかし、爆風の中から出てきたのは、全くの無傷の怪物だった。

「クソッ!!全く効いていねえ!!」

「あの体には、並の攻撃は効かないのか!?だとしたら俺の鎌も跳ね返される…。」

全く攻撃が効かない敵に、どう立ち向かえばいいというのか。

3人とも攻撃をよけるばかりだ。まさに絶体絶命といった状況か。

「そうだ!」

ゼルエルが何かひらめいたように言う。

「この近くに、湖がある。そこまであいつをおびき寄せ、底に沈めれば勝てるかもしれない。」

「……。分かった、それなら私が…。」

しぃはそう言うと、小さな火の玉を岩の怪物にぶつけ、怪物の注意を引きつけた。

「お、おい!!無茶をするな!!その力を使うのは初めてなんだし…。」

「それはギコ君も一緒でしょ。それにしゃべってる暇があったら怪物の誘導を伝って!!」 

「………………………。」

もっともな意見だと思ったのだろう。ギコは何も言わず、しぃを手伝い始めた。



「見えた…!湖だ!!」

戦う事30分。やっと湖に着く事ができた。

3人ともかなり疲れていて、そろそろ限界だろう。

「もう体力が持たない…。一気に湖に落とすぞ!!」

ゼルエルがそう叫ぶなり、3人は技を叩き込んだ。

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

3人の合わせ技は、怪物の横腹に命中した。

それと同時に怪物はよろめき、少し湖の方に傾く

「もう1発だ!!」

ギコは腕から光弾を、しぃはさっきより大きな火の玉を、ゼルエルは鎌から衝撃波を怪物に向けて放つ!!

ドゴォォォォン

3人の攻撃は怪物の横腹に命中、爆音とともに、岩の怪物は横転し湖に沈んでいった…。

「やったぜ!!」

「勝った……。」

そう言うと3人はその場に仰向けに倒れ込んだ。

暗雲に覆われていた空も星が見えるほどに晴れている。

「疲れたぁ…。」

「これなら君ら2人、この先の旅も心配する事無いな。てか俺、もう体力が限界だ…。今日はここで休もう…。」

「うん…。」

3人は一瞬にして、湖の横の星空の下で深い眠りに落ちた。

相当疲れたのだろう。

何十分もあんな怪物を相手にしていれば無理もないが。



こうして、初バトルにして上級魔物を葬ったギコとしぃ。

しかし、まだ始まりに過ぎない。上級魔物だってまだまだ居るはずだ。

さて、2人(と行方不明の2人)の運命やいかに・・・?

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4話 ~brain wash~


「おーい。準備はできたかー!?」

ゼルエルの声が下の方から聞こえる。ここは、ビリジアという町の宿屋だ。

そして、ギコとしぃが居るのはその宿屋の2階。

ゼルエルが居るのは、1階。ゼルエルは早起きして色々準備していたらしい。

ギコたちは町にたどり着き、買い物を済ませ、旅の支度をしているところだった。


「ちょっと待って……。まだ、荷物を詰め終わってない!」

「次の町、ガレメントまで少し遠いから、早めに行った方がいいぞ~。」

時計の針は、丁度正午を指している。

1番近い町までは、40キロあるらしく、歩いて10時間ほどかかる。

今、町を出れば夜10時には着く計算になる。


「準備出来たよーーー。」

しばらくして、しぃがそう言った。

「よし、じゃあ下に来い!!」

2人は旅に出る割には小さい荷物を背負って、1階に下りてきた。

「うんうん。じゃあこれは俺からの餞別だ。」

「え…!? 餞別…。てことは、ゼルエル君は一緒に来ないの!?」

「うん。あの家をおいて行く訳にはいかないしな。まあ、素手であれだけ戦える君らなら、何とかなるって。で、これが餞別。」

そう言うと、ゼルエルはどこからか大きな、細長い箱を取り出した。

「言い忘れてたけど俺の特殊能力は物体移動。あらかじめマークをしておいた物を、好きなときに自分の所に呼び寄せられる。その逆に、マークをしておいた場所に、物を転送する事もできる。ま、それは置いといて……。」

