- 52 :豆蔵 :06/03/18 01:45:05 ID:fohvaqQS
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はっとベッドから飛び起きたが、別段何も変わってはいない。
いつもどおりの朝日が僕の部屋全体を清清しく照らしているのに、何かが僕を落ち着かなくさせる。
さっきまで僕はたくさんの小さなものに囲まれている夢を見ていた。小さなものは小さいなりの動きで
地面を舐めているのだけれど、不思議と気味が悪いとは感じなかった。小さいものは白かった。
それらは少しずつ土の中にもぐっていき、最終的にはすっかり見えなくなった。
ここで初めて周りをぐるりと見回してみると、何本もの桜が怯えたような形相で僕を取り囲んでいた。
あの小さなものが僕の神経をわくわくさせるのだろうか。
いくら小さく丸まってみても、心のふくらみは抑えることができない。
落ち着こうとすれば落ち着こうとするほど僕は苛苛してどうにもならなくなる。
カーテンを開けると、遥かなる海原の彼方まで見渡すことができる。
いっそあの向こう側へ行ってしまおうか。それでも僕の足には根が生えたよう。
まるでここに永遠に立っていろと言わんばかりの様子だ。このままここで樹になってしまうのだろうか。
桜の樹の下には屍体が埋まっているなんて考えた小説家もいたけれど(彼は夭折した!)僕の下には何が埋まるんだろう。
あの小さな白いものは蛆だったのかもしれない。桜の樹の下の屍体を求めて群がった。
僕の足の下には何千何億もの死が埋まっているのだと、ぼんやり考えて、わざと床をどしどしと歩いた。
薬缶を火にかけて沸騰するのを待つ。待っている時間はむやみやたらに長い。
何度蓋を開けてもメダカの息のように小さな泡がぷつぷつ出ているばかりで、そこから進むことは
永遠になさそうだとすら思ってしまう。
それでも落ち着けない僕は足音を立てて台所を闊歩する。じっと座っていられないんだ。
我慢して止まろうとすると、叫びが喉から溢れそうになって、あわてて口を押さえたりする。
何が僕の心をこんなにざわつかせるのか。
春の強い風が梅の花を散らす。この時期はどこの家でも梅が咲いているのだ。瞬間、真っ白な花吹雪が街を覆う。
花吹雪の先から現れたものは、一羽の白い兎だ。梅の花びらよりも白い毛並みを春の日差しの中輝かせる大きな片目の兎だ。
あんなに僕を落ち着かなくさせていたもの、いたたまれなくさせていたもの。その正体がやっとわかった。
赤い瞳の彼がやっと街にやってきた。少しだけ冷たい風と梅の香りがそこらじゅうにあふれている。
世界に三月がやってきた。
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どうにも長い物語が書けません。
いつもこのくらいの長さの短編におさまってしまいます。
そのせいか物語の展開が早すぎてしまうのが今の悩みです。
どこに根本的な弱点があるのかいまいちつかみかねておりますので、
どなたかアドバイスくだされば幸いです。
- 53 :名前はまだ無い :06/03/18 11:30:17 ID:PTTZyfh1
- >>52
雰囲気が素敵。
展開が早すぎるとは、特に感じなかった。
内容と長さのバランスはちょうどいいと思う。
・主人公、変な夢を見て目を覚ます
・夢の回想
・理由は分からないが不安定
・春がきたからと判明
この粗筋なら、不安定な理由を探ろうと主人公が延々と思い悩むとか(純文風?)。
不安定な理由を「春が来ないから」に変更して、主人公が夢の世界で
三月ウサギを助けるために冒険するとか(児童文学風)。
作中時間が短いから、作品自体も短くなっている気がする。
イベントを詰め込め。
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