私はこの世界に絶望した。
生きていても、楽しいことはない・・・と。
でも、居場所を見つけた。
やっと、信じることの出来るヒトを見つけた。
なのに、「さよなら」なんて・・・。
私、しぃって言うの。でもね、死にたいって思ってる。
みんなにいじめられて、生きてるのが嫌になった。
死ねって言われて、悲しかった。でもね、1度だけ、本気にしちゃった。
死ねなかったけど・・・。こんな私に、手を差し伸べてくれるヒトがいた。
それは、同じクラスの「ギコ」くん。
前は、みんなと一緒に私をいじめてたんだけどね・・・。
†
ガラガラ・・・教室に入り、自分の席に行く。
机には「死ね」とか「馬鹿」とか「邪魔」とか、書いてあった。
私はめげずに、その文字を消す。削除する。
いじめっこたちは舌打ちしている。
(ヒトの机に汚い字でかくなよ・・・。)そう思う。
授業が始まっても、いじめは続く。モノを投げてくる。
私はそれを、何気ない顔で避ける。投げてきたモノはゴミ箱へ・・・。
放課後―・・・。
「お前、うざいんだよ。死ね。生きる価値なんてないんだよ。」
「バーカ。死ね、邪魔なんだよ」
そう言ってくる。でも私は言い返す。
「生きる価値がないのはあんた達でしょ。馬鹿なのも、あんたら。」
「なんだとぉ!!!」
いじめっ子たちは、私に暴力を振るう。男子まで呼んでくる始末。
ひとしきり暴力を振るうと、去っていく。もう慣れっこだ。
「生きる価値のないのは、あんた達だっつうの。」
私はぽつりと言う。そして、帰る。家につくと両親の遺影の前で泣く。
いじめっ子の前では、泣かないってきめていたんだ。
「もう・・・嫌だよ。なんで、先に逝っちゃったの・・・?」
両親は死んだ。交通事故で―・・・。だから、私は一人。
「なんで、私がいじめられなくちゃ、いけないの?・・・何もしてないのに」
そう言って、また泣いた。すると、背後に気配がした。
とっさにしぃが振り向くと、ギコが居た。しぃは泣き顔。
「何やってんだ・・・?」
ヒトの家に勝手に上がりこんで、それはないと思った。
「何・・・っって、ここ私の家・・・。勝手に入ってこないでよ・・。」
声にならない声で言った。涙がまだ零れ落ちている。
「・・・ごめん。」
ギコが唐突に言った。しぃは、何なのか分からなかった。
「俺・・・が、いじめの中心だったんだ・・・。」
ギコは実はしぃが好きだった。それが、空回りして、いじめになった。
「・・・なんで、私をいじめてたの・・・?」
しぃは聞いた。
「・・・分からない。でも、俺、しぃのこと好きだったんだ。」
いきなり告白されて、しぃはびっくりした。
「え・・・?・・・私・・?・・・なんで?」
「・・・分かんないけど、気づいたら、好きになってたんだ・・・。」
ギコが赤くなりながら言った。しぃは、ギコが好きだった。
「うん・・・。私もギコ君が好き・・・。でもね・・・。」
「ん?」
「いじめはよして・・・。」
「ごめん・・・。」
「いいよ・・・別に。」
こうして、次の日から、いじめはなくなりました。
なのに・・・神様は意地悪でした。
「・・・ギコくん・・・私・・・私ね・・。」
「なんだ?」
「余命あと、2週間なんだって。ごめんね。ごめんね・・・。」
しぃは泣きながら言った。ギコは唖然としていた。
「な・・・んでだよ・・。」
「私だって、もっと生きたかった・・・。でも。でも・・・。」
「・・・・・・・・ダメなのか?・・・。」
しぃはコクリとうなずく。でも・・・。
「でも、なんで、学校来てんだ?病院に居なくていいのか?」
「余命が少ないから、好きにしてていいの。ギコくんと、居たかったから。」
「しぃ・・・。」
言葉がなかった。
そして、2週間と2日がすぎた。
「余命すぎたのに、生きてるぞ?」
「うん・・・。でも、病院から出れないなぁ~。」
この日が最後になった。
次の日、ギコの元へ電話が来た。「しぃさんが、会いたいと・・・。」
ギコはすぐに病院に行った。しぃは集中治療室にいた。
ギコが通された。
「ギ・・・コくん。・・・・もう・・さよな・・らだね・・・。」
「おい!!弱気なこと言うな!!」
「でも・・・もう・・・さよなら・・・いままでありがと。」
ピー・・・・・。しぃは死んだ。俺は涙が出ない。
しぃは、この世にいなくなった。でも、いつも俺の心の中にいる。
「アリガトウ・・・シィ」
END