ゼルエルはその箱を開ける。すると中から、剣と杖が。

それと何かの機械が出てきた。

「はい、ギコには剣、しぃちゃんには杖。それとこれは通信機。これがあれば、そこに登録した色々な人と話せる。」


「……ありがとう。こんな色々…。」

「うん。まあ気にするな。俺の家町から遠いから、君ら初めての友達だし。このまま別れるのは惜しいからね。」

ゼルエルはそう言い、2人の背中をポンと押した。

「さあ、そろそろ行った方がいいぞ。今日の夜に町に着かないと。真夜中は凶暴な魔物が多いからな。」

「おう!!分かった!本当にありがとうな!」

そう言って、ギコとしぃが宿屋から出ようとした時だった。


ズガァァァァァン

いきなり、外から何かが爆発した音が聞こえた。

音はかなり大きい。おそらく近くでの爆発だろう。

「何だ!?」

3人とも、急いで宿屋の外の出た。

やはり爆発が起こったらしく、宿屋近くの建物が倒れている。

そしてその周辺は、土煙で曇っていた。

「いったい何が起こったんだ…?」

しばらくすると土煙が晴れた。するとその中には、見覚えのあるAAがハンマーを持って立っていた。

「そんな…。」

「モララー!?」

なんとその中から出てきたのは、こっちの世界に来てから行方不明になっていた、
2人の友達であるモララーだったのだ!

「彼が、こっちの世界に来てから行方不明になっていたという仲間の…。」

「モララー!!これはお前がやったのか!?」

「モララー?知らないな。確かに、これをやったのは俺だがな。」

記憶を失っているのだろうか。2人の事を全く知らないといった様子だ。

「なんでこんな事を…。」

「それは、ダークネス様の命令だからだ。『町の人間を皆殺しにし、町を破壊し、使えそうな物資を奪ってこい』というな。だからお前らも殺す…!」

そう言うと、腕に持ったハンマーを振り上げ、ギコたちに襲いかかってきた。

「何を…!」

とっさに剣で防ぐギコ。しかし、ハンマーの重みに今にも押しつぶされそうだ。

「モララー!!何すんだ!!やめろゴルァ!!」

「だから俺はモララーじゃない!」

そう叫び、モララーは、空中に飛び上がる!

そして空中から、ハンマーを思いっきり地面に叩き付けた。

「グッ!!」

それに応戦し、ギコは剣から光球を放つ!!

光球とハンマーは、ぶつかり合い、空中で爆発を起こした。

「ギコ君!!」

「ギコ!!」


爆発による煙が晴れる。中からは、傷ついたの2人が姿を現した。

(なんて威力だ…。このままじゃ体が持たない……。)

「少しはやるようだな…。」

そう言って、モララーはニヤリと笑う。

むこうも傷ついてギコと同じくらいボロボロのはずだ。なのに何故…?

「バリアブルロッド、ソードモード!」

そう言うと、彼が持っていたハンマーは、大剣に姿を変えたのだ!!

「どうだい?面白いだろう?」

不気味にそう呟くと、剣を構えた。

「これで終わりだ!死ね!!」

モララーが大剣を大きく振ると、剣の先から衝撃波が放たれた。

ギコに向かって突き進む衝撃波。こんものが当たったらひとたまりも無い。

(体が動かない…!!クソッ!!)


ガキィン!!

ガラスを固いもので殴ったような音がした。外れたのか、防いだのか、どちらにせよ、人が切れたような音ではない事は確かだった。

「ふぅ…。よかった。大丈夫?」

なんとギコの前には、しぃが立っていた。

しぃは光の壁を作り、衝撃波を防いだのだ!

まさに間一髪といったところか。

「ごめんごめん。あまりにも素早い戦いだったから入り遅れちゃって…。」

「クッ…。防がれたか…。ならもう1度撃つまでだ!!」

そう言い、衝撃波を乱射する。

「このままじゃシールドが持たない!!今のうちにあいつを… モララー君を止めて!!」

「分かった!!」

大きくジャンプするギコ。それと同時に、空中で剣を構え、力をためる。

「何っ!?」

「おりゃぁぁぁぁ!!」

叫び声とともに剣を振り下ろし、巨大な光球を放つ!!

一筋の閃光はモララーに向かって一直線に落ちて行った。


ズガァァァァァァン!!

