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  プロローグ

 静かなある小さな村にある、一つの不気味な屋敷。そこに入っていく一人の男がいた。
 「相変わらず汚いところニダね。親父もこんな所に閉じこめられていたとは…。」
 その男は、今は使われていない屋敷の暖炉に手をあてた。次の瞬間、ゴォォンっという音と共に、暖炉の中から階段がでてきた。地下に繋がっているようだ。
 男はゆっくりとその階段を下りていった。そして、そこにあった扉の前に立った。
 「親父…報告ニダ。親父の細胞で、新しい兄弟ができたニダ…。そいつの名は…。」
 そう言って男が扉を開けた瞬間だった。
 プルルルルルルル………
 男が持っている携帯電話が鳴り響いた。
 「誰だ?ラストじゃないか…。どうしたニダ?」
 「グリード!!大変よ!!!ラースがどこにもいないの!!!」
 「!!!馬鹿な!!ついさっき親父の細胞を入れたニダよ!?まだ歩けるはずないニダ!!!」
 「とにかく、今プライドとエンヴィーが探しに行ったわ!!私も、グラトニーと一緒に探しに行くわ!!」
 「分かったニダ!ウリも親父に会ったらすぐ探すニダ!!」
 そう言ってその男は携帯電話を切った。
 「……これはある意味成功作かもしれないニダ。親父…末の弟はとても元気がいいみたいだニダ……。弟の名は、『憤怒』のラース…。」
 男は部屋の中にある一つのカプセルの中を覗きながら言った。
 そのカプセルの中には、片翼のこの世のものとは思えない形をした生き物がそこにいた。
 そしてその生き物の入ったカプセルには、『憎悪』という言葉と十字架にかけられた蛇の紋章のようなものがあった………。
──────────────────────────────────



 一章 始まり

 明朝7時。とある喫茶店では、何やら騒がしい。
 「ぬおおぉぉぉぉ!!!やっべぇーーーー!!!」
 「ギコ!!朝から騒がしいモナよ!!」
 「そうだそうだ。うるさくて眠れないじゃんか!」
 騒いでいる少年の名は、ギコという。
 怒りっぽく、すぐ感情にまかせて行動にしまうが、とても心優しい16歳の猫AAだ。そして、彼の右眼には黒い眼帯をしてある。その怪我は、いつからできたのかは、本人は知らないらしい。
 「だってな~!!これからしぃと待ち合わせがあるんだよゴルァ!!!」
 「おっ、デートか?」
 「いいなぁ。モナも彼女が欲しいモナ…。」
 「無理無理(笑。」
 「なっ…何でモナ!?」
 「脳天気だからな。」
 「失礼モナよ#!!!」
 不毛な喧嘩をしている二人のうち、『モナ』と語尾に付けて言っている少年は、モナーという。
 脳天気な性格で、ほんとんどボケーッとしているが、頼まれた手伝いや仕事はテキパキこなす16歳の白い猫AAだ。
 そのモナーをからかっている少年は、モララーという。
 ギコやモナーとは一つ年上の青紫色の猫AAだ。常に物事を冷静に判断し、それに応じた行動や命令を出せる腕の立つ戦略家である。ただ、いたずら好きなのが玉に瑕である。また彼は、いつも両手に黒い手袋している。本人は、「火傷をしたから」っと言っている。
 そんな二人にかかわらず、ギコは出掛ける準備を進めていた。
 「えーっと…全部あるな。ところで、マスターは?」
 ギコは、赤いコートを着ながら言った。
 マスターとは、この喫茶店の店長である。
 「マスターなら、買い出しに行ったからな。」
 モララーが答えた。
 「まぁ、いいや。んじゃ、行って来るぞゴルァ!マスターには、6時頃帰るって言っておいてくれ!!!」
 「わかった。伝えておくモナ。」
 「行ってらっしゃい。」
 モナーとモララーは、手を振りながらあわてて飛び出るギコを見送った。

 ギコが大慌てで出かけていったときに、ある公園では一人の少女が誰かを待っていた。
 「う~ん…。ギコ君、相変わらず遅いなぁ…。」
 彼女はしぃ。あのギコを待っているようだ。
 おとなしい性格だが、明るい面も持つギコと同じ歳の桃色の猫AAだ。ギコ達とは、十年前からの友達である。
 彼女は、十五分前からギコを待っているようだが、そのギコは未だに来ないようだ。そんなときだった。
 「お~い!!しぃ~~!!」
 「あっやっと来た。おっそーーい!!」
 やっとギコが来たようだ。
 「ハァ…ハァ…。わりぃ…寝坊しちまった…。あー疲れた……。」
 「あはは、ギコ君らしいね。…ところで…。」
 「ゼェ…ゼェ…。な…なんだ…?」
 息切れをしているギコにしぃは尋ねた。
 「いつも赤いコート来ているけど…なんで?」
 「…フゥ…。ああ、なんかな。着ていないと落ち着かないってゆーかなんとゆーか…。それに、最近寒いし。」
 ようやく息を整えたギコは質問に答えた。
 「ンな事より、時間大丈夫か?もうすぐ電車来る頃じゃねぇのか?」
 「え?あーーーーっ!!!もうこんな時間!!!ギコ君、走るわよ!!!」
 「えぇぇ!!また走るのかよ!?!?」
 しぃに手を引かれながら、しぶしぶギコは走った。

 「で、今日実行なんだな…。時間は?…九時か。…あと1時間半後…。まぁ、いいだろう。…んじゃ。」
 そう言ってモララーは、携帯電話を切った。
 「誰と話していたモナか?」
 後ろからモナーの声が聞こえた。
 「ん?ああ、友達がある実験をするってさ。」
 「実験?」
 「ああ。でも、キミが思っているよりはあまり良くない実験だけどね…。」
 このときモナーは、恐ろしいことを考えてしまったらしい。口元を押さえてかがみ込んでしまった。
 「ま・・・まぁ、命に関わる実験じゃないから大丈夫だよ。ホラ、そんなことよりも早く店開けるよ。もうすぐマスターも帰ってくるしね。」
 「あっ!そうだったモナ!急いで準備するモナ!!モラも手伝うモナよ!!」
 「はいはいっと。」
 そう言ってモナーとモララーは、急いで店の開店準備にとりかかった。
 だがこのときから、モナーは何かを感じ取っていた。本当に恐ろしい、何かを…。

 続く

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