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銀吾郎妖魔活劇 (藤居 啓太)

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・・・狂気のごとく荒れ狂う嵐。どす黒く不吉な雲。身に降りかかる鋭く冷たい風。

いかにも凶事の前触れとも言うべき天候の中、峠道を、まだ若さを保っている男が、ひっそりと、幽霊のごとく気配を消し歩いている。

編み笠に、みすぼらしい服装だが、錫杖を手にし、殺意らしき気配と共に、どことなく不穏な感じが漂っている。

外見は、僧侶とおぼしき物だが・・・



・・・どうやら頂上に着いたようだ。

「聞こえるか・・・皆の衆、待たせたな。覚えているか。私は、西村乃博之御前(にしむらの・ひろゆきごぜん)だ。数百年ぶりだな・・・眠ってばかりで、身体がなまっておろう。」

こんな人っ子一人いなさそうな峠道の頂上に、しかも天候は最悪。なのに、彼は誰に問い掛けるのか。

「さあ・・・時は過ぎた。私自身、こんな毎日が同じことの繰り返しで・・・怠惰、退屈。この世はえーえーと呼ばれる者どもが、支配下にある・・・お前らにもそのことは承知であろうな。」

彼は、どうやらどす黒い雲の覆う空に向かって話し掛けているようだ。

周りから見ると、変人に見られるだろう。しかし、どことなく嬉しげな口調で、それでいて無表情に真剣な顔で問い掛けている。

まんざらふざけているわけでも、無さそうだ。

「お前らだって、本当は外で戯れたいはずだ・・・なのに、誰が抑制してきたと思う・・・?フン、そうだよな。私たちえーえーに決まっておろう。だから・・・」

眉間の皺がいっそう深く刻まれた。俗に言う、話している「つもり」の可能性は、もうほとんど無い。

「期間は限定するが・・・これから、この『門』を開放する。お前たちには、正直に、同情する。えーえーへの恨みもただならぬものであろう。だから・・・」

と、いきなり彼は錫杖を構えた。

そして思い切り空に向かって錫杖を一閃する。

「思う存分、暴れて来い!」

しばらく経ち、荒れ狂う天候と共に、奇怪なる、強烈な地震たるものが起こった。しかも、とてつもなく巨大で、地球の鼓動のようだ。

やがて、彼は峠の頂上を後にした。気配もまた消えたが、大きくため息をつきながら、脳内の霧を吐き出すように、ひっそりとまた歩き出した。

「・・・考えてみれば、妙な物よの。いつから、この世界はえーえーだけが支配権を握り、えーえーが世界で一番の権力者・・・なのだろうか。私が生まれてから数百年もの歴史を見てきたが・・・こんなに変わった生物は見たこともない。」


・・・そして、その空間には、一筋の雷鳴と共に、とても禍々しく、強大な渦が、おびただしい邪念と共に作り出されていた。




・・・そして10年後

「かーごーめー、かーごーめー!」

「こらーっ!ちび椎(しい)ー!あまり遅くならないうちに帰るのよ!」

「はーい!」

夕暮れ時。貧しく、小さいがとてものどかで、平和な村のことであった。

普通の平民以下とも言える住宅が並ぶ中、若い親子と見える二人が、子どもたちの遊びを見守っていた。


かごめ かごめ かごのなかのとりは

いついつ でやる

よあけのばんに

つるとかめが すべった

うしろのしょうめん だあれ


6歳くらいの子が、4人。

無邪気な声が、この村を飛び交う。見ている親の方まで癒されるくらいだ。

村人は、畑仕事に精を出している。貧しくても、これほどに陽気で、穢れの無い村は珍しい。

小さいだけに、村人の数も少ない。それだけに、人々の関わりは家族的でよき物だったのだろう。

「うしろのしょうめん、だ~あれ!う~んと・・・でぃちゃん!」

「・・・」

うしろのしょうめんの子の、名前こそ分からないが、オニの子の、ちび椎と呼ばれていた子の表情をみれば、当たったことは間違いなかった。

「わーい!でぃちゃんがオニー!さあ、もう一回!」

「・・・」

他の子どもは、皆が無邪気なのに、この、でぃちゃんと言うらしい子だけは、いつまでも寡黙・・・

他の子も、これには不満を覚えたらしく、皆で問い詰める。

流石に、何年もこの村で生まれ育った人々は、これから起こる事に感づいていた。

「しょうがないわね!もう一回わたしがオニやるから!しっかりしっかり!」

子供たちは笑顔を取り戻し、また始める。


かごめ かごめ


深い闇の中、どんどん感覚が自分の暗闇の中へ吸い込まれる。


かごのなかのとりは


どんどん堕ちるような、それでも、いつもと同じ、楽しみと同時に何かが浮かび上がる。


いつ いつ でやる


聞きなれた声。だが、何か気持ち悪い。このまま目を閉じるのも、何だか嫌になってきた。


よあけのばんに つるとかめが すべった


彼女は、なんだか恐怖心で一気に心は満ちていた。何が何だか分からない。でも怖い。

村人たちの、甲高い悲鳴ならぬ物に気づく。

目を開けてみよう・・・



うしろのしょうめん


振り向けば、


          


・・・・!!!!!!!