建物が壊された時の音よりも大きな爆発音が、町中に鳴り響いた。

土煙の中からは、間一髪で避けたようだが、衝撃で吹き飛ばされひざまずいてるモララーが出てきた。

「グッ…。覚えてろよ…。この借りは必ずどこかで返してやる……。」

そう言い残し、モララーは闇の中に消えていった。 




「モララー君、本当に記憶をなくしちゃったのかな…。」

しぃが悲しそうに呟く。

「洗脳だ…。」

今度はゼルエルが呟いた。

「洗脳…?」

「ああ、おそらく…。奴、目の色がおかしかった。記憶を失って、ダークネスに色々教え込まれたのなら、正常な状態のはず。でもあいつは違った。」

その後、少しの沈黙が続いたが、その沈黙を破り、ギコが言った。

「旅の、仲間を捜し、元の世界に戻る事意外の目標ができたぞ…。
それは、モララーを正気に戻し、ダークネスをぶっ倒す事だ!!」

「私も賛成!!」

「そうだな…。ダークネスは許せない…。でも、もう2時だし、今日は町に行かない方がいい。今から行くと真夜中になっちまう…。」

確かにそれは正論だった。2人とも、戦いで疲れているという事もある。

「でも、こうしてる間にも、ダークネスの破壊活動は進んでいる…。もたもたしては居られない!!」

ギコが強い口調で叫んだ。

「うん。やはり止めても無駄だとは思っていたけど。よし!好きにしろ!それはギコが決める事だ。いざという時は通信をくれれば役に立てるかもしれない…。」

「……ありがとう。」

「おう!今度こそ本当にさよならだな。でもこれだけは約束してくれ。必ず生きて元の世界に戻るという事を!」

「分かった!本当にありがとう!!」



こうして2人は、ビリジアを後にした。ゼルエルと約束を交わし…。

それと同時に、”大冒険”の火蓋は切って落とされたのだ。

さて、これからどうなる…?
 
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5話 ~Brother~


ビリジアを出てから、5時間が経った。

5時間も歩いた事と、前の戦いの疲れのせいで、歩くペースも落ちてきていた。

「疲れた~。ていうか今もう7時だよ…。暗くなってきたし…。」

暗いと言っても、まだ薄暗いという程度のものだった。

こっちの世界は夏なのか、日が長い。

「後半分。早めに街に行っちゃって、宿屋で休もうよ。」

「そうだな…。」

その後、しばらく会話が途切れた。

これも疲れているせいだろう。


ピリリリリリリリリ

不意に、旅立つときにゼルエルからもらったギコの通信機が鳴りだした。

「ゼルエル君からかな?」

しかし、その通信気から聞こえてきた声は、ゼルエルのものではないが、
聞き覚えのある声だった。

「もしもし…。」

「!!」

「久しぶり!!でも無いか…。2日ぶりくらいモナ。」

「その声は、モナー!?よかった…。生きてたのか…!」

そう、通信機の中から聞こえてきた声は、紛れも無いモナーの声だったのだ!!

「でも何で俺の番号を…?」

「詳しい事は後。今ギコとしぃが向かっている町の途中に、『荒野の酒場』という名前の酒場がモナ。そこに来てほしいモナ。」

「わかった!すぐに行くぜ。」

そう言うと、ギコとしぃは、疲れを忘れたかの様に走り出した。

「モナー君……。生きてたんだね。」


1時間位走っただろうか。それなのに2人ともペースを緩めようとはしない。

ギコ達の「力」は、何かの気持ちが強いほど、その効力を増す。

おそらく、早く友達であるモナーに会いたいという気持ちが、2人の力を上昇させたのだろう。

「あれだ!!」

ギコが叫び、前の方に指を突き出す。その指の先には1軒の小屋があった。

その小屋とは、通信機でモナーが話していた、『荒野の酒場』だった。



ガチャ!!

ギコは、勢いよくドアを開ける。

そのドアの先には、この店の店主であろう人物と、正真正銘、本物の、モナーが立っていた。

「思ったより早かったモナ~。」

「はあはあ。走って…来たからな…。」

「まぁ、2人とも座るモナ。今日はここで夜を明すモナ。外は危険だし。」

かなり落ち着いた様子で、モナーは話していた。

「よかった~。モナー君。生きてたんだね。」

「うん。運良く、親切な人に助けてもらったからモナ。」

「にしても、なんで、俺の通信番号を知ってたんだ…?」

「ああ。その事か。それは……。」


しばらく3人の会話は続いた。モナーの話によると、モナーを助けた人は、
ゼルエルの兄で、通信により、モナーが2人の”行方不明になった友達”
だという事を知り、ギコの通信番号を教えたそうだ。

「そう言うことだったのか…。じゃあ、そのゼルエルの兄に当たる人って言うのは…?」

「うん?目の前にいるモナよ。ね、マスター。」

「ははは。うん。分かってるだろうが、俺がゼルエルの兄。レリエルだ。よろしくな。」


このような調子で4人は1晩中話し続けた。

ギコとしぃは、モララーの事を、モナーとレリエルは、モララーが言っていたダークネスについての事を話すと言った具合だ。

他にも色々な話をしたが、モララーについての事は何も分からなかった。

新しく分かった事と言えば、モナーの得た能力の事だけだった。

「ふ~ん。てことは、お前もあの水晶を…?」

「手をかざしてやるやつモナ?やったモナ。モナはパワー強化系。」

そう言うとモナーは、そこら辺に落ちていた木の板を握りつぶしてみせた。

「凄いな…。俺は特殊で…。」





夜が明けた。4人とも机に倒れ込んで眠っていたのだが、店の窓から入ってきた光に当たって目を覚ました。

「ん…。もう朝か…。」

最後にギコが目覚めた後に、レリエルは3人に問いかけた。

「これから街に行くんだろう?」

「そうだけど…。」

ギコは眠そうにして答える。

「最近はダークネスの軍団がここまでやってくる事もあるから気をつけるんだぞ。
それと、朝飯はここで食っていけ。まぁパンくらいしかないけど。」


朝食を済ませた3人は、レリエルと共に外に集まった。

「なんかゼルエルとレリエルの兄弟には最後までお世話になりっぱなしだったな…。」

「うん?気にするなよ。その辺はお互い様だ。町まではここからだと3キロほどだ。まぁ近いから大丈夫だろ。」

「ありがとう!」

「困ったときはいつでも通信くれよ。」


 
こうして3人は、ガレメントまで出発した。

「なんか空が暗いなぁ。」

しばらく歩いたときに、モナーが言う。確かに雲行きが怪しい感じだ。

「雨でも降るのか?じゃあ急がないとな。」

(この雲は雨雲って感じじゃない…。まさか…!)

しぃがそう思った瞬間だった。雲がだんだん広がり、空全体を覆った。

そう。それはあのときと同じ、”闇”そのものという感じの雲だ!

「危ない!!」

しぃがそう叫ぶのと同時に、空から巨大なエネルギー弾が3人に向かって落ちてきた。辛うじてよける3人。

「何だ!?」

「フフフ。よく避けたねぇ。」

どこからか不気味な声が聞こえる。その声からは余裕のようなものを感じられたが、大きな威圧感がある。

「じゃあ姿を見せてあげるよ。ほんとは姿を見せちゃいけないんだけどねぇ。
まぁ、君たちはどうせここで死ぬから。」

声の主がそう言うと、闇の雲から1筋の青い光が降り注ぐ。

その光の落ちた先には、羽の生えた1人のAAが立っていた。

「初めまして。僕はザドル。ダークネス様の幹部って言ったところかな。」

「ダークネス…。お前らの目的は何だ!?」

「決まってるじゃないか。この世界をダークネス軍団だけのものにする事さ。おっと、おしゃべりが過ぎたかな。悪いけど君たちには死んでもらうよ。ロックラー(3話に出てきた岩の怪物)を倒し、あの新入りを撃退するほどの力を持った奴に生きてられると厄介だからね。」

そう言うと、ザドルは両腕に青いエネルギーをためる。

じゃあね。

ザドルは冷たくそう言うと、それを地面に向かって叩き付けるように落とした!



ズガァァァァン!!

爆音とともに砕ける大地。3人の姿は、土煙によって見えなくなってしまった。

大地とともに砕けてしまったのだろうか!?

3人の運命は……?

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6話 ~Pirate~



ズガァァァァァァァン!!