もう声も出なかった。さっきまで確かに存在したはずの親友の、変わり果てた姿。

彼女は、一気に血みどろの白骨へと化した。もう親友の面影すら残ってはいない。

村人たちは、一目散に、逃げ惑う。さすがに、白骨の生命体と、武者の鎧、それに冷たい水で濡れたような日本刀に、殺される恐怖感さえ覚えていたのだ。

大人たちは、逃げられるものの、子供は、ただ友達の変異と、あまりの恐怖に、その場に尻ごみし、泣きじゃくるのみだった。

そんな無防備な子供に、白骨の凶刃が向けられようとしている。

「お母さーーーーーーーーん!!!!!!」

グガアアアアアアアアア!!

と、禍々しい声と共に凶刃が振り下ろされた。その一瞬だった。

ゴン、と重く鈍いものが当たる音。白骨は、つい凶刃を手放してしまった。

「うちの子供に何してんのよ!この化け物!」

あのちび椎と呼ばれていた子の親だ。今にも泣きそうな声で、怒りと同時に、鍋を思い切り投げていたのだ。

当然、怒った白骨の化け物は、目標を変える。

「な・・・何よ・・・」

お母さん、と、泣きながらさけぶ子供の声を背に、彼女は、白骨の凶刃になす術も無かった。

そして、また血塗られた凶刃が・・・

と、その時だった。


バキィッ!


と、何かが砕ける音。どうやら白骨の後頭部で鳴ったようだ。

後頭部には、真っ黒な小さい球が埋め込まれている。

彼女は、命は助かっても何か、驚いたような顔で呆然とするだけだった。

「な、なにこれ・・・数珠?」


「ご名答じゃ。」

また新たに声のしたほうを振り向くと、3人の男が立っていた。

その3人の男も、全員、この村では、まったく見ない方の顔だった。よそ者だろうか?

どちらにしてもありがたいはず。

「やれやれ・・・まさかたどり着いた直後に破魔に取り掛からねばならぬとはの。まあこれも生業じゃ。仕方あるまい。頼んだぞ。モララー。」

そのリーダー格とも言える気迫を漂わせた男が、疲れたような感じで、その内の一人に何かを頼んでいるようだった。

外見はまだ30代近いのに、喋り方が老人臭い。身なりは、編み笠に、数珠といい、腰にぶら下げた巻物といい。どこかの寺の僧侶らしき外見だ。

「また例のやつですか。ギコさん・・・」

もう一人の男が、慣れたような手つきで、錫杖と、何か文字の書かれた紙を懐から取り出した。

「喰らえ!麻足式陰陽道(またりしきおんみょうどう)、其の二十七・・・封魔吸引!」

何か文字の書かれた紙を、一枚ばかりその白骨に投げつけた。陰陽道、と言うところを見ると、陰陽師だろうか。

紙が敵の頭部にくっついた瞬間に、その紙が赤く、そして神々しく光り出した。

何だか、その白骨が苦しそうに悶えている・・・

「後は任せたからな!モナー!」

「分かっているモナよ・・・この白崎の名にかけて・・・成敗させていただくモナ!」

最後の、侍らしい身なりの者が、見た目どおりに、刀を抜き、白骨の首を一瞬のうちに刈り取った。

「よし、妖怪退治完了モナ・・・って、ええ!?」

首を刈られても尚、その白骨は首だけ残り、歯をガチガチとうならせて、また、さっきまで遊んでいた子の母親らしき人物に噛み付こうと、身震いさせる。

「い、いやあああああああああああ!!」

「いいかげん、観念するがよい!」

僧侶らしき外見の、ギコと呼ばれていた男が、数珠を握った手で、残った髑髏を叩き潰してしまった。

無論、髑髏は首だけ動けるはずも無く粉々に砕け散った。

「こやつ、あんな小さい子に化けおって・・・破魔、完了じゃな・・・って、何じゃ?」

3人が、いつのまにか、周囲がざわついているのに気づいた。妖怪退治に夢中で気づかなかったのだ。

周りの村人たちは、助けてあげたにもかかわらず、攻撃的な気配を漂わせている。

「あ、あんた達・・・どこのモンだ?用がねぇんならとっとと帰ぇんな。こちとらあんな妖怪のせいでうんざりしてるんだ・・・」

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