ザドルの放った光弾に飲み込まれた3人。

しばらく地面は土煙に覆われていた。それほど爆発が強かったという事だ。

普通なら跡形も無く消えてしまっているだろう。

しかし、晴れた土煙から出てきたのは、無傷の3人と、もう1人の誰かだった。

「……生きてる…?」

ギコ閉じていた目をゆっくり開けて言った。

「間一髪だったな。」

そう言ったのは、巨大な鉄球を持った大男だった。顔には大きな傷がある。

「あなたは…?」

「詳しい話は後だ。今はこいつをぶっ倒すんだろ。力を貸すぜ。」

大男は低い声でそう言うと、大きく跳躍し、鉄球をザドルに向かって振る。

その重そうな体と、巨大な鉄球を手に持っている事からは想像出来ないほどのジャンプ力だ。3人は、ただ者ではない、そう確信した。

大男が攻撃を撃てば、ザドルが避け、ザドルが攻撃を撃てば、大男が跳ね返す。

まさに、一進一退の壮絶な戦いだ。

「クッ!」

ザドルがよろめき、体勢を崩す。しかし、それを一瞬のうちに立て直し、それ高く舞い上がった。

「とんだ邪魔が入ったな・・・。」

ザドルはそう言うと、腕を横に広げ、黒い穴を空中に作り出した。

そしてその穴の中に飛び、消えていった。


「逃げられたか・・・。」

大男が言う。大男の鉄球には、大きな焦げ跡がついていた。

恐れくこれで、あの光弾を跳ね返したのだろう。やはりただ者ではない。

「助けてくれてありがとう……。あんたは誰なんだ?」

「詳しい話は後だっていってるだろ。とりあえずお前らは俺についてこい。」

半ば強引に、3人は大男について行かせられた。

しばらく無言のまま歩いていたが。大男が口を開いた。

「おっと。紹介が遅れたな。俺の名はガウン。」

大男に続いて、3人が口々に自己紹介をした。

「私の名前ははしぃ。」

「モナはモナー。」

「俺はギコ。なあ、ガウンさん。何が目的で俺たちを…。」

「それはそこに行けば分かる事だ。」

そういって、ガウンが指を差した先には、海が広がっていた。

「海…?」

「よく見ろ。ほらあれだ。」

そういってもう1度指を差した。その先には遠くてよく見えなかったが、1艘の船があった。




「船長。連れてきたぜ。」

ガウンに連れて来られた船には髑髏マークの旗が広げられていた。

恐らく海賊の船だろう。

3人は何が何だかよく分からないようで、混乱しているようだった。

「ご苦労。おまえはもう下がってていいぞ。」

ガウンが”船長”と呼ぶ人物が口を開いた。

「まぁ、君たち。楽にしたまえ。」

そういうと、船員がイスを3つ持ってきた。かなり厳しい船長なのか、
少し指示をするだけで、部下が動く。この人もただ者ではない。

「君たちにここに来てもらったのは、君たちは『ダイヤモンドの原石』
だからなのだよ。」

「?」

3人は首をかしげる。

「例えが遠回し過ぎたかな。私は昨日、『第2の世界』から人が来たという噂を聞いた。そしてその人間は、たった2日で、ダークネスの幹部を2体撃退した。それは君たちなのだろう?」

「ずいぶん情報が速いな…。」

「まあ、優秀な部下のおかげとでも言っておこうか。もう1度聞くが『第2の世界』から来たのは君たちなのだろう?」

「それはそうだけど…。だからどうしろと?」

「話は簡単だ。仲間になれ。」

余りにも予想外の答えに、驚きを隠せなかったようだが、冷静さを取り戻し、
質問を返した。

「何故モナ?この海賊には、ガウンさんみたいな強い人がたくさんいるのでしょう?なのに何故モナ達を仲間に?」

「それはおまえらが『第2の世界』の人間だからだ。その世界から来た人間は、
能力の伸びが早い。そして、強力な特殊能力を持っている事があるのだよ。
まだ能力が目覚めていない事の方が多いが。磨けば磨くほど輝くダイヤモンドのように、努力次第でその能力は開花する。で、どうなんだ?」

「この海賊の目的は…?」

「決まってるだろう。海賊と言えば世界中の宝を探す事。それともう1つ。この事については聞かないでくれ。」

ギコは悩んだあげく、2人と相談しだした。

「まあ十分に悩んで答えをくれ。後1時間待とう。それまで私は席を外す。」

そう言うと船長と呼ばれる人物は部屋から出て行った。



3人は早速相談を始める。

「何か怖そうな人モナ。」

「でも俺はあいつらの金稼ぎを手伝うつもりはねーぞ!?」

「でも仲間になっといた方がこの先安全かも…。」

3人は決められない様子でいた。苦渋の決断というやつか。

それでも時間は過ぎてゆく。



それから1時間が経った。それと同時に船長が入って来る。

「決まったかね?」

3人は1時間の間に決意を固めたらしく、船長に向かって頷いた

「君たちの答えは…?」

「せっかくだが…。」

ギコが口を開く。

「せっかくだが断らせてもらう。俺らにも仲間を戻し、ダークネスを倒すという目標がある!だから…。」

「フフフフフフ…。ハッハッハッハッハッハ…。」

ギコがそこまで言うと船長が狂ったように笑い出した。

ギコ達3人は何が何だか分からなくなり唖然としている。

(気にさわったのか…!?)

「フフフ…。いいね。その答えを待っていたよ。合格だ。」

やはり3人は訳が分からないと言ったような表情で顔うを見合わせた。

「俺らは海賊に入るとは言ってない…。」

「まあ、落ち着いて話を聞け。」

ギコはおめえが落ち着けと言いたかったが、殺されそうなので止めた。

「私はもう1つ目標があると言ったよな?」

ギコとモナーはそれがどうかしたのかという表情で見ていたが、しぃは何か感づいていた。

「もしかして…?」

「気付いたか?勘がいいなお嬢ちゃん。その目標って言うのはダークネスを倒すと言う事だ。どうだ?お前らも同じだろ?その気になれば奴の基地にだって連れて行ってやる。」

「でも悪者と組むなんて…。」

ギコは船長の目の前で「悪者」と言ってしまいハッとしたが、これにも船長は笑って答えた。

「ここをそこらの海賊と一緒にすんな。狙うのは無人島や金持ちだけ。その宝の半分はここいらの町に寄付する。まあ金持ちだろうが無人島だろうが物を盗むのは犯罪だがなぁ。」

見かけによらずこの船長は人が良さそうだ。しかし、まだギコは信じきれていないようだ。

「そんな証拠がどこに…。」

「待ってギコ君。」

ギコがそう言いかけたところにしぃが割って入る。

「何だよ…。」

「これを見てよ。」

しぃは通信機を突き出しギコに見せた。

どうやらこの通信機はパソコンとして使えるらしく、何かの記事が載っている。

そこには、『正義か?悪か?噂の海賊団』と書いてあった。

記事の中を詳しく見ると、船長が言っていたとうりの事が書いてある。

流石のギコもこれは信じざるを得なかった。

「……疑って済まなかったな。船長」

「フフ…。『船長』ってことは入団認めるのか?ギコ君?」

ギコは船長を「船長」と、船長はギコを「ギコ」と初めて呼んだ。

お互いを認め合ったという証拠だろう。

「で、他の2人は?」

船長は一応2人にも問いかけた。

帰ってくる答えはだいたい予想がついていたが。

「私も入団する!」

「モナもモナ!」

「決まりだな…。お~い。ギコ君としぃ君モナー君を部屋に案内してやれ!」

そう言うと下っ端らしき人が飛んできた。

「あと、案内した後に全員に入団パーティーするぞって伝えとけ。」

「は!了解しました!」

「入団パーティ!?」

「この海賊のしきたりだ。2時間後に来いよ。」




ギコ達は今まで抱いていた海賊のイメージがすっかり変わってしまった。

「船長いい人だモナ。」

「そうだな…。って町には行かなくっていいのか!?」

それは正論のように思えたが、よくよく考えると大した問題ではない。

「情報収集の為に町ヘ行くんでしょ?ならここに居たって同じじゃない。」

(しぃにはかなわねえな…)

ギコ達の居る部屋は船の2階。

階段から足音が聞こえる。

「誰か来たモナ。」

「おい、お前ら!パーティーだぞパーティ。はやく来いよ。」

ガウンがドアをいきなり開けて叫んだ。

俺も早く行きてぇんだ、早くしてくれ。と言ったような表情だ。

「今行く!」



3人が降りた頃にはパーティは始まっており、みんな机の上に所狭しと並べられた食べ物にかぶりついている。

船員たちはギコ達を見ると、
「お前達が新入りか。よろしくな!」
「仲良くやって行こうぜ!」

等と軽く挨拶をするだけで、後は食べてばかりだ。

「………………………。」

ギコ達は何か変だなぁと思いつつも、とりあえずパーティーに参加した。

とても気楽なムードが漂っている。それは、こいつら本当に海賊か?と思うくらいだった。

「ま、いつもの事だ。気にするな。俺はちょっと忙しいんで席を外すぜ。」

ガウンはそう言うと部屋を出て行った。

よく見ると船長が居ない。船長もガウンと一緒だろうか。

「ま、今日はパーと。ね♪」

しぃがそう言うと2人は笑顔で頷いて、並べられた食べ物を食べ始めた。






「船長。」

「ガウンか。遅かったな。これで幹部は全員集まったか。」

海をバックにこの海賊の「幹部」が集まった。

ガウンもその一人のようだ。

船長とガウンの他に3人居る。

「『彼ら』はとりあえず仲間になった。」

「あの少年少女達ね。にしてもここ寒いわね。」

赤っぽい色をしたAAが愚痴っぽく言った。

腰には鞭をつけている。

「まあ、しょうがないだろ。この船狭いし。」

今度は体中傷だらけの、背中に槍を持ったAAが言った。

顔はモナーのようたれ目だ。

「ウィルト。それを言っちゃおしまいだろうが。」

サングラスをかけ、腰には2丁のリボルバーをつけた、体の白いAAがあきれたように言う。

「ま、まあ無駄話はそのくらいにしといて…。明日からどうするか?我々は『彼ら』を強くせねばならん。この星の未来の為にもな。という事で、3人にはそれぞれ担当をつける。」

「1人余りかよ。めんどくせぇな。俺余りでいいや。」

サングラスの男はやる気無げに言う。

「まぁ、ガルガンダはピストルだしね。あの中に適性の子は居ない。」

「キュリアスは?」

ウィルトがキュリアスに振った。

「私は女だし、しぃちゃんを教えたいけど。」

「あの女の子、杖持ってたぞ?お前魔法できないだろ。」

「ジャアソイツ、オレガ教エルカ?」

どこからか声がしたかと思うと、鷹ほどの大きさのある鳥が船長の元に舞い降りてきた。

「フラク。ずいぶんと早かったな。」

「お前がいたんだっけね。天才魔導師と恐れられた。」

「ごもっとも。」

そう言うと鳥は若いAAに姿を変えた。

「たく、鳥の体と話しづらいのなんのって。」

「まあだいたい役割は決まったな。フラクとキュリアスがしぃ君を。ガルガンダとガウンがモナー君を。ギコ君はウィルト…。」

「俺1人で教えんの?」

「1人余ってるだろう?私だよ。」


「「「「「!?」」」」」

「フフ…。今日これにて解散だ。明日から忙しくなるぞ…。」

船長はそう言うと自分の部屋に戻って行った。


幹部達はしばらくその場で黙っていた。

「ギコとか言う奴…。大丈夫かなぁ…。」

「久々の『地獄の特訓』だね。気を使ってやれよ?ウィルト。」

「あ…。ああ。分かってる。でも俺の出番なさそうだな…。」

船長の特訓は相当厳しいのか、ギコと船長の事を話している。


「まあ、ここで話しても仕方ない。ギコ君の事はお前に任せた!さて、みんな明日は早くなるだろうし、部屋に帰って寝なよ!」

キュリアスはそう言っウィルトの背中をポンとたたくと自分の部屋に帰って行った。

他の幹部達もそれもそうだなと思ったのか自分の部屋に戻って行った。
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7話 ~Special training~

かくして海賊の仲間になったギコ達。その気になればダークネスのアジトにも連れて行ってくれると言う。

ギコ達のも希望の光が見えてきた!

それにしても地獄の特訓とは…!?

「起きろお前ら!!」

ギコ達の部屋に若いAAのが響き渡った。

「う~ん。」

しぃが目をこすりながら体を起こす。

モナーとギコは相変わらず爆睡している

「何ですかぁ…?」

半分寝ぼけた感じでしぃが言うと、傷だらけの男はそれに返した。

「え~と。そこの2人も起こして!これから行く所があるからね。」

しぃは何だろうといった顔をしていたが、素直にそれに従い2人を起こした。

「お~い。ギコ君、モナー君起きて!」

「う~ん。何だよぉ…。」

「モナ?」

「やれやれ…。やっと起きたか…。あ、申し遅れたけど俺の名前はウィルト。
この海賊の幹部ってとこかな。」

ウィルトは簡単に自己紹介をすると、手で付いてこいという素振りをしてみせ、階段を下りて行った。

ギコ達はこんな早くからなんだと顔を見合わせたが、船長が命令したのかと思い、遅れてウィルトについて行った。

「やれやれ…。やっと来たか…。」

船の外に5人のAAが並んでいた。

その中の2人はガウンとウィルトだ。

5人はギコ達に向かって自己紹介をした。

ギコ達3人もそれに返すように自己紹介する。

「とまあ、自己紹介は終わりにしてと…。」

サングラスをかけたAAが言う。

「今君等に集まってもらったのは、特訓の為だ。」

「特訓!?」

「うん。だってこのままダークネスを倒せると思っているのか?奴らは強いぞ。」

ギコ達は、この前ザドルと言う奴に力を見せつけられたのでそんな事は分かっていた。

いきなり特訓と言われたので驚いたのだろう。

「確かに強くならなきゃ行けないしな。で、どこでやるんだ?」

「場所は後で教える。」

そう言うと、ガウンは昨日会議で決まった割当を一部を除いて3人に話した。

「モナーはガウンさんとガルガンダさん。しぃはキュリアスさんとフラクさん。
俺はウィルトさんってことか。」

「名前覚えるの早いな。まあ、だいたい分かってるみたいだし、各々の場所に逝くぞ。」

フラクはそう言うと、いきなり船から飛び降りた。

ギコ達は驚いて下を見たがフラクの姿が無い。

「落ちた!?」

「こっちだこっち!」

後ろから声がする。

ギコ達が振り向くと、そこには3メートルほどもある竜の姿があった。

「どぁぁ!!」

「何だモナ!?」

竜はゆっくり船に乗ると羽をとじ、話しかけてきた。

「驚いた?俺だよ。フラクだよ。目的の場所まで逝く為にちょいと変身したんだ。
キュリアスとしぃちゃん、乗りな。」

しぃは驚いて立ちすくんでいたが、ハッと我に帰り、竜の背中に飛び乗った。

続いてキュリアスも乗る。

「この体疲れるんだよなぁ…。」

そう言うと羽を広げ、飛び立った。

結構速いスピードで飛んで行く。

「じゃあ、俺たちも逝くか。」

しぃ達が見えなくなった頃にガウンが言った。

ガルガンダも頷き、船を降りる階段の方に歩いて行く。

モナーもそれについて走っていった。

「気をつけろよ!」

「オマエモナー!」






ー森ー

「ここどこだよ~。」

ギコがつらそうに呟いた。

1時間走っても大丈夫だったギコだが、今回は「力」が働いていないらしく、疲れるのが早い。

「もうすぐだぞ。お前のキャンプ場は。」

「キャンプ場!?」

「ああ。言ってなかったっけ。2週間は帰らないよ。」

かなり軽い感じで言われたが、ギコはかなり疲れたような顔をしていた。

「2週間って…。」

「ダークネスの力が広がりつつあるからな。急がないと。だから2週間の合宿ってわけ。さて見えてきたぞ。」

ウィルトが指差した先にはちょっとした広場があり、切り株が1つと、木で出来ている、古い小屋が1軒建っていた。

「予定ぴったりに来たな。」

古くなり黒っぽくなった小屋の中から誰かが出てきた。

「船長!?」

「さて、早速特訓といくか…。」

何やら船長の目が輝いている。

ただそこに邪念のような物は無く、単純に何かがうれしいと言ったような感じだ。

「俺の出番はもう無いかな。」

ウィルトはそう言い、切り株に座った。

ギコにはその意味はよく分からなかったが、船長と特訓を始める事にする。

「船長。特訓って何を…?」

「まず腕試しだ。真剣だと危ないからこれを使え。」

船長はギコの剣と同じくらいの大きさの、木で出来た剣を投げてよこした。

「私の武器は元々短剣だからこの棒で闘うよ。ルールは簡単。
お前が気絶する

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